この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。病院・調剤薬局・管理薬剤師を経験。残業や労働時間の制度を、薬剤師の立場からわかりやすく整理して発信しています。
「残業が少ないと聞いて転職したのに、入ってみたら毎日遅くまで…」。これは薬剤師の転職で意外と多い想定外の残業のミスマッチです。聞いていた話と違うと、がっかりしますよね。
でも、いきなり「失敗した」と諦める必要はありません。残業が多いとわかったら、やるべきことは順番に決まっています。この記事では、残業の実態の把握から、残業代が正しく払われているかの確認、36協定の基礎、改善を求める手順まで、現役薬剤師が整理しました。
📌 この記事でわかること
- 残業の実態を正しく把握する方法
- 残業代が正しく払われているかの確認ポイント
- 残業の上限を定める36協定の基礎
- 改善を求める手順と、再転職を見極める判断
まずやること|残業の実態を正しく把握する
対処の第一歩は、感覚ではなく事実で残業を把握することです。「なんとなく多い」では交渉も判断もできません。次の3つを確認しましょう。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 残業時間を記録する | 始業と終業の時刻を毎日メモし、月にどれだけ残業しているかを数字で把握する。 |
| 固定残業代の有無を確認 | 給与に固定残業代が含まれていないか、含まれるなら何時間分かを契約書で確認する。 |
| 求人や契約と照らす | 求人票や労働条件通知書に書かれた残業の目安と、実際の残業時間を比べる。 |
入社直後の繁忙が一時的なものか、それとも恒常的なものかを見極めることも大切です。決算期や人員の欠員で一時的に増えているだけなら、しばらくで落ち着くこともあります。まずは1ヶ月ほど記録をつけて、平均的な残業時間を把握してから動くと、冷静な判断ができます。
残業代は正しく払われている?確認ポイント
残業が多いこと自体より、残業代が正しく払われていないことのほうが深刻です。残業が発生していて残業代を払わないのは、労働基準法違反です。割増率の基本を知っておきましょう。
| 種類 | 割増率の目安 |
|---|---|
| 時間外労働(1日8時間超など) | 25%以上 |
| 月60時間を超える時間外労働の部分 | 50%以上 |
| 深夜労働(22時〜5時) | 25%以上を加算 |
| 法定休日の労働 | 35%以上 |
注意したいのが固定残業代です。固定残業代が設定されていても、その時間数を超えて働いた分は、別途支払われなければなりません。「固定残業代に含まれているから」と超過分が支払われないのは誤りです。自分の残業時間が固定残業の時間数を超えていないか、確認しておきましょう。
給与明細を毎月きちんと見る習慣をつけてください。残業した時間に対して、正しい割増で残業代がついているか。固定残業の時間を超えた分が支払われているか。明細と自分の記録を突き合わせると、もし未払いがあれば気づけます。記録は、いざというときにあなたを守る証拠にもなります。
その残業、上限を超えていない?36協定の基礎
残業には法律上の上限があります。会社が従業員に残業をさせるには36協定という労使協定が必要で、その上限を超える残業は違法です。基本を知っておきましょう。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間まで。これを超える残業は原則として違法。 |
| 特別条項がある場合 | 臨時的な事情があるときのみ上限を超えられるが、それでも上限がある。 |
| 特別条項の上限 | 年720時間以内、単月100時間未満、複数月の平均80時間以内、月45時間超は年6回まで。 |
もし自分の残業がこれらの上限を超えているなら、会社が法律に違反している可能性があります。とくに、月60時間を超えるような残業が続く場合は、健康への影響が心配される水準です。我慢して抱え込まず、状況を整理することが大切です。
残業の上限は、働く人の健康を守るために定められたものです。「みんな残っているから」と無理を続けると、心や体を壊しかねません。数字で上限を知っておくと、「これはおかしい」と気づく物差しになります。自分の残業時間を上限と照らし合わせて、客観的に見つめてみてください。
改善を求める・見極める手順
実態を把握したら、次は動く番です。いきなり辞める前に、改善の余地を探りましょう。
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 上司や人事に相談する。記録した事実をもとに、冷静に状況を伝える。 |
| 2 | 改善の見込みを見極める。一時的な繁忙か、人員不足など構造的な問題かを確認する。 |
| 3 | 残業代の未払いや上限超えなど違法が疑われるときは、労働基準監督署や専門家に相談する。 |
| 4 | 改善が望めず、心身に負担が大きいなら、再転職も前向きな選択肢として考える。 |
「せっかく転職したのにすぐ辞めるなんて」と思う必要はありません。残業が構造的で改善の見込みがなく、体調にも響いているなら、早めに動くほうが自分のためです。再転職するときは、次こそ残業の実態をエージェント経由でしっかり確認しましょう。同じ失敗を繰り返さないことが、いちばんの対策です。
よくある質問
まとめ
転職後に残業が多くても、順番に対処すれば道は開けます。要点を整理します。
- まず残業時間を記録し、感覚ではなく事実で実態を把握する
- 残業代は時間外25%以上、月60時間超は50%以上。固定残業の超過分も支払い義務がある
- 残業の上限は原則月45時間・年360時間。超えていれば違法の可能性がある
- 上司に相談し、改善の見込みを見極める。違法が疑われれば労基署や専門家へ
- 改善が望めず負担が大きいなら、再転職も前向きな選択肢
残業の問題は、放っておくと心身をすり減らします。だからこそ、事実を把握し、制度を知り、順番に動くことが大切です。我慢を美徳にせず、自分の健康と生活を守る視点を持ってください。あなたが無理なく働ける環境は、必ず見つかります。
※本記事の情報は2026年6月時点のものです。労働関連の法令や運用は変更される場合があります。残業代や労働時間に関する個別の問題は、労働基準監督署や弁護士などの専門機関にご相談ください。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門の相談窓口にご相談ください。

