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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
職場での性的な言動に、不快な思いや恐怖を感じていませんか。「気にしすぎかも」「波風を立てたくない」と一人で抱え込んでいませんか。まず伝えたいのは、あなたは悪くないし、我慢する必要はないということです。
この記事の結論を先に書きます。セクハラは、会社が防ぐ義務を負っている問題です。男女雇用機会均等法により、事業主には防止のための措置を講じることが義務づけられており、相談したことを理由に不利益な扱いをすることも禁じられています。さらに国は、行為者になり得る人として「取引先、顧客、患者」を明示しています。薬局や病院で患者から受ける言動も、対象です。
この記事では、セクハラの定義から、患者からの言動の扱い、会社が負う義務、対処の手順、2026年10月に始まった新しい保護、そして転職という選択まで、現役薬剤師がまとめました。
📌 この記事でわかること
- セクハラの定義と2つの類型
- 患者・取引先からの言動もセクハラにあたること
- あなたは悪くないという大前提と、国の調査データ
- 会社が法律上負っている5つの措置義務
- セクハラへの対処の手順と、無料で使える相談窓口
- 2026年10月から転職活動中の応募者も保護対象になったこと
- 自分を守るための転職という選択
セクハラとは?定義と2つの類型
要点:職場で行われる、本人の意に反する性的な言動によって不利益を受けたり、働く環境が害されたりすることを指します。対価型と環境型の2つに整理されています。
セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、男女雇用機会均等法で対策が義務づけられています。大きく次の2つの類型に分けられます。
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」。内容を確認する(厚生労働省)
性的な言動には、性的な冗談やからかい、性的な噂を流す、執拗な食事やデートへの誘い、不必要な身体への接触などが含まれます。
セクハラは男性から女性へのものだけではありません。男性も女性も、行為者にも被害者にもなり得ます。異性に対するものだけでなく同性に対するものも該当し、相手の性的指向や性自認にかかわらず該当することがあり得ると国の指針に明記されています。特定の性的指向や性自認を揶揄する言動も、セクハラの背景になり得るとされています。
「これくらいで騒ぐのは大げさかな」とためらう必要はありません。あなたが不快に感じたなら、それは大切なサインです。相手が「冗談のつもり」でも、あなたが傷ついている事実は変わりません。一人で抱え込まず、まずは「おかしい」と気づくことから始めましょう。
患者・取引先からの言動もセクハラにあたる
要点:国は行為者になり得る人として「取引先、顧客、患者」を明示しています。相手が社外の人でも、自分の勤める会社に相談してよいことになっています。
薬剤師にとって重要なのがこの点です。セクハラの行為者は、事業主・上司・同僚に限られません。厚生労働省は、取引先、顧客、患者、学校における生徒なども行為者になり得ると明示しています。
投薬窓口で身体を触られた、待合室で執拗に連絡先を聞かれた、在宅訪問先で性的な発言を繰り返される。こうした患者や利用者からの言動も、職場におけるセクハラとして扱われます。「相手はお客様だから」「患者さんに強く言えない」と我慢する必要はありません。
そして国は、取引先や顧客などからセクハラを受けた場合も、自分の勤める会社に相談してくださいと明確に呼びかけています。相手が社外の人であっても、あなたを守るのは雇用主である会社の役割だということです。
押さえておきたい点|「患者だから仕方ない」ではない
薬局や病院は、相手が患者であるがゆえに強く出づらい構造があります。ですが、対応を一人の薬剤師に丸投げする職場のほうに問題があります。担当を替える、複数で対応する、記録を残すといった対応は、本来会社が組織として決めるべきことです。個人で耐える問題ではありません。
なお、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)についても、2026年10月1日から事業主が防止措置を講じることが義務になりました。患者からの言動に対して、会社が何もしなくてよい時代ではなくなっています。
私自身、常連の患者さんから距離の近い言動を受けて困っている後輩を見たことがあります。本人は「私が我慢すれば丸く収まる」と言っていました。でも、それは丸く収まっているのではなく、一人に負担が寄っているだけです。管理薬剤師や上司に伝えるのは、告げ口ではなく正当な報告です。
あなたは悪くない|一人で抱え込まない
要点:悪いのは加害者であって、あなたではありません。そして、悩んでいるのはあなただけではありません。
セクハラを受けると、「自分の態度が悪かったのかも」「断り方がきつかったのかも」と、自分を責めてしまう人がいます。でも、悪いのは加害者であって、あなたではありません。どんな事情があっても、相手を不快にさせる性的な言動が許されることはありません。
そして、あなただけの問題でもありません。厚生労働省の実態調査では、過去3年間にセクハラを受けたと回答した労働者は6.3%、セクハラの相談が寄せられたと回答した企業は39.5%にのぼりました。約4割の職場で現に相談が起きている、ということです。
出典:厚生労働省委託事業「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」(2023年12月から2024年1月に実施)。調査結果を確認する(厚生労働省)
我慢を続ける必要もありません。声を上げることは、わがままでも大げさでもなく、自分を守るための当然の行動です。相談できる窓口や、あなたを守る制度は、ちゃんと用意されています。
薬局や病院は少人数で距離が近い職場が多く、断りづらさや、相談したら気まずくなる不安を感じやすいものです。でも、その近さに乗じた言動こそ問題です。「自分さえ我慢すれば」と抱え込むうちに、心をすり減らしてしまわないでください。社外にも無料で相談できる窓口があります。あなたには、安心して働く権利があります。
会社には防止する義務がある|相談を理由に不利益な扱いはできない
要点:セクハラ対策は、業種や規模にかかわらずすべての事業主に義務づけられています。相談したことを理由に不利益な扱いをすることは禁じられています。
「相談したら居づらくなるのでは」という不安は、多くの人が感じるところだと思います。ここで知っておいてほしいのが、会社側にも法律上の義務があるということです。法と指針により、事業主は次の措置を必ず実施しなければならないとされています。
出典:厚生労働省「職場のセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です」。これらの措置は業種・規模にかかわらずすべての事業主に義務づけられています。
特に4番目を覚えておいてください。相談したこと自体を理由に、解雇・減給・異動などの不利益な扱いをすることは、法律上できません。もし相談後にそうした扱いを受けたなら、それ自体が新たな問題として相談の対象になります。
また、相談窓口の設置は「あれば望ましい」ではなく義務です。窓口がどこにあるか分からない場合は、就業規則やハラスメント防止規程を確認するか、人事部門に尋ねてみてください。
小規模の薬局でも義務の対象です。「うちは小さいから、そんな制度はない」と言われたら、それは制度がないのではなく義務を果たしていないということになります。社内で解決しないときのために、社外の窓口が用意されています。
セクハラへの対処の手順
要点:記録を残す、意思を伝える、社内に相談する、社外に相談する、心身を守る。できるところから始めてください。直接対決が難しければ、飛ばして構いません。
対処しようと思ったとき、何から始めればいいか。順番に整理しました。
とくに記録は大切です。あとで相談したり対応を求めたりするとき、具体的な事実があると話が伝わりやすくなります。スマホのメモに日付と出来事を書き留めるだけでも十分に役立ちます。
なお、本人に直接「やめてほしい」と伝えるのが難しい場合は、無理に直接対決する必要はありません。相談窓口を通じて対応してもらう方法もあります。安全を最優先に動いてください。
社内で解決しないときは、社外の窓口へ。総合労働相談コーナーは全国の労働局・労働基準監督署内などに設置されており、相談は無料で、匿名でも受け付けられ、プライバシーは厳守されると国が案内しています。会社に知られる前に、まず状況を整理するために使うこともできます。
つらい記憶を残すのは苦しい作業ですが、記録はいざというときにあなたを守る力になります。書けない日は無理をしなくて大丈夫です。そして、心身に不調を感じたら、迷わず医療機関を頼ってください。我慢して健康を損なう前に、頼れるところにきちんと頼ることが何より大切です。
2026年10月から、転職活動中の応募者も保護される
要点:2026年10月1日から、求職者等に対するセクハラの防止措置が事業主の義務になりました。転職活動中の応募者も保護の対象です。
これまで、均等法のセクハラ防止措置義務の対象は、その会社に雇われている労働者に限られていました。面接を受けにいった応募者は、対象外だったのです。
これが変わりました。2025年6月11日に公布された改正法(令和7年法律第63号)により、2026年10月1日から、求職者等に対するセクハラの防止措置が事業主の義務になりました。就職活動中の学生やインターンシップ参加者だけでなく、転職活動中の応募者も含まれます。
出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります」(改正法は令和7年法律第63号、2025年6月11日公布/2026年10月1日施行。防止指針は2026年2月26日公布)。詳細を確認する(厚生労働省)
転職活動の場面でも、面接で私生活や交際関係をしつこく聞かれる、選考と関係のない食事に誘われる、といったことは起こり得ます。そうした言動を受けたときは、都道府県労働局に相談することができます。まだ入社していないから我慢する、という必要はありません。
転職活動そのものの進め方や、選考時に確認しておきたいことは、次の記事にまとめています。
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この改正は、裏を返せば「面接の場でのセクハラが実際に起きている」と国が認めたということでもあります。少人数の薬局では、面接が個室で1対1になることも珍しくありません。違和感を覚えたら、その職場は選ばないという判断も、立派な自己防衛です。
自分を守るための転職という選択
要点:相談しても改善されないなら、環境を変えるのは立派な自己防衛です。逃げではありません。
相談しても改善されない、あるいはもう同じ職場にいるのがつらい。そんなときは、転職して環境を変えることも、立派な自己防衛です。「逃げ」ではありません。自分の安全と心を守るための、前向きな決断です。
薬剤師は転職先の選択肢が多い職種です。我慢して心身を壊してしまう前に、安心して働ける場所へ移ることを考えてください。
面接で退職理由を話すときは、相手を責める言い方より、「より働きやすい環境を求めて」と前向きに言い換えると、印象よく伝わります。経緯を詳しく話す義務はありません。話したくないことは、話さなくて構いません。
次の職場を選ぶときに見ておきたいこと
- ハラスメント相談窓口があるか。設置は義務なので、「あります」と即答できる職場かどうかが分かれ目です
- 就業規則にハラスメント防止の規定があるか。入職前に確認させてもらえるかを聞いてみるのも一つの方法です
- スタッフの人数と男女比、勤務時の体制。一人体制の時間帯が長い職場は、患者対応でも孤立しやすくなります
- 職場見学ができるか。実際の雰囲気は、見学と社員の表情から伝わってくるものがあります
転職エージェントに事情を伝えておくと、面接での退職理由の伝え方も一緒に考えてもらえます。職場の雰囲気やスタッフ構成といった、求人票に出てこない情報を聞けるのも利点です。同じ思いを繰り返さないための下調べを大切に。あなたが安心して働ける職場は、必ずあります。
よくある質問
まとめ
セクハラは我慢するものではなく、対処できるものです。要点を整理します。
この記事のポイント
- セクハラには対価型と環境型があり、男女問わず同性間でも成立する
- 取引先・顧客・患者も行為者になり得る。社外の人から受けた場合も、自分の勤める会社に相談してよい
- 悪いのは加害者であって、あなたではない。企業の約4割でセクハラの相談が起きている
- 会社には5つの措置義務がある。相談したことを理由とする不利益な取扱いは禁じられている
- 記録を残し、社内・社外の窓口に相談する。総合労働相談コーナーは無料・匿名可・プライバシー厳守
- 直接対決が難しければ無理をせず、窓口を通じた対応も選べる。心身の不調は医療機関へ
- 2026年10月1日から、転職活動中の応募者も保護対象になった
- 改善が望めないなら、転職で安心できる環境へ移ることも前向きな選択
セクハラに耐え続ける必要は、どこにもありません。あなたの安全と心を守ることを、何より優先してください。声を上げ、頼り、必要なら環境を変える。それは逃げではなく、自分を大切にする勇気ある選択です。あなたが安心して働ける場所は、必ず見つかります。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。セクハラの定義・事業主の措置義務・行為者の範囲・相談窓口に関する記述は厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」、統計は厚生労働省委託事業「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」、求職者等に対するセクハラおよびカスタマーハラスメントの措置義務化は令和7年法律第63号(2025年6月11日公布・2026年10月1日施行)に基づいています。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的・医療上の助言に代わるものではありません。個別のセクハラ問題は、労働局の窓口や弁護士などの専門機関にご相談ください。心身の不調が続く場合は、医療機関や専門の相談窓口にご相談ください。

