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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
薬剤師の働き方は今、大きく変わろうとしています。労働環境の見直し、仕事の中身の変化、働き方の多様化。これからの薬剤師に何が起きているのかを知っておくことは、これからのキャリアを考えるうえでとても大切です。
とくに2026年は、6月に施行された調剤報酬改定で薬局の評価軸が大きく組み替えられ、賃上げのための点数まで新設されました。この記事では、薬剤師の働き方改革の最新動向を、大きな流れ・仕事の中身の変化・報酬改定・働き方の多様化・転職への影響という視点から、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
- 薬剤師の働き方改革で押さえるべき3つの大きな流れ
- 労働基準法の見直し(勤務間インターバルなど)が今どこまで進んだか
- 対物業務から対人業務へのシフトと、その根拠になった通知の中身
- 2026年6月施行の調剤報酬改定で薬局と薬剤師の評価がどう変わったか
- 働き方改革が転職に与える影響と、職場を選ぶときの確認ポイント
薬剤師の働き方改革で押さえるべき大きな流れ
薬剤師を取り巻く働き方の変化は、大きく3つの流れに整理できます。それぞれが、これからの薬剤師の働き方を形づくっています。
私が薬剤師になったころと比べると、働き方は本当に変わりました。昔は「残業して当たり前」という空気もありましたが、今は休暇も取りやすくなり、働き方の選択肢も増えています。変化の方向を知っておくと、自分のキャリアの舵を取りやすくなりますよ。
流れ①労働環境の整備|法改正はどこまで進んだか
薬剤師にも適用される労働環境のルールは、すでに整備が進んでいる部分と、これから変わる部分に分かれます。まず、すでに施行されているのが時間外労働の上限規制と、年5日の年次有給休暇の取得義務です。これらは働き方改革関連法によるもので、薬局・病院・企業を問わず適用されます。
その効果は数字にも表れています。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、令和6年の年次有給休暇の取得率は66.9%で過去最高、労働者1人平均の年間休日総数は116.6日(1企業平均112.4日)で、いずれも昭和60年以降で最多となりました。
労働基準法の見直しは議論が継続中
一方、40年ぶりとされる労働基準法の大きな見直しは、まだ途中段階です。2025年1月に公表された労働基準関係法制研究会の報告書を受けて、労働政策審議会で議論が続いています。主な検討項目は次のとおりです。
- 勤務間インターバル制度の義務化(原則11時間の確保を基軸に議論)
- 連続勤務の上限規制
- 法定休日の特定の義務化
- 副業・兼業をする人の割増賃金の算定ルールの見直し
- 勤務時間外の連絡に関する考え方の整理
- 週44時間の特例措置の廃止
当初は2026年の通常国会への法案提出が見込まれていましたが、提出は見送られました。2026年9月時点でも施行時期は正式には固まっていません。薬剤師だけを対象にした制度ではなく、労働基準法全体の見直しの一部として議論されている点を押さえておきましょう。今後の国会審議の動きに注目が必要です。
勤務間インターバルは、夜間対応のある薬局や病院にとってはインパクトが大きい話です。義務化はまだ先ですが、先回りして体制を整えている職場もあります。転職の面談で「勤務間の休息はどう確保していますか」と聞くと、その職場の労務管理の本気度が見えてきます。
流れ②対物業務から対人業務へ|仕事の中身が変わる
薬剤師の働き方改革で、いちばん大きな変化がこれです。これまで中心だった対物業務、つまり薬を扱う作業から、患者さんと向き合う対人業務へと、薬剤師の役割の重心が移ってきています。
きっかけのひとつが、2019年(平成31年4月2日)に厚生労働省が出した「調剤業務のあり方について」という通知です。いわゆる0402通知と呼ばれるもので、判断を加える余地の少ない機械的な作業については、薬剤師の管理と最終確認を条件に、薬剤師以外の人が担えることが明確化されました。
これによって生まれた時間を、服薬指導や在宅訪問、服薬後のフォローアップといった対人業務に充てる流れが進んでいます。あわせて、調剤機器の導入や、国家戦略特別区域における調剤業務の一部外部委託の実証など、対物業務を効率化する取り組みも進められています。
「薬を正確に揃える」だけでなく、「患者さんの暮らしを支える」ことが、これからの薬剤師の価値になります。ただ、0402通知を拡大解釈して線を越えている職場も残念ながらあります。計量・混合は今も薬剤師の業務です。面接では、どこまでを事務スタッフに任せているかを具体的に確認してください。
2026年6月施行の調剤報酬改定で何が変わったか
働き方の変化を、お金の面から後押ししているのが調剤報酬です。令和8年度(2026年度)の改定は2026年6月1日に施行されました。改定率は診療報酬全体で令和8年度・令和9年度の2年度平均で3.09%のプラス、そのうち賃上げ分が1.70%を占めています。
賃上げのための点数が新設された
薬剤師の収入に直接関わるのが、新設された調剤ベースアップ評価料(4点)です。薬局の薬剤師や事務職員などの賃金改善を図る目的で、処方箋の受付1回につき算定できます。厚生労働省の資料では、薬局の対象職員について令和8年度・令和9年度にそれぞれ3.2%(事務職員は5.7%)のベースアップを実現するための措置と位置づけられています。あわせて、物価上昇に対応する調剤物価対応料(1点)も新設されました。
この評価料は薬局が届出をして算定するもので、算定されれば自動的に全員の給与が上がるという仕組みではありません。実際にどう配分されるかは職場によって異なります。求人に応募するときは、賃上げがどのように反映されているかを確認しておくと安心です。
かかりつけ薬剤師の評価が実績重視に転換
対人業務では、かかりつけ薬剤師をめぐる評価が大きく組み替えられました。従来のかかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料は廃止され、服薬管理指導料に統合。そのうえで、電話などによる継続的な確認を評価するかかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)や、患家を訪問して残薬状況を確認するかかりつけ薬剤師訪問加算(230点)が新設されました。包括的な評価から、実際に行った行動を評価するかたちへの転換です。
注目したいのが、薬局全体の体制要件として薬剤師の在籍期間(定着の度合い)が新たに盛り込まれたことです。人が定着しない薬局は評価を得にくくなる仕組みで、職場が離職対策に取り組む動機になります。求職者の立場からは、その薬局が要件を満たしているかどうかが、働きやすさを測るひとつの手がかりになります。
在宅と地域機能の評価が引き上げられた
在宅医療の分野では、在宅薬学総合体制加算1が15点から30点へ、加算2のうち個人宅を訪問する場合は50点から100点へと引き上げられました。医師と薬剤師が同時に患家を訪問した場合の訪問薬剤管理医師同時指導料(150点)や、複数名で訪問した場合の複数名薬剤管理指導訪問料(300点)も新設されています。また、地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算は統合され、地域支援・医薬品供給対応体制加算になりました。詳細は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」で確認できます。
在宅の点数がここまで上がると、これから在宅に踏み出す薬局は確実に増えます。裏を返せば、在宅の経験がある薬剤師の価値は上がっているということ。今の職場で在宅に関われるなら、経験を積んでおいて損はありません。
流れ③働き方の多様化
働き方改革のもうひとつの大きな流れが、働き方そのものの多様化です。薬剤師の働き方は、ひと昔前よりずっと幅広くなっています。
この広がりは、数字にも表れています。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、薬剤師の就業形態として多いと感じられているものは、正規の職員・従業員が89.5%である一方、パートタイマーが36.8%、派遣社員が15.8%でした(複数回答)。正社員以外の選択肢が現実に機能している職種だということです。
「フルタイムで調剤薬局」だけが薬剤師の働き方ではなくなりました。自分のライフスタイルや大切にしたいことに合わせて、働き方を選べる時代です。今の働き方が合わないと感じているなら、別の選択肢を探してみる価値は十分にあります。視野を広げてみてください。
働き方改革は薬剤師の転職にどう影響するか
これらの変化は、転職にも大きく関わります。まず、評価されるスキルが変わってきています。対人業務が重視されるなかで、コミュニケーション力や、在宅・かかりつけの経験、医療のデジタル化への対応力などが、これまで以上に求められるようになっています。
同時に、職場を選ぶときの視点も大切になります。残業の実態、有給の取りやすさ、働き方の柔軟さなど、労働環境をしっかり見極めることが、長く快適に働くための鍵です。2026年の改定で薬剤師の定着が評価に組み込まれたことで、職場側も人が辞めない環境づくりに取り組む必要が出てきました。求職者にとっては追い風です。
転職前に確認したい5つのポイント
- 賃上げの反映:調剤ベースアップ評価料を届け出ているか、給与にどう反映されるか
- 定着の状況:薬剤師の平均在籍年数、管理薬剤師の在籍期間
- 対人業務の比重:在宅訪問の件数、かかりつけとしての関わりの実績
- 対物業務の線引き:事務スタッフにどこまで任せているか、手順書と研修があるか
- 休息の確保:残業の実態、夜間・休日対応の頻度、勤務間の休息の考え方
求人票だけではわからない実態は、薬剤師専門のエージェントに「労働環境や対人業務への力の入れ方を知りたい」と相談すると、内部の様子まで教えてもらえます。変化の方向を理解し、自分の強みを磨いておくことが、これからの転職を有利に進めるポイントです。
職場ごとに、働き方改革への取り組みには差があります。同じ薬剤師の仕事でも、労働環境や任される業務は職場によってさまざまです。「うちは在宅に力を入れています」と言いながら年間の訪問件数を答えられない職場もあるので、数字で聞くのがいちばん確実です。
よくある質問
まとめ
- 大きな流れは「労働環境の整備」「仕事の中身の変化」「働き方の多様化」の3つ
- 残業上限規制と年5日の有給取得義務は施行済み。有給取得率は66.9%で過去最高
- 勤務間インターバルを含む労働基準法の見直しは、2026年の通常国会への提出が見送られ議論継続中
- 2026年6月施行の調剤報酬改定で、賃上げのための調剤ベースアップ評価料が新設された
- かかりつけ薬剤師の評価は実績重視に転換し、薬局の体制要件に薬剤師の定着期間が加わった
- 転職では労働環境と業務の線引きを数字で確認し、自分の強みを活かせる職場を選ぶ
働き方改革は、薬剤師にとって不安だけでなく、新しい可能性も運んできています。変化の方向を理解し、自分の強みを磨き、自分に合った働き方を選ぶ。その積み重ねが、これからの時代に選ばれ続ける薬剤師への道につながります。変化を味方につけて、納得のいくキャリアを描いていきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点の一般的な内容です。労働基準法の改正は現在も検討が進められており、今後変わる可能性があります。調剤報酬の点数・要件は告示・通知の内容が優先されますので、算定にあたっては最新の告示・通知および地方厚生局の案内をご確認ください。最新の情報は厚生労働省など公的機関の発表をご確認ください。個別の求人条件や給与への反映は勤務先や転職の窓口でご確認ください。

