この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
薬剤師の転職先は、調剤薬局から病院、企業までさまざまです。「みんなはどこを選んでいるのか」「人気の転職先はどこか」が気になる人も多いでしょう。
ただ、先に正直にお伝えしておきます。「薬剤師に人気の転職先ランキング」に、公的な根拠はありません。順位は調査主体と評価軸によっていくらでも入れ替わります。年収で並べるか、求人数で並べるか、やりがいで並べるかで、1位は変わってしまうからです。
一方で、実際に薬剤師が何人、どこで働いているかは公的統計で分かります。この記事では、まずその数字で現在地を示したうえで、人気の転職先とそれぞれの特徴を整理します。
先に結論だけ知りたい方へ
📌 この記事でわかること
- 人気ランキングをどう読むべきか
- 公的統計で見る、薬剤師が実際に働いている場所
- 薬剤師に人気の転職先と、それぞれの特徴・向いている人
- 重視するポイント別の選び方と、年収の考え方
- 人気の転職先を選ぶときの注意点
人気ランキングは「何を重視するか」で変わる
最初に押さえておきたいのが、人気の順位は調査や視点によって入れ替わるということです。求人数で見れば調剤薬局が上位に来ますし、やりがいで見れば病院が上がります。働きやすさなら調剤薬局や企業が選ばれやすくなります。
ネット上で見かける「薬剤師人気転職先ランキング」の多くは、転職サイトの利用者アンケートや求人掲載数をもとにしたものです。調査対象がそのサイトの利用者に限られるため、母集団が偏ります。順位そのものを鵜呑みにする必要はありません。
この記事でも順位を示しますが、それは選択肢を一覧するための入口としてです。絶対的な優劣ではないという前提で読んでください。
ランキング記事を10本読むと、たいてい順位が違います。それは調べ方が違うからで、どれかが嘘というわけではありません。だからこそ、順位を追いかけるより「自分は何を大事にしたいか」を先に決めるほうが早いんです。
ランキングでは分からない、個々の職場の残業・人員体制・年収の内訳は、担当者に確認してもらうのが確実です。まずは相談先の特徴を比べてみてください。
数字で見る、薬剤師が実際に働いている場所
人気は測りにくくても、実際の就業先の分布は厚生労働省の統計で確認できます。これが、この分野で唯一の客観的な土台です。
届出薬剤師数の総数は329,045人(2024年12月31日現在)。上記のほか、介護保険施設の従事者などが含まれます。出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)
ドラッグストアは、この統計に単独では出てきません
ここで注意したい点があります。調剤を行うドラッグストアは薬局として届け出るため、統計上は「薬局の従事者」に含まれます。そのため、ドラッグストアで働く薬剤師の人数を、この統計から単独で取り出すことはできません。
つまり、薬局の197,437人という数字には、いわゆる調剤薬局とドラッグストアの調剤部門の両方が入っています。薬剤師の6割が「薬局」で働いているというのは、この2つを合わせた数字だと理解しておいてください。
平均年齢にも差がある
同じ統計から、就業先ごとの平均年齢も分かります。医薬品関係企業が49.1歳、薬局が46.8歳、病院が42.5歳です。企業は経験を積んだ層が中心、病院は若手が多いという構造が読み取れます。年齢層は、転職先を考えるうえで意外に重要な情報です。
病院の平均年齢が42.5歳と若いのは、若手が集まるからだけではなく、一定の年齢で他業態へ移る人がいるからでもあります。数字の裏側を想像すると、その職場の人の流れが見えてきます。
薬剤師に人気の転職先ランキング
薬剤師に人気の主な転職先を、特徴と向いている人とあわせて紹介します。以下は求人の多さと一般的な人気度をもとにした目安の順位で、繰り返しになりますが、重視する軸によって入れ替わります。
この順位はあくまで一般的な目安です。「人気だから」で選ぶより、自分が何を大事にしたいかで選ぶほうが、転職後の満足度はずっと高くなります。ランキングは入口として使い、最後は自分の軸で決めてくださいね。
重視するポイント別の選び方
何を重視するかで、選ぶべき転職先は変わります。代表的な軸ごとに整理しました。
右端の列がこの表の要点です。どの選択にも、必ず引き換えがあります。メリットだけを並べたランキングでは見えない部分なので、ここを見比べてから決めてください。
年収で選ぶときに知っておくこと
「年収ランキング」は最も注目されやすい切り口ですが、ここにも前提があります。業態別の平均年収を示した公的統計は存在しません。国の賃金統計は「薬剤師」という職種単位の集計で、調剤薬局・病院・企業といった勤務先別の内訳が公表されていないためです。
公的に確認できるのは、薬剤師全体の平均年収566万7,900円(令和7年賃金構造基本統計調査、平均年齢40.1歳)という数字までです。「ドラッグストアは◯◯万円、病院は◯◯万円」という比較表は、いずれも求人情報や民間調査にもとづくもので、出典によって数字が変わります。
当サイトでは、根拠を確認できない相場表は掲載していません。代わりに確実なのは、応募先の求人票を年収総額で読むことです。
- 基本給と固定残業代の内訳。超過分を追加支給する旨の明示があるか
- 賞与の直近数年の支給実績(規定上の「◯か月分」ではなく実績)
- 管理薬剤師手当・在宅手当・資格手当の額と支給条件
- 土日祝の勤務頻度と、年間休日数
- 就業の場所と業務の変更の範囲(2024年4月から労働条件の明示事項に追加)
相場表を眺めて一喜一憂するより、目の前の求人1件の内訳を潰していくほうが、結果的に納得できる転職になります。とくに固定残業代の有無は、額面の意味を大きく変えるので必ず確認してください。
人気の転職先を選ぶときの注意点
人気の転職先が、自分にとって最良の職場とは限りません。人気が高い職場は応募者も多く、求人によっては競争が激しくなります。
そして、同じ業態でも職場ごとの差のほうが、業態間の差より大きいことがあります。忙しい調剤薬局と落ち着いた調剤薬局では、残業も雰囲気もまるで違います。業態で絞り込んだあとに、個々の職場を確かめる工程が必要です。
大切なのは、ランキングをきっかけに自分の希望を整理することです。働きやすさ、収入、やりがい、キャリアのうち何を優先したいかをはっきりさせたうえで、気になる転職先の実態を、薬剤師に強い転職エージェントに確認してもらうとよいでしょう。
「調剤薬局は残業が少ない」と言われますが、私が見てきたなかには、毎日1時間以上残っている薬局もありました。業態の平均より、その1店舗の実態です。見学できるなら、必ず行ってみてください。
よくある質問
まとめ
- 人気ランキングに公的な根拠はない。順位は調査主体と評価軸で入れ替わる
- 公的統計で分かるのは就業者数。薬局197,437人(60.0パーセント)、医療施設63,290人(19.2パーセント)、医薬品関係企業34,184人(10.4パーセント)
- 調剤を行うドラッグストアは薬局として届け出るため、統計上は薬局に含まれる
- 業態別の平均年収を示す公的統計も存在しない。薬剤師全体の566万7,900円までが確認できる範囲
- どの選択にも引き換えがある。収入を取れば土日勤務や転勤、働きやすさを取れば手取りは控えめ
- 同じ業態でも職場ごとの差が大きい。ランキングは入口にして、最後は個々の職場を確認する
人気の転職先を知ることは、選択肢を広げる第一歩です。そのうえで、数字で確かめられることと確かめられないことを切り分け、自分が何を大事にしたいかを軸に、納得のいく転職先を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。薬剤師数は厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)、平均年収は同「令和7年賃金構造基本統計調査」にもとづきます。人気の順位は当サイトが求人の多さと一般的な人気度をもとに整理した目安であり、公的な調査によるものではありません。年収・求人の状況は職場や時期によって異なります。

