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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
オンライン診療の普及とともに、薬剤師の「オンライン服薬指導」も広がってきました。「在宅で働けるのでは」「これからのスキルとして身につけたい」と、遠隔医療に関わる働き方に関心を持つ薬剤師は増えています。一方で、制度や働き方の実情を正しく理解しておくことも大切です。
結論から言うと、オンライン服薬指導は調剤業務の一部であり、調剤や薬の最終確認は薬局で行う必要があるため、完全在宅は基本的に難しく、多くは薬局出勤と在宅を組み合わせたハイブリッド勤務になります。
ただし、環境は確実に整いつつあります。2026年6月施行の調剤報酬では、オンライン服薬指導の点数が対面と同額に設定されました。薬局側にオンラインを避ける経済的な理由がなくなったということです。この記事では、制度の流れ、報酬から見た現在地、仕事内容と働き方、求められるスキル、年収や求人の実情までを整理します。制度の経緯は厚生労働省の公式ページにもとづいて確認しており、本文中にリンクしているので自分でも確かめられます。
この記事でわかること
- 薬剤師が関わる「オンライン服薬指導」とその制度の流れ
- 調剤報酬から読む、オンライン対応の現在地
- 仕事内容と、完全在宅は可能なのかという働き方の実情
- オンライン対応の薬剤師に求められるスキル
- 年収・求人の実情と、面接で確認したいこと
薬剤師とオンライン診療・遠隔医療の関わり
遠隔医療のうち、薬剤師が中心的に関わるのがオンライン服薬指導です。厚生労働省の定義では「映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法で服薬指導を行うこと」とされ、患者の求めに応じて、その都度薬剤師の判断と責任にもとづき実施します。オンライン診療で処方を受けた患者が、そのまま自宅で薬の説明を受け、薬を配送してもらえる。その流れの一翼を担います。
制度は段階的に整ってきました。流れを押さえておくと、求人票の記載も読み解きやすくなります。
- 2019年/改正薬機法で法制化。全国での実施が可能に
- 2020年4月/コロナ特例(0410対応)として、電話などでの柔軟な対応が時限的に解禁
- 2020年9月/恒久制度がスタート。ただし当初は初回対面が原則などの制限あり
- 2022年3月31日/省令改正で要件が緩和。初回からのオンライン服薬指導が可能に。通信は映像と音声の両方が必須(電話のみは不可)となり、服薬指導計画書の作成も不要に
- 2022年9月30日/改正により、薬局以外の場所からの実施も可能に
- 2023年7月31日/コロナ特例の0410対応が終了。現在は改正薬機法にもとづくルールに一本化
- 2026年5月1日/改正薬機法(令和7年法律第37号)の施行で、要指導医薬品の一部についても、薬剤師によるオンライン服薬指導を条件にインターネット販売(配送)が解禁。緊急避妊薬など「特定要指導医薬品」は引き続き対面販売が必要
- 2026年6月1日/令和8年度調剤報酬改定が施行。情報通信機器を用いた服薬指導の点数が、対面と同額に整理
つまり今は、「初回からオンラインで可・映像と音声が必須・薬局以外からも一定の条件で実施可」という恒久ルールに整理された状態です。2026年に入ってからは、扱える薬の範囲が広がり、報酬上の扱いも対面と揃ったという二つの変化が同時に起きました。
制度が固まってきた今は、オンライン服薬指導のスキルを身につける良いタイミングです。過渡期のややこしさが落ち着き、ルールが読みやすくなりました。求人を見るときは「0410対応の名残の記載ではないか」を軽く気にしておくと安心です。
オンライン対応に積極的な薬局を探すには
「在宅可」の中身が週何日なのか、実施件数はどのくらいか。求人票からは読み取れません。内部事情まで確認してもらえる相手を持っておくのが近道です。
薬剤師転職エージェントの比較を見る調剤報酬で読む、オンライン対応の現在地
制度が使えることと、薬局がやりたがることは別です。そこを決めるのが調剤報酬です。ここに、この分野で最も大きな変化がありました。
※出典:厚生労働省 調剤報酬点数表 服薬管理指導料(令和8年6月1日施行)。要件は簡略化して記載しているため、詳細は告示・通知をご確認ください。
表を見てわかるとおり、情報通信機器を用いた服薬指導は、対面と同じ45点・59点です。かつては対面より低く設定されていた時期もありましたが、現在は差がありません。
これが意味すること。薬局にとって、オンラインで対応しても収入は変わりません。つまり「オンラインだと損をするから対面で来てほしい」という経済的な理由がなくなったということです。制度が使えるだけでなく、報酬の面でも足かせが外れました。
加えて、4のロ・ハには在宅患者に対するオンライン薬剤管理指導が含まれ、訪問と組み合わせた運用が評価されています。「オンライン」と「在宅医療」は別々の話ではなく、地続きの領域になりつつあります。
もうひとつ、求人を見るときの指標になるのが医療のデジタル化への取り組みです。令和8年度改定では、医療情報取得加算と医療推進体制の加算を一本化した電子的調剤情報連携体制整備加算(月1回8点)が設けられました。電子処方箋への対応状況は、その薬局がオンライン対応にどれだけ本気かを測る材料になります。
オンライン服薬指導の仕事内容と働き方
仕事内容
事前に問診票や薬歴をもとにヒアリング内容を準備し、ビデオ通話で患者に服薬指導を行います。オンライン薬局では短時間で対応することも多く、限られた時間で的確に伝える力が求められます。指導後は薬歴の記録や、薬の配送手配に関わることもあります。対面と違って手元の様子が見えにくいため、飲み残しの確認や副作用の聞き取りを、言葉で丁寧に引き出す工夫が要ります。
完全在宅は可能か
ここは誤解しやすいポイントです。オンライン服薬指導は調剤業務の一環であり、調剤や監査(できあがった薬の最終チェック)は薬局で行う必要があるため、完全リモートは基本的に難しいのが実情です。指導だけを切り出して自宅から行える場面はあっても、薬の準備と確認は薬局に人が要ります。多くの場合は「週の一部を在宅、残りは薬局に出勤」というハイブリッドな働き方になります。フルリモートの求人もありますが、数は限られます。
言い換えれば、オンライン対応は「働く場所の自由」ではなく「患者と会う方法の選択肢」が増えたということです。ここを取り違えなければ、期待と現実のずれは起きません。
「完全在宅でラクに稼げる」というイメージで転職すると、ギャップを感じがちです。まずは調剤業務と組み合わせたハイブリッド勤務が現実的、と理解しておきましょう。求人票の「在宅可」も、その中身が週何日なのかまで確認すると誤解を防げます。
オンライン対応の薬剤師に求められること
対面と違い、画面越しで安心感を与え、正確に情報を伝える力が問われます。次のようなスキルがあると活躍しやすくなります。
- 制度・ルールの理解:改正薬機法にもとづくオンライン服薬指導の要件や算定ルール
- デジタル機器・ツールへの慣れ:ビデオ通話システムや電子薬歴、電子処方箋への対応
- 簡潔な説明力:短時間で要点を的確に伝えるコミュニケーション
- 非対面での観察力:画面越しに患者の様子を読み取り、必要な確認を言葉で引き出す力
特別な資格は不要です。日頃から電子薬歴やオンラインの会議ツールに慣れておくと、転職後もスムーズに入っていけます。機械が得意である必要はなく、「戸惑わず触れる」程度で十分です。
年収・求人の実情と、面接で確認したいこと
オンライン服薬指導そのものは、多くが通常の調剤薬局業務の一部として行われるため、給与水準は基本的に一般的な調剤薬局と同程度です。参考までに、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査による薬剤師全体の平均年収は約566.8万円(前年の令和6年調査では約599.3万円)で、調剤薬局はこれに近い水準が目安になります(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」)。薬剤師は専門性が高く、在宅要素のある働き方でも給与が下がりにくいのが強みですが、「オンライン対応だから特別に高収入」というわけではありません。
これは報酬の構造からも説明できます。前章のとおり、オンラインでも対面でも薬局が受け取る点数は同じです。薬局の収入が増えないのですから、そこで働く薬剤師の給与だけが上がる理由もありません。逆に言えば下がる理由もないということで、これは働き方の柔軟さを求める人にとって悪い話ではありません。
求人については、在宅・フルリモートの薬剤師求人は、調剤薬局や病院の一般求人と比べてまだ数が少ないのが実情です。ただし2026年に入って、扱える薬の範囲が広がり、報酬上の不利もなくなりました。オンラインに対応できる薬剤師を求める求人が、今後増えていく素地は整っています。
面接でそのまま使える四つの質問
とくに二つ目は重要です。自分が在宅勤務の日、薬局側で調剤と監査をする人がいなければ、その運用は成り立ちません。「在宅可」という言葉の裏に、人員の裏づけがあるかを確かめてください。
「在宅可」と書いてあっても、実際は月数回だけ、というケースもあります。数字で確認するのが大切です。オンライン対応をどれだけ本気でやっている薬局かは、導入しているツールや実施件数を聞くと見えてきます。
オンライン対応の薬局へ転職するメリット・デメリット
転職を決める前に、良い面と注意点の両方を確認しておきましょう。オンライン対応という切り口だけでなく、他の転職先と並べて見比べると、自分にとっての位置づけがはっきりします。
メリット
- これからの医療で需要が高まる新しいスキルが身につく(2026年の要指導医薬品オンライン販売解禁で対応範囲も拡大)
- 在宅勤務を一部取り入れ、柔軟に働ける可能性がある
- 報酬が対面と同額になり、薬局側がオンラインを避ける理由がなくなった
- 通院が難しい患者を支える社会的意義
- 薬局のデジタル化やヘルステック分野へのキャリアの足がかりになる
デメリット・注意点
- 完全リモートは難しく、多くはハイブリッド勤務
- 給与が特別高いわけではない(報酬が対面と同額である以上、原資が増えない)
- 在宅・フルリモートの求人はまだ少ない
- 短時間で的確に伝える力や、デジタルツールへの慣れが必要
オンライン服薬指導の経験は、将来ヘルステック企業や薬局のデジタル化を進めるポジションを目指すときにも強みになります。「これからの医療に関わる第一歩」として捉えると、目先の給与以上の価値が見えてきます。
よくある質問
まとめ
オンライン服薬指導は、これからの医療で需要が高まる薬剤師のスキルです。要点を整理します。
- 薬剤師が関わる遠隔医療の中心はオンライン服薬指導
- 2020年9月に恒久制度が始まり、2022年の省令改正で初回からの実施が可能に。0410対応は2023年7月末で終了
- 2026年5月からは、要指導医薬品の一部もオンライン服薬指導を条件にネット販売が可能に(一部品目は対面販売を維持)
- 2026年6月施行の調剤報酬で、オンラインの点数は対面と同額(45点・59点)に。薬局がオンラインを避ける経済的理由がなくなった
- 通信は映像と音声の両方が必須。調剤業務の一環のため完全リモートは難しく、多くはハイブリッド勤務
- 給与は一般的な調剤薬局と同水準(令和7年調査で平均約566.8万円)。上がる理由も下がる理由もない
- 面接では実施件数・在宅の日数と調剤監査の担当・電子処方箋対応・在宅患者へのオンライン指導の4点を数字で確認する
「これからの医療に関わりたい」「柔軟な働き方も視野に入れたい」という薬剤師にとって、オンライン対応のスキルは大きな武器になります。まずは制度の全体像と求人の実情をつかみ、働き方の中身を数字で確認することから始めてみてください。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「オンライン服薬指導に関する情報」
- 厚生労働省「令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について」
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
- 厚生労働省 調剤報酬点数表 服薬管理指導料・電子的調剤情報連携体制整備加算(令和8年6月1日施行)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。オンライン服薬指導の要件や算定ルールは、薬機法・関係通知や調剤報酬改定により変更されることがあります。点数および算定要件は要旨を簡略化して記載しているため、詳細は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。年収は統計上の平均であり、特定の職場での支給を保証するものではありません。最新の内容は厚生労働省の発表および各職場の運用をご確認ください。

