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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、茨城県は「平均年収は全国16位で全国平均を28.5万円上回る。病院薬剤師の不足は全国でも深刻だが、企業で働く薬剤師の割合は全国屈指に高い」という、他県とは違う顔を持つ県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、茨城の病院薬剤師は0.67と全国平均0.80を大きく下回っています。
そしてもうひとつ。県内で薬剤師が最も多い市は、県庁所在地の水戸市ではなくつくば市です。全国的にも珍しいこの構造が、茨城の転職市場を理解する鍵になります。
- 茨城県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 病院薬剤師の不足が全国でも深刻という需給の構図
- つくば市が水戸市を上回る理由と、企業薬剤師という選択肢
- エリア別の傾向と、職場の選び方・年収アップのコツ
茨城県の薬剤師転職データ早見表
まず、茨城県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・平均年齢・月間勤務時間は厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標/勤務先別の割合は厚生労働省の統計をもとにマイナビ薬剤師が集計したもの
茨城でいちばん驚くのが、医薬品関係企業で働く薬剤師が13.1%もいることです。多くの県は数%程度。つくばに研究機関や企業が集まっているからで、これは茨城ならではの強みだと思います。
年収は全国16位、全国平均を28.5万円上回る
公的統計では627.8万円
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした集計では、茨城県の薬剤師の平均年収は627.8万円で全国16位。全国平均599.3万円を28.5万円上回りました。全国平均をはっきり超える水準です。
同じ調査での平均年齢は42.2歳(全国40.9歳)、月間勤務時間は166時間で全国の167時間より1時間短い結果でした。長く働いて稼いでいるわけではないという点は、押さえておく価値があります。
ネット上の数字がばらつく理由
茨城の薬剤師年収については、「全国2位で614.2万円」「全国26位で523.9万円」といった、まったく異なる数字が出回っています。混乱しやすいのですが、理由ははっきりしています。
「523.9万円・全国26位」は平成29年賃金構造基本統計調査、つまり2017年の数字です。全国平均を543万円としている点からも古さがわかります。また求人サイトの集計は、掲載されている求人だけを対象にしているため、公的統計とは母集団が異なります。
判断の軸にすべきは、最新の公的統計である627.8万円・全国16位です。なお全国の薬剤師の平均年収は令和7年調査で566万7,900円まで下がっており、都道府県別の数字も年ごとに動きます。最終的には実際の求人の提示額で確かめてください。
茨城の年収について「全国2位」と書いてある記事も「全国26位」と書いてある記事もありますが、後者は2017年のデータです。数字を見たら、まず何年の調査かを確認する癖をつけてください。
病院薬剤師の不足が全国でも深刻
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りない状態を意味します。北関東・南関東の近隣県と並べると次のとおりです。
出典:厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院の0.67は全国でも下位グループ
茨城県の病院薬剤師の偏在指標0.67は、47都道府県のなかでも下から10番目以内に入る低さです。全国平均0.80との差は大きく、近隣の栃木0.69・埼玉0.76と比べても低い。病院での薬剤師確保が構造的に難しい県だとわかります。
実際、県内で働く薬剤師のうち医療施設に従事しているのは17.9%にとどまります。病院薬剤師を目指す人にとっては、需要が構造的に強いエリアです。経験があれば歓迎されやすい一方、人が足りない状態は1人あたりの負担が重いことの裏返しでもあるため、薬剤部の人数と当直の頻度は必ず確認してください。
薬局も全国平均をわずかに下回る
薬局薬剤師の指標も0.99で、全国の1.08を下回ります。人口10万人あたりの薬局数48.6施設は全国37位、薬剤師数188.3人も全国平均210.6人に届きません。茨城は薬局・病院ともに人材が求められている県です。
背景には、県内に薬学部・薬科大学が1校もないことがあります。北関東3県のうち、群馬と栃木には薬学部がありますが、茨城にはありません。首都圏に近く人材が流出しやすい立地でもあり、若手の供給を県外に頼る構造が続いています。
年収が全国16位なのは、この需給の締まりがそのまま反映された結果だと思います。とくに病院は数字が厳しい。病院志望の方には、かなり追い風のエリアです。
つくば市が水戸市を上回るという珍しい構造
茨城の最大の特徴が、ここです。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数を見ると、県庁所在地ではない市が首位に立っています。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
つくば市の1,413人は、水戸市789人の1.8倍。県庁所在地が県内2位という県は、全国的にもごく少数です。多くの県では県庁所在地に半数近くが集中しますが、茨城は違います。
企業で働く薬剤師が13.1%
この構造は、勤務先別の内訳を見るとさらにはっきりします。
出典:厚生労働省の統計をもとにマイナビ薬剤師が集計したもの。県内の薬剤師総数は6,709人
医薬品関係企業で働く薬剤師が876人、全体の13.1%。たとえば熊本県では5.4%ですから、その差は明らかです。つくばを中心に研究機関や企業が集まっていることが、この数字に表れています。
研究・開発・品質管理・薬事・治験コーディネーターといった職種を県内で探せるのは、地方では貴重です。調剤薬局や病院以外のキャリアを考えるなら、茨城は全国でも有力な選択肢になります。
「企業薬剤師になりたいけれど東京に出るしかない」と思っている人は多いのですが、茨城はその例外です。つくばという選択肢を知っているかどうかで、キャリアの幅がかなり変わります。
茨城県のエリア別の傾向
茨城県は広く、エリアによって求人の性格が大きく変わります。
つくば市から北茨城市までは車で2時間以上かかり、県内をまとめて通勤圏にはできません。住むエリアを先に決めてから求人を探すのが現実的です。一方、県南西からは東京都内も通勤圏に入るため、都内の求人まで含めて比較できるという強みがあります。
なお市町村別の年収は年によって大きく動きます。求人ベースの調査では、前回上位だった県西の古河市・常総市が1割以上、県北の日立市・ひたちなか市が3割程度も下がるといった変動が報告されています。市単位のランキングは参考程度にとどめるのが賢明です。
茨城で働くメリットと注意点
- 平均年収627.8万円は全国16位で、全国平均を28.5万円上回る
- 月間勤務時間166時間と、全国平均より1時間短い
- 病院薬剤師の偏在指標が0.67と低く、病院志望なら需要が構造的に強い
- 医薬品関係企業で働く薬剤師が13.1%。企業系の職種を県内で探せる
- 県南西からは東京都内も通勤圏。都内の求人まで比較できる
- 人口10万人あたり薬局数は48.6施設で全国37位。求人の総数は多くない
- 病院薬剤師の不足は、1人あたりの業務負担が重いことの裏返しでもある
- 県内に薬学部がなく、若手の供給を県外に頼っている
- 市町村別の年収は年によって大きく動き、参考程度にとどめるべき
- 県北・県西では車通勤が前提になる職場が多い
茨城で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 企業という選択肢を最初から入れる
県内で働く薬剤師の13.1%が医薬品関係企業に勤めているというのは、全国的に見ても突出した数字です。つくばを中心に、研究・開発・品質管理・薬事・治験コーディネーターといった職種の求人があります。調剤薬局だけで探すと、茨城の強みを半分捨てることになります。
② 病院志望なら需給を武器にする
病院薬剤師の偏在指標0.67は、全国でも下位グループの数字です。経験や認定資格があるなら、条件面での交渉余地は小さくありません。応募前に、薬剤部の在籍人数、当直の頻度、病棟業務への関与度の3点は具体的に確認しておきましょう。
③ 勤務地の枠を県境で切らない
守谷市や取手市、つくばみらい市などからは、東京都内が現実的な通勤圏に入ります。茨城は薬局数が全国37位と求人の総数が限られるため、勤務地の条件を「茨城県内」ではなく「自宅から何分以内」で設定し直すと、比較できる求人が大きく増えます。
④ 数字は「何年の調査か」を必ず確認する
茨城は年収データがばらつきやすい県です。ネット上には2017年の数字がいまも出回っています。求人票の年収を見るときも、基本給・賞与・住宅補助・通勤補助を足した年間の実額で、3社ほど並べて比較してください。面談で「支給される手当をすべて教えてください」と確認するのが確実です。
茨城は「調剤薬局・病院・企業」の3本立てで考えられる、めずらしい県です。この3つを並べて比較してから決めると、納得感のある選択ができると思います。
よくある質問
まとめ
茨城県の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 平均年収627.8万円は全国16位で、全国平均を28.5万円上回る
- 病院薬剤師の偏在指標0.67は全国で下から10番目以内。病院志望には追い風
- 薬局数48.6施設は全国37位で、求人の総数は多くない
- つくば市1,413人が水戸市789人を上回る、全国でも珍しい構造
- 医薬品関係企業で働く薬剤師が13.1%。企業系のキャリアを県内で狙える
- 県南西からは東京都内も通勤圏。勤務地の枠を県境で切らないのが有効
茨城は「調剤薬局・病院・企業」という3つの進路を県内で現実的に比較できる、めずらしい県です。数字の調査年に注意しながら、自分の優先順位に合う職場を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

