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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「北海道で薬剤師として働きたい」と考える人は多いものです。北海道は「札幌は年収控えめ、地方は高め」と語られますが、公的統計で確かめるとその差は想像よりはるかに大きいことが分かります。札幌と、それ以外の地域では1.6倍の開きがあります。
この記事では、厚生労働省の統計をもとにした北海道の薬剤師事情、札幌と地方の本当の差、年収データの読み方、エリア別の傾向と職場の選び方を、現役薬剤師の目線で整理します。北海道での転職を考えるときの参考にしてください。
- 北海道の薬剤師は人口10万人あたり202.7で、全国平均210.6をやや下回ります
- ただし札幌市252.3に対し、3市以外は156.1。1.6倍の開きがあります
- 3市以外の156.1は、全国最少の沖縄県155.3とほぼ同じ水準です
- 薬局密度46.4も全国で7番目に少ない。医療資源そのものが薄い地域が広がっています
北海道の薬剤師事情を数字で見る
まず、北海道の基本データを公的統計で確認します。厚生労働省の令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計によると、北海道で働く届出薬剤師は11,854人。このうち薬局と医療施設で働くのは10,223人で、人口10万人あたりに直すと202.7です。全国平均210.6をやや下回ります。
出典:薬剤師数・医師数は厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(従業地ベース・令和6年12月31日現在)、薬局数は厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。
注目したいのは薬局密度46.4です。全国平均51.1を下回るだけでなく、全国で7番目に少ない水準にあたります。広大な面積に人口が散らばっているため、薬局そのものが人口比では手薄なのです。医師密度258.6も全国平均を下回ります。
道内の薬学部は3校ですが、北海道大学と北海道科学大学が札幌市内、北海道医療大学が当別町と、いずれも札幌圏に集中しています。この配置が、次の章で見る道内格差を生んでいます。
道全体の202.7という数字だけ見ると「全国平均並み」に思えます。でも北海道でこの平均を信じるのは危険です。面積が九州の2倍近くある地域を1つの数字でまとめているので、実態からかけ離れてしまいます。
札幌と3市以外で1.6倍の差
北海道には政令指定都市が1つ、中核市が2つあります。統計から市ごとの数字を出し、それ以外の地域を差し引きで求めてみました。
出典:厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」の北海道・札幌市・旭川市・函館市(指定都市・中核市の再掲)の公表値と、同統計の付表にある人口をもとに本記事で算出。3市以外は道全体から3市を差し引いて求めています。
3市以外は全国最少県と同じ水準
札幌市・旭川市・函館市を除いた地域の薬剤師密度は156.1。都道府県で最も少ない沖縄県の155.3と、ほぼ同じ水準です。全国平均210.6と比べると4分の3にも届きません。札幌市252.3との差は1.6倍になります。
医師密度も165.5と極端に低く、こちらは都道府県で最も少ない埼玉県189.1をさらに下回ります。北海道の3市以外は、医療の担い手全体が日本でも最も薄い部類の地域だと理解しておく必要があります。
函館は札幌と並ぶ水準、旭川は医師が突出
意外なのが函館市です。薬剤師密度251.5は札幌市252.3とほぼ同じで、全国平均を2割上回ります。「札幌以外は地方だから薬剤師が足りない」という理解は、函館には当てはまりません。
旭川市は薬剤師229.3に対し、医師密度377.0が全国平均267.4の1.4倍。医科大学の附属病院をはじめ大規模病院が集まる医療都市で、道北の拠点として機能しています。医師の多さに比べると薬剤師は相対的に薄く、病院薬剤師を目指すなら選択肢が豊富なエリアです。
まとめると、条件の上乗せが期待できるのは3市以外の地域です。「札幌か地方か」ではなく「3市かそれ以外か」で考えるほうが、実態に合っています。
156.1という数字を計算したとき、正直おどろきました。沖縄と並ぶ水準の地域が、北海道の面積の大半を占めているということです。道東や道北で高年収の求人が出るのは当然で、むしろ「その条件でも人が来ない」というのが現実に近いのだと思います。
年収データをどう読むか
北海道の薬剤師年収について「全国何位」「平均◯◯万円」といった数字を目にすることがあります。参考にはなりますが、北海道の場合はとくに扱いに注意が必要です。
道の平均はほとんど意味を持たない
最大の理由は、これまで見てきた道内格差です。札幌市252.3と3市以外156.1という1.6倍の差を1つの平均に均してしまうと、どちらの実態も表さない数字になります。「北海道の平均年収」を根拠に転職先を決めるのは、あまり意味がありません。
同じ調査でも、年が変われば数字は動く
加えて、都道府県別の薬剤師年収を安定して示す公的統計はありません。よく引用されるのは、民間の求人サービスが厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに集計した数字です。
同じ調査をもとにした薬剤師の全国平均年収は、令和6年調査では約599万円でしたが、令和7年調査では約567万円へと30万円以上下がっています。全国平均がこれだけ動くのですから、都道府県別の順位はさらに大きく入れ替わります。順位を見かけたら、まず何年の調査かを確認してください。
より安定した判断材料は需給です。北海道は、どの市町村で働くかによって需給がまったく違う。この構造は年ごとに揺れません。
北海道ほど「県の平均」が役に立たない地域はありません。札幌で探すのか、根室や稚内で探すのかで、まったく別の話になります。平均年収の順位を調べる時間があったら、勤務地の候補を絞るほうが早いです。
北海道で働くメリットと注意点
北海道で薬剤師として働くメリットと、知っておきたい注意点の両面を整理しました。
- 3市以外は薬剤師156.1と全国最少県並みで、条件交渉の余地が非常に大きい
- 薬局密度46.4も全国で7番目に少なく、需給は道全体で締まっている
- 札幌は都市の利便性と求人の多さがあり、選択肢が広い
- 旭川は医師密度377.0の医療都市で、病院薬剤師の選択肢が豊富
- 家賃などの生活費が首都圏より低く、手取りの実感が上がりやすい
- 札幌市252.3・函館市251.5は全国平均超で、市内での上乗せは期待しにくい
- 3市以外は医師も165.5と極端に薄く、一人あたりの守備範囲が広い
- 求人の絶対数は3市に集中し、それ以外は選択肢が限られる
- 冬季の積雪と寒さがあり、通勤や生活への影響が大きい
- 企業や行政の薬剤師は全国平均の6割程度で、調剤・病院以外の道は狭い
補足すると、北海道の届出薬剤師は人口10万人あたり235.1、うち薬局・医療施設で働く人が202.7。差の32.4が企業や行政などにあたり、全国平均55.2のおよそ6割です(届出上の無職者を含みます)。北海道で働くなら、調剤薬局・ドラッグストア・病院のいずれかが現実的な軸になります。
北海道への移住を考えるなら、冬を一度経験してから決めるくらいでちょうどいいと思います。雪かき、路面凍結、暖房費。年収が上がっても、これらの負担で相殺されることもあります。求人を見るときは、冬用タイヤの補助や暖房手当があるかも聞いてみてください。
エリア別の傾向と職場の選び方
北海道は道央・道南・道東・道北の4地域に分けられます。市別の統計とあわせて整理しました。
- 「札幌か地方か」ではなく「3市かそれ以外か」で考える
- 条件を狙うなら道東・道北の3市以外。函館は札幌と同水準なので注意
- 病院薬剤師を目指すなら旭川市も有力な候補になる
- 管理薬剤師など、役職手当の付くポジションを狙う
- 在宅対応など、加算の取れる業務がある職場を選ぶ
- 提示額だけでなく、住宅手当・車両手当・寒冷地手当まで含めて比べる
3市以外は薬剤師も医師も全国で最も薄い部類です。つまり一人薬剤師や、それに近い体制の店舗が少なくありません。条件のいい求人ほど、1日の処方箋枚数・在籍薬剤師数・有給の取得実績を必ず確認してください。加えて、近隣に代わりの医療機関が少ないため、休みづらさが深刻になりやすい点も要注意です。冬用タイヤや暖房にかかる費用を手当が賄えるかも、あわせて試算しておきましょう。
「数年だけ道東で高年収を稼ぐ」という働き方を選ぶ人もいます。実際、条件面のインパクトは大きいです。ただ薬剤師が2人以下の店舗だと、体調を崩したときに代わりがいません。年収と同じ重さで、休める体制かどうかを確認してください。
よくある質問
まとめ
- 北海道の薬剤師は人口10万対202.7で全国平均210.6をやや下回る
- 札幌市252.3に対し3市以外は156.1。1.6倍の開きがある
- 3市以外の156.1は全国最少の沖縄県155.3とほぼ同水準
- 函館市251.5は札幌とほぼ同じ。「地方だから不足」は当てはまらない
- 薬学部3校がすべて札幌圏にあり、これが格差の一因
- 道の平均は意味を持たない。「3市かそれ以外か」で考える
北海道は、日本で最も地域差の大きいエリアです。道の平均年収や平均的な薬剤師数を見ても、実際に働く場所の実態は分かりません。まず「3市かそれ以外か」を決め、そのうえで条件と暮らしを天秤にかけてください。南に目を向ける方は東北の薬剤師転職ガイド、全国と比べたい方は薬剤師の都道府県別転職ガイドもあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例の概況」(令和6年度末現在)
- 厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査 結果の概況」
※本記事の統計数値は上記の公的統計にもとづき、2026年9月時点で確認したものです。3市以外の人口10万対の値は、北海道と札幌市・旭川市・函館市の公表値および同統計の付表人口をもとに本記事で算出したものです。企業や行政で働く薬剤師の値も同様に算出しており、届出上の無職者を含みます。市別の数値は同統計に掲載のある指定都市・中核市のみで、それ以外の市町村は個別には集計されていません。求人数・年収・働き方の傾向はエリアや職場、時期によって異なります。年収に関する民間調査の数値は調査元・調査年・計算方法によって大きく異なるため、本記事では特定の順位や金額を掲載していません。詳細は各求人や転職支援サービスにご確認ください。

