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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、和歌山県は「薬剤師も薬局も全国平均より多く、需給は全国平均並み。ただし県内薬剤師の54%が和歌山市に集中している」県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標を見ると、和歌山の数値は病院0.80・薬局1.07・地域全体0.98と、全国の0.80・1.08・0.99にほぼ一致します。
「和歌山は薬剤師不足で年収が高い」と語られることがありますが、最新のデータではどちらも当てはまりません。この記事では公的統計をそのまま示しながら、和歌山の転職市場を数字で読み解いていきます。
この記事でわかること
- 和歌山県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 「薬剤師不足の県」というイメージが数字と合わない理由
- 年収ランキングが1年で10位から37位に動いた背景
- 和歌山市への集中と紀南の実態、職場選びのコツ
和歌山県の薬剤師転職データ早見表
まず、和歌山県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・月間勤務時間は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(勤務時間は令和6年分)/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)および届出薬剤師総数/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
和歌山は「地方だから薬剤師が足りない」と思われがちですが、数字はまったく逆です。薬剤師数は全国10位、薬局数も全国16位。偏在指標にいたっては全国平均とほぼ同じ。ここを勘違いしたまま動くと、期待した条件が出てこなくて戸惑うことになります。
和歌山は「薬剤師不足の県」ではない
薬剤師数は全国10位、薬局数は全国16位
和歌山県の人口10万人あたりの薬剤師数は215.6人で、全国平均210.6人を上回る全国10位。人口10万人あたりの薬局数も55.0施設で全国16位、全国平均50.5施設を超えています。隣の奈良県は薬局44.4施設ですから、関西のなかでも和歌山は薬局が多い県です。
しかも薬剤師数は令和4年の203.5人から令和6年は215.6人へと12人以上増えています。数の面では、和歌山は不足県ではなく、むしろ全国上位のグループに入ります。
偏在指標も全国平均とほぼ同じ
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点および将来時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院0.80・薬局1.07・地域全体0.98という数字は、全国の0.80・1.08・0.99とほぼ完全に一致します。和歌山は全国の平均像そのものといえる県です。隣の奈良県のほうが、病院を除けば需給は締まっています。
さらに将来時点の推計では、薬局薬剤師の指標は1.31、地域全体は1.13まで上がる見通しが示されています。長期的には供給の余裕が広がる方向で、「これから不足が深刻化する県」でもありません。
全国平均とここまで数字が一致する県も珍しいです。裏を返せば、和歌山では「地方だから高待遇で迎えられる」という期待は持たないほうがいい。そのぶん、エリアの選び方で差をつける発想が必要になります。
年収は1年で全国10位から37位へ
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計で、和歌山県の薬剤師の平均年収は次のように動いています。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
1年で105.5万円下がり、順位は10位から37位へ。同じ期間に平均年齢も48.3歳から43.8歳へ4.5歳動いています。和歌山県の届出薬剤師は2,178人と規模が小さく、賃金構造基本統計調査は抽出調査のため、母集団が小さい県ほど、たまたま調査対象になった職場の年齢構成で平均値が大きく動きます。
「和歌山市では年収600万円台の求人も多い」という説明を見かけますが、単年のランキングを根拠に「和歌山は高い」と判断するのは危険です。実際に募集されている求人の提示額と、手当を含めた年間の実額で確かめてください。なお月間勤務時間は171時間で、全国の167時間より4時間長いという結果も出ています。
都道府県別の年収ランキングは、人口の少ない県ほど当てになりません。和歌山も同じです。「10位だから高い」でも「37位だから安い」でもなく、目の前の求人で判断してください。
県内薬剤師の54%が和歌山市に集中
和歌山を読むうえで本当に重要なのは、県全体の平均ではなく県内の偏りです。厚生労働省の令和6年統計では、県内で薬局・医療施設に従事する薬剤師1,890人のうち、和歌山市が1,027人。県内のおよそ54%が県庁所在地に集まっています。
出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(全国平均は210.6人)
和歌山市以外は人口10万人あたり約164人
和歌山市だけを取り出すと人口10万人あたり291.6人で、全国平均210.6人を大きく上回ります。一方、県全体の数字から和歌山市分を差し引いて計算すると、和歌山市以外のエリアは人口10万人あたり約164人。全国平均のおよそ8割にとどまります。これは当サイトが公的統計から算出した目安です。
令和4年の統計でも、市町村別の薬剤師数は和歌山市1,229人、田辺市139人、橋本市136人の順。2位の田辺市は和歌山市の9分の1以下です。「和歌山は薬剤師が足りない」という感覚が語られるのは、この市外の薄さを指していると考えるのが妥当でしょう。
県全体の平均が全国並みでも、中身は和歌山市とそれ以外で真っ二つです。条件面で交渉余地があるのは市外のほう。ただし求人の母数は一気に減るので、そこは織り込んで動いてください。
薬学部の1期生はまだ現場に出ていない
和歌山県内で薬学部を持つ大学は、和歌山県立医科大学の1校のみです。2021年4月に和歌山市で開設された、県内初の薬学部です。
ここで押さえておきたいのが時間軸です。薬学部は6年制のため、2021年入学の第1期生が卒業して現場に出るのは2027年春以降の見込み。つまり2026年時点では、まだ県内の薬剤師供給に影響を与えていません。
逆に言えば、これから毎年、地元で学んだ薬剤師が和歌山市を中心に供給されるようになります。もともと薬剤師数が全国10位で、将来時点の偏在指標も薬局1.31まで上がる推計であることを踏まえると、和歌山市内の採用環境は今後さらに競争的になる可能性があります。市内での転職を考えているなら、この点は意識しておいて損はありません。
和歌山県のエリア別の特徴
和歌山県は南北に細長く、紀北と紀南ではまったく事情が異なります。
和歌山市から新宮市までは車でも3時間以上かかり、県内をまとめて通勤圏にはできません。住むエリアを先に決めてから求人を探すのが、和歌山では特に重要です。一方、和歌山市や橋本市からは大阪府南部も現実的な選択肢に入ります。
和歌山で働くメリットと注意点
- 人口10万人あたり薬局数は55.0施設で全国16位。通える範囲に職場が多い
- 薬剤師数も215.6人で全国10位と、医療の受け皿は整っている
- 和歌山市や橋本市からは大阪府南部の求人も通勤圏に入る
- 高齢化を背景に在宅医療に取り組む薬局が多く、経験を積みやすい
- 和歌山市以外は人材の希少性が高く、条件面の交渉余地がある
- 偏在指標は全国平均とほぼ同じで、「不足県だから高待遇」は成り立たない
- 年収ランキングは1年で10位から37位まで動き、判断材料にしにくい
- 県内薬剤師の約54%が和歌山市に集中し、市内は競争がある
- 薬局の偏在指標は将来1.31まで上がる推計で、長期では需給が緩む
- 紀南は求人が限られ、車通勤が前提になる職場が多い
和歌山で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 住むエリアを先に決める
和歌山市から新宮市までは車で3時間以上。県内をひとまとめに探すことはできません。和歌山市で選択肢の広さを取るのか、紀南で条件面の交渉余地を取るのか。まずエリアを1つか2つに絞ると、比較の軸がぶれません。
② 統計ではなく求人の実額で比べる
和歌山では都道府県別ランキングが当てになりません。基本給・賞与・住宅補助・通勤補助を足した年間の実額で、3社ほど並べて比較してください。求人票に書かれていない手当がある場合もあるので、面談で「支給される手当をすべて教えてください」と確認するのが確実です。
③ 業務量を数字で確認する
薬剤師が少ないエリアでは、年収が高い代わりに忙しい職場もあります。応募前に、在籍薬剤師数、1日の平均処方箋枚数、直近数か月の平均残業時間、在宅訪問の件数の4点は具体的に確認しましょう。和歌山は月間勤務時間が全国より4時間長いという結果も出ています。
④ 関西に強いエージェントを複数使う
和歌山の求人は数が限られ、好条件のものが非公開で動くこともあります。関西エリアに拠点を持つエージェントを2社から3社登録しておくと、和歌山と大阪府南部の求人を横断して比較でき、職場の内情まで確認しやすくなります。紀南を検討する場合も、地域の事情に詳しい担当者がいると判断しやすくなります。
和歌山は「不足県だから条件がいい」ではなく「エリアの選び方で条件が変わる」県です。全国平均並みという前提に立ったうえで、どこで働くかを戦略的に決めるのが正解だと思います。
よくある質問
まとめ
和歌山県の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 薬剤師数215.6人は全国10位、薬局数55.0施設は全国16位で、いずれも全国平均超
- 偏在指標は病院0.80・薬局1.07・地域全体0.98と、全国平均とほぼ一致
- 年収ランキングは1年で10位から37位まで動いており、判断材料にしない
- 県内薬剤師の約54%が和歌山市に集中し、市外は人口10万人あたり約164人
- 県立医科大学の薬学部は2021年開設で、第1期生の卒業は2027年春以降の見込み
- 住むエリアを先に決め、紀北なら大阪府南部の求人まで含めて比較する
和歌山は、県全体の数字だけを見ると全国の平均像そのものです。だからこそ、和歌山市とそれ以外という県内の差をどう使うかが、条件を左右します。数字の構造を理解したうえで、自分に合う職場を戦略的に選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

