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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、奈良県は「人口あたりの薬局数が全国44位と極端に少なく、不足しているのは薬局。病院薬剤師はむしろ全国平均より充足している」県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、奈良の薬局薬剤師は0.96と全国の1.08を下回る一方、病院薬剤師は0.86で全国の0.80を上回っています。
もうひとつ押さえたいのが働く時間です。奈良県の薬剤師の月間勤務時間は163時間で、全国平均より4時間短いという結果が出ています。この記事では公的統計をもとに、奈良の転職市場を数字で整理します。
この記事でわかること
- 奈良県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 不足しているのは薬局で、病院は充足しているという構図
- 「残業が少なめ」を裏づける月間勤務時間163時間という数字
- エリア別の傾向と、大阪を含めた探し方のコツ
奈良県の薬剤師転職データ早見表
まず、奈良県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・平均年齢・月間勤務時間は厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
奈良でいちばん目を引くのは薬局数の少なさです。人口10万人あたり44.4施設は全国44位。隣の和歌山県が55.0施設ですから、その差は歴然です。この構図が、奈良の求人事情のほとんどを説明してくれます。
不足しているのは薬局、病院はむしろ充足
薬局数は全国44位という少なさ
奈良県の人口10万人あたりの薬局数は44.4施設で、全国44位。全国平均50.5施設を大きく下回ります。隣接する大阪府52.6施設、和歌山県55.0施設と比べても明確に少ない数字です。人口10万人あたりの薬剤師数も199.7人で、全国平均210.6人に届きません。
県内に薬学部・薬科大学が1校もないことに加え、薬剤師が豊富な大阪府が隣にあるため、県内で働く薬剤師が集まりにくい構造になっていると考えられます。院外処方の受け皿となる薬局そのものが少ないという点は、求人の総数が限られる直接の理由です。
偏在指標では病院と薬局で結果が分かれる
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。近隣と並べると次のとおりです。
出典:厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
注目したいのは、奈良の病院薬剤師の指標が0.86と全国平均0.80を上回っていることです。全国的に病院薬剤師は不足傾向ですが、奈良は相対的に恵まれている側に入ります。県立医科大学附属病院をはじめとする医療機関が集まっていることが背景と考えられます。
対照的に薬局薬剤師は0.96で、全国の1.08を下回ります。奈良で「薬剤師が不足している」と言われるのは、主に薬局の話だということです。薬局志望なら迎えられやすく、病院志望なら人気の職場は競争があると考えて準備するのが現実的です。
「奈良は薬剤師不足」とひとくくりにされますが、病院と薬局では事情が逆です。薬局を目指すなら追い風、病院を目指すなら準備して臨む。まず自分がどちら側なのかを決めてから動いてください。
年収は全国平均並み、勤務時間は全国より短い
594.6万円で全国29位
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにした集計では、奈良県の薬剤師の平均年収は594.6万円で全国29位。全国平均599.3万円を4.7万円下回ります。ほぼ全国平均並みというのが正確な位置づけで、「薬剤師不足だから年収が高い」という説明は当てはまりません。
なお全国の薬剤師の平均年収は、令和7年調査では566.8万円まで下がっています。都道府県別の数字は調査年によって動くため、単年の順位を根拠に判断せず、実際の求人の提示額で確かめるのが確実です。
平均年齢47.7歳という高さ
同じ調査での奈良県の薬剤師の平均年齢は47.7歳。全国の40.9歳より6.8歳も高い水準です。薬剤師の給与は勤続年数で上がっていくため、年齢構成が高い県は平均年収も高く出やすくなります。
つまり年齢が高めの構成でようやく全国平均並みということです。同じ年齢帯で比べれば、奈良の水準は全国平均をやや下回ると読むほうが実態に近いでしょう。若手の段階で年収を最大化したいなら、大阪府の求人も並べて比較する価値があります。
月間勤務時間は全国より4時間短い
一方で、働く時間には明確な強みがあります。同じ調査での奈良県の薬剤師の月間勤務時間は163時間で、全国の167時間より4時間短いという結果でした。所定内実労働時間と超過実労働時間を合わせた数字なので、残業まで含めた実労働時間の比較です。
よく言われる「奈良は残業が少なめ」という評判には、公的統計の裏づけがあるということです。年収を取りにいくより、時間と暮らしやすさを取りにいく県という見立てが、数字とも整合します。
平均年齢47.7歳というのは全国でもかなり高い部類です。ベテランが多い県で、若手が入ってきにくい環境とも読めます。逆に言えば、これから入る若手には長く働ける余地があるということでもあります。
求人は奈良市・橿原市・生駒市に集まる
奈良県内で薬剤師がどこに集まっているかを、厚生労働省の統計をもとにした従業地別のデータで確認します。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
奈良市が突出していますが、京都府(約71%が京都市)や和歌山県(約54%が和歌山市)ほどの一極集中ではなく、橿原市・生駒市にも一定の厚みがあります。北西部と中部の2つの拠点があると考えると、求人を探す範囲を組み立てやすくなります。
生駒市は近鉄線で大阪難波まで20分台。ここに住めば奈良と大阪の両方が通勤圏に入ります。奈良県内だけで探すと求人の母数が限られるので、この立地は積極的に使ったほうがいいと思います。
奈良県のエリア別の特徴
奈良県は南北に細長く、北部と南部でまったく事情が異なります。
奈良市から吉野郡南部までは車で2時間以上かかることもあり、県内をまとめて通勤圏にはできません。住むエリアを先に決めてから求人を探すのが現実的です。一方、北西部に住めば大阪府の求人まで候補に入るという強みがあります。
奈良で働くメリットと注意点
- 月間勤務時間163時間と、全国平均より4時間短い
- 薬局薬剤師の偏在指標は0.96で全国1.08を下回り、薬局志望なら迎えられやすい
- 病院薬剤師の指標は0.86で全国平均0.80を上回り、体制の整った病院がある
- 北西部からは大阪府の求人も通勤圏に入る
- 高齢化を背景に在宅医療に取り組む薬局があり、経験を積みやすい
- 人口10万人あたり薬局数は44.4施設で全国44位。求人の総数が限られる
- 平均年収594.6万円は全国29位で、全国平均をやや下回る
- 平均年齢47.7歳と高く、同年代比では水準がさらに下がる可能性がある
- 県内に薬学部がなく、若手の供給を県外に頼っている
- 南部の山間部は求人が限られ、車通勤が前提になる職場が多い
奈良で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 大阪府の求人と同時に比較する
奈良は薬局数が全国44位と少なく、県内だけで探すと求人の母数が足りません。生駒市からは近鉄線で大阪難波まで20分台、奈良市や大和郡山市からも大阪は現実的な通勤圏です。勤務地の条件を「奈良県内」ではなく「自宅から45分以内」で設定し直すと、比較できる求人が一気に増えます。
② 病院志望か薬局志望かで戦略を変える
偏在指標が示すとおり、奈良は病院と薬局で需給が逆です。薬局志望なら全国平均より締まっているので、条件面の交渉余地を探る動き方が向いています。病院志望なら全国平均より充足しているため、認定資格や病棟経験といった強みを整えて臨むほうが有利です。
③ 時間の価値を年収に換算して考える
奈良は月間勤務時間が全国より4時間短い県です。大阪の求人と比べるとき、年収の差だけでなく通勤時間と労働時間の差もあわせて考えてください。年収が同じでも、月に数時間の差は暮らしの余裕に直結します。奈良は「時間で取り返す」発想が合う県です。
④ 関西に強いエージェントを複数使う
奈良の求人は数が限られ、好条件のものが非公開で動くこともあります。関西エリアに拠点を持つエージェントを2社から3社登録しておくと、奈良と大阪の求人を横断して比較でき、職場の内情まで確認しやすくなります。母数が少ない県ほど、情報量が結果を分けます。
奈良は「県内だけで探すと窮屈、範囲を広げると強い」県です。大阪も通勤圏に入るという立地を使わない手はありません。勤務地の枠を最初にゆるめておくと、見える求人がまったく変わりますよ。
よくある質問
まとめ
奈良県の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 人口10万人あたり薬局数は44.4施設で全国44位。求人の総数が限られる
- 偏在指標は薬局0.96(全国1.08)、病院0.86(全国0.80)で需給が逆
- 平均年収594.6万円・全国29位はほぼ全国平均並み
- 平均年齢47.7歳と高く、同年代比では水準がさらに下がる可能性がある
- 月間勤務時間163時間は全国より4時間短く、働きやすさに裏づけがある
- 北西部からは大阪府も通勤圏。勤務地の枠を広げて比較するのが有効
奈良は、年収を最大化する県というより「時間と暮らしやすさを取りにいく県」です。薬局と病院で需給が逆であること、大阪も通勤圏に入ることを踏まえて、自分の優先順位に合う職場を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

