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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「岐阜で薬剤師として転職したい」「薬学部が2校あるから若手が多いと聞くけれど、実際どうなんだろう」。岐阜県は南北に長く、南部は名古屋の経済圏、北部の飛騨は山間部という、地域差のとても大きい県です。そして薬剤師の分布も、県内で驚くほど偏っています。
この記事では、厚生労働省の最新統計で見た岐阜の薬剤師事情、岐阜市と市外の1.6倍の格差、国の偏在指標が示す不足の中身、名古屋との比較、5つの医療圏の傾向、年収データの読み方を、現役薬剤師の目線で整理します。数値はすべて公的資料にもとづき、出典に直接リンクしています。
- 岐阜県の人口10万対薬剤師数は190.0で全国34位。全国平均210.6を下回る一方、薬局数は平均を大きく上回る
- 岐阜市275.6に対し市外は167.8で約1.6倍の差。薬学部2校の供給は県全体に行き渡っていない
- 国の偏在指標は病院0.69で全国計0.80を大きく下回る。足りていないのは病院薬剤師
- 隣の愛知は186.3で岐阜より低い。「名古屋は薬剤師が多いから年収が低い」は密度では説明できない
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厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、岐阜県の届出薬剤師数は4,218人。そのうち薬局・医療施設で働いているのは3,640人です。人口10万人あたりでは、届出総数が220.1人、薬局・医療施設の従事者が190.0人となっています。
全国平均は届出総数265.8人、薬局・医療施設の従事者210.6人。岐阜の190.0は全国34位で、平均を20人分以上下回ります。一方、薬局は1,081施設あり、人口10万対では56.4施設。こちらは全国平均51.1を大きく上回り、上から13番目の水準です。
※薬剤師数は厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」統計表10(従業地ベース)。薬局数は「令和6(2024)年度衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。順位は公表値を当サイトが並べ替えて確認したものです。
つまり岐阜は、薬局という働く場所は全国平均より多いのに、そこに立つ薬剤師が足りていない県です。求人が出続ける構造で、転職する側には追い風になります。ただし、この平均値をそのまま信じると次の章で足をすくわれます。
「薬学部が2校あるから薬剤師は足りている」という説明をよく見かけますが、県の数字は全国平均を20人以上下回っています。学校があることと、県内に薬剤師が行き渡っていることは別問題です。次の章で、その中身をはっきりさせます。
岐阜市と市外で1.6倍|県内格差は全国屈指
同じ統計には、中核市である岐阜市の数値も再掲されています。岐阜市の薬剤師は届出総数1,380人、薬局・医療施設の従事者1,086人。人口10万人あたりでは350.3人と275.6人です。県全体から引けば、岐阜市以外の姿が計算できます。
※岐阜市以外の値は、県の数値から岐阜市の再掲値を差し引いて当サイトが算出したもので、公表値ではありません。人口は同統計の付表(県1,916千人・岐阜市394千人)を使用しています。県の人口は総務省の人口推計、市の人口は市の推計値で出所が異なる点、また従業地ベースのため岐阜市へ通勤する薬剤師は岐阜市に計上される点にご注意ください。
結果は岐阜市275.6に対して岐阜市以外167.8。約1.6倍の開きがあります。岐阜市の275.6は、都道府県で全国1位の徳島県(256.6)すら上回る水準です。逆に岐阜市以外の167.8は、都道府県に置き換えると46位の福井県(170.4)よりも低く、最下位の沖縄県(155.3)に次ぐ少なさになります。
人口で見ると、岐阜市は県人口の20.6%にすぎません。ところが現場で働く薬剤師の29.8%が岐阜市に集まっています。県人口の5分の1の市に、薬剤師の3割が集中しているという構図です。
届出総数と現場従事者の差にも特徴が出ます。この差にあたるのが企業・行政・大学などで働く薬剤師で、人口10万対に直すと岐阜市が74.7、全国が55.2、岐阜市以外はわずか18.7。岐阜市には岐阜薬科大学があり、大学に勤務する薬剤師が計上されることも押し上げ要因です。裏を返せば、調剤以外の道を県内で探すなら選択肢はほぼ岐阜市に限られます。
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「薬学部2校」の供給はどこへ届いているか
岐阜県内の薬学部は2校あります。ひとつは岐阜市が設置する公立大学法人が運営する岐阜薬科大学(岐阜市)。市立の薬科大学は全国でも珍しい存在です。もうひとつは岐阜医療科学大学で、薬学部は2020年4月に可児市の可児キャンパスへ開設されました。どちらも県の南部にあり、飛騨や東濃からは距離があります。
では、その供給は県全体に効いているのか。厚生労働省は、人口10万対の薬剤師数では拾いきれない医療需要や業態の違いを補正した薬剤師偏在指標を都道府県別に公表しています。1.0が目標水準で、下回るほど不足していることを示します。
※出典は厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2「都道府県別薬剤師偏在指標」(令和5年3月)。この指標は薬剤師の絶対的な充足状況ではなく、相対的な偏在の状況を示すものです。
病院が0.69。全国計0.80と比べても、かなり低い水準です。薬局は0.91で全国計1.08を下回ります。薬学部が2校ある県でありながら、病院も薬局も全国計に届いていないのが実態です。2036年の推計でも全体0.99で、目標の1.0にわずかに届きません。
転職者にとっての意味ははっきりしています。岐阜で病院薬剤師を目指すなら、需給の面ではかなり有利だということです。募集の数は薬局より少なくても、来てほしいと思われている度合いが違います。
薬学部の卒業生がそのまま地元に残るとは限りません。岐阜の場合、名古屋という大きな就職先が電車で30分の距離にあります。学校があることが、そのまま県内への定着につながらない典型例だと思います。
5つの医療圏で見る岐阜県
岐阜県は医療提供体制の単位である二次医療圏を5つ設定しています。「第8期岐阜県保健医療計画」(令和6年度から令和11年度)にもとづく区分で、求人を市町村単位で追うよりこの5圏域で捉えると通勤範囲を考えやすくなります。
※圏域の区分は岐阜県「第8期岐阜県保健医療計画」による。東濃・飛騨の推進区域設定は令和6年7月の国の通知にもとづくものです。各圏域の傾向は、上記の薬剤師数・薬局数の統計と圏域の人口・医療資源の状況から整理した一般的な見立てで、個別の求人条件を示すものではありません。
求人数で選ぶなら岐阜圏域、生活と両立させるなら西濃や東濃、条件の上乗せを狙うなら飛騨や中濃の北部、というのが大まかな目安です。ただし飛騨は高山市から名古屋方面まで車で数時間かかる距離感で、休日の過ごし方まで変わります。額面の差だけでなく、生活そのものが変わることを前提に判断してください。
飛騨の求人は条件だけ見ると魅力的ですが、いきなり移住を決める前に住居付きの派遣などで数か月試す方法もあります。冬の雪と通勤、買い物の距離感は、実際に暮らしてみないと分かりません。
名古屋と比べる|通説を統計で確かめる
岐阜県南部は名古屋への通勤圏です。岐阜市から名古屋駅までは快速で20分ほどで、大垣や多治見からも通えます。そこでよく言われるのが「名古屋は薬剤師が多いから年収が低い。岐阜のほうが条件がいい」という説明です。これを統計で確かめてみます。
※いずれも薬局・医療施設の従事者。出典は前掲の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計。名古屋市と岐阜市は指定都市・中核市の再掲値です。
結果は意外です。愛知県は186.3で、岐阜県の190.0より低いのです。都市部の名古屋市も226.6で、岐阜市の275.6を大きく下回ります。「名古屋は薬剤師があふれている」というイメージは、少なくとも密度では成立しません。愛知は全国34位の岐阜よりさらに下の順位に位置します。
では、なぜ都市部の給与が伸びにくいと言われるのか。密度ではなく応募者の集まりやすさと、大手チェーンの給与テーブルの影響と考えるほうが実態に近いはずです。名古屋には全国展開のチェーンが多く、給与が全国一律の基準で決まりやすい。一方、岐阜の地場企業は人材確保のために個別に条件を上乗せできます。この違いのほうが効いています。
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岐阜の年収を調べると「611.6万円で全国21位」といった数字が出てきます。この手の順位を根拠に転職を決めるのはおすすめしません。都道府県別の薬剤師年収は、順位を語れるだけの精度を持っていないためです。
① 全国平均そのものが年ごとに大きく動く
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、薬剤師の毎月の給与が39万8,700円、年間賞与その他特別給与額が83万3,500円で、単純に合計すると年収は約566万8千円です。前年の調査では約599万3千円でしたので、1年で30万円以上下がっています。全国平均でこれだけ振れるのですから、標本数の少ない県別の値はさらに不安定になります。
② 順位は民間各社が独自に集計したもの
よく見かける都道府県ランキングは、公的機関が公表している順位ではありません。各社が同じ調査の元データを取り出して並べたものです。県ごとの回答数が少ないため順位は毎年入れ替わり、直近の集計でも1位と最下位で200万円以上の差が付くなど、実感と合わない結果になることがあります。岐阜が上位に出る年もあれば、平均を下回る年もあるというのが実態です。
③ 岐阜では「市内か市外か」で考える
県内で1.6倍の密度差がある以上、県平均の年収を見ても意味がありません。岐阜市内は応募者が集まりやすく条件が動きにくい一方、飛騨や郡上などでは人材確保のための上乗せが期待できます。見るべきは全国順位ではなく、いま自分がもらっている額と、目の前の求人の総額との差です。賞与実績・住宅手当・車の貸与まで含めて比べてください。
「岐阜は全国21位」といった順位は、集計方法しだいで簡単に変わります。しかも岐阜のように県内格差が大きい県では、県平均そのものが誰の実感とも合いません。順位を追うより、通える範囲の求人を3つ並べて総額を書き出すほうが、はるかに確実です。
岐阜で働くメリットと注意点
- 薬局数は人口あたり全国13番目に多く、通える範囲に職場が見つかりやすい
- 病院の偏在指標が0.69と低く、病院薬剤師を目指すなら需給の面で有利
- 南部は名古屋への通勤圏で、県をまたいで求人を比べられる
- 薬学部が2校あり、実務実習や研修の受け入れに慣れた職場が見つかりやすい
- 市外・北部は人材確保が難しく、条件を上乗せする求人が出やすい
- 県内格差が約1.6倍と大きく、「岐阜県の相場」という平均値が実態と合わない
- 岐阜市内は密度が全国トップ級で、好条件の求人に応募が集中しやすい
- 企業・行政の職場はほぼ岐阜市に限られ、市外では調剤以外の道が選びにくい
- 飛騨や中濃北部は車移動が前提で、冬の積雪への備えも必要
- 不足が強い地域では少人数体制もあり、業務量の確認が欠かせない
岐阜で転職を成功させるポイント
① 「岐阜市内か市外か」を先に決める
県内で1.6倍の密度差がある以上、市内と市外では求人の出方も条件の付き方もまったく違います。先に軸を決めてから探すと、比較すべき求人が絞れて判断が速くなります。市内なら選択肢の多さと通勤の楽さ、市外なら競合の少なさと上乗せされる条件が武器になります。
② 名古屋の求人とも並べて比べる
南部に住むなら名古屋も選択肢に入ります。愛知の密度が岐阜より低いことを踏まえると、名古屋側の条件も一概に不利とは限りません。通勤時間、交通費の支給、車が要るかどうかまで含めて、両方の求人を並べてみてください。
③ 年収と業務量のバランスを確認する
薬剤師が足りない地域ほど高めの条件が出ますが、その裏に少人数体制が隠れていることがあります。処方箋枚数、在籍する薬剤師の人数、残業や閉局後の作業量を具体的に聞いておくと、入職後のギャップを防げます。
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病院の偏在指標が0.69と低い岐阜では、薬局だけに絞らず病院も候補に入れると選択肢が広がります。ドラッグストアの調剤併設店も県内に展開があり、働き方や年収の考え方が薬局とは違います。業態ごとの違いを整理してから探すと、比較の軸がぶれません。
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調剤薬局からドラッグストアへ転職すべき?年収・働き方の違いを現役薬剤師が解説⑤ 地元に戻るなら時期と条件を早めに伝える
Uターンの場合、引っ越し費用や入職時期の調整が条件面に影響します。実家からの距離、車の有無、家族の予定といった前提を最初に共有しておくと、条件の合わない求人を紹介されずに済みます。
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薬剤師のUターン転職|地元に戻る強みと注意点・求人の探し方を現役が解説岐阜は「県内で探す」「名古屋まで広げる」の2択があるのが強みです。私が転職したときも、通える範囲を少し広げただけで候補が倍になりました。気になる求人が3つ以上になったら、手当まで含めた総額を紙に並べて書き出してみてください。見た目の月給と順位が入れ替わることがよくあります。
近隣県と比べて決める
岐阜は愛知・三重・長野・福井・富山・石川と接しており、県境をまたいで探す人も少なくありません。とくに東濃から名古屋、飛騨から富山方面は移動しやすく、隣県の事情を知っておくと判断の精度が上がります。
▶ 近隣県の転職ガイド
中部以外も含めて、住みたい地域から探したい場合は都道府県別のまとめページが便利です。全国47都道府県の年収相場と求人事情を一覧にしています。
よくある質問
まとめ
岐阜の薬剤師転職は、「県の平均」を捨てて「岐阜市内か市外か」で考えるのが出発点です。要点を整理します。
- 人口10万対薬剤師数は190.0で全国34位。薬局数は全国13番目に多く、職場そのものはある
- 岐阜市275.6に対し市外167.8。全国1位の徳島県を超える市と、最下位級の地域が同居している
- 国の偏在指標は病院0.69・薬局0.91。薬学部2校の供給は県全体に届いていない
- 愛知186.3は岐阜190.0より低い。「名古屋は薬剤師が多い」は密度では成立しない
- 年収の全国順位は年ごとに動くため、賞与・手当込みの総額で個別に比べるのが確実
岐阜市内の選択肢の多さを取るか、市外の上乗せ条件を取るか、名古屋まで広げるか。この3択が決まれば、比べるべき求人はぐっと絞れます。他の地域とも見比べたい人は、薬剤師の都道府県別転職ガイド|地域ごとの年収相場まとめから気になる地域を確認してみてください。
参考にした一次情報
・厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(薬剤師数・人口10万対・都道府県別・指定都市および中核市再掲)
・厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」(薬局数・人口10万対)
・厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2(都道府県別薬剤師偏在指標)
・厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(薬剤師の賃金)
・岐阜県「第8期岐阜県保健医療計画」(二次医療圏の区分)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計値は公表時点のもので、その後の調査で変動します。岐阜市以外の数値は公表値ではなく当サイトが県値と市の再掲値から算出したもので、従業地ベースであることによる誤差を含みます。薬剤師偏在指標は相対的な偏在を示す指標であり、絶対的な充足状況を示すものではありません。求人の条件は個別に異なるため、最新の情報は各求人・転職サービスでご確認ください。

