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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、山口県は「薬剤師数は全国7位、薬局数は全国4位。それでも業務量あたりで見た偏在指標は全国平均を下回る」という、頭数と実感がずれやすい県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、山口の数値は病院0.77・薬局1.04・地域全体0.95と、いずれも全国の0.80・1.08・0.99を下回ります。
「薬剤師が多いから競争が激しい」と言われることがありますが、数字はもう少し複雑です。この記事では公的統計をもとに、山口の転職市場の実像を整理します。
この記事でわかること
- 山口県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 薬剤師数が全国7位でも偏在指標が全国平均を下回る理由
- 年収ランキングが1年で3位から29位に動いた背景
- 3市が横並びという特殊なエリア構造と、待遇を上げるコツ
山口県の薬剤師転職データ早見表
まず、山口県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・月間勤務時間は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(勤務時間は令和6年分)/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)および届出薬剤師総数/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
山口はデータの読み方がいちばん難しい県かもしれません。頭数だけ見れば薬剤師も薬局も全国上位。でも業務量で割った偏在指標は全国平均以下。「多いのに足りない」という状態をどう理解するかが鍵になります。
薬剤師は多いのに、偏在指標は全国平均以下
薬剤師数は全国7位、薬局数は全国4位
山口県の人口10万人あたりの薬剤師数は224.7人で全国7位。全国平均210.6人を14人上回ります。人口10万人あたりの薬局数も59.8施設で全国4位と、全国平均50.5施設を大きく超えています。中国地方でも広島県の58.0施設を上回り、島根県52.3施設より明確に多い。数の面では、山口は全国でも上位のグループです。
それでも偏在指標は全国平均を下回る
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。単純な頭数ではなく、人口構成などから推計した業務量に対して薬剤師が足りているかを示す指標です。1.0より小さいほど足りていない状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点および将来時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院0.77・薬局1.04・地域全体0.95。3つとも全国平均を下回っています。薬剤師数は全国7位、薬局数は全国4位なのにこの結果になるのは、山口が高齢化の進んだ県で、人口あたりの業務量が大きく見積もられるためと考えられます。頭数は多くても、こなす仕事も多い。だから現場では「足りない」という感覚になりやすいわけです。
隣の広島県は病院0.81・薬局1.19・地域全体1.07といずれも全国平均を上回っており、同じ中国地方でも山口とは対照的です。山口は「薬剤師が余っている県」ではありません。
ただし将来時点の推計では、薬局薬剤師の指標は1.28、地域全体は1.10まで上がる見通しです。長期的には需給が緩む方向なので、在宅対応や専門性など、処方箋の枚数以外で価値を出せるスキルを持っておくと安心です。
「薬剤師が多い県だから就職しにくい」と思い込む必要はありません。業務量で見れば、山口はむしろ人手が求められている側です。ただし店舗数も多いので、どの職場を選ぶかで働きやすさは大きく変わります。
年収は1年で全国3位から29位へ
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計で、山口県の薬剤師の平均年収は次のように動いています。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
令和6年の3位は平均年齢48.9歳の影響が大きい
令和6年調査の687.9万円・全国3位という数字は目を引きますが、同じ調査での山口県の薬剤師の平均年齢は48.9歳。全国の40.9歳より8歳も高い水準でした。薬剤師の給与は勤続年数で上がっていくため、ベテラン中心の構成だと平均年収は大きく押し上げられます。
最新の令和7年調査では567.8万円・全国29位で、全国平均566.8万円とほぼ同じ水準に落ち着きました。1年で120万円下がったのは、山口の給与が下がったからではなく、調査対象の入れ替わりによるものと考えるのが自然です。届出薬剤師3,467人という規模では、抽出調査の結果が振れやすくなります。
月間勤務時間は全国とまったく同じ
令和6年調査での山口県の薬剤師の月間勤務時間は167時間で、全国平均とぴったり同じでした。ここまで一致する県は多くありません。働く時間の面では、山口は全国の標準的な水準にあるといえます。
結論として、山口の年収は「全国平均前後」と受け止め、単年の順位で判断しないのが正解です。実際に募集されている求人の提示額と、手当を含めた年間の実額で確かめてください。
「山口は全国3位」と書いてある記事を見かけたら、それは令和6年のデータです。最新では29位。都道府県別の年収ランキングは母集団が小さい県ほど当てにならないので、目の前の求人票で判断してください。
2018年開設の薬学部が若手を供給し始めている
山口県内で薬学部を持つ大学は、山陽小野田市立山口東京理科大学の1校です。2018年4月に設置された、山口県内で初めての薬学部。西日本の公立大学としても初の薬学部でした。入学定員は120人で、2025年度の薬学部在籍者は721人となっています。
6年制のため、第1期生が卒業したのは2024年3月。すでに毎年120人規模の新卒薬剤師が県内から生まれる状態になっています。隣の島根県や鳥取県に薬学部がないのとは対照的で、地元で学んで地元で働くという流れをつくれるのが山口の強みです。
県としても、山口県医療人材確保ポータルサイトを開設して人材バンクの取り組みを強化し、学生向けの修学資金の情報発信にも取り組んでいます。若手の供給と定着の両方に手を打っている県といえます。
3つの市がほぼ横並びという珍しい構造
山口のもうひとつの特徴が、突出した中心都市がないことです。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数を見ると、上位3市がほぼ同じ規模で並んでいます。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
1位の下関市と3位の宇部市の差は104人。多くの県では県庁所在地に半数近くが集まりますが、山口は下関・山口・宇部の3市に分散しています。「ここに行かないと求人がない」という都市が存在しないということです。そのぶん、住みたい場所を基準に職場を探しやすい県といえます。
県東部(岩国市・周南市・下松市・光市)
岩国市や周南市など県東部は、広島県との結びつきが強いエリアです。瀬戸内の工業地帯を背景に人口も比較的多く、調剤薬局を中心に求人が出ます。岩国市からは広島市への通勤も選択肢に入るため、生活圏を広く考えたい人に向いています。
県中部(山口市・防府市)
県庁所在地の山口市と隣接する防府市を中心とするエリアです。行政機能や医療機関が集まり、県内で最も落ち着いた環境で働けるエリアといえます。新幹線の新山口駅があり、県内各地へのアクセスもよい立地です。
県西部(下関市・宇部市・山陽小野田市)
下関市は関門海峡を挟んで北九州市と隣接し、九州への通勤・転職も現実的な選択肢になります。宇部市には大学病院があり、隣の山陽小野田市には薬学部があるため、若手の採用に積極的な職場が見られるエリアです。
県北部(萩市・長門市・美祢市)
日本海側の県北部は、人口減少と高齢化が進み、求人数は限られます。そのぶん地域医療を担う役割が大きく、在宅対応の経験を積みたい人には合う環境です。車通勤が前提になります。
山口は東部が広島、西部が九州とつながっているのが面白いところです。広島志向なら岩国、福岡志向なら下関。将来の生活圏まで見据えてエリアを選べるのは、他県にない強みだと思います。
山口で働くメリットと注意点
- 人口10万人あたり薬局数は59.8施設で全国4位。通える範囲に職場が多い
- 偏在指標は全国平均を下回り、業務量で見れば人手が求められている
- 下関・山口・宇部の3市に分散し、住む場所を選びやすい
- 県内に薬学部があり、研修体制の整った職場が見つけやすい
- 東部は広島、西部は九州が通勤圏。将来の選択肢が広い
- 年収ランキングは1年で3位から29位まで動き、判断材料にしにくい
- 最新調査の平均年収は全国平均とほぼ同水準で、突出して高くはない
- 薬局数が全国4位に多いぶん、小規模店舗も多いと考えられる
- 薬局の偏在指標は将来1.28まで上がる推計で、長期では需給が緩む
- 県北部は求人が限られ、車通勤が前提になる職場が多い
山口で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 管理薬剤師や役職付きのポストを狙う
薬局数が全国4位に多い山口では、管理薬剤師のポスト自体が多く存在します。責任が増えるぶん年収が上がりやすく、経験を積んだ人にとっては現実的な選択肢です。求人を探すときに「管理薬剤師候補」の条件を入れて絞り込むだけでも、見える求人が変わります。
② 県境をまたいで比較する
岩国市からは広島市、下関市からは北九州市が通勤圏に入ります。勤務地の条件を「山口県内」ではなく「自宅から何分以内」で設定し直すと、比較できる求人が一気に増えます。両端が隣県とつながっているのは、山口ならではの立地上の強みです。
③ 在籍薬剤師数と処方箋枚数を必ず確認する
薬局数が多いということは、それだけ小規模な店舗も多いということです。応募前に、在籍薬剤師数、1日の平均処方箋枚数、直近数か月の平均残業時間、休みを取るときの応援体制の4点は具体的に確認しましょう。年収が同じでも、この4点で働きやすさはまったく変わります。
④ 中国・九州に強いエージェントを複数使う
求人数が多い山口では、1件ずつ自分で見比べるのは大変です。エージェントを2社から3社登録しておくと、教育体制や残業の実態といった求人票だけではわからない情報を含めて効率よく比較できます。広島や福岡にも強いエージェントなら、県境をまたいだ提案も受けやすくなります。
山口のように求人が多い県では、情報を整理してくれる存在がいるとぐっと動きやすくなります。「管理薬剤師として採用してくれる職場」「在籍3人以上の店舗」など、条件を具体的に伝えるのがコツです。
よくある質問
まとめ
山口の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 薬剤師数224.7人は全国7位、薬局数59.8施設は全国4位と、頭数は全国上位
- それでも偏在指標は病院0.77・薬局1.04・地域全体0.95と全国平均以下
- 年収ランキングは1年で3位から29位まで動いており、判断材料にしない
- 下関619人・山口520人・宇部515人と3市が横並びで、求人が分散している
- 2018年開設の薬学部から、すでに毎年新卒薬剤師が供給されている
- 東部は広島、西部は九州が通勤圏。県境をまたいで比較するのが有効
山口は「薬剤師が多い県」でも「足りない県」でもなく、その両方の顔を持つ県です。頭数の多さに惑わされず、業務量と体制を確かめながら、住みたい場所を基準に職場を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

