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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「鳥取で薬剤師として働きたい」「地元の鳥取に戻って転職したい」と考える人は少なくありません。鳥取は日本でいちばん人口の少ない県で、薬局の数も薬剤師の数も実数では全国最少です。求人の総数が限られるぶん、一つひとつの求人を丁寧に見ていくことが大切なエリアといえます。
一方で、県が薬剤師会と組んで確保対策を続けており、県外からの転職や復職を後押しする仕組みが整っています。この記事では、鳥取の需給を最新の公的統計で確認したうえで、県が実施している支援の中身、中国地方のなかでの位置づけ、年収データの読み方、エリア別の傾向、待遇を上げる手順を整理します。
この記事でわかること
- 鳥取の薬局270施設・従事薬剤師1,036人はいずれも実数で全国最少(令和6年)
- 薬局数の減少率は前年度比2.2%減で、全国で2番目に大きいという直近の変化
- 県が薬剤師会と共同で行う確保対策の中身(Uターン対策・復職支援・マッチング)
- 中国5県のなかで鳥取は4番目。広島・山口との供給の厚みの違い
- 年収ランキングを鵜呑みにしない理由と、待遇を上げる4つの手順
鳥取県の薬剤師転職市場を数字で確認する
まず、鳥取の需給を公的統計で確認します。厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、鳥取県で薬局・医療施設に従事する薬剤師は1,036人。この人数は47都道府県で最も少なく、人口10万人あたりでは195.1人で全国29位です。全国平均は210.6人なので、これを下回る水準になります。
※薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(薬局・医療施設の従事者)、薬局数は「令和6年度衛生行政報告例」、病院数は「令和6年医療施設(動態)調査」による。順位は当サイトが公表値をもとに集計。
実数は全国最少、密度では全国29位
鳥取を語るとき「薬剤師が少ない県」と言われますが、正確には2つの意味を区別する必要があります。まず実数。従事薬剤師1,036人は47都道府県で最も少なく、2番目に少ない島根県の1,234人よりさらに200人ほど下回ります。これは求人の絶対数が限られることを意味します。
一方、人口あたりの密度で見ると195.1人で全国29位。全国平均を下回るとはいえ、下から数えて上位というわけではありません。薬剤師1人が支える人口は約513人で、全国平均の約475人より1割ほど多い程度です。「極端な人手不足の県」というより、「小さな市場で、少しだけ薬剤師が足りない県」と捉えるのが実態に近くなります。
薬局は全国最少の270施設。減少率は全国2番目
求人の受け皿である薬局も、実数で全国最少です。厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」によると、鳥取県の薬局は270施設。人口10万人あたりでは50.8施設で全国33位となり、全国平均51.1施設をわずかに下回ります。
注目したいのは直近の変化です。鳥取の薬局は前年度の276施設から6施設減り、減少率は2.2%。これは鹿児島県の2.6%減に次いで全国で2番目に大きい数字です。全国の薬局数が0.6%増えているなかでの減少なので、鳥取だけを見ると逆方向に動いていることになります。
もともと小さい市場がさらに縮んでいる、という状況です。統合や閉局が進むと、残った薬局に処方箋が集まり、一人あたりの負担が増える可能性があります。求人を見るときは、その薬局の処方箋枚数と在籍薬剤師数のバランス、近隣で閉局した薬局がないかを確認しておくと安心です。
県内に薬学部がなく、供給を県外に頼る
鳥取県内には薬学部を置く大学がありません。地元で薬剤師を育てる場がないため、新しい薬剤師の供給をすべて県外に頼る構造になっています。県が薬学部のある大学へ働きかける形で確保に動いているのは、この事情があるためです。
一方で医療機関は手厚く、厚生労働省「令和6年医療施設(動態)調査」によると人口10万人あたりの病院数は8.1施設で全国19位、全国平均6.5施設を上回ります。病床数でみても人口10万人あたり1,502.3床と、全国平均1,187.3床を大きく超えます。西部の米子市には鳥取大学医学部附属病院があり、県の規模のわりに病院薬剤師の選択肢は確保されています。
鳥取で大事なのは「密度」より「実数」です。薬局270軒しかない県で転職先を探すというのは、選択肢の数が最初から限られているということ。だからこそ、条件の良し悪しより先に、そもそもどんな求人が存在するかを把握するところから始めたほうが早いです。
県内の偏りは「東西2極」という形で現れる
多くの県では県庁所在地に人材が集中しますが、鳥取は少し事情が異なります。同じ統計を市単位で見ると、県内で働く薬剤師1,036人のうち鳥取市が388人。県全体の37.5%で、鳥取市の人口比34.3%とそれほど大きく離れていません。
※全国平均・鳥取県・鳥取市の数値は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」統計表10による。「鳥取市を除く県内」は、同統計表9の薬剤師数と付表の人口から当サイトが試算した参考値。米子市は同統計で市単位の内訳が公表されていないため、中西部にまとめて計算しています。
鳥取市は213.2人と全国平均をわずかに上回りますが、他県の県庁所在地ほど突出してはいません。理由は、県西部の米子市が県都に匹敵する医療の拠点になっているからです。鳥取県は東西に長く、東部の鳥取市と西部の米子市という2つの核に求人が分かれる、いわば東西2極の構造をしています。
この構造は転職する側にとって重要です。他県なら「県庁所在地か、それ以外か」で考えれば済みますが、鳥取では「東部か西部か」をまず決める必要があります。鳥取市と米子市は車でおよそ2時間離れており、通勤で行き来できる距離ではありません。中部の倉吉市はその中間に位置し、求人数は少ないものの、不足を背景に条件が上がることがあります。
鳥取県内で転職先を探すとき、「鳥取県で」とひとくくりにすると話が進みません。東部と西部は別の生活圏だと考えて、どちらに住むかを先に決めてください。ここを決めるだけで、見るべき求人が半分に絞れます。
鳥取県が行っている薬剤師確保の取り組み
鳥取の特徴として押さえておきたいのが、県が薬剤師の確保に正面から取り組んでいる点です。鳥取県は福祉保健部の医療・保険課が窓口となり、県薬剤師会と共同で「薬剤師確保対策推進事業」を実施しています。県の公式サイトで公開されている内容は、大きく3つの柱に分かれます。
※鳥取県福祉保健部 健康医療局 医療・保険課「薬剤師に関する各種案内」の公表内容にもとづきます。事業の内容は変更される場合があるため、利用の際は県または県薬剤師会にご確認ください。
とくに実務的な価値が高いのが、2つ目の復職支援です。出産や育児でブランクがある薬剤師にとって、いきなり現場に戻るのは不安が大きいものですが、実習の形で段階的に慣れられる仕組みがあるのは心強い点です。県の担当課が「気軽に連絡してほしい」と明示しているので、まだ転職を決めていない段階でも問い合わせて構いません。
民間の転職エージェントと公的な窓口では、扱う求人が異なります。両方を使うことで、鳥取のように求人数が限られる県では見える選択肢が確実に増えます。
県が名指しで「薬剤師に働いてほしい」と発信している県は、そう多くありません。求人票には出てこない情報を持っているのが公的窓口の強みなので、鳥取が候補にあるなら一度は連絡してみる価値があります。
中国地方のなかでの鳥取の位置づけ
近隣県と並べると、鳥取の位置づけがより正確につかめます。中国5県を同じ統計で比較しました。
※出典は前掲の厚生労働省2統計。順位は多い順に47都道府県を並べたもので、当サイトが公表値をもとに集計。
中国地方は西側と東側で性格が分かれます。広島県は全国5位、山口県は全国7位と、いずれも全国トップクラスに薬剤師が多い県です。対して鳥取・島根・岡山の3県はいずれも全国平均を下回ります。「中国地方は薬剤師が多い」という印象があるとすれば、それは広島と山口の数字によるものです。
鳥取は5県のなかで4番目。ただし島根県との差はわずかで、山陰2県はほぼ同じ水準にあると考えてよいでしょう。西部の米子市は島根県の松江市と一体の生活圏を形成しており、通勤圏として両県をまたぐことも珍しくありません。西部で探すなら島根県の求人もあわせて確認しておくと、選択肢が実質的に倍になります。
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鳥取の年収データをどう読むか
鳥取の薬剤師年収は、調査によって評価が大きく分かれます。全国上位に出るランキングもあれば、全国平均を下回る調査もあります。この振れ幅には理由があります。
対象人数が少ない県ほど順位が振れる
よく引用されるのが厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。ただしこれは薬剤師だけを対象にした調査ではなく、都道府県まで分けると対象となる人数がかなり少なくなります。鳥取のように従事薬剤師が全国最少の県では、たまたま調査対象になった数か所の職場で平均値が動いてしまいます。順位が年ごとに大きく入れ替わるのは、このためです。
同じ調査から計算した薬剤師の全国平均年収でさえ、令和6年調査の約599万円から令和7年調査の約567万円へ、1年で30万円以上下がっています。母数の大きい全国平均でこれだけ動くのですから、鳥取の順位を「実力」と受け取るのは無理があります。
鳥取では求人1件ごとに条件が違う
薬局が270軒しかない県では、そもそも「県の平均」という概念があまり意味を持ちません。1軒あたりの重みが大きいため、個別の求人の条件がそのまま結論になります。年収ランキングを追いかけるより、実際に募集が出ている職場を1件ずつ比べたほうが、はるかに正確な判断ができます。
比べるときは、額面ではなく実質で並べます。年間休日数、薬剤師の在籍人数、1日の処方箋枚数、残業の実績時間、住宅手当や社宅の有無、車の維持にかかる費用。鳥取は市街地の一部を除いて車が前提になるため、最後の項目が手取りの実感を左右します。
鳥取の年収ランキングは、調査によって順位がかなり振れます。平均の数字に一喜一憂するより、自分が受ける求人がどのエリアで、手当込みでいくらになるかを見るほうが、ずっと確実です。
鳥取で働くメリットと注意点
ここまでの内容を、働く側の視点で整理します。
鳥取で働くメリット
- 県が確保に動いている/県と薬剤師会が共同で確保対策を実施。復職支援やマッチングの仕組みがある
- 病院薬剤師の選択肢が確保されている/人口あたり病院数は全国19位。米子には大学病院がある
- 中部や郊外は条件が上がりやすい/人材確保が難しい地域では、住宅手当つきや高めの年収が出ることがある
- 島根と両にらみで探せる/西部の米子は松江と一体の生活圏で、実質的に選択肢が広がる
- 生活コストを抑えやすい/住居費が抑えやすく、条件のよい求人を選べれば手元に残りやすい
知っておきたい注意点
- 求人の総数が全国最少水準/薬局270施設・従事薬剤師1,036人はいずれも全国最少。好条件はすぐ埋まる
- 薬局が減少に転じている/前年度比2.2%減は全国2番目の減少率。統合や閉局の影響を確認したい
- 東部と西部は行き来できない距離/鳥取市と米子市は車で約2時間。住む場所を先に決める必要がある
- 車通勤が前提のエリアが多い/市街地の一部を除きマイカー通勤が基本になる
- 日本海側は冬の天候に注意/雪や荒天の日があり、地域によっては通勤対策が必要
鳥取は求人が少ないぶん、好条件のものは本当にすぐ埋まります。気になる求人を見つけてから考え始めると間に合いません。希望条件を先に整理しておいて、出たらすぐ動けるようにしておくのが鳥取転職の鉄則です。
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エリア別の傾向(東部・中部・西部)
鳥取は東西に長く、大きく3つのエリアに分かれます。それぞれ生活圏が独立しているため、性格もはっきり違います。
東部(鳥取市・県都)
県都の鳥取市を中心とする東部は、県内で最も求人数が多いエリアです。人口10万人あたりの薬剤師数は213.2人で全国平均をわずかに上回り、県内では充足しているほうにあたります。調剤薬局・ドラッグストア・病院と選択肢があり、生活の利便性も高い一方、好条件の求人は競争になりやすい面があります。関西方面との行き来を重視する人にも向いたエリアです。
西部(米子市・境港など・医療の拠点)
西部の米子市は、鳥取大学医学部附属病院をはじめ医療機関が集まる県西部の拠点です。県都と並ぶ求人エリアで、病院薬剤師として専門性を高めたい人には選択肢が比較的多くなります。島根県の松江市に近く、両市は一体の生活圏を形成しているため、住む場所と勤務先を県境をまたいで組み合わせることもできます。実質的に見られる求人が最も多くなるのは、このエリアです。
中部(倉吉市など・落ち着いた環境)
中部の倉吉市などは、東部と西部の中間に位置するエリアです。求人の数は2つの拠点ほど多くありませんが、人材の確保が難しいぶん、条件を上げて募集する職場が出ることがあります。落ち着いた環境で腰を据えて働きたい人や、地域に密着した薬剤師をめざす人に向いています。年収を重視するなら、まず確認しておきたいエリアです。
求人の数だけを見るなら、西部の米子が有利です。鳥取県内の求人に島根県東部の求人が加わるので、選べる母数が変わってきます。こだわりがなければ、まず西部から見てみるのをおすすめします。
鳥取で年収・待遇を上げる4つの手順
求人の数が限られる鳥取では、探す順番を決めておくと動きやすくなります。
① 東部か西部か、住む場所を先に決める
鳥取市と米子市は車で約2時間離れており、通勤で行き来できません。求人条件から入るのではなく、まず暮らす場所を決めてください。西部を選ぶなら、島根県東部の求人も自動的に候補に入ります。ここを決めるだけで、見るべき求人が絞れて動きが速くなります。
② 公的な窓口と民間の窓口を両方使う
鳥取県の医療・保険課と県薬剤師会が確保対策を行っており、無料職業紹介所も開設されています。民間の転職エージェントとは扱う求人が異なるため、両方に当たることで見える選択肢が増えます。ブランクがある人は、県の復職支援プログラムについても問い合わせておくと選択の幅が広がります。
③ 病院や役職付きの求人まで視野に入れる
鳥取は人口あたりの病院数が全国19位と、県の規模のわりに病院が多いエリアです。米子には大学病院もあり、病院薬剤師として専門性を高める道があります。また管理薬剤師の募集は、責任が増えるぶん年収が上がりやすいポジションです。求人が限られるからこそ、薬局だけに絞らず幅広く見ておくと候補が増えます。
④ 出たらすぐ動けるよう準備しておく
薬局270軒の県では、好条件の求人が出る頻度そのものが低く、出たときにはすぐ埋まります。希望条件を先に整理し、履歴書と職務経歴書を用意したうえで、複数のエージェントに登録して新着の連絡を受け取れる状態にしておいてください。比べる項目は、年間休日数、薬剤師の在籍人数、処方箋枚数、残業の実績、住宅手当、車の維持費の6つです。
よくある質問
まとめ
鳥取の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 従事薬剤師1,036人・薬局270施設はいずれも実数で全国最少。市場そのものが小さい
- 人口10万人あたりでは195.1人・全国29位で、全国平均210.6人をやや下回る
- 薬局数は前年度比2.2%減と全国2番目の減少率。統合や閉局の影響を確認したい
- 県が薬剤師会と共同で確保対策を実施。復職支援やマッチングの仕組みがある
- 東部の鳥取市と西部の米子市は車で約2時間。住む場所を先に決めるのが前提
- 好条件はすぐ埋まるため、準備を整えて出たらすぐ動ける状態にしておく
鳥取は求人の数こそ多くありませんが、県をあげて薬剤師を迎え入れようとしているエリアです。公的な窓口と民間の窓口を両方使い、東部・中部・西部それぞれの特徴を押さえたうえで、自分の優先したい条件に合う職場を選んでいきましょう。
出典・参考資料
この記事で使用した数値と制度情報の出典です。いずれも公的機関が公表している一次情報です。
- 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(薬剤師数・人口10万対薬剤師数・市別の内訳)
- 厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」(薬局数・人口10万対薬局数・前年度比)
- 厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」(病院数・病床数・人口10万対の各数値)
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(薬剤師の平均年収の年次変動)
- 鳥取県 福祉保健部 健康医療局 医療・保険課「薬剤師に関する各種案内(就職・試験)」(薬剤師確保対策推進事業・復職支援・無料職業紹介所)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計値は各調査の公表時点のものであり、順位は公表値をもとに当サイトが集計しています。「鳥取市を除く県内」の数値は公表値からの試算による参考値です。支援制度の内容は変更される場合があるため、利用の際は県または県薬剤師会にご確認ください。求人状況や年収は時期・調査により変動します。

