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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「地元の宮崎で薬剤師として働きたい」「宮崎にUターンして転職したい」と考える人は少なくありません。宮崎は温暖で住みやすく、薬剤師にとっては条件が良くなりやすいエリアです。ただ、その「不足」の中身は業態と地域でまったく違います。宮崎で本当に足りていないのは、薬局ではなく病院の薬剤師です。
この記事では、厚生労働省の最新統計で見た宮崎の薬剤師事情、薬局は全国11位なのに薬剤師は40位というねじれ、宮崎市と市外の1.4倍の格差、7つの医療圏の傾向、年収データの読み方を、現役薬剤師の目線で整理します。数値はすべて公的資料にもとづき、出典に直接リンクしています。
- 宮崎県の人口10万対薬剤師数は186.7で全国40位。一方で薬局数は56.9で全国11位
- 働く場所は全国上位に多いのに、そこに立つ人が足りない。求人が出続ける構造
- 国の偏在指標は病院0.65で全国でも下から5番目。足りないのは病院薬剤師
- 宮崎市225.1に対し市外163.1で約1.4倍の差。県内でも条件の出方が変わる
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厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、宮崎県の届出薬剤師数は2,269人。そのうち薬局・医療施設で働いているのは1,929人です。人口10万人あたりでは、届出総数が219.7人、薬局・医療施設の従事者が186.7人となっています。
全国平均は届出総数265.8人、薬局・医療施設の従事者210.6人。宮崎の186.7は全国40位(山形県と同率)で、平均を24人分近く下回ります。一方、薬局は588施設あり、人口10万対では56.9施設で全国11位。こちらは平均51.1を大きく上回ります。
※薬剤師数は厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」統計表9・10(従業地ベース)。薬局数は「令和6(2024)年度衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。順位は公表値を当サイトが並べ替えて確認したものです。
薬局の順位が11位、薬剤師の順位が40位。この29位分のねじれが、宮崎の転職市場そのものです。施設は全国上位に多いのに、そこに立つ人が足りない。だから求人が出続けますし、人材確保のために条件が動きやすくなります。
背景のひとつが薬学部の少なさです。県内の薬学部は延岡市の九州医療科学大学(2024年4月に九州保健福祉大学から改称)の1校のみ。薬学部は2003年の開設で、日本でも最南端に位置する薬学部として知られています。1校だけでは県内の需要をまかないきれず、県外で資格を取った人が戻ってくるかどうかが人材確保を左右する構造が続いています。
薬局の順位が11位で薬剤師が40位、という組み合わせはかなり珍しいです。同じ「不足県」でも、施設ごと少ない県とは意味がまったく違います。宮崎は職場そのものは通える範囲に見つかる。あとは条件をどう引き出すか、という段階の県です。
足りないのは病院|国の偏在指標で見る
厚生労働省は、人口10万対の薬剤師数では拾いきれない医療需要や業態の違いを補正した薬剤師偏在指標を都道府県別に公表しています。1.0が目標水準で、下回るほど不足していることを示します。宮崎の数字は業態でくっきり分かれます。
※出典は厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2「都道府県別薬剤師偏在指標」(令和5年3月)。順位は公表値を当サイトが並べ替えて確認したもので、病院0.65は岩手県・福島県と同率です。この指標は薬剤師の絶対的な充足状況ではなく、相対的な偏在の状況を示すものです。
病院が0.65。全国計0.80を大きく下回り、47都道府県のなかでも下から5番目の水準です。薬局は0.91で、こちらも全国計1.08には届きませんが、病院ほど深刻ではありません。宮崎で本当に人が足りていないのは病院薬剤師だというのが、国の指標が示す答えです。
地域全体でも0.82で、福井・青森・富山に次ぐ全国で下から4番目。2036年の推計でも0.97にとどまり、目標の1.0に届きません。将来にわたって需給が緩みにくい県だといえます。
転職者にとっての意味ははっきりしています。宮崎で病院薬剤師を目指すなら、需給の面ではかなり有利です。募集の数は薬局より少なくても、来てほしいと思われている度合いが違います。条件面の相談もしやすいはずです。
私は病院から薬局へ移った側なので実感がありますが、病院薬剤師の求人は数が少ないぶん、応募すると歓迎される度合いが違います。宮崎はその傾向がとくに強いはずです。薬局志望の人も、一度は病院を候補に並べて比べてみる価値があります。
宮崎市と市外で1.4倍|県内格差の正体
同じ統計には、中核市である宮崎市の数値も再掲されています。宮崎市の薬剤師は届出総数1,062人、薬局・医療施設の従事者887人。人口10万人あたりでは269.5人と225.1人です。県全体から引けば、宮崎市以外の姿が計算できます。
※宮崎市以外の値は、県の数値から宮崎市の再掲値を差し引いて当サイトが算出したもので、公表値ではありません。人口は同統計の付表(県1,033千人・宮崎市394千人)を使用しています。県の人口は総務省の人口推計、市の人口は市の推計値で出所が異なる点、また従業地ベースのため宮崎市へ通勤する薬剤師は宮崎市に計上される点にご注意ください。
結果は宮崎市225.1に対して宮崎市以外163.1。約1.4倍の開きがあります。宮崎市の225.1は全国平均210.6を上回りますが、市外の163.1は都道府県に置き換えると下から3番目あたりに相当する少なさです。
人口で見ると宮崎市は県の38.1%ですが、現場で働く薬剤師の46.0%が宮崎市に集まっています。「宮崎は県全体で待遇が底上げされている」という説明は、市外については当てはまりますが、宮崎市内には当てはまりません。市内は全国平均を超える密度があり、応募者も集まりやすい環境です。
届出総数と現場従事者の差にあたる企業・行政・大学などの職場は、人口10万対で県が33.0、宮崎市が44.4、市外が25.8。全国の55.2と比べるとどこも少なく、調剤以外の道を県内で探すのは難しいのが実情です。
「宮崎は地域差が小さい」とよく言われますが、数字を見ると1.4倍あります。宮崎市内で探すのか市外で探すのかを先に決めるだけで、比べるべき求人がかなり絞れますよ。市外は車移動が前提になるぶん、条件の上乗せを引き出しやすい環境です。
7つの医療圏で見る宮崎県
宮崎県は「第8次宮崎県医療計画」(令和6年3月策定)にもとづき、二次医療圏を7つ設定しています。県土が南北に長く性格の異なる地域を抱えるためで、求人を市町村単位で追うよりこの区分で捉えると通勤範囲を考えやすくなります。
※圏域の区分は宮崎県「第8次宮崎県医療計画」による。各圏域の傾向は同計画に示された医療資源の状況と前掲の統計から整理した一般的な見立てで、個別の求人条件を示すものではありません。
求人数で選ぶなら宮崎東諸県、生活と両立させるなら西都児湯や都城北諸県、条件の上乗せを狙うなら日南串間や日向入郷、というのが大まかな目安です。ただし宮崎は南北に長く、延岡市から宮崎市までは車で1時間半以上かかります。県内という感覚で通勤を考えると想定が大きくずれるので注意してください。
都城市は鹿児島県との県境が近く、鹿児島側の求人も候補にできます。延岡市は大分県側が視野に入ります。県境エリアは選択肢が二倍になるので、宮崎県だけで探すのはもったいないですよ。
年収データの正しい読み方
宮崎の年収を調べると「全国上位」という説明が出てきます。方向としては間違っていませんが、順位そのものを根拠に転職を決めるのはおすすめしません。理由は3つあります。
① 全国平均そのものが年ごとに大きく動く
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、薬剤師の毎月の給与が39万8,700円、年間賞与その他特別給与額が83万3,500円で、単純に合計すると年収は約566万8千円です。前年の調査では約599万3千円でしたので、1年で30万円以上下がっています。全国平均でこれだけ振れるのですから、標本数の少ない県別の値はさらに不安定になります。
② 順位は民間各社が独自に集計したもの
よく見かける都道府県ランキングは、公的機関が公表している順位ではありません。各社が同じ調査の元データを取り出して並べたものです。県ごとの回答数が少ないため順位は毎年入れ替わり、直近の集計でも1位と最下位で200万円以上の差が付くなど、実感と合わない結果になることがあります。宮崎が上位に出る年もあれば、最下位付近に出る年もあるというのが実態です。
③ 宮崎では「市内か市外か」「病院か薬局か」で考える
県内で1.4倍の密度差があり、業態でも需給が大きく違う以上、県平均の年収を見ても意味がありません。見るべきは全国順位ではなく、いま自分がもらっている額と、目の前の求人の総額との差です。賞与実績・住宅手当・車の貸与やガソリン代の扱いまで含めて比べてください。
「宮崎は年収が高い」という評判だけで動くと、宮崎市内の求人を見て拍子抜けすることがあります。県平均を押し上げているのは市外のほうです。順位を追うより、通える範囲の求人を3つ並べて総額を書き出すほうが、はるかに確実ですよ。
宮崎で働くメリットと注意点
- 薬局数は人口あたり全国11位。通える範囲に職場が見つかりやすい
- 病院の偏在指標が0.65と全国でも下から5番目。病院を目指すなら需給の面で有利
- 2036年の推計でも需給が緩まず、長く働くうえでの安心感がある
- 宮崎市外は人材確保が難しく、条件を上乗せする求人が出やすい
- 温暖な気候で住居費も抑えやすく、同じ額面でも生活に余裕が出やすい
- 宮崎市内は全国平均を超える密度があり、「県全体が売り手市場」とは言えない
- 県内の薬学部は1校のみで、新卒の供給は限られる
- 企業・行政の職場は全国平均を大きく下回り、調剤以外の道は選びにくい
- 南北に長く、県内でも移動に時間がかかる。車が前提の地域が多い
- 年収の都道府県ランキングは調査ごとに大きく振れ、判断材料になりにくい
宮崎で転職を成功させるポイント
① 「宮崎市内か市外か」「病院か薬局か」を先に決める
県内で1.4倍の密度差があり、業態でも需給が違います。この2つの軸を決めるだけで、探すべき求人がまったく変わります。薬局を希望して宮崎市内で探すなら競争率は高め、病院を希望して市外で探すなら需給の面では強い追い風です。
② 通勤範囲を距離ではなく時間で決める
宮崎は南北に長く、地図上の距離と実際の所要時間が一致しません。山間部を通る区間では想像以上に時間がかかります。「片道◯分まで」と時間で線を引き、実際に一度走ってから決めると失敗が減ります。
③ 額面ではなく総額と手元に残る額で比べる
比べるべきは月給ではなく、賞与実績・住宅手当・管理薬剤師手当・車の貸与やガソリン代まで含めた合計です。市外の求人で住居補助が月2万円付けば、年間で24万円の差になります。求人票に書かれていない項目は、面接や条件確認の段階で必ず聞いておきましょう。
④ 業態をまたいで検討する
病院の偏在指標が0.65と低い宮崎では、薬局だけに絞らず病院も候補に入れると選択肢が広がります。ドラッグストアの調剤併設店も県内に展開があり、働き方や年収の考え方が薬局とは違います。業態ごとの違いを整理してから探すと、比較の軸がぶれません。
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九州の他県と比べて決める
宮崎は熊本・大分・鹿児島と接しています。都城市からは鹿児島県側、延岡市からは大分県側が通勤圏に入り、県境をまたいで探す人も少なくありません。隣県の事情を知っておくと、宮崎の条件が相対的にどうなのかを判断しやすくなります。
▶ 九州各県の転職ガイド
九州以外も含めて、住みたい地域から探したい場合は都道府県別のまとめページが便利です。全国47都道府県の年収相場と求人事情を一覧にしています。
よくある質問
まとめ
宮崎の薬剤師転職は、「県全体が高年収」という大づかみの説明を捨てるところから始まります。要点を整理します。
- 人口10万対薬剤師数は186.7で全国40位、薬局数は56.9で全国11位。施設はあるのに人が足りない
- 偏在指標は病院0.65で全国下から5番目。足りていないのは病院薬剤師
- 宮崎市225.1に対し市外163.1。市内は全国平均を超えており、売り手市場は市外の話
- 県内の薬学部は延岡市の1校のみ。供給が限られる構造は当面変わらない
- 年収の全国順位は年ごとに動くため、賞与・手当込みの総額で個別に比べるのが確実
宮崎市内の選択肢の多さを取るか、市外の上乗せ条件を取るか、病院を選ぶか薬局を選ぶか。この組み合わせが決まれば、比べるべき求人はぐっと絞れます。他の地域とも見比べたい人は、薬剤師の都道府県別転職ガイド|地域ごとの年収相場まとめから気になる地域を確認してみてください。
参考にした一次情報
・厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(薬剤師数・人口10万対・都道府県別・中核市再掲)
・厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」(薬局数・人口10万対)
・厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2(都道府県別薬剤師偏在指標)
・厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(薬剤師の賃金)
・宮崎県「第8次宮崎県医療計画」(令和6年3月策定)(二次医療圏の区分・医療資源の状況)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計値は公表時点のもので、その後の調査で変動します。宮崎市以外の数値は公表値ではなく当サイトが県値と市の再掲値から算出したもので、従業地ベースであることによる誤差を含みます。薬剤師偏在指標は相対的な偏在を示す指標であり、絶対的な充足状況を示すものではありません。大学の設置状況は変更される場合があります。求人の条件は個別に異なるため、最新の情報は各求人・転職サービスでご確認ください。

