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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「地元の大分で薬剤師として働きたい」「温泉のある大分にUターンしたい」と考える人は少なくありません。大分は薬剤師が慢性的に足りない県で、条件面では転職する側に有利なエリアです。ただ、その根拠を「年収ランキング全国◯位」に求めると足をすくわれます。順位は調査ごとに大きく動くからです。
この記事では、厚生労働省の最新統計で見た大分の薬剤師事情、国の偏在指標が示す不足の中身、県が用意している最大480万円の支援制度、地域別の傾向、年収データの正しい読み方を、現役薬剤師の目線で整理します。数値はすべて公的資料にもとづき、出典に直接リンクしています。
- 大分県の人口10万対薬剤師数は193.9で全国31位。全国平均210.6を下回る一方、薬局数は平均を上回る
- 国の薬剤師偏在指標は病院0.73・薬局0.87。病院も薬局も全国計を下回る、全国でも数少ない県
- 県は病院に就職する薬剤師へ奨学金返還を年80万円・最長6年支援する制度を実施している
- 大分市207.0と市外183.9で県内格差は小さい。住みやすい大分市を選んでも条件が大きく落ちにくい
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厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、大分県の届出薬剤師数は2,370人。そのうち薬局・医療施設で働いているのは2,104人です。人口10万人あたりでは、届出総数が218.4人、薬局・医療施設の従事者が193.9人となっています。
全国平均は届出総数265.8人、薬局・医療施設の従事者210.6人。大分の193.9は全国31位で、平均を16.7人分下回ります。一方、薬局は578施設あり、人口10万対では53.3施設。こちらは全国平均51.1を上回っています。「働く場所はあるのに、それを担う薬剤師が足りない」という構図が、最新の統計でもはっきり確認できます。
※薬剤師数は厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」統計表10(従業地ベース)。薬局数は「令和6(2024)年度衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。順位は公表値を当サイトが並べ替えて確認したものです。
背景にあるのが、大分県内に薬学部を置く大学がないことです。九州の薬学部は福岡・熊本・長崎・宮崎に集まっており、大分には新卒薬剤師が地元から毎年供給される仕組みがありません。県自身も、県内高校から薬学部へ進学する生徒が全国や九州の他県と比べて少ないことを実態調査で確認したと公表しています。県外で資格を取った人が戻ってくるかどうかが、そのまま人材確保を左右する構造です。
「薬学部がない県は薬剤師が足りない」という説明はよく見かけますが、大分の場合は薬局の数が全国平均より多いところがポイントです。施設は十分にあって、そこに立つ人が足りない。だから求人が出続けるし、条件も動きやすい。転職する側から見れば、これは素直に追い風です。
不足の中身を国の指標で確かめる
厚生労働省は、人口10万対の薬剤師数では拾いきれない医療需要や業態の違いを補正した薬剤師偏在指標を都道府県別に公表しています。1.0が目標水準で、下回るほど不足していることを示します。大分の数字は次のとおりです。
※出典は厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2「都道府県別薬剤師偏在指標」(令和5年3月)。この指標は薬剤師の絶対的な充足状況ではなく、相対的な偏在の状況を示すものです。
注目すべきは薬局の0.87です。全国計は1.08で、薬局薬剤師は全国的には目標を超えて足りている業態です。ところが大分は0.87。病院だけでなく薬局まで全国計を下回る県は多くありません。地域全体でも0.83で、公表値を並べると全国で下から8番目の水準です。しかも2036年の推計でも0.97で、目標の1.0に届きません。
これが転職者にとって何を意味するか。病院志望でも薬局志望でも、大分では「来てほしい側」として扱われるということです。全国の多くの県では薬局は充足していて競争になりますが、大分ではその前提が当てはまりません。条件面の相談もしやすい環境だといえます。
病院薬剤師が足りない県は全国にたくさんありますが、薬局まで0.9を切っている県は少数派です。私が転職活動をしていたときも、「薬局はどこも人が余っている」という前提で話が進むことが多かったので、大分のような県はかなり例外的だと感じます。
県が最大480万円を支援する制度がある
大分県は薬剤師確保対策として、県内の病院に就職する薬剤師に対し、奨学金の返還を補助する制度を設けています。年収の話をする前に、まずこの制度を知っておく価値があります。奨学金の返済が残っている人にとっては、額面の給与差を軽く上回るインパクトがあるためです。
※出典は大分県「薬剤師確保対策事業」(2026年7月13日更新時点)。対象病院は県が一覧を公表しており随時更新されます。本事業は令和9年度までの予定とされています。申請可否は必ず県の薬務室または対象病院にご確認ください。
上限まで受けられた場合、6年で最大480万円。単純計算で年80万円の手取り上乗せに相当します。求人票の月給が同じでも、この制度が使えるかどうかで実質の収入はまったく変わります。県外で働いている人や、県内の薬局から病院へ移る人は対象になり得る書き方になっているため、条件に当てはまりそうなら早い段階で確認しておく価値があります。
もうひとつ実用的なのが、県が「薬剤師不足病院一覧」を毎年更新して公表していることです。これは県が病院の薬剤師募集状況を調査した結果にもとづくもので、どこが本当に人を求めているかが名指しで分かります。求人サイトを眺めるより早い場合があります。県は薬学部進学者向けの修学資金貸与制度(年間80万円から96.4万円、最長6年、実施主体は県薬剤師会)も設けていますが、こちらは学生向けの制度です。
奨学金の返済が残っている20代・30代にとって、年80万円の補助は年収アップ交渉より確実で大きいです。しかも県の制度なので、病院側と条件で揉める話でもありません。大分の病院を検討するなら、面接の前に「この制度の対象病院ですか」と聞いてしまうのが早いですよ。
県内格差が小さいのが大分の強み
地方の県では「県庁所在地は薬剤師が余っていて条件が悪く、郊外に行くほど良くなる」と言われがちです。大分にこれが当てはまるのかを、統計で確かめてみます。同じ統計には中核市である大分市の数値も再掲されているため、県の値から引けば市外の姿が計算できます。
※大分市以外の値は、県の数値から大分市の再掲値を差し引いて当サイトが算出したもので、公表値ではありません。人口は同統計の付表(県1,085千人・大分市471千人)を使用しています。県の人口は総務省の人口推計、市の人口は市の推計値で出所が異なる点、また従業地ベースのため大分市へ通勤する薬剤師は大分市に計上される点にご注意ください。
結果は大分市207.0、大分市以外183.9。差は約1.1倍にとどまります。しかも大分市の207.0ですら全国平均210.6に届いていません。県庁所在地でも薬剤師が余っていないのです。人口シェアで見ても、大分市が県人口の43.4%を占めるのに対し、現場で働く薬剤師のシェアは46.3%。ほぼ人口どおりの分布で、一極集中は起きていません。
これは大分を選ぶうえで大きな意味があります。住みやすい大分市を選んでも、条件が大きく落ちにくいということだからです。生活の利便性を捨てて山間部へ行かないと好条件が手に入らない、という県ではありません。
ただし弱点もあります。届出総数と現場従事者の差、つまり企業・行政・大学などで働く薬剤師は、人口10万対で大分が24.5、全国が55.2。全国平均の半分以下です。製薬企業や卸の拠点が少ないため、調剤以外の道を県内で探すのはかなり難しくなります。
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大分県は医療提供体制の単位である二次医療圏を6つ設定しています。求人を市町村単位で追うより、この区分で捉えると通勤範囲を考えやすくなります。
※医療圏の区分は大分県「第8次大分県医療計画」による。各圏域の傾向は、上記の薬剤師数・薬局数の統計と圏域の人口・医療資源の状況から整理した一般的な見立てで、個別の求人条件を示すものではありません。
求人数で選ぶなら中部、生活と両立させるなら東部や北部、条件の上乗せを狙うなら西部・南部・豊肥、というのが大まかな目安です。ただし前章で見たとおり県内の密度差は小さいので、無理に遠方を選ばなくても納得のいく条件は見つかります。
中津市は福岡県境なので、大分で暮らしながら福岡側の求人も見る、という探し方ができます。逆に福岡で働いていて生活コストを下げたい人が中津に移るケースもあります。県境エリアは選択肢が二倍になるので、意外と穴場ですよ。
年収データの正しい読み方
大分の年収を調べると「全国5位」「全国トップクラス」といった説明が並びます。方向としては間違っていませんが、この順位を根拠に転職を決めるのはおすすめしません。都道府県別の薬剤師年収は、順位を語れるだけの精度を持っていないためです。
① 全国平均そのものが年ごとに大きく動く
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」では、薬剤師の毎月の給与が39万8,700円、年間賞与その他特別給与額が83万3,500円で、単純に合計すると年収は約566万8千円です。前年の調査では約599万3千円でしたので、1年で30万円以上下がっています。全国平均でこれだけ振れるのですから、標本数の少ない県別の値はさらに不安定になります。
② 順位は民間各社が独自に集計したもの
よく見かける都道府県ランキングは、公的機関が公表している順位ではありません。各社が同じ調査の元データを取り出して並べたものです。県ごとの回答数が少ないため順位は毎年入れ替わり、直近の集計でも1位と最下位で200万円以上の差が付くなど、実感と合わない結果になることがあります。大分が上位に出る年もあれば、そうでない年もあるというのが実態です。
③ 大分では制度を含めた「実質」で考える
大分の場合、額面の順位よりも確実なのが前述の奨学金返還支援です。年80万円の補助は、求人票の月給差にすると月6万円以上に相当します。これに住居手当や車の貸与を加えて比べると、順位を見て判断するより現実的な結論が出ます。見るべきは全国平均との比較ではなく、いま自分がもらっている額と、目の前の求人の総額との差です。
「大分は全国5位」という数字だけを見て動いた人が、入職後に「思ったほどではなかった」と話すのを聞いたことがあります。順位は集計方法しだいで簡単に変わります。使える制度と手当を全部足して、いまの年収と比べる。地味ですがこれがいちばん確実です。
大分で働くメリットと注意点
- 病院も薬局も国の偏在指標が全国計を下回り、どちらを志望しても求められる立場になれる
- 病院に就職する場合、県の奨学金返還支援で最大480万円の補助を受けられる可能性がある
- 県内の密度差が小さく、住みやすい大分市を選んでも条件が落ちにくい
- 薬局数は人口あたりで全国平均を上回り、通える範囲に職場が見つかりやすい
- 温泉が身近で住居費も抑えやすく、同じ額面でも生活に余裕が出やすい
- 企業・行政で働く薬剤師の密度が全国平均の半分以下で、調剤以外の道は選びにくい
- 年収の都道府県ランキングは調査ごとに大きく振れ、判断材料になりにくい
- 不足が強い地域では一人薬剤師や少人数体制もあり、業務量の確認が欠かせない
- 車社会のため、マイカー通勤と維持費を前提に考える必要がある
- 奨学金返還支援には対象病院や対象外の条件があり、必ず事前確認が必要
大分で転職を成功させるポイント
① 県の制度が使えるかを最初に確認する
奨学金の返済が残っているなら、病院を選ぶ前に対象病院かどうかを確かめてください。県が公表している対象病院一覧と薬剤師不足病院一覧は、そのまま求人探しの入口として使えます。応募先を絞る作業がかなり短縮できます。
② 年収だけでなく業務量を確認する
薬剤師が足りない地域ほど高めの条件が出ますが、その裏に一人薬剤師や少人数体制が隠れていることがあります。「年収が高い=働きやすい」とは限りません。処方箋枚数、在籍する薬剤師の人数、残業や閉局後の作業量まで具体的に聞いておくと、入職後のギャップを防げます。
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大分は病院も薬局も不足側にあるため、業態を絞りすぎずに比べると選択肢が広がります。ドラッグストアの調剤併設店も県内に展開があり、働き方や年収の考え方が薬局とは違います。どの業態が自分の希望に合うかを整理してから探すと、比較の軸がぶれません。
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調剤薬局からドラッグストアへ転職すべき?年収・働き方の違いを現役薬剤師が解説④ 地元に戻るなら時期と条件を早めに伝える
Uターンの場合、引っ越し費用や入職時期の調整が条件面に影響します。実家からの距離、車の有無、家族の予定といった前提を最初に共有しておくと、条件の合わない求人を紹介されずに済みます。奨学金返還支援を使いたい場合も、入職時期によって申請の可否が変わることがあるため早めの相談が有利です。
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薬剤師のUターン転職|地元に戻る強みと注意点・求人の探し方を現役が解説大分は勤続の長い落ち着いた職場が多いぶん、人間関係が合うかどうかが長く働けるかを左右します。求人票からは読み取れない部分なので、見学や面接で薬剤師の年齢構成と入退職の状況を聞いておくと、雰囲気がかなり見えてきますよ。
九州の他県と比べて決める
大分は福岡や熊本と隣接しており、県境をまたいで探す人も少なくありません。隣県の事情を知っておくと、大分の条件が相対的にどうなのかを判断しやすくなります。各県の記事は次のとおりです。
九州以外も含めて、住みたい地域から探したい場合は都道府県別のまとめページが便利です。全国47都道府県の年収相場と求人事情を一覧にしています。
よくある質問
まとめ
大分の薬剤師転職は、年収ランキングではなく「不足の構造」と「使える制度」で判断するのが正解です。要点を整理します。
- 人口10万対薬剤師数は193.9で全国31位。一方で薬局数は全国平均を上回り、職場はある
- 国の偏在指標は病院0.73・薬局0.87。薬局まで全国計を下回る数少ない県で、どちらの業態でも求められる
- 病院に就職するなら、県の奨学金返還支援で最大480万円の補助を受けられる可能性がある
- 大分市207.0と市外183.9で県内格差は小さく、住みやすい市内でも条件が落ちにくい
- 企業薬剤師の職場は全国平均の半分以下。調剤以外を目指すなら県外も視野に入れる
薬学部がないという構造は当面変わらないため、大分の売り手市場はしばらく続くと見てよいでしょう。制度と手当まで含めた総額で比べれば、納得のいく職場は見つけやすい県です。他の地域とも見比べたい人は、薬剤師の都道府県別転職ガイド|地域ごとの年収相場まとめから気になる地域を確認してみてください。
参考にした一次情報
・厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(薬剤師数・人口10万対・都道府県別・中核市再掲)
・厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」(薬局数・人口10万対)
・厚生労働省「第13回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」資料1-1-2(都道府県別薬剤師偏在指標)
・厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(薬剤師の賃金)
・大分県「薬剤師確保対策事業」・大分県「第8次大分県医療計画」(支援制度・二次医療圏)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計値は公表時点のもので、その後の調査で変動します。大分市以外の数値は公表値ではなく当サイトが県値と市の再掲値から算出したもので、従業地ベースであることによる誤差を含みます。薬剤師偏在指標は相対的な偏在を示す指標であり、絶対的な充足状況を示すものではありません。支援制度の内容・定員・対象病院は変更される場合があるため、必ず大分県の公式ページまたは薬務室にご確認ください。求人の条件は個別に異なるため、最新の情報は各求人・転職サービスでご確認ください。

