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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「地元の長崎で働きたい」「長崎にもどって転職したい」と考えたとき、気になるのは求人の多さと年収でしょう。長崎県は離島が多く、条件のよい求人が出ると言われる一方で、実際の数字を確かめた人は多くないはずです。
先に結論をお伝えします。長崎県は、国の指標のうえで「病院薬剤師が少ない県」に位置づけられています。薬局の薬剤師は全国平均に近く、不足しているのは主に病院のほうです。しかも県内の差が大きく、長崎市は全国平均を上回るのに、佐世保市は大きく下回ります。県をひとかたまりで見ると、判断を誤りやすい県です。
この記事では、厚生労働省の統計と長崎県の薬剤師確保計画をもとに、県全体・医療圏別・市別の数字を確認したうえで、離島求人の見方、年収の考え方、使える公的支援、転職を成功させる進め方までを現役薬剤師の目線で整理します。この1ページで、長崎で働くかどうかの判断材料がそろうように構成しました。
この記事でわかること
- 長崎県の薬剤師の人数と、全国・九州各県と比べた位置づけ
- 国の偏在指標で見ると「病院が少なく、薬局は平均並み」という県の姿
- 8つの医療圏ごとの区域区分と、長崎市・佐世保市の大きな差
- 離島求人で確認したい点と、年収の現実的な考え方
- 県の奨学金返還補助など、使える公的支援と転職の進め方
長崎県の薬剤師は何人?全国・九州と比べる
まず全体像を確認します。厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、長崎県の届出薬剤師数は2,981人、そのうち薬局・医療施設に従事しているのは2,526人です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」統計表9・統計表10(令和6年12月31日現在)。全国23位は同統計表10の47都道府県の数値を並べて算出しました。原典へのリンクは記事末尾に掲載しています。
九州のなかでは真ん中あたり
九州・沖縄の各県と並べると、長崎県の位置づけがはっきりします。数値はいずれも、薬局・医療施設に従事する人口10万人あたりの薬剤師数です。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」統計表10。
県内には薬学部のある大学が2校あります。長崎市の長崎大学薬学部(薬学科の入学定員40名)と、佐世保市の長崎国際大学薬学部(薬学科の入学定員120名)です。6年制課程の定員は合わせて年160名で、九州のなかでは供給の基盤がある県といえますが、それでも人口あたりの薬剤師数は全国平均に届いていません。
「薬学部が2校もあるのに足りないの?」と思われるかもしれません。ただ、卒業生が全員県内に残るわけではありませんし、残った人も長崎市に集まりやすい。学校があることと、県内のすみずみまで薬剤師が行き渡ることは別の話なんですよね。
長崎は「病院薬剤師が少ない県」|偏在指標で見る実像
人口あたりの人数だけでは、本当に足りているかはわかりません。国は、地域ごとの医療の需要と薬剤師の労働時間を突き合わせた薬剤師偏在指標という物差しを示しています。数値が1.0で需要と供給が釣り合う計算で、それを下回る地域のうち成績が低い半分が「薬剤師少数区域」に設定されます。
長崎県の薬剤師確保計画(令和6年3月)によると、県全体の位置づけは次のとおりです。
出典:長崎県「長崎県薬剤師確保計画」(令和6年3月)。全国順位は、47都道府県の薬局と病院を合わせた94区分のなかの順位です。全国の指標は病院0.80、薬局1.08。
読み取れるのは、長崎で足りていないのは主に病院の薬剤師だということです。薬局は全国の水準に近く、長崎市にかぎれば全国平均を上回ります。「長崎は薬剤師が足りない」という一言で片づけず、どの業態の話なのかを分けて考えると、求人の見え方が変わります。
8つの医療圏の区域区分
同じ計画には、県内8つの医療圏ごとの指標と区域区分も載っています。離島を含めて、地域ごとの状況がはっきり示されている点が重要です。
出典:長崎県「長崎県薬剤師確保計画」(令和6年3月)。長崎医療圏を除く7医療圏の病院が薬剤師少数区域に設定されています。
とくに五島0.39、対馬0.47という数字は、全国670区分のなかでも下位に位置します。離島の病院で薬剤師が強く求められている状況が、指標の形ではっきり見えるわけです。求人の条件が手厚くなりやすいのは、人気や善意の問題ではなく、この数字の裏返しだと考えてください。
病院志望の方にとって、この表はかなり心強い材料になります。長崎医療圏以外はすべて病院が少数区域なので、「経験を積みたい」「早くから任されたい」という希望は通りやすい環境です。ただし人が少ないぶん一人あたりの負担も大きくなります。求められていることと、働きやすさは別物です。
医師は全国2位、薬剤師は平均以下という長崎の特徴
同じ統計で医師を見ると、まったく違う景色になります。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」統計表10・統計表11。医師の全国2位は徳島県345.4人に次ぐ順位です。
医師が多いということは、それだけ診療の機会が多く、処方箋が生まれやすい環境だということです。にもかかわらず薬剤師の数は全国平均を下回ります。この組み合わせは、薬剤師にとって悪い話ではありません。
ただし注意点があります。医師が多いのは、離島やへき地を含めて医療を維持するために体制を厚くしてきた歴史の結果でもあります。県は昭和45年に医学修学資金の貸与制度をつくり、離島・へき地で働く医師を長年かけて育ててきました。「医師が多い=どこでも医療が充実している」ではなく、支えるために必要な人数が多いと読むほうが実態に近いでしょう。
長崎市と佐世保市で数字がまるで違う
同じ統計は、中核市ごとの数字も公表しています。ここを見ると、県をひとかたまりで語ることの危うさがはっきりします。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」統計表9・統計表10(中核市の再掲を含む)。
長崎市266.5人に対して、佐世保市188.9人。その差は77.6人分あります。県庁所在地に人材が集まって県全体の数字を押し上げているのに、それでも全国平均に届かない。つまり長崎市を除いた地域は、県全体の数字よりさらに薄いということです。
おもしろいのは、入学定員の多い薬学部があるのは佐世保市のほうだという点です。学生がいることと、卒業後にその地域で働く人が増えることは、必ずしも一致しません。求人を探すときは県名ではなく市町村名で条件を比べてください。
長崎市と佐世保市は、どちらも「長崎県の都市」とまとめて語られがちですが、薬剤師から見た環境は別物です。選べる幅を取るなら長崎市、求められる度合いを取るなら佐世保市。どちらを重く見るかで、応募先の並べ方が変わります。
離島求人の条件をどう読むか
長崎の求人を見ていると、離島の案件で目を引く条件が出ていることがあります。住居の提供、離島手当、車の貸与といった項目が並ぶこともあります。ここで大事なのは、提示額の高さだけで判断しないことです。
確認しておきたいのは次の点です。
- 手当の内訳と続く期間:離島手当や住宅補助が基本給と別なのか、何年続くのかを確認する
- 薬剤師の人数:一人体制だと有給が取りにくく、急な病気のときに代わりがいない
- 年間休日と休みの取り方:数字だけでなく、実際にどう回しているかを聞く
- 本土への移動:帰省や研修参加にかかる費用と時間は、生活の満足度に直結する
- 医薬品の供給体制:急な取り寄せに時間がかかる地域では、在庫管理の判断力が問われる
- 契約の期間:期間の定めがある募集か、期間の定めのない採用かで将来設計が変わる
※求人票で示される条件をふまえた当サイトの整理です。統計値ではなく、実際の条件は募集ごとに異なります。
それでも離島を選ぶ価値は十分にあります。処方元が限られるぶん患者さんとの関係が深くなり、在宅や地域連携を一人で担う経験は、本土では得にくいものです。数年で本土に戻る前提で経験を積む、という使い方をしている人もいます。
なお、離島の医療を支える手段として、映像と音声によるオンライン服薬指導が制度として認められています。薬局の外から服薬指導を行える条件も整理されているため、働き方の選択肢として知っておくと役立ちます。
管理薬剤師をしていたころ、在庫が切れかけて他店から融通してもらったことが何度もあります。島だと、それが船の便に左右されます。医薬品の取り寄せにどれくらいかかるかは、面接で必ず聞いておきたい項目です。
長崎の年収をどう考えるか
ここは正直に書きます。都道府県別に薬剤師の年収を示した公的統計は存在しません。国の賃金統計は職種単位の集計で、地域別に薬剤師だけを切り出した数字は公表されていないためです。インターネット上には「長崎は全国何位」といった順位表が数多くありますが、いずれも民間各社が自社の求人や登録者から集計したもので、出典によって順位も金額も食い違います。当サイトでは根拠を確認できない順位表は載せません。
基準として使えるのは全国の水準です。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は566万7,900円(きまって支給する現金給与額の12か月分に、年間賞与その他特別給与額を足して算出)。この数字を出発点に、応募先の提示額を比べていくのが現実的です。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別集計(薬剤師)。原典へのリンクは記事末尾に掲載しています。
長崎で年収を考えるときの見方は、次の3点です。
- 県内で比べる:全国順位ではなく、長崎市・佐世保市・県央・離島の提示額を並べるほうが判断材料になる
- 手当の内訳を見る:提示額に住宅補助や離島手当が含まれていれば、基本給の水準は別に確認する
- 生活費と合わせる:家賃や車の維持費まで含めた手残りで比べると、順位表とは違う結論になることがある
長崎県で使える公的な支援
長崎県は、薬剤師を確保するための独自の仕組みを用意しています。あまり知られていませんが、条件に当てはまる方には大きな支援です。
薬剤師奨学金返還補助事業
在学中に借りた奨学金を返している人が、県内の対象となる病院に薬剤師として就職し、一定期間働いた場合に、返還額の一部を県が補助する制度です。要点は次のとおりです。
出典:長崎県「長崎県薬剤師奨学金返還補助事業実施要領」(令和7年11月28日から適用)。募集時期や要件は年度ごとに変わる可能性があるため、応募前に県の最新の案内を確認してください。
注目したいのは、この制度の対象が薬剤師少数区域にある病院に限られている点です。県が力を入れて集めたいのは病院の薬剤師であり、偏在指標の数字とまっすぐつながっています。病院志望で奨学金の返還が残っている方は、応募先を選ぶ段階でこの制度の対象施設かどうかを確認する価値があります。
このほか、県外から移り住む場合は、国と自治体の移住支援金の対象になることがあります。条件は自治体ごとに異なるため、勤務先が決まったら住む予定の市町にも確認しておきましょう。
奨学金の返還補助は、年収の数字には出てこないのに手残りを確実に増やしてくれます。ただし一定期間その職場で働くことが前提なので、条件をよく読んで、自分の生活設計と合うかを考えてから使ってください。
エリア別の傾向と、転職を成功させる進め方
県内を4つのエリアに分けて、傾向を整理します。
※区域区分は長崎県薬剤師確保計画によります。それ以外の記述は、求人票で示される条件と地理的な条件をふまえた当サイトの整理です。
失敗しないための4つのポイント
- ① 県ではなく市町村で比べる:長崎市・佐世保県北・県央・県南・離島で、まったく別の市場だと考える
- ② 病院と薬局を分けて考える:不足しているのは主に病院。志望先によって、求められ方も条件も変わる
- ③ 条件のよさの理由を聞く:人材が足りないのか、直前に退職者が出たのか、業務量が多いのかを先に確かめる
- ④ 通勤を体験する:長崎は坂が多く、地図上の距離と実際の通勤時間が一致しにくい。可能なら同じ時間帯に走ってみる
求人の総量が限られる地域では、複数の窓口に希望を伝えて紹介を待つほうが効率的です。「長崎市希望」「離島も検討」のようにエリアを具体的に伝えると、紹介の精度が上がります。
質問への答えが具体的な数字で返ってくる職場は、運用が整っていることが多いです。「状況によります」ばかりなら、入職後に自分で仕組みを作る覚悟が要るかもしれません。答え方そのものも、判断材料にしてみてください。
よくある質問
まとめ
長崎県の薬剤師転職について、要点を整理します。
- 長崎県は病院が「薬剤師少数都道府県」、薬局は「多数でも少数でもない県」。足りていないのは主に病院の薬剤師
- 長崎医療圏を除く7医療圏の病院が薬剤師少数区域。五島0.39、対馬0.47と、離島ほど数字が低い
- 人口10万人あたりでは長崎市266.5人、佐世保市188.9人。県単位ではなく市町村単位で比べる
- 県別の年収統計はない。全国平均566万7,900円を基準に、手当の内訳と奨学金返還補助まで含めて比べる
長崎は、数字を見るほど「県でひとくくりにできない県」だとわかります。だからこそ、地域と業態を絞って比べれば見通しは立てやすくなります。気になる求人を見つけたら、条件の理由まで確かめて、自分に合うかを見極めてください。あなたの転職がよい形で実りますように。
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出典・参考(いずれも2026年9月時点で確認)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

