調剤薬局からドラッグストアへ転職した体験談|年収・働き方のリアル

調剤薬局からドラッグストアへ転職した体験談|年収・働き方のリアル

この記事を書いた人

くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。

調剤薬局からドラッグストアへの転職を考えるとき、「本当に年収は上がる?」「調剤とどう違う?」と気になる方は多いはずです。この記事では、調剤薬局からドラッグストアへ転職した薬剤師によくあるケースをモデルケースとしてまとめたうえで、年収の話を公的統計で確認できる範囲まで整理します。良かった点だけでなく、思っていたのと違った点も率直に紹介します。

この記事の結論

調剤薬局からドラッグストアへの転職は、「年収アップ・知識の幅が広がる」というメリットと、「土日勤務・調剤以外の業務が増える」というギャップが表裏一体の転職です。求人票だけでは分かりにくい部分を事前に確認できるかどうかが、後悔しないための分かれ目になります。

  • 公的統計に業態別の薬剤師年収の区分はなく、「必ず上がる」と言い切れるデータは存在しない
  • 転職者全体でも、賃金が下がった人は約3割いる
  • 確認すべきは、調剤併設かどうか・土日祝の出勤頻度・調剤以外の業務範囲・異動の範囲
この記事の体験談について

本文で紹介するのは、調剤薬局からドラッグストアへ転職した薬剤師に共通してみられる論点を、読みやすさのために一人の人物像にまとめたモデルケースです。特定の個人の事例ではなく、実在する企業を評価するものでもありません。ここでは仮に「Aさん(30代)」として紹介します。統計の数値は、厚生労働省が公表している資料にもとづいて記載しています。

目次

調剤薬局とドラッグストアは何が違うのか

まず前提として、ドラッグストアには「調剤併設型」と「調剤のない店舗」があります。この違いが、転職後の働き方をいちばん大きく左右します。調剤併設型なら処方箋の調剤を続けられますが、調剤コーナーのない店舗では、市販薬の販売と接客が業務の中心になります。

比較項目
調剤薬局
ドラッグストア
主な業務
調剤・服薬指導・在宅対応が中心
調剤に加えて市販薬の販売・接客・売り場業務
営業時間
門前の診療時間に連動し、閉局時間が決まりやすい
営業時間が長く、交代制のシフトが中心
休日
日曜・祝日が休みの店舗が多い
土日祝も営業し、シフトで休みを取る
求められる知識
門前の診療科目に関する処方の知識が深くなる
市販薬・健康食品・化粧品まで知識の幅が広がる
一緒に働く人
薬剤師と調剤事務が中心の少人数
登録販売者や販売スタッフを含む多職種

※一般的な勤務形態の傾向を整理したものです。実際の業務範囲・営業時間・休日は店舗や企業により異なります。

くらげのひとこと

求人票の「ドラッグストア」という表記だけでは、調剤併設かどうかは分かりません。応募前にここを確認しないと、「調剤を続けられると思っていたのにできなかった」というもっとも痛いすれ違いが起きます。最初に聞くべき質問です。

年収は本当に上がるのか、データで確認する

この転職でいちばん多い動機が「年収アップ」です。ただし、ここは正確に書いておきます。調剤薬局とドラッグストアの薬剤師年収を、業態別に直接比較できる公的統計は存在しません。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」は職種として「薬剤師」を集計していますが、勤務先を調剤薬局とドラッグストアに分けた区分は公表されていません。「医師・歯科医師・薬剤師統計」も、薬局の従事者という区分に調剤併設のドラッグストアが含まれるため、両者を切り分けられません。求人サイトや転職メディアが示す業態別の年収は、いずれも各社が独自に集計した数値です。

公的統計で確認できる薬剤師の年収

確認できるのは、薬剤師全体の水準です。

区分
平均年収
薬剤師(一般労働者)
約566万8千円(平均年齢40.1歳・平均勤続年数8.6年)
一般労働者の全職種平均
約545万6千円
薬剤師(短時間労働者)
約264万円

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種別・産業計)。年収はきまって支給する現金給与額の12か月分と年間賞与その他特別給与額を合算した値です。産業計の数値であり、業態別の内訳ではありません。

転職者全体では、約3割が「下がった」

もうひとつ押さえておきたいのが、転職そのものの結果です。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(2026年8月31日公表)によると、転職した人の賃金は前職と比べて増加が40.8パーセント、変わらないが25.5パーセント、減少が31.0パーセントでした。増加が減少を9.8ポイント上回る一方、約3割は下がっています。全産業の数値ではありますが、「転職すれば上がる」と決めつけないための目安になります。

年収を比べるときの実務的なコツ

業態の平均値を比べるより、目の前の求人票を「時間あたり」で比べるほうが確実です。年収を年間の総労働時間で割ると、休日数や営業時間の差が反映されます。年収が50万円上がっても、年間休日が15日減っていれば実質的な単価はほぼ変わらない、ということが起こります。

モデルケース:転職前の状況と決め手

Aさんは、新卒から30代前半まで調剤薬局で働いていました。仕事そのものにやりがいは感じていたものの、給与がなかなか上がらず、同年代の友人と比べて伸び悩みを感じていたといいます。また、毎日同じ門前の処方箋を扱ううちに、「もっと幅広い知識を身につけたい」「患者さんの暮らしにもっと近いところで働きたい」という気持ちも芽生えていました。

そんなとき目に留まったのが、ドラッグストアの求人でした。調剤よりも年収が高めに設定されている求人が多く、市販薬や健康相談を通じて地域の人と関われる点に魅力を感じ、転職活動を始めることにしたそうです。

決め手になったのは「調剤併設」だったこと

Aさんが選んだのは、調剤併設のドラッグストアです。調剤の経験を活かしながら、市販薬や接客にも関われる点が自分の希望に合っていると感じたといいます。面接では「調剤の経験を活かしつつ、市販薬や健康相談の知識も広げて、地域の人の健康を支えたい」という志望動機を伝えました。

応募前には、残業の実態と異動の範囲を担当者を通じて確認してもらいました。この2点を先に潰しておいたことが、入職後の納得感につながったとAさんは振り返っています。

転職して良かったこと

実際に働いてみて、Aさんが「転職して良かった」と感じたのは次のような点でした。

良かったこと
  • 調剤薬局のときより年収が上がった
  • 市販薬や健康食品の知識が広がり、相談に乗れる幅が増えた
  • 来客対応を通じて接客力が身についた
  • 季節商品や売り場づくりなど、調剤にはない仕事の面白さがあった
  • 登録販売者や販売スタッフと組むことで、視野が広がった

特に大きかったのは、年収アップと知識の広がりだったそうです。処方箋の調剤だけでなく、市販薬を求めて来る人に「この症状ならこちらがおすすめです」と提案できるようになり、薬剤師としての引き出しが増えた実感があったといいます。受診が必要な症状かどうかを見極めて医療機関へ促す場面もあり、地域の入口としての役割を担う手応えがあったとのことでした。

思っていたのと違った・大変だったこと

一方で、入職してから「思っていたのと違った」と感じた点もありました。事前に知っておけば心の準備ができた、とAさんは振り返ります。

大変だった・ギャップを感じたこと
  • 土日や祝日の勤務、シフト制で生活リズムが変わった
  • 調剤以外の業務(レジ・品出し・発注)も担当することがあった
  • 立ち仕事や接客が多く、体力的な負担を感じる日もあった
  • 店舗によっては転勤や異動の可能性があった
  • 調剤室に薬剤師が1人という時間帯があり、相談できる相手がいなかった

特に、調剤に集中していた頃と比べて担当する業務の幅が広いことに、最初は戸惑ったそうです。とはいえ、これらは事前に確認しておけば想定できた点でもあり、「下調べの大切さを実感した」とのことでした。

くらげのひとこと

ドラッグストアは「年収が高い」という良い面が目立ちますが、土日勤務や幅広い業務とセットなことが多いです。良い面と大変な面の両方を知ったうえで選べば、入職後のギャップはぐっと減らせますよ。特に体力面は、20代と30代後半では感じ方がかなり変わります。

向いている人・慎重に考えたい人

Aさんの体験を踏まえると、調剤薬局からドラッグストアへの転職は、次のような人に向いていそうです。

向いている人
慎重に考えたい人
年収を上げたい
土日や祝日は休みたい
市販薬や接客にも関わりたい
調剤の業務に専念したい
仕事の幅を広げたい
転勤や異動は避けたい
多職種と組んで働きたい
立ち仕事の負担を減らしたい
店舗運営やマネジメントに関心がある
在宅医療や専門的な処方に深く関わりたい

Aさん自身は「大変なこともあるけれど、年収も知識も広がって、自分には合っていた」と感じているそうです。ただし、これはあくまで一つのモデルケースです。土日休みを重視する人や調剤に専念したい人には、慎重な見極めが必要になります。

応募前に確認すべき7項目

この転職で起こるすれ違いは、確認すれば防げるものがほとんどです。面談や職場見学で聞く項目のたたき台として、次の7つを使ってください。

確認する項目
聞き方の具体例
調剤併設かどうか
配属候補の店舗に調剤室はあるか。1日の処方箋枚数は何枚か
土日祝の出勤頻度
月あたり何回の土日出勤になるか。連休は取れるか
調剤以外の業務範囲
レジ・品出し・発注はどこまで担当するか。1日の時間配分は
勤務時間と閉店時間
最も遅いシフトの終業時刻は何時か。直近半年の平均残業時間は
異動の範囲
労働条件通知書の「就業の場所(変更の範囲)」はどう書かれるか
提示年収の内訳
賞与は含まれるか。みなし残業は何時間分か。年間休日は何日か
薬剤師の人員体制
調剤室に薬剤師が1人になる時間帯はあるか。ヘルプ体制は

なかでも見落とされやすいのが「異動の範囲」です。全国に展開する企業では、転居をともなう異動が前提の求人もあります。2024年4月から、労働条件の明示ルールが改正され、就業場所と業務の「変更の範囲」を書面で明示することが義務づけられました。労働条件通知書の該当欄は、入職前に必ず目を通しておきましょう。

よくある質問

この体験談は実在の人物の話?▼

いいえ。特定の個人の実話ではなく、調剤薬局からドラッグストアへ転職した薬剤師によくみられる論点をまとめたモデルケースです。実際の状況や感じ方は、店舗・地域・個人によって異なります。統計の数値は厚生労働省の公表資料にもとづいています。

ドラッグストアへ転職すると、必ず年収は上がる?▼

必ず上がるとは限りません。そもそも、調剤薬局とドラッグストアの薬剤師年収を業態別に比較できる公的統計はありません。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」では、転職した人の賃金は増加40.8パーセント、変わらない25.5パーセント、減少31.0パーセントでした。業態の平均ではなく、目の前の求人票の内訳と年間休日で判断してください。

ドラッグストアで調剤業務はできなくなる?▼

店舗によります。調剤併設型のドラッグストアであれば、調剤業務にも引き続き携われます。一方で調剤コーナーのない店舗では、調剤スキルを活かす機会が減ることがあるため、応募前に「配属候補の店舗が調剤併設かどうか」を必ず確認しましょう。企業単位では併設店を持っていても、配属先が非併設ということもあります。

転職前に何を確認しておくべき?▼

調剤併設かどうか、土日祝勤務の頻度、調剤以外の業務範囲、最も遅いシフトの終業時刻、異動の範囲、提示年収の内訳、薬剤師の人員体制の7点です。いずれも求人票だけでは分かりにくいため、担当者に事前確認してもらうと入職後のギャップを減らせます。

調剤しか経験がなくても採用される?▼

調剤経験は評価される要素です。調剤併設店では処方箋対応ができる人材が必要なため、むしろ歓迎されます。市販薬の知識は入職後の研修や実務で補える範囲なので、面接では「調剤で培った疑義照会や服薬指導の経験を、市販薬の相談にも活かしたい」といった形で接続して伝えると評価されやすくなります。

合わなかった場合、調剤薬局に戻れる?▼

戻ること自体は可能です。ただし、非併設の店舗で調剤から長く離れると、処方箋の応需経験にブランクが生じます。併設店を選んで調剤の実務を継続しておくと、選択肢を狭めずに済みます。短期間での再転職は理由を問われやすいため、その点も含めて考えておきたいところです。

子育て中でもドラッグストアで働ける?▼

働けますが、土日祝の営業と遅いシフトが前提になるため、家庭の状況と合うかを先に確認する必要があります。短時間勤務の対象年齢や、土日を固定で休めるかどうかは企業により異なります。2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対する柔軟な働き方の措置が事業主に義務づけられているので、その運用状況もあわせて確認しましょう。

年収が上がっても損することはある?▼

あり得ます。提示年収にみなし残業が含まれていたり、年間休日が前職より少なかったりすると、時間あたりの単価はほとんど変わらないことがあります。年収を年間の総労働時間で割って比べると、条件の実態が見えやすくなります。

まとめ

調剤薬局からドラッグストアへの転職体験を、ポイントとして整理します。

  • 転職のきっかけは、年収アップと知識の幅を広げたいという思い
  • 良かったのは、年収アップ・市販薬の知識・接客力・仕事の幅・多職種との連携
  • 大変だったのは、土日勤務・調剤以外の業務・立ち仕事・異動の可能性
  • 公的統計に業態別の薬剤師年収の区分はなく、「必ず上がる」と言えるデータはない
  • 転職者全体でも、賃金が下がった人は31.0パーセントいる
  • 最重要の確認事項は「配属候補の店舗が調剤併設かどうか」
  • 年収は業態の平均ではなく、年間休日を含めた時間あたりで比べる

調剤薬局からドラッグストアへの転職は、年収アップや知識の広がりといった魅力がある一方で、働き方が大きく変わる転職でもあります。誰かの体験そのままが自分に当てはまるわけではありません。モデルケースを参考にしつつ、公表されているデータと目の前の求人票を突き合わせて、納得のいく判断をしてください。

※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和7年雇用動向調査」(2026年8月31日公表)にもとづきます。賃金構造基本統計調査は職種別・産業計の数値であり、業態別の内訳ではありません。雇用動向調査は全産業の転職入職者を対象とした数値です。
※本文で紹介した体験談は、調剤薬局からドラッグストアへ転職した薬剤師によくみられる論点をまとめたモデルケースであり、特定の個人の事例ではありません。
※働き方・年収・求人の状況は、店舗や地域・時期によって異なります。個別の条件は求人ごとにご確認ください。

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