この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「今の職場で長く働き続けられるだろうか」。結婚やこの先のライフステージの変化を意識したとき、働き方を見直したいと考える女性薬剤師は少なくありません。求人票には「産休・育休制度あり」と書かれていても、実際に取得した人がいるかどうかまでは分からないからです。
この記事では、女性薬剤師が長く働ける環境を求めて転職したケースをモデルケースとしてまとめたうえで、職場選びの判断材料になる公的な統計と、2025年に施行された育児・介護休業法の改正内容を整理します。「制度がある職場」ではなく「制度が使われている職場」を見分けるための記事です。
この記事でわかること
- 女性薬剤師が「長く働けるか」を判断するときに見るべき5つのポイント
- 2025年の育児・介護休業法改正で、職場に義務づけられた内容
- 業態ごとの勤務時間・休みの取りやすさの傾向
- 面接では聞きにくい産休・育休の実績を確認する方法
本文で紹介するのは、女性薬剤師の転職で共通してみられる論点を、読みやすさのために一人の人物像にまとめたモデルケースです。特定の個人の事例ではなく、実在する職場やサービスを評価するものでもありません。統計や制度の説明は、厚生労働省が公表している資料にもとづいて記載しています。
データで見る女性薬剤師の働き方
まず、前提となる数字を確認しておきます。薬剤師は、女性が6割を占める職種です。厚生労働省「令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計」(2025年12月23日公表)によると、全国の届出薬剤師数は329,045人で、うち女性は203,979人。全体の62.0パーセントを女性が占めています。
出典:厚生労働省「令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)
職場全体で見れば女性の多い職種ですが、1店舗あたりの人数が少ない調剤薬局では、身近に産休・育休を取った先輩がいないというケースが起こります。「女性が多い職種だから安心」と考えるのではなく、応募先の店舗・部署単位で実態を確認することが大切です。
育児休業そのものは、すでに広く使われる制度になっています。厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」(2025年7月30日公表)によると、女性の育児休業取得率は86.6パーセントで、前回調査の84.1パーセントから2.5ポイント上昇しました。男性も40.5パーセントと過去最高です。ただし有期契約労働者の女性の取得率は73.2パーセントと、正社員を含む全体より低い水準にとどまっています。契約社員やパートで働く場合は、自分が育児休業の対象になるかを事前に確認しておきたいところです。
私が働いてきた薬局でも、薬剤師2名から3名の店舗では「誰かが休むと回らない」という空気がありました。制度の有無より、人員に余裕があるかどうかが、実際に休める職場かを分けます。求人票で見るなら、店舗の常勤人数とヘルプ体制の記載が判断材料になりますよ。
モデルケース:転職前の状況(Cさん・20代後半)
Cさんは調剤薬局で働く女性薬剤師でした。仕事は好きでしたが、残業が多く、繁忙期には帰りが遅くなる日も少なくありません。職場には女性スタッフが少なく、産休や育休を取得した先輩がいないことから、「この先ライフステージが変わったとき、ここで働き続けられるのだろうか」という不安を感じていました。
結婚を意識し始めたことも、転職を考えるきっかけになりました。今すぐではなくても、将来を見すえて「長く働ける環境に移っておきたい」という思いが強くなっていきます。
不安の正体は「前例がないこと」だった
Cさんが感じていた不安を分解すると、次の3つに整理できます。いずれも制度そのものではなく「前例がない」ことに起因する不安です。
- 就業規則には制度があるが、実際に取得した人を見たことがない
- 薬剤師の人数が少なく、自分が抜けたときに回るイメージが持てない
- 復帰後にどんな働き方ができるのか、上司にも前例がなく答えが返ってこない
この3つは、転職先を選ぶときにそのまま確認項目に変換できます。次の章で具体的に見ていきます。
転職活動でやったこと:確認した5つのポイント
Cさんは、薬剤師の求人を扱う転職エージェントに登録しました。求人票だけでは分からない部分を担当者に確認してもらえる点が、働き方を重視するうえで心強かったといいます。実際に確認したのは、次の5点です。
ポイントは、「制度はありますか」ではなく「何人が使っていますか」と数で聞くことです。制度の有無は就業規則を見れば分かりますが、運用の実態は数字でしか見えません。Cさんは「制度の有無」ではなく「実際に取得・利用している人がいるか」まで確認したことで、納得して職場を選べたといいます。
面接で直接聞きにくいことは代わりに確認してもらう
産休・育休や結婚の予定にかかわる話題は、面接の場で自分から切り出しにくいと感じる人が多いものです。また、面接官の側も、結婚や出産の予定を採用の判断材料にすることは男女雇用機会均等法の趣旨に反するため、質問を避ける傾向があります。だからこそ、求職者側から制度の運用実態を知りたい場合は、担当者を通じて事前に確認してもらうのが現実的です。
転職して良かったこと
転職後、Cさんが「良かった」と感じたのは次のような点でした。
- 残業が減り、生活にゆとりが生まれた
- 産休・育休を取得して復職した先輩がいて、将来の見通しが立った
- 短時間勤務やパートへの切り替えなど、働き方を選べる制度が実際に運用されていた
- 同じように働く女性の先輩が身近にでき、相談できる相手ができた
- 店舗の人数に余裕があり、急な休みを言い出しやすくなった
なかでも大きかったのは、「この先ライフステージが変わっても働き続けられる」という安心感でした。将来の不安が軽くなったことで、目の前の仕事にも前向きに取り組めるようになったといいます。
気をつけたいこと
一方で、Cさんが「気をつけたほうがよい」と感じた点もあります。
- 年収だけで選ぶと、働きやすさで後悔することがある
- 制度が「ある」だけでなく「使われているか」まで確認が必要
- 短時間勤務を選ぶと収入が下がるため、その前提で家計を考えておく
- 契約社員やパートは、育児休業の対象になる条件を事前に確認しておく
- 異動の範囲が広い会社では、復帰後の勤務先が変わる可能性がある
特に見落とされやすいのが、異動の範囲です。入職時の店舗が家から近くても、転居をともなう異動がある会社では、子育て期に通勤時間が延びることがあります。雇用契約書に記載される「就業の場所(変更の範囲を含む)」は、入職前に必ず確認しておきたい項目です。
知っておきたい制度:産休・育休と2025年の法改正
職場を比較するときは、「その会社が独自に用意している制度」と「法律で義務づけられている制度」を分けて考えると判断しやすくなります。法律で決まっている部分は、どの職場でも共通の最低ラインだからです。
法律で定められている主な制度
2025年10月から始まった「柔軟な働き方を実現するための措置」
女性薬剤師の職場選びに直接影響するのが、2025年10月1日に施行された改正です。事業主は、3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対し、次の5つのうち2つ以上の措置を講じることが義務づけられました。労働者は、そのなかから1つを選んで利用できます。
- 始業時刻の変更(フレックスタイム制または時差出勤)
- テレワーク等(1か月につき10日以上、原則として時間単位で取得できるもの)
- 保育施設の設置運営等(保育費用の補助なども含まれる)
- 養育両立支援休暇の付与(1年につき10日以上)
- 短時間勤務制度
これまで短時間勤務は3歳未満の子が対象でしたが、この改正により3歳から小学校就学前という「保育園の後半から入学前まで」の期間も、なんらかの柔軟な働き方を選べる状態になりました。応募先が5つのうちどれを選んでいるかは会社ごとに異なるため、面談で確認しておくと、復職後のイメージが具体的になります。
「柔軟な働き方を実現するための措置として、御社は5つのうちどれを選択されていますか」と聞くと、就業規則を整備している会社なら明確に答えが返ってきます。答えがあいまいな場合は、制度の運用がまだ追いついていない可能性があります。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法」関連ページおよび改正内容の公表資料(2025年4月・10月施行分)。制度の詳細や適用範囲は個別の事情により異なるため、具体的な取り扱いは勤務先または管轄の労働局にご確認ください。
業態別に見る働きやすさの傾向
同じ薬剤師でも、業態によって勤務時間の組み方や休みの取りやすさは変わります。あくまで一般的な傾向であり、個々の職場によって差が大きい点は前提としたうえで、比較の出発点として整理します。
※上表は一般的な勤務形態の傾向を整理したものです。実際の勤務時間・休日・制度の運用は職場ごとに異なります。
長く働けるかどうかを考えるとき、「今の生活に合うか」だけでなく「5年後の生活に合うか」で見るのがコツです。今は残業ができても、子育て期に入ると同じ働き方は難しくなります。そのときに働き方を変えられる選択肢が社内にあるかどうかが、結果的に定着を左右します。
よくある質問
まとめ
女性薬剤師が長く働ける職場を選ぶためのポイントを整理します。
- 薬剤師は女性が62.0パーセントを占めるが、店舗単位では前例がないこともある
- 確認すべきは制度の有無ではなく、直近3年の取得人数と復職後の在籍状況
- 2025年10月から、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者向けに、柔軟な働き方の措置が5つのうち2つ以上義務づけられた
- 業態で勤務時間の傾向は変わるため、「5年後の生活に合うか」で選ぶ
- 短時間勤務は収入が下がる前提で、給与の考え方を事前に確認する
- 面接で聞きにくい話は、担当者を通じて事実として確認してもらう
長く働けるかどうかは、制度そのものより「実際に使われているか」に表れます。先輩が産休・育休を取って戻ってきているか、短時間勤務で働いている人がいるか。ここを数字で確認できると、入職後のギャップはぐっと減ります。薬剤師はライフステージが変わっても働き方を選びやすく、復職もしやすい資格です。今の職場に不安があるなら、余裕のあるうちに情報を集めておくのが、いちばん損の少ない選び方だと思います。
転職は、誰かの体験がそのまま自分に当てはまるわけではありません。公表されている制度と数字を土台にしながら、自分のライフプランに合う職場かどうかを見極めていきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計は厚生労働省「令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)および「令和6年度雇用均等基本調査」(2025年7月30日公表)にもとづきます。
※本文で紹介した体験談は、女性薬剤師に共通してみられる論点をまとめたモデルケースであり、特定の個人の事例ではありません。
※制度・働き方・求人の状況は職場や時期によって異なります。個別の取り扱いは勤務先または管轄の労働局にご確認ください。

