この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「まだ20代で転職を考えるのは早すぎないか」「すぐ辞める人だと思われないか」。20代からの相談で、いちばん多いのがこの2つです。
先に結論をお伝えします。20代は、経験の中身よりこれから何を任せられるかで見てもらえる唯一の時期です。厚生労働省の調査では、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8パーセント。3人に1人が3年以内に辞めており、早期の離職そのものは珍しくありません。
そしてもう1つ、20代で動く意味を裏づける数字があります。薬剤師の平均年収は20代前半が408万3,700円、20代後半が494万7,600円。この5年間で86万円上がり、これは全年代を通じて最も大きな伸び幅です。どの環境で20代を過ごすかが、そのまま後の条件に反映されます。
この記事でわかること
- 20代が転職市場でどう見られているか。第二新卒の扱いと期限
- 選考で見られる3つのことと、面接での答え方
- 年代別の年収データで見る、20代の伸び幅
- 転職先タイプごとの相性と、選ぶときの基準
- 20代のうちにやっておくと、30代以降が変わること
20代の立ち位置|ポテンシャルで見てもらえる期間
20代の転職で評価の中心になるのは、実績よりも伸びしろです。社会人経験がおおむね1年から3年程度までなら第二新卒として扱われ、経験の量ではなく、学ぶ姿勢や人と関わる力で判断してもらえます。第二新卒に法律上の定義はなく、求人ごとに条件が違うため募集要項での確認が必要ですが、この枠が使えるのは20代のうちだけです。
3年以内に辞める人は3人に1人
「早すぎるのでは」という不安には、公的なデータで答えられます。厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者、令和7年10月公表)によると、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8パーセントでした。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」。薬剤師だけを抜き出した統計ではありません。
「自分だけが続かない」と思う必要はありません。ただし選考では年齢ではなく実務経験の年数で見られます。「20代だから大目に見てもらえる」わけではなく、1年目なら1年目として、3年目なら3年目として、どこまで任されているかを確認されます。
私自身、20代のうちに一度環境を変えました。当時は「早すぎるかな」と迷いましたが、若いうちに複数の職場のやり方を見ておけたことは、その後の選択肢を考えるうえでプラスになりました。ただ勢いだけで動くと、同じ理由でまた辞めることになります。
選考で見られる3つのこと
20代の選考で確認されるのは、おおむね次の3点です。どう答えるかまで含めて整理します。
3つ目の言い換えは、うそをつくという意味ではありません。「残業が多い」なら「服薬指導に時間をかけられる環境で働きたい」、「教えてもらえない」なら「指導を受けながら基礎を固めたい」。事実は変えずに、向かう先を主語にするだけです。
2つ目については、書類の段階から効きます。「調剤薬局で2年」とだけ書いた書類は、採用側に何も伝えません。1日の枚数、扱った診療科、一包化や在宅の件数、後輩や実習生の指導経験。この4点を書き出すだけで通過率が変わります。
面接で困るのは「前の職場の不満」を聞かれたときではなく、「うちで何がしたいですか」と聞かれたときです。前者は答えを用意している人が多いのに、後者は詰まる。逆にしておくと通ります。
20代の年収と、伸び幅の大きさ
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査による、年代別の平均年収です。20代がどの位置にいるかを確認してください。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」。きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加えて算出した値です。
この表の読み方は2つあります。1つは、20代前半が全年代で最も低いこと。これは賞与が満額つかない時期を含むためで、焦る必要はありません。もう1つは、20代前半から後半の伸びが86万円と、どの区分の変化より大きいことです。
つまり20代は、年収そのものより伸び方が決まる時期です。この段階で年収の数字だけを追って職場を選ぶより、何を身につけられるかで選んだほうが、30代以降の水準に効いてきます。業態による年収差もまだ大きく開いていない時期なので、なおさらです。
20代のうちは、月に2万円の差で職場を決めないほうがいいと思っています。その2万円より、3年後に何が語れるかのほうが、あとで効いてきます。
転職先タイプ別の相性マップ
20代で検討されやすい業態と、この年代での相性の目安です。◎○△は、募集の出やすさと未経験からの入りやすさをもとにした編集部が求人動向をもとに付けた目安であり、外部の調査データによるものではありません。
平均年齢は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」による施設別の値です。なお募集や採用では、年齢にかかわりない均等な機会を与えることが法律で定められています。
この表でいちばん意識してほしいのは病院の行です。病院の平均年齢は42.5歳で、薬局の46.8歳より4歳以上若い職場です。年齢が上がるほど入りにくくなる傾向があるため、病院での経験を積みたいなら20代から30代前半のうちに動くのが現実的です。
私は病院から調剤薬局へ移りましたが、逆の順番は年齢が上がるほど難しくなります。病院に興味があるなら、迷っている時期に一度求人を見ておくだけでも違います。
20代のうちに積んでおくと効くもの
30代以降の選択肢は、20代の過ごし方でかなり決まります。転職するかどうかに関係なく、次の4つは進めておく価値があります。
1つ目は誤解されがちなので補足します。かかりつけ薬剤師として評価されるための要件に、保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験があります。この3年は薬局が変わっても通算されます。転職でリセットされるのは、その薬局での在籍期間のほうです。「3年は同じ職場にいないといけない」というのは誤解です。
なお、病院薬剤師としての勤務経験も1年を上限として、この勤務経験に含めることができます。病院から薬局へ移ることを考えている方にとっては、1年以上の病院経験に制度上の意味があるということです。
記録を残していない人が本当に多いです。5年経ってから書き出そうとしても、細かい数字は出てきません。今日から手帳の隅にでも書いておくと、次の面接で自分を助けます。
失敗しないための3つの注意点
3つ目に関連して、20代がいちばん確認すべきなのは配属予定店舗の薬剤師の人数です。2人以上いれば、わからないことをその場で聞けます。離職率のデータが示すとおり、小規模な事業所ほど定着率は下がります。会社の規模ではなく、自分が働く店舗に何人いるかを聞いてください。
見学に行けるなら必ず行ってください。30分いるだけで、求人票ではわからないことが伝わってきます。忙しい時間帯にスタッフがどう声をかけ合っているか。そこがいちばん正直です。
よくある質問
まとめ
20代の転職について、要点を整理します。
- 大学卒の3年以内離職率は33.8パーセント。早期の離職は例外ではないが、理由の説明は必ず求められる
- 年収は20代前半408万3,700円から後半494万7,600円へ。約86万円の伸びは全年代で最大
- 病院は平均年齢42.5歳。業態をまたぐ移動は20代から30代前半のうちが現実的
- 保険薬局での勤務経験3年は薬局をまたいで通算される。転職しても失われない
20代で決めるべきは、次の職場そのものよりも「3年後に何が語れる状態でいたいか」です。そこが決まれば、求人の見え方が変わります。まずは今の職場で任されていることを数字で書き出すところから始めてみてください。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年調査・年齢階級別の平均年収)
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(施設別の平均年齢)
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(かかりつけ薬剤師の要件)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

