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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「かかりつけ薬剤師として活動しているけれど、転職したらどうなるのだろう」。気になっている方は多いはずです。
結論を先に言うと、転職するとその薬局での在籍期間を満たし直す必要があります。ただし2026年6月1日施行の調剤報酬改定で、このハードルは大きく下がりました。在籍期間が1年以上から6か月以上に、保険薬局での勤務経験が5年以上から3年以上に短縮されています。
さらに、この改定では患者さんからの同意の取り方そのものが変わりました。この記事では最新の要件を整理したうえで、転職で何が引き継がれ何がリセットされるのか、そして在籍期間のカウントに関する見落としやすい注意点まで解説します。
📌 この記事でわかること
- 2026年6月改定で変わった点の全体像
- 個人の要件と、新設された薬局側の要件
- 転職で引き継がれるものと、リセットされるもの
- 在籍期間のカウントに関する見落としやすい注意点
- かかりつけ薬剤師の経験が転職で評価される制度上の理由
- 転職先を選ぶときに確認しておくべきこと
結論|転職への影響は、以前より小さくなった
要点:在籍期間はリセットされるが6か月に短縮。実務経験と研修認定は引き継がれる。病院での経験も一部が算入できるようになった。
かかりつけ薬剤師として対応するには、勤務先の薬局での在籍期間を含むいくつかの要件を満たす必要があります。そのため転職すると、新しい薬局で在籍期間を満たし直すまでは、その区分での算定ができなくなります。
ただし2026年6月1日施行の改定で、要件が全体的に緩和されました。とくに転職を考えている方にとって大きいのは次の2点です。
- 当該薬局での在籍期間が1年以上から6か月以上に短縮。転職後、活動を再開できるまでの期間が半分になりました
- 保険薬局での勤務経験が5年以上から3年以上に短縮。さらに保険医療機関の薬剤師としての勤務経験がある場合、1年を上限として算入できるようになりました
2点目は意外と知られていませんが、病院から薬局へ移った方にとって非常に大きな変更です。病院薬剤師の経験が最大1年分カウントされるため、薬局での経験が2年あれば要件を満たせる計算になります。「かかりつけ薬剤師は薬局一筋の人のもの」という状況ではなくなりました。
改定の話題は在籍期間の短縮ばかりが取り上げられますが、実務への影響が大きいのは勤務経験が5年から3年になったほうだと感じています。私自身も病院を経て薬局に移った身なので、病院での経験が算入できるようになったのは素直にありがたい変更です。
2026年6月改定で変わったこと
要点:かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、服薬管理指導料に統合された。肩書きではなく実際の対応実績を評価する形に変わっている。
まず全体像を押さえます。2026年6月1日施行の調剤報酬改定で、かかりつけ薬剤師をめぐる仕組みは大きく組み替えられました。
同意書がなくなり、お薬手帳での対応に変わった
実務上いちばん影響が大きいのがこの変更です。かかりつけ薬剤師の業務内容や意義、役割を説明したうえで患者さんまたはご家族から同意を得る点は変わりませんが、所定の様式による同意書の取得は廃止されました。
お薬手帳を用いた新しい方法
- お薬手帳の、患者さんの基礎情報(氏名、アレルギー歴、副作用歴、主な既往疾患など)および薬剤師の氏名の近くに「かかりつけ」の文字を記入する
- これらが記載されたページの写しなどを保管し、薬剤服用歴等にその旨を記載する
患者さんにとっては署名の手間がなくなり、心理的なハードルが下がりました。一方で記載漏れや写しの保管漏れが起きやすくなったとも言えます。転職先でどのような手順を整えているかは、入職後に確認しておきたいところです。
同意書のやり取りが不要になったのは、現場としては本当に楽になりました。ただ手帳への記載と写しの保管という作業に置き換わっただけとも言えます。転職の面接で「かかりつけの同意はどう運用していますか」と聞いてみると、その薬局が改定にきちんと対応できているかが見えてきます。
要件を整理する|個人と薬局の両方が必要
薬剤師個人の要件
⚠ 在籍期間のカウントには注意点があります
厚生労働省の疑義解釈資料では、当該薬局に継続的に在籍している期間のカウントについて、週31時間以上勤務した期間のみを通算するとの考え方が示されています。
つまり、入職直後に時短勤務から始めた場合、その期間は在籍期間に算入されない可能性があります。転職後すぐにかかりつけ薬剤師として活動したい方は、勤務時間の設定を入職前に確認しておいてください。
薬局側の要件
今回の改定で新たに加わった部分です。自分が要件を満たしていても、薬局が満たしていなければ算定できません。
- 上記の要件を満たすかかりつけ薬剤師を配置していること
- プライバシーに配慮した独立したカウンター等を設置していること
- 常勤薬剤師の平均在籍期間が1年以上、または管理薬剤師が継続して3年以上在籍していること
最後の項目は、転職先を選ぶうえで重要な意味を持ちます。スタッフの入れ替わりが激しい薬局は、この要件を満たせない可能性があるということです。裏を返せば、この要件を満たしている薬局は人が定着していると読み取れます。
なお、服薬管理指導料の「イ」を算定するには、地方厚生局長等への届出が必要です。届出は薬局が行いますが、届出書には薬剤師名などが記載されます。
「常勤薬剤師の平均在籍期間1年以上」という要件は、転職先を見極める材料としても使えます。面接で「かかりつけの薬局要件は満たしていますか」と聞くだけで、定着状況の話に自然につながります。直接「離職率はどうですか」と聞くより、ずっと聞きやすい質問だと思います。
転職すると、何が引き継がれ何がリセットされるか
整理すると、ゼロからやり直しになるわけではありません。個人に紐づく実務経験と研修認定はそのまま活きます。リセットされるのは在籍期間で、しかも6か月に短縮されています。
注意したいのは、在籍期間のカウントが週31時間以上勤務した期間に限られるという点です。入職時に勤務時間を抑えて始めると、その期間は算入されない可能性があります。早く活動を再開したいなら、入職時点から週31時間以上の勤務で契約できるかを確認しておいてください。
患者さんとの関係が引き継げないのは、正直さみしい部分です。ただ、築いてきた関係そのものは引き継げなくても、築き方は自分の中に残ります。転職先でも同じことができるという事実が、面接で語れる最大の強みになります。
かかりつけ薬剤師の経験が評価される制度上の理由
要点:薬局の体制加算の実績要件に、かかりつけ薬剤師による服薬指導の実施が含まれている。薬局側に採用する動機がある。
「かかりつけ薬剤師の経験は評価される」とよく言われますが、その理由は人柄やスキルの話だけではありません。制度上、薬局がかかりつけ薬剤師を必要とする仕組みになっています。
2026年6月の改定では、地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算が統合され、地域支援・医薬品供給対応体制加算が新設されました。この体制加算の実績要件のひとつに、かかりつけ薬剤師による服薬指導を一定程度実施していること(服薬管理指導料の「イ」を算定していること)が含まれています。
つまり、薬局にとってかかりつけ薬剤師の確保は、体制加算の取得に直結する経営上の課題です。要件を満たせる薬剤師を採用したい動機が、制度によってはっきり作られているということになります。
◎ 面接で伝えたい4つの要素
- 要件を満たしていること。勤務経験、研修認定、地域活動への参画状況を具体的に伝えます
- 担当していた患者数と、対応の中身。継続的な服薬管理やフォローアップの実績です
- フォローアップや訪問の経験。新設された加算に直結する部分なので、実績があれば必ず伝えてください
- 地域活動の内容。学校薬剤師、健康相談会、薬剤師会の活動など、参画した具体的な内容を挙げます
薬剤師の業務は対物から対人へと評価の軸が移っています。国の需給推計でも、需要を押し上げる要因として在宅業務や健康相談が挙げられていました。かかりつけ薬剤師の経験は、その流れの中心にある経験です。
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かかりつけ薬剤師としての経験を、実際の転職でどうアピールし、新しい職場でどう活かしたのか。判断の決め手になった要素は体験談からも見えてきます。
面接では「かかりつけ薬剤師をしていました」だけで終わらせず、担当していた人数と、実際に行ったフォローアップの内容まで話してください。新設された加算は実績を評価するものなので、そこに答えられる人材かどうかを採用側は見ています。
転職前に確認しておくこと
✅ 確認チェックリスト
- 転職先が薬局側の要件を満たしているか。独立カウンターの設置、常勤薬剤師の平均在籍期間または管理薬剤師の在籍年数
- 入職時点から週31時間以上の勤務になるか。在籍期間のカウントに関わります
- かかりつけ機能に力を入れている薬局か。服薬管理指導料の「イ」を算定しているか、届出をしているかを確認します
- フォローアップや訪問の体制があるか。新設された加算に対応できる運用になっているかを見ます
- 研修認定の更新時期。転職の慌ただしさで更新を逃さないよう、スケジュールを把握しておきます
- 地域活動に参画できる環境か。地域が変わる場合は、新しい地域での参画方法も確認します
- 現職の患者さんへの引き継ぎ。かかりつけ関係は引き継げないため、退職前に丁寧な説明が必要です
これらは求人票からは読み取れません。面接で聞くのが確実ですが、薬局側の要件を満たしているかどうかや、算定の実績といった内容は、転職エージェントの担当者に事前確認を依頼することもできます。項目を挙げて依頼すると動いてもらいやすくなります。
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研修認定は更新が必要です。転職の慌ただしさの中で単位の取得が止まり、気づいたら期限が近かった、という話は実際にあります。転職を考え始めた時点で、更新時期と必要単位を一度確認しておいてください。要件のうち、自分の努力だけで守れるのはここだけです。
よくある質問
まとめ
この記事のポイント
- 2026年6月1日施行の改定で要件が緩和された。在籍期間は1年以上から6か月以上、勤務経験は5年以上から3年以上、勤務時間は週32時間以上から週31時間以上へ
- 病院薬剤師の経験が1年を上限に算入できるようになった。病院から薬局へ移った方には大きな変更
- 在籍期間は週31時間以上勤務した期間のみ通算される。入職時の勤務時間の設定に注意が必要
- 薬局側の要件が新設された。独立カウンターの設置、常勤薬剤師の平均在籍1年以上または管理薬剤師の在籍3年以上
- 同意の取り方が同意書からお薬手帳の記載に変わった。手帳への記載と写しの保管が必要
- 体制加算の実績要件に含まれるため、薬局側に採用の動機がある。経験は制度的に評価される
かかりつけ薬剤師であることは、転職のハードルというより交渉材料になる時代です。要件の最新の内容を押さえ、転職先が薬局側の要件を満たしているかを確認したうえで選べば、転職後も早い段階で第一線に戻れます。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。要件および算定に関する記述は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」に掲載された告示・通知および疑義解釈資料に基づいています。調剤報酬の算定要件は疑義解釈等により運用が明確化・変更される場合があります。実際の届出や算定の可否については、勤務先および地方厚生局にご確認ください。

