この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「この年齢で転職できるのか」「年収が下がるのではないか」。40代・50代の相談で必ず出てくる不安です。
先に結論をお伝えします。40代と50代をひとくくりにするのが、いちばんの間違いです。40歳と55歳では市場での立ち位置も、採用側が心配する点も違います。40代前半、40代後半、50代の3つに分けて戦略を変える必要があります。
お金の見通しも押さえておきましょう。薬剤師の平均年収は45歳から49歳の675万8,400円が全年代の頂点で、50代に入ると下がります。つまり40代は、生涯年収の頂点に向かう最後の登り区間です。この記事では、年代別の戦略、強みの棚卸し、年収を守る5点、面接の想定問答をまとめます。
この記事でわかること
- 「難しい」と言われる正体。採用側の5つの懸念と、法律上の前提
- 40代前半・40代後半・50代で変わる3つの戦略
- 「アピールできるものがない」を解消する棚卸しの手順
- 年収を守る5つのポイントと、確認すべき内訳
- 面接で必ず聞かれる4つの質問と、答え方
「難しい」と言われる正体
まず法律上の前提です。労働施策総合推進法により、募集・採用では年齢にかかわりない均等な機会を与えることが原則として義務づけられています。求人票に「40代不可」と書くことはできません。厚生労働省は、書類選考や面接で年齢を基準に採否を判断することも法の規定に反すると明記しています。
それでも通りにくさを感じるのは、年齢そのものではなく、年齢と結びつけられがちな別の懸念が働くからです。この5つを1つずつ解けば、通過率は上がります。
一方で、40代は薬局の平均年齢46.8歳の内側にいる層です。医薬品関係企業の平均は49.1歳。年齢だけで浮く年代ではありません。管理や教育の担い手として需要が高まる時期でもあります。
「難しい」と「できない」は別の話です。年齢のせいだと考えるより、上の5つのどれが自分に当てはまるかを見て、そこを潰すほうが早い。戦略なしに数を打つと、貴重な機会を減らすだけです。
年代を3つに分けた戦略
40歳と55歳では、見られる点も狙うべき場所も違います。自分の行から読んでください。
40代前半|条件を動かせる最後の区間
経験15年から20年で、管理薬剤師や在宅、特定の診療科の担い手として評価されやすい時期です。年収の観点でも重要で、45歳から49歳の675万8,400円というピークに向かう途中にあたります。上げたいならこの時期に動くほうが取り返しがききます。
進め方としては、管理薬剤師として募集している求人を軸に据えてください。複数を並行して進め、条件を比べられる状態を作ること。ここで妥協すると、その水準が50代以降の基準になります。
40代後半|柔軟さをどう見せるか
この年代から、経験の豊富さが逆に懸念材料になることがあります。「うちのやり方に合わせてもらえるか」という不安です。対策は単純で、聞かれる前に自分から「まずやり方を教わります」と言うことです。
狙う場所も広げてください。管理薬剤師のポストが空いている中小・個人の薬局は、即戦力の需要が高い領域です。年収だけでなく、終業時刻や通勤時間といった条件も含めて総合で判断すると、選択肢が増えます。
50代|何歳まで働くかを先に言う
50代でいちばん強く働くのは、在籍期間への懸念です。定年年齢を60歳としている企業が62.2パーセント、65歳としている企業が27.2パーセントというのが現状です(令和7年高年齢者雇用状況等報告)。残り年数が短いと見られやすくなります。
だからこそ、「定年後も継続雇用やパートの形で働き続けたい」と面接で先に言ってください。高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保措置は義務で、実施している企業は99.9パーセントです。制度の裏づけがある希望なので、前向きに受け止められます。
あわせて、平均年齢の高い施設も候補に入れてください。診療所は58.4歳、介護保険施設は59.7歳で、いずれも60歳から69歳が最も多い年齢層です。50代なら若手として扱われる職場があります。
50代で「定年後も働きたい」と伝えると、採用側の表情が変わることがあります。いちばん心配していた点が先に解けるからです。言える状況なら、必ず言ってください。
「アピールできるものがない」を解消する
この年代で最も多い誤解が「同じ職場に長くいすぎて、特別なスキルがない」というものです。ほとんどの場合、持っていないのではなく、言語化していないだけです。
棚卸しの手順は3つです。①勤務先、在籍期間、担当業務、1日の処方箋枚数、主な診療科を時系列で全部書き出す。②そのうち数字にできるものを探す。③応募先で役立つものを3つに絞る。
この作業で効くのは①です。当たり前にやってきたことほど書き漏らします。「1日100枚を◯年こなしてきた」「スタッフをまとめながら店舗を回してきた」。これは立派な実績です。
「20年やってきました」という書き方がいちばんもったいないです。中身が伝わらないからです。数字を1つ入れるだけで、同じ経歴がまったく違って見えます。
年収を守る5つのポイント
この年代で最も多い後悔が年収の低下です。差を生むのは次の5点です。
1つ目が最も効きます。管理薬剤師には手当がつく職場が多く、一般の薬剤師として移ると、その分がそのまま差になります。手当の額は会社ごとに違うため、相場を探すより、応募先の金額を直接聞くほうが確実です。
判断の基準として、薬剤師全体の平均年収は566万7,900円です(令和7年賃金構造基本統計調査)。前年の調査では599万3,200円だったため、全国平均そのものが下がっています。平均との差だけで判断せず、自分の現在の年収と並べて見てください。
年収交渉は言いにくいものですが、根拠を整理して伝えれば意外と通ります。この年代は実績の裏づけがある分、若手より材料は豊富なはずです。まず数字で棚卸しすることから始めてください。
面接で必ず聞かれる4つの質問
この年代の面接では、20代・30代とは違う質問が来ます。答えを用意しておいてください。
なぜこの年齢で転職を考えたのですか
避けたい答え:今の職場の人間関係が合わない、年収が低い
「これまで◯年、管理薬剤師として店舗の運営とスタッフの育成に携わってきました。残りのキャリアでは在宅にも関わりたいと考えており、その機会があると感じて応募しました。」
新しい仕組みへの対応はできますか
避けたい答え:苦手ですが頑張ります、慣れるのに時間がかかるかもしれません
「現職では◯◯の薬歴システムを使っています。電子処方箋の運用にも対応してきました。システムが変わっても覚える前提で臨みますので、ご心配は不要かと思います。」
若いスタッフが多いですが大丈夫ですか
避けたい答え:問題ありません(根拠がなく伝わらない)
「前職でも20代のスタッフと働いており、こちらが教わることも多くありました。経験を押し付けず、まずやり方を教わる姿勢で入りたいと考えています。」
定年後の働き方はどうお考えですか(50代向け)
避けたい答え:そのときになってから考えます
「健康である限り、定年後も継続雇用やパートの形で長く貢献したいと考えています。できる限り現場で働き続けることが希望です。」
4つに共通するのは、経験を出すことと、教わる姿勢を示すことを両立させている点です。経験を出しすぎると頑固に見え、謙虚すぎると学ぶ気がないと取られます。このバランスは、声に出して練習しておくと取りやすくなります。
想定問答は、紙に書いて声に出してみてください。書けても言えないことがよくあります。とくに3つ目は、言い方ひとつで印象が真逆になります。
動き出す時期と、かかる期間
この年代は、20代・30代より期間を長めに見ておいてください。目安は3か月から6か月です。求人の選定、条件の交渉、現職の退職手続きまで含めると、それくらいはかかります。
在職中に進めるのが原則です。辞めてから探すと、焦りが条件の妥協につながります。この年代の典型的な失敗は、能力不足ではなく、時間に追われて決めてしまうことです。
なお、退職の申し出について、期間の定めのない雇用なら民法上は申し出から2週間で退職できますが、多くの就業規則は1か月前としています。まず就業規則を確認してください。
この年代で入る職場は、最後の職場になる可能性があります。年収や役職だけでなく、そこで10年20年働く自分を想像できるか。見学に行って、10歳上の先輩がどう働いているかを見てくるのが確実です。
よくある質問
まとめ
40代・50代の転職について、要点を整理します。
- 40代前半・40代後半・50代で戦略が違う。ひとくくりにしないことが出発点
- 年収は45歳から49歳の675万8,400円が頂点。上げたいなら40代のうちに動く
- 50代は「定年後も続けたい」と先に言う。在籍期間への懸念が解ける
- 「アピールできるものがない」のではなく、言語化していないだけ。数字で書き出す
まずは、これまでやってきたことを紙に書き出すところから始めてください。1日の処方箋枚数、管理薬剤師の年数、育てた人数、在宅の件数。数字が並べば、交渉の材料になります。そのうえで、自分の年代に合った場所を狙ってください。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年調査・年齢階級別の平均年収)
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(施設別の平均年齢)
- 厚生労働省「令和7年高年齢者雇用状況等報告」集計結果(令和7年12月19日公表)、高年齢者雇用安定法、民法第627条
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

