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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「転職したら確定申告は必要?」「年末調整だけでいい?」「住民税が急に高くなったのはなぜ?」。
転職した年の税金の手続きは、転職のタイミング・離職期間の有無・次の働き方(雇われるのか、業務委託か)によって必要な手続きが変わります。正しく理解しておかないと「払いすぎた税金が戻ってこない」「住民税の請求が突然来て焦る」といった事態が起きます。
私自身も転職した年、住民税の一括徴収で手取りが大きく減って驚いた経験があります。転職前に知っておけばよかったと思った知識を、この記事でまとめました。
確定申告すべきかの判定フロー、転職タイミング別の影響、住民税の注意点、令和8年分の税制改正で変わったこと、節税に使える控除、フリーランスに移行した場合まで、国税庁の資料をもとに整理しています。
- 確定申告が必要なケース・不要なケースの判定フロー
- 年末調整と確定申告の違い
- 転職のタイミングが税金に与える影響
- 令和8年分の税制改正で、今年の年末調整はどう変わるのか
- 住民税の一括徴収・後払いの仕組みと注意点
- 転職した年に使える節税控除
- フリーランス薬剤師になった場合の確定申告
年末調整と確定申告の違い
⏱ 30秒でわかる要点
💡 転職した薬剤師が知っておくべき基本
転職した年でも「12月末に転職先に在籍している」かつ「前職の源泉徴収票を転職先に提出できる」なら、転職先で年末調整を受けられます。この場合、確定申告は不要です(医療費控除などがない限り)。
「転職したから確定申告しなきゃ」と思っている薬剤師は多いですが、年内に再就職していれば多くの場合は年末調整で完結します。必要かどうかを正確に把握することが、無駄な手間を省く第一歩です。
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確定申告が必要なケース・不要なケースの判定
✅ 確定申告が不要なケース(年末調整で完結)
- 12月末時点で転職先に在籍しているかつ前職の源泉徴収票を転職先に提出できる
- 副業収入・医療費控除・寄附金控除など追加の申告事項がない
- ただし年末調整ができていないと確定申告が必要になるため、転職先への書類提出を忘れずに
⚠️ 確定申告が必要なケース
ケース①:年末時点で無職(転職先が未定・離職中)
12月31日時点でどこにも所属していない場合、年末調整を受けられません。翌年に自分で確定申告をする必要があります。離職期間中は源泉徴収された税金が戻ってくることが多いため、申告することで還付が受けられます。
ケース②:前職の源泉徴収票が年末調整に間に合わなかった
12月転職など年末ぎりぎりの転職では、前職の源泉徴収票が転職先の年末調整の締め切りに間に合わないことがあります。この場合は翌年に自分で確定申告が必要です。
ケース③:医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除の初年度がある
これらの控除は年末調整では処理できません。転職先で年末調整を受けている場合でも、追加で確定申告が必要です(申告することで税金が還付される可能性があります)。
ケース④:副業やスポット勤務の収入がある
記事の執筆や監修などを業務委託で受けている場合は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると申告が必要です。別の薬局でのスポット勤務のように給与として受け取る場合は、年末調整されなかった給与の「収入金額」とその他の所得の合計で判定するため、経費を引く前の金額で20万円を超えるかどうかを見ます。
ケース⑤:フリーランス薬剤師(個人事業主)に移行した
業務委託を主な収入源にした場合は、毎年確定申告が必要です。青色申告か白色申告かによって控除額が大きく異なります(後述)。
出典:国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
📋 確定申告の要否チェック
問1:12月31日時点で、給与をもらっている職場に在籍していますか
はい → 問2へ / いいえ → 確定申告が必要
問2:前職の源泉徴収票を転職先に提出して年末調整を受けましたか
はい → 問3へ / いいえ → 確定申告が必要
問3:医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除の初年度・副業収入はありますか
はい → 確定申告が必要(還付の可能性あり) / いいえ → 確定申告は不要
「確定申告は面倒」と思って放置する薬剤師がいますが、年末時点で無職の場合は確定申告しないと払いすぎた税金が返ってきません。税金が戻る還付申告は5年間さかのぼって申告できますが、早めに動くほうが手間も少なくて済みます。
転職タイミング別の税金への影響
転職する月や時期によって、必要な手続きが変わります。
⚠️ 年末時点で無職だと税金が戻ってくることが多い
毎月の源泉徴収は「その水準で1年働く」前提で計算されています。離職期間があって実際の年収が少なくなった場合、払いすぎた分が還付されることが多いです。確定申告を忘れると、この還付金を受け取れないままになります。年内に再就職できなかった薬剤師は必ず確定申告をしましょう。
12月転職のタイミングは特に注意が必要です。「転職先で年末調整してもらえる」と思っていても、前職の源泉徴収票が届くのが1月になると、翌年に確定申告が必要になります。退職が決まったら前職に「源泉徴収票を早めに発行してほしい」と伝えておくのが確実です。
令和8年分は特に注意|税制改正の精算が年末に行われる
2026年(令和8年)に転職した薬剤師には、例年にない注意点があります。税制改正の内容と、その反映のタイミングにずれがあるためです。
令和8年分から、基礎控除と給与所得控除の見直しにより、本人に所得税がかかり始める給与収入のラインが178万円に引き上げられました。また、配偶者控除・扶養控除の対象となる給与収入の上限も、令和7年分の123万円から令和8年分は136万円になっています。
⚠️ 毎月の天引きには、まだ反映されていません
この改正が毎月の源泉徴収に反映されるのは令和9年1月以降です。令和8年中は改正前の税額表で天引きされ続け、年末調整で精算される扱いになります。つまり、令和8年分については年末調整または確定申告をしないと、引かれすぎた分が戻ってきません。
ここが転職者にとって重要です。年末時点で無職だった場合、年末調整を受けられないため、確定申告をしない限りこの精算が行われません。例年以上に、確定申告をするかどうかで戻ってくる金額に差が出る年だということです。
また、転職して年収が例年より下がった年は、扶養に関する判定も変わる可能性があります。配偶者の扶養に入れるかどうか、あるいは自分の配偶者を扶養に入れられるかどうかは、新しい基準(給与収入136万円以下)で確認してください。
出典:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
「毎月引かれる額が変わっていないから、改正は関係ないのかな」と思っている人が多いのですが、逆です。今年は年末にまとめて精算される年。転職して年末に職場がない方は、確定申告を忘れないでください。放っておくと、戻るはずのお金が戻りません。
住民税の仕組みと転職時の注意点
転職した薬剤師がもっとも驚くのが住民税です。所得税とは仕組みがまったく異なります。
住民税の「後払い」の仕組み
💡 前年の所得に対して、翌年6月から給与天引きされる
住民税は「1月から12月の所得」に基づいて「翌年6月から翌々年5月」に給与天引きされます。つまり転職した年の翌年6月から、前の職場での収入に基づく住民税が引かれ始めます。転職先での給与が下がっていても、前年の高い収入に基づく住民税が引かれるため、「なぜこんなに高い」と感じる薬剤師が多いのです。
退職月によって変わる住民税の支払い方
⚠️ もっとも注意が必要なのは、1月から5月の退職
この時期に退職すると、残りの住民税(退職月から5月分まで)が最後の給与などから一括で徴収されます。たとえば月2万円の住民税なら、5か月分で10万円がまとめて引かれるという計算になります。退職前に「最後の給与からどれくらい引かれるか」を経理に確認しておくと安心です。
転職後に住民税の納付書が届いて「こんなに高いの」と驚く薬剤師は非常に多いです。これは前年の収入に基づく住民税なので、転職して年収が下がっていても関係なく請求されます。忘れずに支払いましょう。放置すると延滞金が発生します。
転職した年に使える節税控除
確定申告をすることで、転職した年にも使える控除があります。
薬剤師が活用しやすいセルフメディケーション税制
対象となる市販薬を年間12,000円を超えて購入した場合、超えた分(上限88,000円)を所得から控除できる制度です。薬剤師は対象品目の知識があるぶん、活用しやすい控除といえます。ただし医療費控除とはどちらか一方しか選べません。医療機関での支払いが多かった年は医療費控除、市販薬中心の年はこちら、と使い分けます。
⚠️ 適用期限と対象品目に注意
この特例は平成29年1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの措置とされてきましたが、令和8年度税制改正で適用期限や対象医薬品の見直しが行われています。対象品目のリストも定期的に更新されるため、最新の内容は厚生労働省と国税庁のページで確認してください。購入時のレシートには対象である旨が記載されるので、保管しておきましょう。
転職した年に確定申告が必要になったなら「どうせ申告するなら控除も漏れなく申告する」という発想が大切です。特に離職期間中に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は、忘れられがちな控除の代表格。納付書や領収書は必ず取っておいてください。
確定申告の手順・必要書類
必要書類一覧
- 前職・転職先の源泉徴収票:もっとも重要。所得税法により、退職の日以後1か月以内に交付することとされています
- マイナンバーカード、または通知カードと身分証:本人確認に必要
- 医療費控除の明細書:領収書をもとに自分で作成します
- 国民健康保険料・国民年金保険料の支払い証明:離職期間中に自己負担した場合
- 生命保険料控除証明書:年末調整で提出できなかった場合
- 還付先の口座情報:還付がある場合の振込先
確定申告の手順(給与所得者の場合)
確定申告は国税庁の作成コーナーを使えば、案内に従って入力するだけです。オンラインで提出すれば税務署に並ぶ必要もありません。マイナンバーカードをお持ちなら、ぜひ活用してください。慣れれば1時間もかかりません。
フリーランス薬剤師の確定申告
業務委託を主な収入源にした場合は、毎年確定申告が必要です。青色申告か白色申告かで、手続きと控除額が大きく異なります。
- 最大65万円の特別控除(複式簿記かつオンライン申告などの要件を満たす場合)
- 赤字を3年間繰り越せる
- 生計を一にする家族への給与を経費にできる
- 事前に税務署へ青色申告承認申請書の提出が必要(開業届と同時が理想)
- 記帳は簡単だが特別控除がない
- 赤字の繰り越しができない
- 節税の効果は青色申告より大きく劣る
- 本格的に続けるなら青色申告を選ぶのが基本
経費にできる主な項目
- 交通費:勤務先や訪問先への移動にかかる費用
- 通信費:携帯電話・通信回線の料金(業務に使った割合分)
- 書籍・研修費:薬剤師としての知識習得に必要な書籍や研修の費用
- 備品:業務で使うパソコンなど(業務に使った割合分)
- 国民健康保険料・国民年金保険料:経費ではなく社会保険料控除として全額控除の対象
- 小規模企業共済の掛金・個人型確定拠出年金:全額が所得控除の対象。老後の備えと節税を兼ねられる
なお、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法により、発注する側には取引条件の明示や、成果物などを受け取った日から60日以内の報酬支払いが義務づけられています。同日からフリーランスも労災保険の特別加入の対象になりました。会社員でなくなると保障がなくなる、という不安はひとつ解消されています。
フリーランスに移行するなら、青色申告承認申請書の提出期限に気をつけてください。原則としてその年の3月15日まで、年の途中で開業した場合は開業から2か月以内です。ここを逃すと、その年は白色申告になってしまいます。開業届と同時に出しておくのが確実です。
よくある質問
まとめ
- 12月末に転職先に在籍し前職の源泉徴収票を提出できれば、年末調整で完結する
- 年末時点で無職・源泉徴収票が間に合わない・医療費控除などがある場合は確定申告が必要
- 年末に離職中だと払いすぎた税金が還付される可能性が高い
- 令和8年分は税制改正の精算が年末に行われるため、申告の有無で差が出る
- 住民税は前年の所得に基づき翌年6月から徴収される。転職しても金額は下がらない
- 1月から5月の退職では、5月分までの住民税が最後の給与から一括徴収される
- 離職期間中に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は全額が控除の対象
- フリーランスに移行したら毎年申告が必要。青色申告承認申請書の期限に注意
転職した年の税金は「確定申告が必要かどうかの判定」と「住民税の後払いの仕組みの理解」が要です。制度は毎年見直されるので、迷ったときは最寄りの税務署や税理士に相談しましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。税制・控除額は毎年改正される場合がありますので、最新の情報は国税庁の公表資料等でご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務判断に代わるものではありません。具体的な取り扱いは税務署や税理士などの専門家にご確認ください。

