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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
転職で年収を比べるとき、見落としがちなのが住宅手当や引っ越し補助です。住居費は家計の大きな割合を占めるため、これらの有無で自由に使えるお金は大きく変わります。転居を伴う転職なら、引っ越し費用の補助があるかどうかも重要です。
結論から言うと、厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、住宅手当の平均支給額は月1万8,700円で、支給している企業は4割ほどです。さらに、同じ金額の補助でも、現金で受け取る住宅手当より、会社が借りた物件に住む「借り上げ社宅」のほうが、税金の面で手取りが多くなりやすい仕組みがあります。
この記事では、住宅手当の相場と支給条件、借り上げ社宅が有利な理由、引っ越し補助の実態と税金の扱い、地方転職での住まい支援、求人での見極め方まで、公的な資料をもとに整理しました。
- 公的統計で見る住宅手当の相場と、よくある支給条件
- 住宅手当より借り上げ社宅のほうが手取りで有利になりやすい理由
- 引っ越し補助の種類と、税金がかかるもの・かからないもの
- 求人で住まいの支援を見極める6つのポイント
住まいの支援は3種類。実質年収に大きく効く
住まいに関する支援は、基本給には表れない「隠れた待遇」です。額面の年収が同じでも、支援の有無や形で手元に残るお金は変わります。主な形は次の3つです。
住宅手当が月2万円あれば、年間では24万円です。求人を比べるときは、想定年収の数字だけでなく、住まいの支援を含めた「実質的な年収」で比べることが大切です。
「年収500万円・住宅支援なし」と「年収480万円・借り上げ社宅あり」なら、後者のほうが手元に残るお金は多くなることがあります。額面だけで判断せず、家賃を払ったあとにいくら残るかで比べる癖をつけましょう。
住宅手当の相場と支給条件
公的統計で見る相場
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、住宅手当などを支給されている労働者1人あたりの平均支給額は月1万8,700円で、企業規模が大きいほど高い傾向があります。
住宅手当を支給している企業の割合は全体で41.7%、1,000人以上の企業では60.8%です。この統計は全産業の数字で、薬剤師だけを集計したものではありません。住宅手当は職種ごとではなく全社一律で決めている会社が多いため、薬剤師だから特に高いというものではない点も覚えておきましょう。
よくある支給条件
支給条件の例
- 賃貸に住んでいる人のみ(持ち家は対象外)
- 世帯主であること、本人名義の賃貸契約であること
- 勤務先から一定の距離内に住んでいること
- 一定の年齢まで、または入社から一定年数までの支給
住宅手当は残業代の計算に入る場合がある
残業代の計算の基礎から除外できる手当の一つに住宅手当があります(労働基準法37条5項、労働基準法施行規則21条)。ただし除外できるのは、家賃の額に応じて支給額が変わる住宅手当に限られ、家賃に関係なく全員に一律の金額を払う住宅手当は、残業代の計算の基礎に含めなければならないとされています。給与明細で残業代を確かめるときの参考にしてください。計算方法は薬剤師の残業代の計算方法で解説しています。
住宅手当の条件で意外と引っかかるのが「世帯主のみ」です。結婚して配偶者名義で賃貸契約をしていると、対象外になる会社もあります。今の住まいの契約名義と照らし合わせて、自分が受け取れるかを確認しておきましょう。
借り上げ社宅が手取りで有利になりやすい理由
同じ家賃補助でも、住宅手当と借り上げ社宅では税金の扱いが違います。
住宅手当は給与として課税される
現金で受け取る住宅手当は給与の一部なので、所得税・住民税の対象になり、社会保険料の計算にも含まれます。月2万円の住宅手当をもらっても、税金と社会保険料が差し引かれるため、手取りで2万円まるごと増えるわけではありません。
社宅は一定の自己負担で会社負担分が非課税に
国税庁のタックスアンサー「使用人に社宅や寮などを貸したとき」によると、会社が従業員に社宅を貸す場合、従業員から「賃貸料相当額」の50%以上の家賃を受け取っていれば、会社が負担した分は給与として課税されません。賃貸料相当額は、建物と敷地の固定資産税の課税標準額や床面積から計算する金額で、実際の家賃より低くなるのが一般的です。会社が他から借りて貸す借り上げ社宅も同じ計算方法です。
一方、現金で支給される住宅手当や、本人が直接契約した物件の家賃を会社が負担する場合は、社宅の貸与とは認められず給与として課税されます。つまり、物件の契約者が会社かどうかが分かれ目です。
社宅の注意点
税金の細かな計算は、会社の制度設計や物件によって変わります。社宅制度がある求人では、自己負担額と、その金額が給与からどう差し引かれるかを確認しておきましょう。
社宅は手取りの面で有利な一方、「辞めたら住まいも失う」という面があります。転職をくり返すつもりはなくても、退職時の退去期限は確認しておくと安心です。制度の中身まで分かっていれば、数字だけでは見えない差を比べられます。
引っ越し補助の実態と税金の扱い
転居を伴う転職では、引っ越しにかかる費用を会社が負担してくれることがあります。補助の内容は会社によって大きく違います。
所得税法9条1項4号では、就職に伴って転居するための旅行に必要な費用として支給される金品のうち、通常必要と認められるものは非課税とされています(所得税法)。実費の範囲で精算される引っ越し費用や赴任の交通費がこれにあたります。一方で、実費と関係なく一律に支払われる支度金などは、通常必要な範囲を超える部分が給与として課税される場合があります。
また、入社から一定期間内に退職した場合に、補助した引っ越し費用の返還を求める規定を設けている会社もあります。補助を受ける前に、返還の条件と期間を書面で確認しておくことが大切です。
引っ越し補助は「上限いくらまで」「見積もりは何社から」「立て替えか会社払いか」など、細かいルールが会社ごとに違います。引っ越し業者を予約する前に、精算の方法を人事に確認しておくと、あとで自己負担になるトラブルを防げます。
地方転職・転勤での住まいの支援
薬剤師が不足している地方では、人材を確保するために住まいの支援を手厚くしている求人が見られます。借り上げ社宅の自己負担が小さい、引っ越し費用を全額負担するなど、都市部より条件が良いこともあります。地方と都市の年収の違いは地方と都市の年収の違いで比較しています。
会社の制度とは別に、東京圏から地方へ移住して就業する人を対象に、自治体が移住支援金を用意している場合もあります。対象となる条件は自治体ごとに異なるため、地方移住・転職に使える支援制度で確認してください。
いきなりの移住が不安な場合は、寮や住まいが用意される派遣の仕事で一定期間働き、土地に慣れてから定住を決める方法もあります。派遣の条件は薬剤師派遣の時給・年収で解説しています。
大手チェーンでは、社宅の対象を「会社都合で転勤した人」に限っていることがあります。自分から地方の店舗を希望して入社した場合は対象外、という例もあるので、入社時の配属でも社宅が使えるかを確認しておきましょう。
求人で見極める6つのポイント
口頭で「住宅補助があります」と言われても、条件の細部までは分かりません。内定が出たら、労働条件通知書の諸手当の欄や社宅規程で内容を確認しましょう。書類の見方は内定通知書と労働条件の確認ポイント、条件の相談の仕方は入社前の条件交渉で解説しています。
住まいの条件はお金の話なので、面接で直接聞きにくいと感じる人も多いはずです。転職エージェントを使っているなら、担当者に代わりに確認してもらうのが一番スムーズです。条件が複数の求人で違うときも、同じ項目で並べて比べてもらえます。
よくある質問
まとめ
薬剤師の住宅手当・引っ越し補助について、要点を整理します。
- 住宅手当の平均は月1万8,700円、支給企業は4割ほど(令和7年就労条件総合調査、全産業)
- 住宅手当は給与として課税されるが、借り上げ社宅は一定の自己負担で会社負担分が非課税になる
- 就職に伴う転居の実費は非課税。引っ越し補助は上限・精算方法・返還条件を確認する
- 支援の形・金額・条件・期間を書面で確認し、家賃を払ったあとに残る金額で求人を比べる
住まいの支援は、額面の年収に表れない分だけ見落とされがちです。支援の形と条件まで確認して、実際に手元に残るお金で求人を比べ、納得のいく転職先を選んでいきましょう。

