この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「子育てと両立しやすい職場に移りたい」。そう思っても、求人票を見比べただけでは違いがわかりません。どの業態も「アットホーム」「働きやすい環境」と書いてあるからです。
先に結論をお伝えします。両立のしやすさを決めるのは制度ではなく、終業時刻が読めるかと、抜けた分を誰が埋めるかの2点です。そしてこの2点は、業態によってかなりはっきりした傾向があります。
たとえば薬局には、処方箋の枚数に応じた薬剤師の配置基準があります。1人抜けると、単に忙しくなるだけでなく体制そのものが維持できない店舗があるということです。この記事では、5つの軸で業態を比較し、子の年齢別の最適解と、面接で聞くべき質問まで整理します。
この記事でわかること
- 両立のしやすさを決める5つの軸
- 業態別の比較表と、上位・下位それぞれの理由
- 子の年齢によって変わる最適解
- 2025年の制度改正で、何がしやすくなったか
- 面接でそのまま使える確認の質問
両立のしやすさを決める5つの軸
業態を比べる前に、何を見るかを決めます。求人票の「働きやすい」という言葉ではなく、次の5つで判断してください。
この5つのうち、業態でほぼ決まるのが1と3と4です。2と5は同じ業態でも会社や店舗によって差が出ます。業態で候補を絞り、そのうえで2と5を面接で確認する。この順番が効率的です。
前提として、薬剤師は届出上、女性が62.0パーセントを占める職種です。制度そのものは整っている職場が多く、全産業の育児休業取得率も女性88.3パーセント、男性50.9パーセントまで上がっています。差がつくのは制度の有無ではなく、運用のほうです。
「両立しやすい職場」という言葉は求人票のどこにでも書いてあります。だから軸を自分で持つしかありません。この5つを紙に書いて、面接のたびに埋めていくと比較できるようになります。
業態別の比較表
5つの軸のうち、業態でほぼ決まる項目を中心に整理しました。◎○△は編集部の目安であり、外部の調査データによるものではありません。
平均年齢は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」による施設別の値です。同じ業態でも会社や店舗によって差があります。
表を見てわかるとおり、すべての軸が◎になる業態はありません。クリニックの門前は終業が読める代わりに人数が少なく、大手チェーンは応援が回せる代わりに土曜出勤と異動があります。何を優先するかを決めてから選んでください。
私はクリニックの門前も総合病院の門前も経験しましたが、終業時刻の読めなさがまるで違います。門前のクリニックが閉まれば、あとは片づけるだけ。ここは想像以上に効きます。
上位3つを選ぶときの注意点
クリニックの門前|終業は読めるが、人数が壁になる
門前のクリニックが閉院すれば業務が終わるため、終業時刻の読みやすさは最も高い業態です。休診日がそのまま休みになる点も大きな利点です。
一方で、薬剤師が2人や3人という店舗が多く、1人休むと配置基準を満たせなくなる可能性があります。応募前に「薬剤師は何人いますか」「誰かが当日休んだとき、どうしていますか」を必ず聞いてください。答えが「何とかしています」だけなら、その何とかを自分が担うことになります。
大手チェーン|応援は回るが、土曜と異動を先に確認
店舗数が多いため、欠員が出たときに他店舗から応援を回せます。産休や育休の前例も多く、制度が形だけになっていないことが期待できます。子育て中に選びやすい業態の筆頭です。
確認すべきは2点です。土曜出勤の頻度と、異動の範囲。通勤時間が伸びると迎えに間に合わなくなり、保育園の継続にも影響します。「自宅から何分以内の店舗に限定できますか」と、具体的な数字で聞いておいてください。
企業|条件はよいが、枠が少ない
土日祝が休みで、在宅勤務が使える会社もあります。子育てとの相性という点では条件がそろっています。ただし厚生労働省の令和6年統計では、医薬品関係企業に従事する薬剤師は34,184人で、前回調査から2,902人減っています。枠そのものが多くありません。
狙うなら、時間をかけて待つ前提で動いてください。いまの職場で実績を積みながら求人を探し、出たときに応募する。この進め方が現実的です。
大手チェーンで異動の範囲を確認せずに入り、復帰後に遠い店舗を打診されて困った方を知っています。入職前なら交渉できても、入ってからでは難しくなります。最初に言っておいてください。
子の年齢で変わる最適解
同じ人でも、子の年齢によって選ぶべき業態は変わります。法律で使える制度も年齢で切り替わるため、あわせて整理しました。
制度の裏づけも押さえておきます。2025年4月から、子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了まで拡大し、「継続雇用6か月未満は対象外」とする労使協定の規定が廃止されました。転職直後でも子どもの発熱で休めるということです。入園式や卒園式、入学式への参加も取得事由に加わりました。
同じ2025年4月から、残業免除を請求できる対象が3歳未満から小学校就学前の子に広がりました。さらに同年10月からは、3歳以上就学前の子について、事業主が始業時刻の変更や在宅勤務、短時間勤務などの措置を2つ以上整備し、本人が1つを選べることになりました。3歳の壁を、パートに切り替えずに越えられる可能性が出てきたということです。
見落とされやすいのが小学校入学です。保育園より預かり時間が短くなるので、そこで働き方を変える人がかなりいます。いま0歳の子を見ていても、6年後の話を少しだけ考えておくと選び方が変わります。
面接でそのまま使える確認の質問
業態で候補を絞ったら、残る2つの軸は面接で確認します。制度の有無ではなく、人数と実績を聞くのがコツです。
6つ目は、聞くこと自体に意味があります。制度を把握していない会社は、その場で答えられません。答え方そのものが、その職場の姿勢を測る材料になります。
もう1つ、可能なら見学に行ってください。忙しい時間帯にスタッフがどう声をかけ合っているか。30分いるだけで、求人票では絶対にわからないことが伝わってきます。
「制度はありますか」と聞くと、どこも「あります」と答えます。「直近3年で何人使いましたか」と人数で聞いてください。詰まるようなら、実績がない可能性があります。
よくある質問
まとめ
両立しやすい転職先を選ぶための要点を整理します。
- 決め手は制度ではなく終業時刻が読めるかと、抜けた分を誰が埋めるか
- すべての軸が優れた業態はない。クリニックの門前は終業が読め、大手チェーンは応援が回る
- 子の年齢で最適解は変わる。0歳から2歳は応援重視、就学後は終業の読みやすさ重視
- 2025年の改正で看護等休暇は小学校3年生修了まで、残業免除は就学前まで使えるようになった
業態で候補を絞ったら、あとは面接で人数と実績を聞くだけです。「制度はありますか」ではなく「直近3年で何人使いましたか」。この1問で、見えてくるものがかなり変わります。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(施設別の平均年齢・従事者数)
- 厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」
- 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(薬剤師の配置基準)
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(育児休業取得率)、育児・介護休業法
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

