この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「親の介護が始まって、今の働き方を続けられるか不安」。育児と違い、介護は終わりが見えません。いつまで続くかわからないまま、仕事との両立を考えることになります。
先に知っておいてほしいことがあります。2025年4月、介護と仕事の両立に関する制度が大きく変わりました。勤務先には相談窓口などの整備が義務づけられ、介護に直面したと申し出れば、会社は制度を個別に説明する義務を負います。介護休暇からは「入社6か月未満は対象外」の規定も消えました。
つまり、いま相談しても何も出てこない職場は、法律で求められている対応ができていない可能性があります。これは転職先を見極める材料にもなります。この記事では、整理すべきこと、使える制度、職場の見極め方、面接での伝え方までを順に整理します。
この記事でわかること
- 転職を考える前に整理しておく4つのこと
- 2025年4月に変わった介護関連の制度5点
- 使える制度の一覧と、給付の仕組み
- 法定要件を手がかりにした職場の見極め方
- 面接での伝え方と、急な呼び出しへの備え
転職を考える前に整理する4つのこと
介護は状況が変わり続けます。いまの状態だけで職場を選ぶと、半年後に合わなくなることがあります。先に現状を書き出してください。
4つ目がとくに重要です。原因が終業時刻なら転職で解決しますが、通院の付き添いが問題なら勤務日数の調整で足りることもあります。原因を特定しないまま転職すると、同じ問題を持ち越します。
薬剤師ならではの事情
薬局には、処方箋の枚数に応じて薬剤師を配置する基準があります。人数の少ない店舗では、1人抜けると体制そのものを維持できないことがあります。急な休みが取りにくいのは、気遣いの問題ではなく構造の問題です。
裏を返せば、応援を回せる規模の法人や、1店舗あたりの人数に余裕がある職場を選べば、この制約はかなり小さくなります。介護と両立するうえでは、制度より先に人数を見てください。
介護は先が見えないことが最大の負担になります。だからこそ、一人で抱え込まないでください。介護サービスも職場の制度も、早い段階から使っておくほうが結果的に長く続きます。
2025年4月に変わった5つのこと
改正育児・介護休業法により、2025年4月1日から介護に関する事業主の義務が増えました。知らないまま損をしないよう、5点を押さえてください。
出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」、厚生労働省「介護離職防止支援」サイト
この5点は、そのまま職場を見極める物差しになります。相談窓口があるか、40歳前後で会社から案内が来たか。法律で求められている対応ができているかどうかが、そのまま姿勢に表れます。
3つ目も知っておく価値があります。介護に直面したと会社に伝えれば、制度の説明と意向の確認を受けられます。自分から制度を調べて交渉する必要はありません。まず申し出るだけでよいのです。
「言い出しにくい」という相談をよく受けますが、2025年からは申し出れば会社が説明する義務を負っています。制度の名前を知らなくても大丈夫です。「親の介護が始まりました」と伝えるだけで動き出します。
使える制度と、お金の仕組み
育児・介護休業法で定められた制度です。これは法律上の最低ラインで、会社によってはさらに手厚い独自制度があります。
介護休業の使い方で誤解が多いのが1つ目です。93日は自分で介護をするための期間ではなく、態勢を整えるための期間と考えるほうが実態に合います。要介護認定を受け、ケアプランを組み、サービスを入れる。ここに時間を使うほうが、その後が続きます。
3回に分割できる点も覚えておいてください。入院したとき、退院して在宅に切り替えるとき、施設に移るとき。節目ごとに使えるよう、一度に使い切らないほうが賢明です。
介護休業を一度に93日使ってしまい、状況が変わったときに残っていなかったという話を聞いたことがあります。分割できることを知らなかったそうです。制度は知っているかどうかで結果が変わります。
両立しやすい職場の見極め方
求人票からは判断できません。次の項目を面接で確認してください。法定の義務になった項目を聞くと、対応の差がはっきり出ます。
1つ目と6つ目は、2025年4月から法律で求められている項目です。答えに詰まるようなら、制度そのものを把握していない可能性があります。聞くこと自体が、その会社の姿勢を測る材料になります。
職場のタイプでいえば、応援を回せる大手チェーン、終業時刻が読めるクリニックの門前、土日祝が休みで在宅勤務のある企業などが候補になります。一方、1人で回す時間帯がある店舗や、閉店の遅い職場は、急な対応が難しくなります。
「制度はありますか」だと、どこも「あります」と答えます。「直近3年で何人使いましたか」と人数で聞いてください。使われていない制度は、あっても使いにくいままです。
面接での伝え方
介護中であることは、隠さずに伝えるほうが結果的に安全です。シフトに関わる事情を黙って入職すると、双方が困ります。伝えるときは、事実と体制と意欲の3点をそろえてください。
伝え方の一例
「現在、実家の母の介護に関わっています。訪問介護と通所介護を週4日入れており、平日の日中は勤務できます。通院の付き添いが月に1回あるため、その日だけ調整をお願いできればと思います。急な体調変化で早退をお願いする可能性はありますが、きょうだいと役割を分けており、まず私以外が対応する体制を作っています。長く働きたいと考えています。」
この例のポイントは3つです。使っているサービスを具体的に挙げていること、勤務できる範囲を先に示していること、自分以外の担い手がいることを伝えていること。採用側が不安なのは、介護そのものではなく「回らなくなるのではないか」という点です。ここが解ければ話が進みます。
なお、介護を理由に採否を判断することは、法律の趣旨からも望ましくないとされています。伝えたことで露骨に態度が変わる職場なら、入職後も同じ対応になると考えたほうが現実的です。
伝えるときに効くのは「私以外が対応する体制を作っています」の一言です。自分が最後の砦だと思われると、採用側は身構えます。実際に分担できているなら、必ず言ってください。
急な呼び出しへの備えと、相談先
両立が崩れるのは、たいてい想定外の場面です。先に決めておけば、慌てずに済みます。
相談先も押さえておいてください。介護サービスの調整は、お住まいの地域包括支援センターか担当のケアマネジャーです。勤務先の制度については、2025年4月から相談窓口などの整備が事業主の義務になっています。まず社内の窓口に当たってください。
給付金の要件や金額はハローワークで確認できます。就業規則で会社独自の制度を確認し、足りない部分を公的な制度で埋める。この順番で組み立てると抜けが出ません。
短期入所の登録は、必要になってからでは間に合いません。元気なうちに一度使っておくと、本人も慣れます。この準備があるかどうかで、いざというときの余裕がまるで違います。
よくある質問
まとめ
介護と仕事を両立させるための要点を整理します。
- 2025年4月から相談窓口などの整備、申し出た人への個別対応、40歳等への情報提供が事業主の義務に
- 介護休暇から「継続雇用6か月未満は対象外」の規定が廃止された。転職直後でも使える
- 介護休業93日は自分で介護する期間ではなく、体制を整える期間。3回に分けて使う
- 職場選びは制度より人数。配属店舗の薬剤師の人数と、応援体制を面接で聞く
まずは、いまの働き方のどこに無理が出ているのかを1つに絞ってください。そこが特定できれば、転職で解決する問題か、勤務の調整で足りる問題かがわかります。一人で抱え込まず、社内の窓口とケアマネジャーの両方に相談してみてください。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「介護離職防止支援」(2025年施行の改正内容)
- 厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」
- 薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(薬剤師の配置基準)
- 育児・介護休業法(介護休業・介護休暇・所定労働時間の短縮措置等)、雇用保険法(介護休業給付)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

