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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「大阪で薬剤師として転職したい」と考える人は多いものです。大阪は関西の中心で求人が豊富な一方、「薬剤師が多いから年収は控えめ」とも言われます。この見方は公的統計で確かめると正しいのですが、同じ大阪府内でも市によって薬剤師の多さが1.7倍も違うことは、あまり知られていません。
この記事では、厚生労働省の統計をもとにした大阪の薬剤師事情、市ごとの本当の差、年収が伸びにくい理由、職場の選び方と年収アップのコツを、現役薬剤師の目線で整理します。大阪での転職を考えるときの参考にしてください。
- 大阪の届出薬剤師は28,055人、薬局は4,664施設でどちらも東京に次ぐ全国2位
- 人口あたりの薬剤師数は全国平均を1割以上上回り、「充足しているから年収が伸びにくい」は事実
- ただし府内格差が大きく、吹田305.5に対し東大阪180.0と1.7倍の差。東部は全国平均を下回ります
- 大阪市は薬局や医療施設以外で働く薬剤師が全国平均の3倍。企業志望なら東京に次ぐ環境です
大阪の薬剤師転職を数字で見る
まず、大阪がどれくらい大きな市場なのかを公的統計で確認します。厚生労働省の令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計によると、大阪府で働く届出薬剤師は28,055人。東京都の55,020人に次ぐ全国2位で、3位の神奈川県24,212人を上回ります。
薬局も同様です。厚生労働省の令和6年度 衛生行政報告例によると、大阪府の薬局は4,664施設で、東京都7,215施設に次ぐ全国2位。求人が豊富だと言われるのは、この母数の大きさが理由です。
出典:薬剤師数は厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(従業地ベース・令和6年12月31日現在)、薬局数は厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。
注目したいのは3行目と4行目です。人口10万人あたりの薬剤師数320.4は、東京388.1・徳島382.0に次ぐ全国3位。薬局・医療施設で働く人に限っても232.4で、全国平均210.6を1割以上上回っています。一方、薬局密度53.3は全国平均51.1とほぼ同水準。
つまり大阪は、薬局の数は人口相応なのに、薬剤師だけが人口比で多いという状態です。1つの薬局に対して働き手が多く集まるので、職場が給与を上げなくても採用できてしまう。「大阪は年収が控えめ」と言われる理由は、この需給にあります。
「大阪は年収が低い」と聞くとがっかりする人もいますが、これは大阪が悪いのではなく、人が集まる場所ではどこでも起きることです。東京も同じ構図。ただ大阪の場合、府内の差が非常に大きいので、府平均だけを見て判断するともったいない。次の章がこの記事の本題です。
府内格差を市別データで見る
大阪のエリア差は「市内は控えめ、郊外は高め」と語られがちですが、実際はもっと複雑です。統計から市ごとの数字を並べてみると、はっきりした地図が見えてきます。
出典:厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」の指定都市・中核市(再掲)の数値。掲載があるのは政令指定都市と中核市のみのため、岸和田市など掲載のない市は含まれていません。
最も多い吹田市305.5と、最も少ない東大阪市180.0では1.7倍の開きがあります。しかも東大阪180.0・寝屋川186.7・八尾200.4は、全国平均210.6すら下回ります。同じ大阪府内で、薬剤師が余っている地域と足りない地域が並存しているわけです。
北摂が突出する理由と、東部が薄い理由
吹田と高槻が突出しているのは、医師の数を見れば分かります。吹田市の医師密度606.3は全国平均267.4の2倍以上、高槻市も448.3。大学病院や国の研究機関が集まる医療の拠点で、そこに勤める薬剤師も集中します。加えて吹田には大阪大学の薬学部、高槻には大阪医科薬科大学の薬学部があり、卒業生がそのまま地域に残りやすい環境です。
一方の東部です。東大阪市には近畿大学の薬学部がありますが、薬剤師密度は府内で最も低い180.0。薬学部があっても、卒業生がその市に残るとは限らないことを示す例です。大阪市や北摂へ通勤してしまうため、地元の薬局や病院には人が回りにくい。ここに求人ニーズが生まれます。
年収の民間調査では「南大阪(泉州)が高め」とされることがありますが、公的統計で確認できる範囲では、南の代表である堺市218.1より、東部の東大阪180.0・寝屋川186.7のほうが薬剤師は薄いという結果です。年収を狙うなら、南だけでなく東部も候補に入れる価値があります。
大阪は電車網が細かいので、住む場所を変えずに働く市だけ変えるのが本当にやりやすいエリアです。北摂に住みながら東部の職場に通う、という組み合わせも十分に現実的。「大阪市内で探す」と決め打ちせず、通勤時間で円を描いてみてください。
薬学部5校と、大阪ならではの企業という選択肢
大阪府には薬学部を置く大学が5校あります。大阪大学(吹田市)、大阪医科薬科大学(高槻市)、近畿大学(東大阪市)、摂南大学(枚方市)、大阪大谷大学(富田林市)です。府内で毎年多くの薬剤師が育ち、そのまま府内で働く。これが大阪の薬剤師密度を押し上げている土台になっています。
大阪市は企業薬剤師の集積地でもある
見落とされがちなのが、調剤以外の道の広さです。大阪市の届出薬剤師は人口10万人あたり421.4ですが、薬局・医療施設で働く人は255.4。差の166.0が、製薬企業や行政機関など薬局以外で働く薬剤師にあたります(届出上の無職者を含みます)。全国平均は55.2ですから、およそ3倍の密度です。
背景には歴史があります。大阪市中央区の道修町は江戸時代から薬種商が集まった「薬の町」で、武田薬品工業(1781年に近江屋長兵衛として創業)や塩野義製薬(1878年創業)などがこの地で生まれました。近年は本社を移す企業もありますが、製薬企業の集積地としての性格は今も残っています。企業への転職を考えるなら、大阪は東京に次ぐ環境です。
参考までに、大阪市の薬局・医療施設で働く薬剤師の密度255.4は、東京23区の248.0を上回ります。調剤の現場に限れば、大阪市のほうが東京23区より薬剤師が密に配置されているのが実情です。
企業への転職は「東京に出ないと無理」と思われがちですが、大阪はしっかり選択肢があります。関西に生活の基盤があって企業も考えたい人にとって、これは大きな強みです。すぐ動かないとしても、選べる状態にあることは知っておいてください。
大阪で働くメリットと注意点
大阪で薬剤師として働くメリットと、知っておきたい注意点の両面を整理しました。
- 薬局4,664施設・薬剤師28,055人と母数が全国2位で、求人が途切れにくい
- 製薬企業の集積があり、調剤以外のキャリアを関西で描ける
- 電車網が細かく、住む場所を変えずに働く市だけ変えやすい
- 府内に薬剤師が薄い市があり、そこを狙えば条件交渉の余地がある
- 地域密着型から全国展開型まで、職場の種類が多様
- 人口あたりの薬剤師数が全国3位で、府全体では年収が伸びにくい
- 薬学部5校からの供給が続き、この構図は当面変わりにくい
- 吹田・高槻は薬剤師が特に多く、条件交渉は難しい
- ドラッグストアは終業時間が遅めの店舗が多い
- 求人が多すぎて、条件を絞らないと選びきれない
大阪は、選択肢の多さとキャリアの幅という点で恵まれたエリアです。年収の上乗せは府全体では期待しにくいものの、市を選び直すだけで状況が変わるのが大阪の特徴です。府平均だけを見て諦めないでください。
大阪は地域密着型のドラッグストアや薬局が元気なエリアです。全国チェーンとは違う、地元に根ざした職場で働きたい人には合うと思います。終業時間が遅めの店舗もあるので、シフトの組み方は求人ごとに必ず確認してくださいね。
職場の選び方と年収アップのコツ
大阪で自分に合う職場を選び、年収も確保するためのコツをまとめました。
- 年収を狙うなら東大阪・寝屋川・八尾などの東部や、堺以南も候補に入れる
- 吹田・高槻は薬剤師が多いので、年収より学べる環境で選ぶ
- 住む場所は変えず、働く市だけ変える組み合わせを検討する
- 管理薬剤師など、役職手当の付くポジションを狙う
- 在宅対応や無菌調剤など、加算の取れる業務がある職場を選ぶ
- キャリアの幅を広げたいなら、企業内薬剤師も選択肢に入れる
大阪は求人が多すぎて、自分だけで探すと迷いやすいエリアです。まず「通える範囲」を通勤時間で決め、次に年収・働き方・職場タイプの優先順位をつける。この2つを先に固めるだけで、絞り込みの精度が大きく上がります。
薬剤師が薄い市は、裏を返せば1人あたりの負担が大きい可能性があります。東大阪や寝屋川で好条件の求人を見つけたら、1日の処方箋枚数・在籍薬剤師数・残業の実績を必ず確認してください。また大阪はドラッグストアの比率が高く、終業時間が遅い店舗も少なくありません。シフトの実態は面談で具体的に聞いておきましょう。
大阪で年収を上げたいなら、業態を変えるかエリアを変えるかの二択になります。府全体の水準が上がる見込みは薄いので、動くなら自分の側の条件を変えるしかない。逆に言えば、その2つを動かせば結果は出やすいエリアです。
よくある質問
まとめ
- 大阪の届出薬剤師28,055人・薬局4,664施設はどちらも全国2位
- 人口10万対の薬剤師数320.4は全国3位。薬局密度は平均並みで、年収が伸びにくい
- 府内格差が大きく、吹田305.5と東大阪180.0で1.7倍の開き
- 東大阪・寝屋川・八尾の東部は全国平均も下回り、需給の面ではねらい目
- 薬学部5校が府内にあり、供給が続く構造は当面変わりにくい
- 大阪市は企業薬剤師が全国平均の3倍。関西に住みながら企業を目指せる
大阪は、求人の多さとキャリアの幅という点で、関西では飛びぬけた選択肢を持つエリアです。府全体では年収が伸びにくいものの、市を選び直すだけで状況は変わります。府平均の数字で諦めず、通える範囲の中でどの市を選ぶかを考えてみてください。関西のほかの府県とあわせて検討する方は関西の薬剤師転職おすすめガイド、全国と比べたい方は薬剤師の都道府県別転職ガイドもあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例の概況」(令和6年度末現在)
※本記事の統計数値は上記の公的統計にもとづき、2026年9月時点で確認したものです。市別の数値は同統計の指定都市・中核市(再掲)によるもので、掲載のない市は含まれていません。薬局・医療施設以外で働く薬剤師の値は、公表値をもとに本記事で算出したもので、届出上の無職者を含みます。薬学部の設置状況は薬学教育協議会および日本薬剤師研修センターの公表情報にもとづきます。求人数・年収・働き方の傾向はエリアや職場、時期によって異なります。年収に関する民間調査の数値は調査元によって大きく異なるため、本記事では傾向のみを記載しています。詳細は各求人や転職支援サービスにご確認ください。

