この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「このまま今の職場にいて、10年後どうなっているんだろう」
日々の業務をこなしていると、そんな不安がふと頭をよぎることがあります。薬剤師の免許があれば食べていけるという感覚は、いま静かに変わりつつあります。
この記事の結論を先に書きます。10年後に薬剤師の仕事はなくなりません。ただし、評価される仕事の中身が入れ替わります。調剤の作業は外に出せる業務として法律上整理され、患者と向き合う業務と在宅は、点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました。
しかもこれは予測ではありません。調剤業務の一部を他の薬局に委託できる制度は、2027年(令和9年)5月20日に施行することが省令で決まっています。決まっていることから逆算するのが、この記事の立場です。
📌 この記事でわかること
- 国の需給推計が示す、需要と供給それぞれの見通しと、過剰幅を分ける条件
- 職域ごとの人数の増減が、すでに統計に表れていること
- 2027年5月20日施行の制度で、外に出る業務と残る業務がどう分かれるか
- 2026年6月に施行された調剤報酬改定が、何を評価する形に変わったか
- 5つのキャリアパスと、それぞれの現実的な見通し
- 10年後から逆算してキャリアを設計する4つの手順
- 制度の要件から職場を見極める視点と、今日から始められる行動
10年後の前提|国のデータが示していること
要点:需要そのものは増える見込み。ただし供給の伸びがそれを上回る。過剰幅が2万4000人で済むか12万6000人になるかを分けるのは、薬剤師が対人業務へ広がれるかどうかです。
キャリアを考える前に、土台となる数字を確認します。厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が2021年4月26日に公表した需給推計では、2020年から2045年までの見通しが4通りの数字で示されています。
出典:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(第8回・2021年4月26日)資料「薬剤師の需給推計」。2020年時点の需要は32万人。資料を確認する(厚生労働省)
この4つの数字の組み合わせが、よく引用される「2万4000人から12万6000人の過剰」という幅の正体です。供給が43万2000人で需要が40万8000人なら差は2万4000人。供給が45万8000人で需要が33万2000人なら差は12万6000人になります。
つまり、過剰幅を決めているのは供給側ではなく需要側です。そして需要を押し上げる要因として国が挙げているのが、在宅業務・市販薬販売・健康相談の3つ。国は「薬剤師が要らなくなる」とは一度も言っていません。求められる仕事の中身が変われば需要は増えると言っているのです。
需要が増える前提として、国が置いた仮定
この40万8000人という上限は、根拠なく置かれた数字ではありません。資料には仮定条件がはっきり書かれています。
需要推計で置かれた仮定(薬局の場合)
- 在宅業務は2045年までに2倍になると仮定
- 健康サポート機能に関する業務は1.5倍になると仮定
- 外来業務は2025年までに1.1倍、その後は0.9倍から1.1倍(効率化された場合は0.9倍)と仮定
外来業務は横ばいから微減もありうる一方で、在宅は2倍、健康相談は1.5倍という前提で試算されています。10年後に自分の業務がどちらに寄っているか。この3行が、事実上のキャリア指針になっています。
病院についても同じ構造です。病床数の減少をそのまま反映した機械的な推計では、病院薬剤師の需要は5.3万人から4.7万人へ減少します。ところが病棟業務の充実を織り込むと、6.2万人へ増加する試算になります。病院で働き続けるなら、病棟に関われるかどうかが分かれ目だということです。
職域ごとの増減は、すでに始まっている
将来の話だけではありません。直近の統計を見ると、職域による差はすでに数字に表れています。
出典:厚生労働省「令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)。2024年12月31日現在の届出薬剤師数の総数は329,045人。統計を確認する(厚生労働省)
企業だけが大きく人数を減らしています。「いずれ企業に移りたい」と漠然と考えているなら、この方向は知っておくべきです。10年後を待つほど、その扉は狭くなる可能性があります。
逆に、薬局は6,702人という最も大きな増加幅を示しました。ただし人数が増えているということは、同じ職域のなかで比べられる相手も増えているということです。人数が増えている場所ほど、何ができるかで差がつきやすくなります。
この数字を見て不安になる必要はありません。需要は増える方向で、しかも増える理由まで名指しで示されています。在宅、市販薬、健康相談。ここに関われる経験を積んでいれば、10年後も求められる側にいられるということです。地図が配られているのに、読まないのはもったいない話だと思います。
すでに決まっている制度から読む、10年後に残る仕事
要点:予測ではなく、公布済みの法律・施行済みの改定・公布済みの省令が方向を示しています。定型的な調剤作業は外に出せる業務として整理され、患者対応・在宅・健康相談は点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました。
2027年5月20日、調剤業務の一部を外部に委託できるようになる
2025年5月14日に成立し、同月21日に公布された改正薬機法(令和7年法律第37号)により、薬局が調剤業務の一部を、同じ都道府県内の別の薬局に委託できる仕組みが設けられました。法律上は「特定調剤業務」と呼ばれます。
そして2026年6月30日に整備省令(令和8年厚生労働省令第110号)が公布され、施行日が2027年(令和9年)5月20日に確定しました。細かい運用ルールもこの省令で出そろっています。
出典:厚生労働省医薬局長通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について」(医薬発0630第1号・2026年6月30日)。通知を確認する(厚生労働省)
外に出しても、最後に確認するのは委託した側の薬剤師
見落とされがちですが、ここが重要です。省令では、受託薬局から届いた完成品を、委託した薬局の薬剤師が目視により確認しなければならないと定められました。記録は5年間の保存が必要です。
つまり「外注したから責任も外に出る」という制度ではありません。手を動かす部分は減っても、判断し確認する部分は薬局に残ります。10年後に評価されるのは、作業の速さではなく、この判断と確認の質だということです。
読み取れること:一包化や調製は外に出せる業務として制度上位置づけられ、患者対応・服薬指導・最終確認は薬剤師が担い続ける業務として残される。調剤の速さや正確さだけを強みにしてきた薬剤師にとって、その強みが評価されにくくなる方向だということです。
調剤報酬は、肩書ではなく実績を評価する形に変わった
2026年6月1日施行の令和8年度調剤報酬改定でも、同じ方向が示されました。かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料が廃止され、服薬管理指導料に統合されています。
代わりに新設されたのが、実際に何をしたかを評価する加算です。
出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年3月5日版)。資料を確認する(厚生労働省)/令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)
あわせて、かかりつけ薬剤師の個人要件も緩和されました。保険薬局での勤務経験が5年以上から3年以上になり、保険医療機関の薬剤師としての勤務経験を1年以上有する場合は、1年を上限として算入できるようになっています。当該薬局での在籍期間は1年以上から6か月以上に、勤務時間は週32時間以上から週31時間以上に短縮されました。病院から薬局へ移る人にとっては、以前より入り口が広がっています。
在宅の評価は、はっきりと引き上げられた
同じ改定で、在宅に関する評価はいずれも増点または新設されました。国が需給推計で「需要を押し上げる要因」と名指しした分野に、実際にお金がついたということです。
- 在宅薬学総合体制加算1:15点から30点へ増点
- 在宅薬学総合体制加算2(個人宅の場合):50点から100点へ増点。個人宅への訪問を厚く評価する区分が新設されました
- 訪問薬剤管理医師同時指導料:150点を新設。医師と薬剤師が同時に患家を訪問した場合の評価です
- 複数名薬剤管理指導訪問料:300点を新設。複数名での訪問が必要な患者への対応を評価します
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定間隔が「中6日以上」から「週1回」に見直され、訪問しやすくなりました
在宅を「やってもやらなくてもいい業務」と考えている職場と、体制を整えて取りに行く職場とで、この10年で差が開いていくことになります。経験を積める職場かどうかは、こうした加算の届出状況からある程度読めます。
「健康増進支援薬局」という新しい認定ができる
もうひとつ、キャリアに直結する新制度があります。改正薬機法により、都道府県知事の認定を受けて「健康増進支援薬局」と称することができる制度が創設されました。従来の健康サポート薬局の表示制度は廃止され、法律上の認定制度へ格上げされる形です。施行は外部委託と同じ2027年5月20日です。
注目すべきは、認定基準に薬剤師個人の状態が組み込まれている点です。
健康増進支援薬局の認定基準に含まれる、薬剤師に関する要件
- 常勤として勤務している薬剤師の半数以上が、その薬局に継続して1年以上常勤として勤務していること
- 常勤として勤務している薬剤師の半数以上が、実務に従事した期間が一定以上あり、かつ健康の保持増進の支援に関する研修を修了していること
出典:薬機法施行規則第10条の4(令和8年厚生労働省令第110号による改正後)
研修を修了した薬剤師が、そのまま薬局の認定要件になります。個人が積んだものが、そのまま職場にとっての価値になるという構造です。健康相談という業務は、これまで「やってもお金にならない」と言われがちでしたが、制度上の位置づけが変わりました。
10年後に向けた要約
- 縮む可能性が高い:一包化や調製といった定型的な作業。2027年5月20日から、制度上は外に出せる業務として整理されます
- 残り、評価される:服薬指導、フォローアップ、在宅訪問、最終確認、健康相談。委託の対象外であり、点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました
- 評価の物差しが変わった:届出や肩書ではなく、実際に何をしたかという実績で見る形に転換しています
「10年後がどうなるかなんて分からない」とよく言われますが、少なくともこの部分は法律も省令も公布済みで、施行日まで決まっています。分からないのではなく、決まっていることを読んでいないだけ、という場合が案外多いと思います。私も省令が出るまでは「2年以内のいつか」としか把握していませんでした。
薬剤師の5つのキャリアパスと、10年後の見通し
要点:どれが正解ということはありません。ただし、統計と制度から見える追い風・向かい風は方向によってはっきり違います。
キャリアの方向はおおむね5つに整理できます。10年後の景色は方向によってかなり違います。
選ぶときの視点:10年後に自分が「代わりのきかない人」になっているかどうかです。制度が示しているのは、対人業務と専門性がその答えに近いということ。ただし働き方を優先する選択が劣っているわけではありません。大切なのは、自分がどちらを選んでいるのかを自覚していることです。
私は病院から調剤薬局へ移りました。当時は「病院を辞めたら専門性が止まる」と思っていましたが、実際には在宅という新しい領域が開けました。道は一本ではありませんし、途中で変えることもできます。大切なのは、選んでいる自覚を持つことだと思っています。
10年後から逆算してキャリアを設計する4つの手順
要点:やりたいことが決まっていなくても構いません。書き出す、棚卸しする、差を洗い出す、3年ごとに区切る。この4手順で次の一歩が決まります。
手順1 10年後の姿を、生活も含めて書き出す
仕事だけでなく、家族の状況、住む場所、働く時間まで含めて考えます。「がん専門薬剤師として病院で働く」と「子どもの行事に必ず出られる」は、両立できることもあれば、順番を決める必要があることもあります。先に生活の条件を書いておくと、後で選び直す回数が減ります。
手順2 いまの自分を棚卸しする
経験年数、扱ってきた診療科、担当した業務、保有する認定資格、管理業務の経験。数字を伴う形で書き出すのがコツです。「1日◯枚の処方箋を◯名体制で回した」「在宅を◯件担当した」と書けると、そのまま職務経歴書にも使えます。制度が実績を評価する形に変わった以上、この書き出しは市場でもそのまま通用します。
手順3 差を洗い出す
目標と現状の間にある不足を書き出します。在宅の経験がない、認定資格を持っていない、後輩指導の経験がない。この差が、そのまま今後10年でやるべきことのリストになります。
手順4 3年ごとに区切って計画にする
10年は長すぎて動けません。3年単位に割ると現実味が出ます。たとえば1年目から3年目で在宅の経験を積む、4年目から6年目で認定資格を取得する、7年目から10年目で管理業務や後進育成に広げる、という具合です。最初の3年で必要な経験が今の職場で積めないなら、そこが転職を考える理由になります。
判断の目安:今の職場で、これから3年のうちに必要な経験が積めるか。答えが「積める」なら動く必要はありません。「積めない」なら、環境を変えることが計画の一部になります。転職は目的ではなく、計画を実行するための手段です。
手順2の棚卸しだけでも、やってみる価値があります。自分では当たり前だと思っている経験が、市場では評価されていることが少なくありません。無菌調製、施設対応、在宅、後輩指導。書き出してみると、思っていたより持っているものです。
計画を実行する3つの選択肢
要点:転職だけが手段ではありません。今の職場で広げる、業態を変える、専門性を積む。まずは1つ目から試すのが順番です。
なお、認定薬剤師の認定名称と人数は薬局機能情報提供制度の報告事項に含まれ、医療情報ネットで公表されています。つまり資格の取得は、本人の実力を示すだけでなく、事業所にとっても価値のあるものとして制度に位置づけられているということです。転職時の交渉材料としても意味を持ちます。
まず試してほしいのが1つ目です。「在宅を担当させてほしい」と具体的に伝えるだけで、道が開けることは案外あります。それでも数か月動かないなら、そのときに2つ目や3つ目を考えればいい。順番があるだけで、どれも正しい選択です。
職場選びで見るべき、制度から導ける5つの確認項目
要点:「経験が積める職場かどうか」は、雰囲気ではなく制度の要件から判定できます。面接で聞ける形に落とし込みました。
制度の要件は、そのまま「その職場で何ができるか」の裏返しになっています。求人票や面接で確認すべき項目を5つに絞りました。
薬局の認定状況や在宅の実施回数は、薬局機能情報提供制度に基づいて公表されています。面接前に調べておくと、質問の精度が一段上がります。
面接で「在宅はやっていますか」と聞くと、たいていの職場は「やっています」と答えます。聞くべきは件数と、誰が担当しているかです。「月に何件くらいで、何人体制ですか」まで踏み込むと、実態がかなり見えます。答えが曖昧なら、そこで経験を積むのは難しいかもしれません。
今日からできること
要点:10年後の話は大きすぎて動けなくなりがちです。今週やること3つ、今月やること3つに落とし込みました。
✅ 今週やること
- 経験を書き出す。担当してきた業務、扱った診療科、処方箋枚数と人員体制。30分で構いません
- 10年後の希望を一行で書く。仕事だけでなく、生活の条件も添えます
- 差を3つに絞る。足りないものを全部書き出したうえで、優先度の高い3つに絞ります
✅ 今月やること
- 今の職場でその3つが埋まるか確認する。上司に希望を伝えてみるのが最も早い確認方法です
- 認定資格の要件を調べる。必要な単位、期間、取得できる施設の条件を確認します
- 自分の職場の認定状況を調べる。地域連携薬局の認定、在宅の実施回数などを確認しておくと、比較の基準ができます
- 市場での評価を聞いてみる。転職を決めていなくても構いません。自分の経験がどう評価されるかを知ると、計画の精度が上がります
最後の項目について補足します。転職エージェントへの相談は、転職を決めていない段階でも利用できます。職業安定法により、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することは原則として禁止されており、薬剤師はその例外にあたらないため、費用はかかりません。「情報収集の段階」と最初に伝えておけば、相談中心の対応をしてもらえます。
10年計画は、立てて終わりにしないことが大事です。年に一度、誕生日や年度替わりに見返すくらいでちょうどいいと思います。制度も市場も動きますし、自分の希望も変わります。書き換えていいものだと思って、まず一度書いてみてください。
よくある質問
まとめ
この記事のポイント
- 需要は増える方向。ただし供給の伸びが上回る。2045年時点で2万4000人から12万6000人の過剰と試算されている
- 過剰幅を決めるのは需要側。推計は在宅業務2倍・健康サポート機能1.5倍という仮定の上に成り立っており、そこへ広がれるかどうかで差は5倍以上変わる
- 職域の差はすでに数字に出ている。薬局は3.5%増、医療施設は1.3%増、医薬品関係企業は7.8%減
- 2027年5月20日、調剤業務の一部が外部に委託できるようになる。対象は定型的な業務で、患者対応と服薬指導は対象外。最終確認は委託した側の薬剤師が行う
- 調剤報酬も実績を評価する形に。かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、フォローアップ加算50点・訪問加算230点など行為への評価に置き換わった
- 在宅と健康相談には追い風が吹いている。在宅関連は軒並み増点され、健康増進支援薬局という認定制度も新設される
- 逆算の手順は4つ。10年後の姿を生活込みで書く、棚卸し、差の洗い出し、3年ごとの計画化
- 実行の選択肢は3つ。今の職場で広げる、業態を変える、専門性を積む。まずは1つ目から試す
10年後がどうなるかは誰にも分かりませんが、すでに決まっている制度は読むことができます。対物業務は外に出され、対人業務が評価される。この方向を踏まえて、今日から積む経験を選んでいけば、10年後に困ることは大きく減らせます。
まずは30分、自分の経験を書き出すところから始めてみてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。需給推計は厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(第8回・2021年4月26日)資料、職域別の薬剤師数は「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)、調剤業務の一部外部委託および健康増進支援薬局に関する記述は医薬品医療機器等法の改正法(令和7年法律第37号・2025年5月21日公布)と整備省令(令和8年厚生労働省令第110号・2026年6月30日公布、2027年5月20日施行)、調剤報酬に関する記述は「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年3月5日版・2026年6月1日施行)に基づいています。委託の対象となる業務の詳細は政令で定められるため、最新の内容は厚生労働省の公表資料をご確認ください。将来の見通しは推計であり、実際の動向とは異なる場合があります。

