薬剤師のキャリアプラン10年後|今やるべき3つの準備

薬剤師のキャリアプラン10年後|今やるべき3つの準備

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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。

「このまま今の職場にいて、10年後どうなっているんだろう」

日々の業務をこなしていると、そんな不安がふと頭をよぎることがあります。薬剤師の免許があれば食べていけるという感覚は、いま静かに変わりつつあります。

この記事の結論を先に書きます。10年後に薬剤師の仕事はなくなりません。ただし、評価される仕事の中身が入れ替わります。調剤の作業は外に出せる業務として法律上整理され、患者と向き合う業務と在宅は、点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました。

しかもこれは予測ではありません。調剤業務の一部を他の薬局に委託できる制度は、2027年(令和9年)5月20日に施行することが省令で決まっています。決まっていることから逆算するのが、この記事の立場です。

📌 この記事でわかること

  • 国の需給推計が示す、需要と供給それぞれの見通しと、過剰幅を分ける条件
  • 職域ごとの人数の増減が、すでに統計に表れていること
  • 2027年5月20日施行の制度で、外に出る業務と残る業務がどう分かれるか
  • 2026年6月に施行された調剤報酬改定が、何を評価する形に変わったか
  • 5つのキャリアパスと、それぞれの現実的な見通し
  • 10年後から逆算してキャリアを設計する4つの手順
  • 制度の要件から職場を見極める視点と、今日から始められる行動
目次

10年後の前提|国のデータが示していること

要点:需要そのものは増える見込み。ただし供給の伸びがそれを上回る。過剰幅が2万4000人で済むか12万6000人になるかを分けるのは、薬剤師が対人業務へ広がれるかどうかです。

キャリアを考える前に、土台となる数字を確認します。厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が2021年4月26日に公表した需給推計では、2020年から2045年までの見通しが4通りの数字で示されています。

区分
前提
2045年の人数
需要(下限)
処方箋あたりの業務量が現在と同じまま推移した場合
33万2000人
需要(上限)
在宅業務・市販薬販売・健康相談など業務が広がった場合
40万8000人
供給(下限)
人口減少を考慮した場合
43万2000人
供給(上限)
国家試験合格者数が近年と同程度で推移した場合
45万8000人

出典:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(第8回・2021年4月26日)資料「薬剤師の需給推計」。2020年時点の需要は32万人。資料を確認する(厚生労働省)

この4つの数字の組み合わせが、よく引用される「2万4000人から12万6000人の過剰」という幅の正体です。供給が43万2000人で需要が40万8000人なら差は2万4000人。供給が45万8000人で需要が33万2000人なら差は12万6000人になります。

つまり、過剰幅を決めているのは供給側ではなく需要側です。そして需要を押し上げる要因として国が挙げているのが、在宅業務・市販薬販売・健康相談の3つ。国は「薬剤師が要らなくなる」とは一度も言っていません。求められる仕事の中身が変われば需要は増えると言っているのです。

需要が増える前提として、国が置いた仮定

この40万8000人という上限は、根拠なく置かれた数字ではありません。資料には仮定条件がはっきり書かれています。

需要推計で置かれた仮定(薬局の場合)

  • 在宅業務は2045年までに2倍になると仮定
  • 健康サポート機能に関する業務は1.5倍になると仮定
  • 外来業務は2025年までに1.1倍、その後は0.9倍から1.1倍(効率化された場合は0.9倍)と仮定

外来業務は横ばいから微減もありうる一方で、在宅は2倍、健康相談は1.5倍という前提で試算されています。10年後に自分の業務がどちらに寄っているか。この3行が、事実上のキャリア指針になっています。

病院についても同じ構造です。病床数の減少をそのまま反映した機械的な推計では、病院薬剤師の需要は5.3万人から4.7万人へ減少します。ところが病棟業務の充実を織り込むと、6.2万人へ増加する試算になります。病院で働き続けるなら、病棟に関われるかどうかが分かれ目だということです。

職域ごとの増減は、すでに始まっている

将来の話だけではありません。直近の統計を見ると、職域による差はすでに数字に表れています。

職域
従事する薬剤師数
前回調査との比較
薬局
197,437人
6,702人・3.5%の増加
医療施設(病院・診療所)
63,290人
827人・1.3%の増加
医薬品関係企業
34,184人
2,902人・7.8%の減少

出典:厚生労働省「令和6年(2024年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)。2024年12月31日現在の届出薬剤師数の総数は329,045人。統計を確認する(厚生労働省)

企業だけが大きく人数を減らしています。「いずれ企業に移りたい」と漠然と考えているなら、この方向は知っておくべきです。10年後を待つほど、その扉は狭くなる可能性があります。

逆に、薬局は6,702人という最も大きな増加幅を示しました。ただし人数が増えているということは、同じ職域のなかで比べられる相手も増えているということです。人数が増えている場所ほど、何ができるかで差がつきやすくなります。

💬 くらげのひとこと

この数字を見て不安になる必要はありません。需要は増える方向で、しかも増える理由まで名指しで示されています。在宅、市販薬、健康相談。ここに関われる経験を積んでいれば、10年後も求められる側にいられるということです。地図が配られているのに、読まないのはもったいない話だと思います。

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すでに決まっている制度から読む、10年後に残る仕事

要点:予測ではなく、公布済みの法律・施行済みの改定・公布済みの省令が方向を示しています。定型的な調剤作業は外に出せる業務として整理され、患者対応・在宅・健康相談は点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました。

2027年5月20日、調剤業務の一部を外部に委託できるようになる

2025年5月14日に成立し、同月21日に公布された改正薬機法(令和7年法律第37号)により、薬局が調剤業務の一部を、同じ都道府県内の別の薬局に委託できる仕組みが設けられました。法律上は「特定調剤業務」と呼ばれます。

そして2026年6月30日に整備省令(令和8年厚生労働省令第110号)が公布され、施行日が2027年(令和9年)5月20日に確定しました。細かい運用ルールもこの省令で出そろっています。

項目
内容
施行日
2027年(令和9年)5月20日。整備省令の公布により確定しています
対象になる業務
調剤の業務のうち、その業務に著しい影響を与えない定型的な業務として政令で定めるもの。一包化などの調製作業が想定されています
対象にならない業務
患者対応や服薬指導は委託の対象外です。ここが今回の制度設計の核心にあたります
委託できる相手
省令で「委託薬局と同一の都道府県の区域内に所在すること」と定められました。県境を越えた委託はできません
受託側の設備要件
委託薬局との通信手段に加え、錠剤分包機を備えていることが構造設備の基準とされました
患者への情報開示
委託・受託を行う薬局は、その旨と相手方の薬局名・所在地を見やすい場所に掲示する義務があります
目的
情報提供と薬学的知見に基づく指導の質の向上を図るために業務を効率化すること、と条文に書かれています
背景
2024年7月から大阪市で、国家戦略特区の特例として一包化業務の外部委託が実証されていました

出典:厚生労働省医薬局長通知「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令の公布について」(医薬発0630第1号・2026年6月30日)。通知を確認する(厚生労働省)

外に出しても、最後に確認するのは委託した側の薬剤師

見落とされがちですが、ここが重要です。省令では、受託薬局から届いた完成品を、委託した薬局の薬剤師が目視により確認しなければならないと定められました。記録は5年間の保存が必要です。

つまり「外注したから責任も外に出る」という制度ではありません。手を動かす部分は減っても、判断し確認する部分は薬局に残ります。10年後に評価されるのは、作業の速さではなく、この判断と確認の質だということです。

読み取れること:一包化や調製は外に出せる業務として制度上位置づけられ、患者対応・服薬指導・最終確認は薬剤師が担い続ける業務として残される。調剤の速さや正確さだけを強みにしてきた薬剤師にとって、その強みが評価されにくくなる方向だということです。

調剤報酬は、肩書ではなく実績を評価する形に変わった

2026年6月1日施行の令和8年度調剤報酬改定でも、同じ方向が示されました。かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料が廃止され、服薬管理指導料に統合されています。

代わりに新設されたのが、実際に何をしたかを評価する加算です。

新設された評価
点数
評価されている行為
かかりつけ薬剤師フォローアップ加算
50点(3月に1回)
電話などで服薬状況や残薬状況を継続的に確認し、必要な指導を行った場合
かかりつけ薬剤師訪問加算
230点(6月に1回)
患家を訪問して服薬管理・残薬確認を行い、医療機関へ情報提供した場合
服用薬剤調整支援料2(見直し)
1,000点
研修を受けたかかりつけ薬剤師が、多剤服用の患者の薬を一元的に評価し処方医に提案した場合(2027年6月1日から適用)

出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年3月5日版)。資料を確認する(厚生労働省)/令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)

あわせて、かかりつけ薬剤師の個人要件も緩和されました。保険薬局での勤務経験が5年以上から3年以上になり、保険医療機関の薬剤師としての勤務経験を1年以上有する場合は、1年を上限として算入できるようになっています。当該薬局での在籍期間は1年以上から6か月以上に、勤務時間は週32時間以上から週31時間以上に短縮されました。病院から薬局へ移る人にとっては、以前より入り口が広がっています。

在宅の評価は、はっきりと引き上げられた

同じ改定で、在宅に関する評価はいずれも増点または新設されました。国が需給推計で「需要を押し上げる要因」と名指しした分野に、実際にお金がついたということです。

  • 在宅薬学総合体制加算1:15点から30点へ増点
  • 在宅薬学総合体制加算2(個人宅の場合):50点から100点へ増点。個人宅への訪問を厚く評価する区分が新設されました
  • 訪問薬剤管理医師同時指導料:150点を新設。医師と薬剤師が同時に患家を訪問した場合の評価です
  • 複数名薬剤管理指導訪問料:300点を新設。複数名での訪問が必要な患者への対応を評価します
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定間隔が「中6日以上」から「週1回」に見直され、訪問しやすくなりました

在宅を「やってもやらなくてもいい業務」と考えている職場と、体制を整えて取りに行く職場とで、この10年で差が開いていくことになります。経験を積める職場かどうかは、こうした加算の届出状況からある程度読めます。

「健康増進支援薬局」という新しい認定ができる

もうひとつ、キャリアに直結する新制度があります。改正薬機法により、都道府県知事の認定を受けて「健康増進支援薬局」と称することができる制度が創設されました。従来の健康サポート薬局の表示制度は廃止され、法律上の認定制度へ格上げされる形です。施行は外部委託と同じ2027年5月20日です。

注目すべきは、認定基準に薬剤師個人の状態が組み込まれている点です。

健康増進支援薬局の認定基準に含まれる、薬剤師に関する要件

  • 常勤として勤務している薬剤師の半数以上が、その薬局に継続して1年以上常勤として勤務していること
  • 常勤として勤務している薬剤師の半数以上が、実務に従事した期間が一定以上あり、かつ健康の保持増進の支援に関する研修を修了していること

出典:薬機法施行規則第10条の4(令和8年厚生労働省令第110号による改正後)

研修を修了した薬剤師が、そのまま薬局の認定要件になります。個人が積んだものが、そのまま職場にとっての価値になるという構造です。健康相談という業務は、これまで「やってもお金にならない」と言われがちでしたが、制度上の位置づけが変わりました。

10年後に向けた要約

  • 縮む可能性が高い:一包化や調製といった定型的な作業。2027年5月20日から、制度上は外に出せる業務として整理されます
  • 残り、評価される:服薬指導、フォローアップ、在宅訪問、最終確認、健康相談。委託の対象外であり、点数と認定制度の両方で評価が引き上げられました
  • 評価の物差しが変わった:届出や肩書ではなく、実際に何をしたかという実績で見る形に転換しています
💬 くらげのひとこと

「10年後がどうなるかなんて分からない」とよく言われますが、少なくともこの部分は法律も省令も公布済みで、施行日まで決まっています。分からないのではなく、決まっていることを読んでいないだけ、という場合が案外多いと思います。私も省令が出るまでは「2年以内のいつか」としか把握していませんでした。

薬剤師の5つのキャリアパスと、10年後の見通し

要点:どれが正解ということはありません。ただし、統計と制度から見える追い風・向かい風は方向によってはっきり違います。

キャリアの方向はおおむね5つに整理できます。10年後の景色は方向によってかなり違います。

方向
10年後の姿
見通しと注意点
管理職・経営
管理薬剤師、エリア管理、独立開業
人員配置やスタッフ育成の経験は職域を変えても持ち運べます。改定で薬局の組織体制そのものが問われるようになったため、定着率を上げられる管理者の価値は上がる方向です
専門薬剤師
がん、感染制御、緩和、精神科など
取得までに数年かかるため、10年計画と相性がよい方向です。取得できる施設が限られるため、職場選びが要になります
在宅・地域医療
在宅訪問、地域連携、施設対応、健康相談
需給推計で需要の増加要因に挙げられ、改定でも軒並み増点された分野です。健康増進支援薬局の創設で、健康相談も制度上の位置づけを得ました
企業・研究
製薬企業(医薬情報担当、医薬品情報、学術)、医薬品開発業務受託機関など
従事者数が7.8%減少している唯一の職域です。目指すなら、募集が少ないことを前提に早めに動く必要があります
働き方重視
時短、パート、派遣、地域限定
生活を優先する選択も立派なキャリアです。かかりつけ薬剤師の勤務時間要件には育児・介護による短縮の特例もあります。ただし専門性を積む機会は減りやすいため、意識的に補う工夫が要ります

選ぶときの視点:10年後に自分が「代わりのきかない人」になっているかどうかです。制度が示しているのは、対人業務と専門性がその答えに近いということ。ただし働き方を優先する選択が劣っているわけではありません。大切なのは、自分がどちらを選んでいるのかを自覚していることです。

💬 くらげのひとこと

私は病院から調剤薬局へ移りました。当時は「病院を辞めたら専門性が止まる」と思っていましたが、実際には在宅という新しい領域が開けました。道は一本ではありませんし、途中で変えることもできます。大切なのは、選んでいる自覚を持つことだと思っています。

10年後から逆算してキャリアを設計する4つの手順

要点:やりたいことが決まっていなくても構いません。書き出す、棚卸しする、差を洗い出す、3年ごとに区切る。この4手順で次の一歩が決まります。

手順1 10年後の姿を、生活も含めて書き出す

仕事だけでなく、家族の状況、住む場所、働く時間まで含めて考えます。「がん専門薬剤師として病院で働く」と「子どもの行事に必ず出られる」は、両立できることもあれば、順番を決める必要があることもあります。先に生活の条件を書いておくと、後で選び直す回数が減ります。

手順2 いまの自分を棚卸しする

経験年数、扱ってきた診療科、担当した業務、保有する認定資格、管理業務の経験。数字を伴う形で書き出すのがコツです。「1日◯枚の処方箋を◯名体制で回した」「在宅を◯件担当した」と書けると、そのまま職務経歴書にも使えます。制度が実績を評価する形に変わった以上、この書き出しは市場でもそのまま通用します。

手順3 差を洗い出す

目標と現状の間にある不足を書き出します。在宅の経験がない、認定資格を持っていない、後輩指導の経験がない。この差が、そのまま今後10年でやるべきことのリストになります。

手順4 3年ごとに区切って計画にする

10年は長すぎて動けません。3年単位に割ると現実味が出ます。たとえば1年目から3年目で在宅の経験を積む、4年目から6年目で認定資格を取得する、7年目から10年目で管理業務や後進育成に広げる、という具合です。最初の3年で必要な経験が今の職場で積めないなら、そこが転職を考える理由になります。

判断の目安:今の職場で、これから3年のうちに必要な経験が積めるか。答えが「積める」なら動く必要はありません。「積めない」なら、環境を変えることが計画の一部になります。転職は目的ではなく、計画を実行するための手段です。

💬 くらげのひとこと

手順2の棚卸しだけでも、やってみる価値があります。自分では当たり前だと思っている経験が、市場では評価されていることが少なくありません。無菌調製、施設対応、在宅、後輩指導。書き出してみると、思っていたより持っているものです。

計画を実行する3つの選択肢

要点:転職だけが手段ではありません。今の職場で広げる、業態を変える、専門性を積む。まずは1つ目から試すのが順番です。

選択肢
向いている状況と、最初の一歩
今の職場で広げる
在宅や新しい業務に挑戦できる余地がある場合。上司に「在宅を担当させてほしい」と具体的に希望を伝えるところから始めます。環境を変えずに済むのが最大の利点です
業態を変える
今の職場では積めない経験が必要な場合。職域による難易度の差を踏まえて選びます。企業を目指すなら早めに動くほうが選択肢は多くなります
専門性を積み上げる
認定や専門の資格を取る場合。取得できる施設が限られるため、職場選びが要になります。取得までの年数を踏まえると、10年計画と相性のよい方向です

なお、認定薬剤師の認定名称と人数は薬局機能情報提供制度の報告事項に含まれ、医療情報ネットで公表されています。つまり資格の取得は、本人の実力を示すだけでなく、事業所にとっても価値のあるものとして制度に位置づけられているということです。転職時の交渉材料としても意味を持ちます。

💬 くらげのひとこと

まず試してほしいのが1つ目です。「在宅を担当させてほしい」と具体的に伝えるだけで、道が開けることは案外あります。それでも数か月動かないなら、そのときに2つ目や3つ目を考えればいい。順番があるだけで、どれも正しい選択です。

職場選びで見るべき、制度から導ける5つの確認項目

要点:「経験が積める職場かどうか」は、雰囲気ではなく制度の要件から判定できます。面接で聞ける形に落とし込みました。

制度の要件は、そのまま「その職場で何ができるか」の裏返しになっています。求人票や面接で確認すべき項目を5つに絞りました。

確認すること
分かること・根拠になる制度
在宅の訪問件数は年に何件か
在宅薬学総合体制加算1は年48回以上の訪問実績が要件です。件数を答えられない職場は、在宅を主力に据えていない可能性があります
地域連携薬局の認定はあるか
改正後の認定基準では、薬剤師を常勤換算で2.5以上配置し、地域包括ケアに関する会議へ年3回以上参加させ、居宅での調剤・指導を年48回以上実施することなどが求められます。認定があれば、地域連携の経験を積める環境がある証拠になります
かかりつけ薬剤師の届出はあるか
2026年6月からは薬局側にも施設基準が課され、常勤薬剤師の在籍期間が平均1年以上、または管理薬剤師が継続3年以上在籍していることが求められます。届出があること自体が、定着率の間接的な指標になります
研修や学会参加の支援があるか
2027年に始まる健康増進支援薬局の認定では、常勤薬剤師の半数以上が健康の保持増進の支援に関する研修を修了していることが要件です。研修に行かせてくれるかどうかが、そのまま将来の認定可否に直結します
外部委託をどう考えているか
2027年5月20日の施行に向けて、委託する側に回るのか、受託する側を狙うのか。方針を持っている職場は、その先に薬剤師をどう配置するかも考えています

薬局の認定状況や在宅の実施回数は、薬局機能情報提供制度に基づいて公表されています。面接前に調べておくと、質問の精度が一段上がります。

💬 くらげのひとこと

面接で「在宅はやっていますか」と聞くと、たいていの職場は「やっています」と答えます。聞くべきは件数と、誰が担当しているかです。「月に何件くらいで、何人体制ですか」まで踏み込むと、実態がかなり見えます。答えが曖昧なら、そこで経験を積むのは難しいかもしれません。

今日からできること

要点:10年後の話は大きすぎて動けなくなりがちです。今週やること3つ、今月やること3つに落とし込みました。

✅ 今週やること

  • 経験を書き出す。担当してきた業務、扱った診療科、処方箋枚数と人員体制。30分で構いません
  • 10年後の希望を一行で書く。仕事だけでなく、生活の条件も添えます
  • 差を3つに絞る。足りないものを全部書き出したうえで、優先度の高い3つに絞ります

✅ 今月やること

  • 今の職場でその3つが埋まるか確認する。上司に希望を伝えてみるのが最も早い確認方法です
  • 認定資格の要件を調べる。必要な単位、期間、取得できる施設の条件を確認します
  • 自分の職場の認定状況を調べる。地域連携薬局の認定、在宅の実施回数などを確認しておくと、比較の基準ができます
  • 市場での評価を聞いてみる。転職を決めていなくても構いません。自分の経験がどう評価されるかを知ると、計画の精度が上がります

最後の項目について補足します。転職エージェントへの相談は、転職を決めていない段階でも利用できます。職業安定法により、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することは原則として禁止されており、薬剤師はその例外にあたらないため、費用はかかりません。「情報収集の段階」と最初に伝えておけば、相談中心の対応をしてもらえます。

💬 くらげのひとこと

10年計画は、立てて終わりにしないことが大事です。年に一度、誕生日や年度替わりに見返すくらいでちょうどいいと思います。制度も市場も動きますし、自分の希望も変わります。書き換えていいものだと思って、まず一度書いてみてください。

よくある質問

10年後、薬剤師の仕事はなくなりますか?▼

なくなりません。厚生労働省の需給推計では、需要は2020年の32万人から2045年には33万2000人、業務の広がりを考慮すると40万8000人まで増えると試算されています。ただし供給は2045年に43万2000人から45万8000人と見込まれ、需要を上回ります。その結果、2万4000人から12万6000人の過剰が生じるという推計です。つまり仕事がなくなるのではなく、求められる中身が変わるということです。需要を押し上げる要因として在宅業務、市販薬販売、健康相談が挙げられています。

調剤業務の外部委託は、いつから始まりますか?▼

2027年(令和9年)5月20日からです。2025年5月21日に公布された改正薬機法で仕組みが設けられ、2026年6月30日に公布された整備省令(令和8年厚生労働省令第110号)で施行日が確定しました。対象は「特定調剤業務」と呼ばれる定型的な業務で、一包化などの調製作業が想定されています。患者対応や服薬指導は委託の対象外です。委託先は同一の都道府県内の薬局に限られます。

外部委託が始まると、薬剤師の仕事は減りますか?▼

作業量は減る可能性がありますが、責任は残ります。省令では、受託薬局から届いた完成品を委託した薬局の薬剤師が目視で確認しなければならないと定められ、その記録は5年間保存することとされています。制度の目的も条文上「情報提供と薬学的知見に基づく指導の質の向上を図るための効率化」と書かれています。作業に充てていた時間を対人業務に振り向けることが前提の制度設計です。

健康増進支援薬局とは何ですか?▼

改正薬機法で創設される新しい認定薬局です。利用者の薬の使用状況を把握し、求めに応じて健康の保持増進に必要な情報提供と薬学的知見に基づく指導を行う機能を持つ薬局が、都道府県知事の認定を受けて名乗ることができます。従来の健康サポート薬局の表示制度は廃止されます。施行は2027年5月20日です。認定基準には、常勤薬剤師の半数以上が健康の保持増進の支援に関する研修を修了していること、常勤薬剤師の半数以上がその薬局に継続1年以上勤務していることなどが含まれます。

やりたいことが見つかりません。それでも計画は立てられますか?▼

立てられます。やりたいことから始めなくても、「やりたくないこと」や「これだけは避けたい生活」から書き出すと輪郭が見えてきます。あるいは、これまでの業務で手応えを感じた場面を思い出してみてください。服薬指導で患者さんの反応が変わった瞬間、後輩に教えたときの充実感など、そこにヒントがあります。まずは経験の棚卸しだけでも試してみてください。

企業への転職を考えていますが、難しくなっていますか?▼

統計上は厳しくなる方向です。令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計では、医薬品関係企業に従事する薬剤師は34,184人で、前回調査から2,902人・7.8%の減少でした。薬局が3.5%増、医療施設が1.3%増となるなかで、唯一大きく人数を減らしている職域です。目指すなら、募集が少ないことを前提に早めに情報収集を始め、応募書類の準備を厚くしておくことをおすすめします。10年後を待つほど扉は狭くなる可能性があります。

認定資格は取ったほうがいいですか?▼

目標との関係で決めてください。専門性を軸にするなら有効です。認定薬剤師の認定名称と人数は薬局機能情報提供制度の報告事項に含まれ、医療情報ネットで公表されるため、事業所にとっても価値のある資格として制度に位置づけられています。転職時の交渉材料にもなります。ただし取得できる施設が限られる資格もあるため、いまの職場で要件を満たせるかを先に確認してください。管理職を目指す場合は、資格より人員配置や育成の経験を優先するほうが近道になることもあります。

病院から薬局に移ると、キャリアは止まりますか?▼

止まりません。むしろ制度面では入り口が広がっています。2026年6月施行の調剤報酬改定で、かかりつけ薬剤師の要件が緩和され、保険薬局での勤務経験が5年以上から3年以上に短縮されたうえ、保険医療機関の薬剤師としての勤務経験を1年以上有する場合は1年を上限に算入できるようになりました。当該薬局での在籍期間も1年以上から6か月以上に、勤務時間要件も週32時間以上から週31時間以上に緩和されています。病院での経験が評価される仕組みが整いつつあるということです。

在宅の経験は、そんなに重要ですか?▼

重要度は高まっています。国の需給推計で需要を押し上げる要因として在宅業務が明示されているうえ、2026年6月施行の調剤報酬改定でも在宅関連の評価が軒並み引き上げられました。在宅薬学総合体制加算1は15点から30点へ、個人宅を対象とする加算2は50点から100点へ増点され、訪問薬剤管理医師同時指導料150点と複数名薬剤管理指導訪問料300点が新設されています。かかりつけ薬剤師訪問加算230点も新たに設けられました。件数が多くなくても構いません。「担当していた」と言えるだけで、面接での話の広がり方が変わります。

10年後を見据えるなら、何歳までに動くべきですか?▼

年齢で区切るより、逆算して考えるほうが実用的です。認定や専門の資格は取得までに数年かかり、その前に要件を満たす施設で経験を積む期間も必要になります。目標から必要な年数を引き算すると、いつまでに環境を整える必要があるかが出てきます。企業を目指す場合だけは、従事者数が減少している事情があるため、募集が出たときに動けるよう早めに準備しておくほうが選択肢は多くなります。

今の職場が10年後も安心か、どう見分ければいいですか?▼

制度の要件から判定できます。在宅の年間訪問件数、地域連携薬局の認定の有無、かかりつけ薬剤師の届出の有無、研修や学会参加への支援、外部委託への方針。この5点を確認すると、対人業務へ舵を切っている職場かどうかがかなり見えます。薬局の認定状況や在宅の実施回数は薬局機能情報提供制度に基づいて公表されているため、面接前に調べておくこともできます。

転職を決めていなくても、相談していいですか?▼

問題ありません。職業安定法により、有料職業紹介事業者が求職者から手数料を徴収することは原則として禁止されており、薬剤師はその例外に含まれないため、相談だけで終わっても費用はかかりません。登録時に「情報収集の段階」と伝えておけば、相談中心の対応をしてもらえます。自分の経験が市場でどう評価されるかを知ると、10年計画の精度が上がります。転職を勧められたくない場合は、求人紹介を行わない公的なキャリア相談窓口を利用する方法もあります。

まとめ

この記事のポイント

  • 需要は増える方向。ただし供給の伸びが上回る。2045年時点で2万4000人から12万6000人の過剰と試算されている
  • 過剰幅を決めるのは需要側。推計は在宅業務2倍・健康サポート機能1.5倍という仮定の上に成り立っており、そこへ広がれるかどうかで差は5倍以上変わる
  • 職域の差はすでに数字に出ている。薬局は3.5%増、医療施設は1.3%増、医薬品関係企業は7.8%減
  • 2027年5月20日、調剤業務の一部が外部に委託できるようになる。対象は定型的な業務で、患者対応と服薬指導は対象外。最終確認は委託した側の薬剤師が行う
  • 調剤報酬も実績を評価する形に。かかりつけ薬剤師指導料は廃止され、フォローアップ加算50点・訪問加算230点など行為への評価に置き換わった
  • 在宅と健康相談には追い風が吹いている。在宅関連は軒並み増点され、健康増進支援薬局という認定制度も新設される
  • 逆算の手順は4つ。10年後の姿を生活込みで書く、棚卸し、差の洗い出し、3年ごとの計画化
  • 実行の選択肢は3つ。今の職場で広げる、業態を変える、専門性を積む。まずは1つ目から試す

10年後がどうなるかは誰にも分かりませんが、すでに決まっている制度は読むことができます。対物業務は外に出され、対人業務が評価される。この方向を踏まえて、今日から積む経験を選んでいけば、10年後に困ることは大きく減らせます。

まずは30分、自分の経験を書き出すところから始めてみてください。

※本記事の情報は2026年9月時点のものです。需給推計は厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(第8回・2021年4月26日)資料、職域別の薬剤師数は「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025年12月23日公表)、調剤業務の一部外部委託および健康増進支援薬局に関する記述は医薬品医療機器等法の改正法(令和7年法律第37号・2025年5月21日公布)と整備省令(令和8年厚生労働省令第110号・2026年6月30日公布、2027年5月20日施行)、調剤報酬に関する記述は「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年3月5日版・2026年6月1日施行)に基づいています。委託の対象となる業務の詳細は政令で定められるため、最新の内容は厚生労働省の公表資料をご確認ください。将来の見通しは推計であり、実際の動向とは異なる場合があります。

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