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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「外資系やグローバル展開している製薬会社に転職したいけれど、英語はどれくらい必要なの?」「英語に自信がないと無理なのか、それとも勉強しながらでも目指せるのか」。グローバル製薬への転職を考えると、まず英語の壁が気になる人は多いはずです。
結論から言うと、必要な英語力は「外資か内資か」ではなく「職種」で決まります。会話まで求められる専門職もあれば、英語がほぼ不要な入口職種もあります。読み書きだけで通用する職種もあり、英語が苦手だから全部だめ、ということにはなりません。
この記事では、グローバル製薬で求められる英語力を職種ごとに整理し、なぜ英語が必要になるのかを公的データで確認したうえで、スコアの現実的な目安、英語が必須でない入口からのステップアップ、英語力の高め方までを薬剤師目線でまとめます。製薬企業以外も含めて選択肢を見比べたい方は、職場別に比較した薬剤師の転職先一覧もあわせてご覧ください。
この記事でわかること
- 必要な英語力は業態ではなく職種で決まるという原則
- 公的データで見る、製薬業界で英語が要る理由(国際共同治験の比率)
- 職種別の英語レベル早見表と、使う技能(読む・書く・聞く・話す)の違い
- 公式のレベル区分と企業の期待値から見た、スコアの現実的な目安
- 英語が必須でない入口職種と、そこからのステップアップ経路
- 薬剤師が英語力を積み上げる順番と、時間の逆算のしかた
グローバル製薬で英語はどれくらい必要か
まず押さえておきたいのは、「グローバル製薬=全員に高い英語力が必須」ではない、ということです。同じ会社の中でも、海外本社と日常的にやり取りする部門もあれば、国内業務が中心で英語をほとんど使わない部門もあります。求められる英語力は、企業の業態ではなく職種で決まると考えるのが実態に近いです。
前提として、企業で働く薬剤師そのものが多数派ではありません。厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計では、医薬品関係企業に従事する薬剤師は34,184人で、届出薬剤師329,045人の10.4パーセント。前回調査から2,902人、7.8パーセント減っています。薬局が6,702人増えているのとは逆の動きです。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
厚生労働省の該当ページを開く
母数が小さいということは、応募先を「製薬会社」とひとくくりにしたままでは動けないということでもあります。そのうえで、薬学部は理系のなかでも英語が得意な人が多い分野とは言えず、英語ができる薬剤師は選考で差がつきやすいのが実情です。逆に言えば、英語を武器にできれば、薬剤師資格と掛け合わせて専門職への道が開けます。まずは「自分が狙う職種でどの程度の英語が要るのか」を知ることが第一歩です。企業側の全体像は薬剤師の製薬会社転職は難しい?で職種別に整理しています。
現役の人からよく聞くのが「英語が苦手な人ほど、思い切って外資系に飛び込んだほうが伸びる」という話。生きた英語に毎日触れる環境のほうが、結局は上達が早いんですね。ただしこれは「受かってから伸ばす」話で、受かるための最低ラインは職種ごとに存在します。順番を間違えないことが大切です。
狙える職種は、英語力と経験の組み合わせで決まります
職種ごとの英語要件は求人票だけでは読み切れません。企業求人を扱うエージェントに相談すると、今の英語力で応募できる範囲がはっきりします。
薬剤師転職サイトの比較を見る数字で見る、製薬業界で英語が必要になる理由
「グローバル化しているから英語が要る」では抽象的すぎます。薬剤師の実務に近いところで英語需要を生んでいるのは、医薬品開発が国境をまたいで同時に進むようになったことです。これは公的な数字で確認できます。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公表している資料によると、日本で提出された薬物の治験計画届のうち、国際共同治験に関わる届出の割合は次のように推移しています。
| 年度 | 治験計画届の総数 | 国際共同治験に係る届出の割合 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 674件 | 53.7パーセント |
| 令和2年度 | 789件 | 57.0パーセント |
| 令和3年度 | 808件 | 60.1パーセント |
| 令和4年度 | 642件 | 61.2パーセント |
| 令和5年度(10月末時点) | 303件 | 58.7パーセント |
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「令和5年度のこれまでの事業実績及び今後の取組みについて(審査・安全対策等業務)」(正誤表反映後の数値)
PMDAの該当資料を開く
読み取れることはシンプルです。日本で動いている治験のおよそ6割が、海外と同時並行で進む国際共同治験だということ。同じ資料では、令和5年度10月末までに承認された新医薬品59件のうち、国際共同治験を実施したものが29件と、およそ半数を占めていることも示されています。
治験計画書、症例報告書、当局への照会対応、安全性の報告。国際共同治験では、これらの文書が英語で作られ、英語でやり取りされます。英語需要は「外資系だから」発生しているのではなく、開発の枠組みそのものから発生していると考えたほうが実態に合っています。国はさらに、国際共同治験の初回治験計画届の件数を2028年度までに年間150件とする目標を掲げており、この方向は当面変わらないと見てよいでしょう。
※国際共同治験の初回治験計画届件数に関する目標値は、第3期健康・医療戦略(2025年2月18日閣議決定)に掲げられた指標です。
この数字を知っておくと、面接での話し方が変わります。「英語を勉強しています」ではなく「国際共同治験が6割を超えている以上、英文の治験関連文書を読める人が要るはずだと考えて準備してきました」と言えると、動機の解像度が一段上がります。数字は覚えるためではなく、自分の言葉を裏づけるために使うものです。
職種別・英語レベルの早見表
薬剤師が目指しやすいグローバル製薬の主な職種と、求められる英語力の目安を一覧にしました。あわせて「4技能のうちどれを主に使うか」も並べています。会話が苦手でも読み書きが得意なら選べる職種がある、という点がここで見えてきます。
| 職種 | 必要度 | 主に使う技能 | 主に使う場面 |
|---|---|---|---|
| 品質管理・品質保証 | 低〜中 | 読む | 英文の手順書・規格書の読解。国内工場中心なら要件を置かない求人もある |
| 医薬情報担当者(営業職) | 低〜中 | 読む | 国内営業が中心。英文の製品資料や論文を参照する程度。スコア要件を置かない企業もある |
| 臨床開発(モニター) | 中 | 読む・書く | 英文の治験実施計画書、国際共同治験の資料・報告のやり取り。英語の入口になりやすい |
| 安全性情報管理 | 高 | 読む・書く | 海外からの副作用報告の評価、英文文献の読解、英文での報告書作成。読み書きの比重が大きい |
| 薬事(承認申請) | 高 | 読む・書く(+会議) | 英文申請資料の作成、海外規制当局や海外本社との照会対応。外資では要求水準が上がる |
| メディカル職(学術) | かなり高い | 4技能すべて | 英語論文の読解と作成、国際学会での発表・議論、海外のメディカル部門との連携 |
| 本社グローバル部門 | 最高水準 | 4技能すべて | 海外拠点との会議・交渉が日常業務。英語が社内の共通言語になる場面もある |
※この表は、各職種の求人票で示される応募条件・業務内容をふまえた当サイトの整理です。統計値ではなく、必要な水準は企業・領域・時期によって異なります。実際の要件は個別の募集要項でご確認ください。
大きく分けると、品質管理・医薬情報担当者・臨床開発モニターは英語の比重が比較的軽め、薬事や安全性情報管理は読み書き中心、メディカル職や本社部門は会話まで含めて高い水準が求められます。それぞれの職種の中身は、薬剤師の品質管理への転職、薬剤師から見たMRの仕事内容、薬剤師のMSL転職|MRの上位職ではない理由と要件を解説で個別に扱っています。企業以外も含めた職場全体の比較は薬剤師の転職先一覧が入口になります。
英語を実際に使う場面
「英語が必要」と言っても、具体的にどんな場面で使うのかをイメージできると、対策も立てやすくなります。技能ごとに整理します。
読む|ほぼすべての職種で発生する
- 英語論文・海外文献からの情報収集
- 英文の治験実施計画書、手順書、規格書の読解
- 海外の規制当局が公表するガイダンスや評価報告書の確認
- 海外拠点から届くメールや報告の内容把握
書く|薬事・安全性情報管理の中核業務
- 英文の申請資料・照会回答の作成
- 海外へ送る安全性情報の報告書作成
- 海外本社への状況共有メール、議事メモの作成
聞く・話す|メディカル職と本社部門で比重が上がる
- 海外本社・海外拠点とのオンライン会議
- 海外の規制当局や共同開発先との折衝
- 国際学会での発表と、その場での質疑応答
注目したいのは、スコア試験の点数と、実務で使える英語は別物だという点です。海外との会議では、点数が高くても聞き取りに苦労することは珍しくありません。専門用語、各国のなまり、複数人が同時に話す状況。いずれも試験では測りにくい要素です。スコアはあくまで選考の入口で、入社後は実践的な英語が求められると考えておきましょう。
薬事や安全性情報管理は「読み書き」が中心なので、会話に自信がなくても挑戦しやすい職種です。逆にメディカル職や本社部門は会話力が鍵。自分の英語の得意・不得意と、職種で使う英語のタイプを合わせて考えるのが失敗しないコツです。求人票を数件並べて、どの技能が要件に書かれているかを見比べるだけでも、狙いどころがはっきりしますよ。
スコアはどれくらい必要か|公式の区分と企業の期待値
職種別の目安は求人ごとに幅があるため、まずは公的に示されている物差しを押さえておくと判断がぶれません。国際ビジネスコミュニケーション協会が公表しているレベル区分では、英語コミュニケーション能力は次のように整理されています。
| レベル | スコアの下限 | 示される能力の目安 |
|---|---|---|
| A | 860点 | 母語話者でなくても十分なコミュニケーションができる |
| B | 730点 | どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている |
| C | 470点 | 日常生活のニーズを満たし、限定された範囲では業務上のやり取りができる |
そのうえで、企業が社員に期待するスコアの平均は次のとおりです。上場企業などを対象にした調査で、製薬業界に限定した数字ではありませんが、「海外部門」の水準は、グローバル製薬で英語を使う職種を考えるときの現実的な参照点になります。
- 海外部門の社員に期待する平均スコアは705点(回答の幅は605〜805点)
- 中途採用社員に期待する平均スコアは580点、新入社員は550点
- 化学・薬品業界の企業例では、昇進・昇格の要件を600点としているケースがある
- 日常的に英語を使う部署の人事・採用担当者のうち、92.7パーセントが「聞く・読む」だけでなく「話す・書く」力も求めると回答
出典:一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2022」およびレベル別評価一覧表
国際ビジネスコミュニケーション協会の該当ページを開く
この2つを重ねると、目標の置き方が見えてきます。まずは700点前後を当面の目標に、専門職として応募するなら730点、海外本社と日常的にやり取りする部門を狙うなら860点。この3段階で考えると、努力の順番を組み立てやすくなります。あわせて頭に入れておきたいのが、4つ目の項目です。読み書きだけで足りる職種は確かにありますが、英語を日常的に使う部署では発信力も見られている、というのが企業側の本音です。
英語が必須でない入口から段階的に目指す
いきなり高い英語力が必要な職種を狙うのが難しくても、入口を工夫すればグローバル製薬への道は開けます。現実的なのは、英語のハードルが低い職種で業界に入り、実務で英語に触れながら要求水準の高い職種へ移るという順番です。
| 入口の職種 | そこで積める英語経験 | 次に狙える職種 |
|---|---|---|
| 品質管理・品質保証 | 英文の手順書・規格書を日常的に読む | 薬事、海外拠点との品質保証 |
| 医薬情報担当者(営業職) | 英文の製品資料・論文を読み、要点を伝える | 学術・メディカル部門(別ラインのため要件は別途) |
| 臨床開発(モニター) | 国際共同治験の英文資料と報告に日常的に触れる | 薬事、開発の管理職、本社の開発部門 |
| 安全性情報管理 | 海外報告の読解と英文報告書の作成を反復 | 安全性の管理職、薬事、本社の安全性部門 |
※求人票で示される応募条件と業務内容をふまえた当サイトの整理です。異動や転職の可否は企業ごとの制度によって異なります。
ここで一点、誤解しやすい経路があります。営業職から学術・メディカル部門への移動を「昇格」と捉える見方です。この2つは組織上も役割上も別のラインで、求められる要件も別物です。詳しくは薬剤師のMSL転職|MRの上位職ではない理由と要件を解説で整理しています。応募前に読んでおくと、志望動機のずれを防げます。
また、製薬企業本体にこだわらない道もあります。医薬品開発業務受託機関で臨床開発の経験を積んでから本体へ移る経路、英文文献の読解力がそのまま強みになるメディカルライター、海外のサービスや文献に触れる機会が多いデジタルヘルス領域。学位要件の重い研究職まで含めて並べてから決めると、到達確率は上がります。職種ごとの収入の目安は製薬会社の薬剤師の年収相場で確認できます。
製薬・グローバル領域の求人を扱っているエージェントに相談すると、自分の英語力で狙える職種や求人を具体的に教えてもらえます。職種ごとの英語要件は求人票だけでは読み切れないので、募集の背景を知る担当者に「今の自分だとどこまで応募できますか」と率直に聞くのが近道です。
英語力の高め方
グローバル製薬を目指すなら、一般的なビジネス英語と医療・医薬の専門英語の両方をバランスよく学ぶのが近道です。薬剤師の場合、伸ばす順番には向き不向きがあります。
① 読む力から始める
薬剤師は薬名・疾患名・作用機序といった専門語彙をすでに日本語で持っています。この土台があるぶん、英語論文の読解は他分野の人より立ち上がりが速い領域です。まずは自分が扱っている薬の原著論文や添付文書の英語版から始めると、知識と語彙が同時に定着します。
② スコアで土台を可視化する
応募時に示せる形にしておくことも大切です。スコアは「英語ができる」ことの証明というより、選考のふるいを通過するための入場券と考えるのが実務的です。要件を満たしていない段階では、経験がどれだけあっても書類で止まります。
③ 狙う職種の英語に寄せる
薬事を狙うなら申請資料の英語、安全性情報管理なら副作用報告の英語、メディカル職なら論文と学会発表の英語。汎用的な英語学習と並行して、目指す分野の文章に日常的に触れるのが効率的です。海外の規制当局が公開している資料は無料で読めるものが多く、教材として使えます。
④ 会話が要る職種なら早めに口を動かす
読み書きは独学でも伸びますが、会話は使う機会を作らないと伸びません。メディカル職や本社部門を視野に入れているなら、読解の学習と並行して話す練習を始めておくと、後半での積み残しが減ります。
学習時間の逆算について
「スコアを100点上げるには200〜300時間」という数字を目にしたことがあるかもしれません。これは対策スクールや学習サービスが共通して挙げている目安で、試験の実施団体が公式に保証している数字ではありません。もとになっているのは古い研究データとされ、学習環境が大きく変わった現在にそのまま当てはまるとは限りません。
それでも、逆算の道具としては役に立ちます。仮に200〜300時間を目安に置くと、1日1時間で7〜10か月、1日2時間なら3〜5か月。転職したい時期から逆算して、いつまでにどの水準を用意するかを決める。この計画があるかどうかで、学習が続くかどうかが変わります。現在の実力と目標の差が大きいほど時間はかかるので、早めに一度受けて現在地を確認しておくことをおすすめします。
英語力を武器に実際にグローバル製薬へ転職した薬剤師が、どう学習を進め、どの職種から挑戦したのかは、転職体験談のまとめでも紹介しています。
▶ あわせて読みたい
薬剤師の転職体験談まとめ|リアルな成功・失敗ケースと教訓よくある質問
まとめ
グローバル製薬と英語の関係は、職種ごとに見ていくと現実的な道筋が見えてきます。最後に要点を整理します。
- 必要な英語力は業態ではなく職種で決まる。英語が必須でない入口職種もある
- 日本の治験計画届のうち国際共同治験に係るものは6割前後。英語需要は開発の枠組みそのものから生まれている
- 品質管理・営業職・臨床開発は軽め、薬事や安全性情報管理は読み書き中心、メディカル職や本社部門は4技能すべてが必要
- スコアはまず700点前後、専門職なら730点、本社部門なら860点という3段階で考えると計画を立てやすい
- スコアは入場券であって証明ではない。実務ではより実践的な英語が求められる
- 英語が苦手でも入口職種から入り、働きながら伸ばすルートが現実的
医薬品関係企業で働く薬剤師は34,184人と、届出薬剤師全体の1割ほど。母数は小さいものの、そのなかで英語を使える薬剤師はさらに限られます。職種選びと学習を計画的に進めれば、薬剤師資格と英語力を掛け合わせたキャリアは十分に射程に入ります。企業以外も含めて選択肢を並べ直したい方は、職場別に比較した薬剤師の転職先一覧から全体像をつかんでみてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計は公表時点の数値です。求められる英語力やスコアの目安は、企業・職種・時期によって異なります。引用した調査は製薬業界に限定したものではなく、一般的な参照点として掲載しています。具体的な応募条件は各企業の募集要項や、利用している転職エージェントにご確認ください。

