この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「子どもが生まれるタイミングで育休を取りたいが、男性が取れる雰囲気の職場なのか」。そう感じて転職を考える男性薬剤師が増えています。ただ、求人票の「育休あり」だけでは、取れるかどうかは判断できません。
先に結論をお伝えします。育休の取りやすさを決めるのは制度の有無ではなく、人員にゆとりがあるかどうかです。そして、その実態は数字で確認できます。従業員300人を超える企業には男性の育児休業取得率を公表する義務があり、厚生労働省のサイトで企業名から検索できます。
追い風も吹いています。全産業の男性育休取得率は50.9パーセントに達し、調査開始以来はじめて5割を超えました。給付も2025年4月に上乗せされています。この記事では、産後パパ育休の仕組み、2025年に変わった制度、職場を見極める2つの軸、復帰後まで含めた確認項目を整理します。
この記事でわかること
- 男性育休の取得率の最新値と、薬剤師の職場ならではの事情
- 産後パパ育休の仕組みと、手取りがどれくらい残るか
- 2025年に変わった給付と休暇の制度
- 取りやすい職場を見極める2つの軸と、取得率の調べ方
- 復帰後まで見据えた確認項目と、切り出し方
男性薬剤師の育休の現在地
まず全体の数字です。厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(令和8年7月31日公表)によると、育児休業取得者の割合は女性88.3パーセント、男性50.9パーセントで、男性の取得率は調査開始以来はじめて5割を超えました。前年度は女性86.6パーセント、男性40.5パーセントだったため、1年で10ポイント以上の上昇です。
薬剤師は届出329,045人のうち女性が203,979人で62.0パーセントを占める職種です。男性は少数派で、職場によっては「男性が育休を取った前例がない」ということが起こりえます。前例がないこと自体は制度上の障害ではありませんが、話を通すときの手間には影響します。
薬剤師の職場に固有の事情
調剤薬局には、薬剤師を何人置くかという体制の基準があります。薬局の業務を行う体制を定める省令では、1日平均取扱処方箋数を40で除した数以上の薬剤師を置くこととされています。つまり1人抜けると、単に忙しくなるだけでなく、体制そのものが維持できなくなる店舗があるということです。
これが、男性であってもなくても薬剤師が長期の休みを取りにくい根本の理由です。裏を返せば、応援要員を回せる規模の法人や、1店舗あたりの人数に余裕がある職場を選べば、この制約はかなり小さくなります。職場選びが決定的に効いてくるのはこのためです。
私の周りでも、男性が育休を取るケースは確実に増えました。一方で「制度はあるのに、人手が足りなくて言い出せなかった」という声も聞きます。鍵を握るのは制度の有無ではなく、抜けた分を誰がどう埋めるかが決まっているかどうかです。
産後パパ育休と、収入の残り方
男性には、通常の育児休業とは別枠で使える制度があります。2022年10月に始まった産後パパ育休(出生時育児休業)です。
2回に分割できる点は、シフトで動く薬剤師にとって実務上のメリットが大きい部分です。出産直後に1回、落ち着いたころにもう1回という組み方ができるため、店舗の繁忙期を避けやすくなります。
給付を合わせると手取りはどれくらい残るか
育児休業給付は休業前賃金の67パーセント相当が基本です。これに加えて2025年4月から、両親がともに14日以上の育休を取得すると、最大28日間について13パーセントが上乗せされ、給付率が80パーセントになります(出生後休業支援給付金)。育児休業給付は非課税で、育休中は申し出により社会保険料も免除されるため、厚生労働省はこれらを合わせて手取りの10割相当になると説明しています。
ただし条件と上限があります。上乗せの対象は最大28日間で、それを超える期間には適用されません。給付には支給の上限額があるため、賃金が高い方は10割に届かないことがあります。また配偶者が14日以上取得していることが要件になるため、夫婦での計画が前提です。
「収入が減るから」という理由で育休をあきらめる方が多いのですが、28日間に限れば減り幅はかなり小さくなりました。まずは自分の場合いくらになるか、勤務先の担当者かハローワークで試算してもらってください。想像よりよい数字が出ることがあります。
2025年に変わった制度
育休そのものだけでなく、その前後の制度も動いています。復帰後の働き方にも関わるため、あわせて押さえておいてください。
転職を考えている方にとって効くのは4つ目です。子の看護等休暇から「入社6か月未満は対象外」の規定が消えたため、転職直後でも子どもの発熱で休めるようになりました。以前は有給休暇を使うしかない職場がありました。育休そのものは労使協定で入社1年未満を除外できる一方、看護等休暇にはその制限がなくなっています。
5つ目と6つ目は復帰後に効いてきます。残業免除を請求できる年齢が就学前まで広がり、3歳以上就学前については始業時刻の変更や在宅勤務、短時間勤務などの措置から1つを選べるようになりました。育休を取れるかどうかだけでなく、その後どう働けるかまで含めて職場を見ると、判断の精度が上がります。
実際に効いてくるのは、育休の1か月より、その後の数年です。子どもが熱を出したときに休めるか、残業を断れるか。ここを面接で聞いておくと、入ってからの生活が読めます。
取りやすい職場を見極める2つの軸
軸1|公表されている取得率を調べる
最も信頼できるのは実績です。2025年4月から、従業員300人を超える企業には男性の育児休業取得率を年1回公表する義務があります(従来は1,000人超が対象)。大手の調剤チェーンや製薬会社の多くがこの対象に入ります。
確認先は2つです。各社のホームページと、厚生労働省が運営する両立支援のひろば(一般事業主行動計画の公表サイト)です。企業名や地域から無料で検索でき、応募前に候補企業の数字を並べて比べられます。全産業の男性取得率50.9パーセントを基準線にして、上回っているかどうかで見てください。
300人以下の企業には公表義務がありません。その場合は面接で「直近3年で男性の育休取得は何人いますか」と人数で尋ねてください。「制度はあります」という答えしか返ってこないなら、実績がない可能性があります。
軸2|業態ごとの構造を知る
地元密着の小さな薬局が悪いわけではありません。ただしその場合は、短期の産後パパ育休を選ぶ、休む間の人繰りを具体的に確認する、といった備えが必要になります。「何とかします」という口頭の返答だけで入職すると、直前になって話が変わることがあります。
取得率の数字だけでなく「取った男性が戻ってきて普通に働けているか」まで確認できると安心です。取れても復帰後に居づらくなる職場では本末転倒ですから。そこは転職支援の担当者に内情を聞いてもらうのが近道です。
面接で聞くことと、切り出し方
確認すべき項目を、そのまま使える質問文にしました。制度の有無ではなく人数と実績を聞くのがコツです。
切り出すタイミングについては、面接段階で「将来的に育休を取得したい」と伝えておくほうが、入社後に話を進めやすくなります。育休に前向きな職場なら、この希望はむしろ歓迎されます。逆に、この時点で反応が鈍い職場は、入ってからも同じ調子だと考えたほうが現実的です。
入社後は、次の3点を押さえると円滑に進みます。①産後パパ育休は原則2週間前、通常の育休は原則1か月前の申し出ですが、人員の調整があるためわかった段階で早めに伝える。②担当業務、在宅患者、発注などを一覧にして引き継ぎを見える化する。③産後パパ育休の分割を使い、繁忙期を避けて組む。
引き継ぎの一覧は、自分のためでもあります。誰でも代われる状態にしておくと、休むときに引け目を感じずに済みます。日ごろから作っておくと、いざというときに慌てません。
よくある質問
まとめ
男性薬剤師が育休を取りやすい職場を選ぶための要点を整理します。
- 全産業の男性育休取得率は50.9パーセント。従業員300人超の企業は取得率の公表が義務で、厚生労働省のサイトから検索できる
- 産後パパ育休は出生後8週以内に最大4週、2回分割可。通常の育休とは別枠
- 夫婦で14日以上取れば最大28日間は給付率80パーセント。非課税と保険料免除で手取り10割相当
- 取りやすさを決めるのは人員のゆとり。「制度はありますか」ではなく「直近3年で何人取りましたか」と人数で聞く
育休は、制度があるかどうかではなく、実際に取れて、戻ってからも働き続けられるかが大切です。まずは気になる会社の名前を両立支援のひろばで検索してみてください。数字が出てくれば、それだけで職場選びの軸が1つ増えます。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(令和8年7月31日公表・育児休業取得率)
- 厚生労働省「産後パパ育休制度」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」(出生後休業支援給付金)
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」(取得率公表義務の拡大・2025年改正)
- 厚生労働省「両立支援のひろば」(一般事業主行動計画公表サイト)
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(薬剤師の男女構成)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

