在宅医療の薬剤師の年収相場は?働き方別の違いと将来性を解説

在宅医療の薬剤師の年収相場は?働き方別の違いと将来性を解説

この記事を書いた人

くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。

患者の自宅や高齢者施設を訪問して薬の管理を支える「在宅医療」。やりがいのある分野として関心を持つ薬剤師は多い一方で、「年収は上がるの?」「負担に見合う?」という疑問もよく聞かれます。

結論から言うと、在宅に携わる薬剤師だけの年収を示す公的な統計はなく、年収は在宅手当・オンコール手当・役職など職場ごとの制度で決まります。基準になるのは薬剤師全体の平均で、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査から算出すると約567万円です。そのうえで、2026年6月の調剤報酬改定では個人宅への訪問を手厚く評価する見直しが入り、在宅の経験は今後さらに評価されやすくなっています。

この記事では、公的統計にもとづく年収の基準、年収を左右する要素、働き方別の違い、仕事内容、報酬改定から読む将来性、求人の見極め方まで整理しました。

📌 この記事でわかること
  • 在宅医療に携わる薬剤師の仕事と、保険制度上の位置づけ
  • 公的統計で見る年収の基準と、年収を左右する手当・条件
  • 働き方別の違いと、2026年度の報酬改定から読む将来性
  • 在宅に向いている人と、求人で確認すべきポイント
目次

在宅医療に携わる薬剤師とは

在宅医療の薬剤師(訪問薬剤師)とは、通院が難しい患者の自宅や高齢者施設を訪問し、薬を届けるだけでなく、飲み残しの確認、服薬の管理、副作用のチェック、医師やケアマネジャーへの情報提供などを行う薬剤師です。多くは調剤薬局に勤務しながら在宅を担当し、在宅に特化した薬局や専任のポジションもあります。

医療保険と介護保険の2つの枠組み

薬剤師の訪問は、医師の指示にもとづいて行われ、患者によって適用される保険が異なります。

区分
対象
算定する報酬
医療保険
要介護認定を受けていない在宅療養中の患者
在宅患者訪問薬剤管理指導料
介護保険
要介護・要支援の認定を受けている患者(介護保険が優先)
居宅療養管理指導費

訪問先は、患者が1人で暮らす個人宅と、多くの入居者がいる高齢者施設に大きく分かれます。同じ建物で何人を訪問するかによって報酬の区分が変わるため、どちらが中心かで仕事の進め方も薬局の収益構造も変わります。

💬 くらげのひとこと

在宅は「薬を届ける仕事」と思われがちですが、実際は生活の場で薬の使われ方を確かめ、処方に反映させる仕事です。窓口では見えなかった飲み残しや飲み方の工夫が見えてくるのは、在宅ならではの面白さだと思います。

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在宅医療の薬剤師の年収相場

基準は薬剤師全体の平均年収

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査をもとに算出すると、薬剤師の平均年収は次のとおりです(10人以上の事業所、男女計)。

項目
金額
きまって支給する現金給与額(月額)
39万8,700円
年間賞与その他特別給与額
83万3,500円
推計年収(月額×12か月+賞与)
約566万8,000円

平均年齢は40.1歳です。この統計は職種単位の集計で、在宅を担当しているかどうかは区別されていません。「在宅専任なら年収がいくら上がる」と言い切れる公的データはないため、求人を見るときは次の要素で比べることが大切です。職場別の年収は薬剤師の職場別年収ランキングで比較できます。

在宅の年収を左右する5つの要素

要素
求人で確認すること
在宅手当
月額固定か、訪問1件ごとの支給か。支給の有無自体が職場で分かれる
オンコール手当
夜間・休日の電話当番の頻度と、待機・出動それぞれの手当額
役職
在宅部門の責任者、管理薬剤師などの役職手当
地域
薬剤師が不足している地域ほど基本給が高く設定されやすい
移動の扱い
社用車の有無、自家用車を使う場合の燃料代や車両手当

夜間の電話当番の仕組みは薬剤師のオンコール、地域による差は地方と都市の年収の違いで詳しく解説しています。

💬 くらげのひとこと

在宅の求人で見落としやすいのが、オンコール手当が「待機するだけで出るのか」「出動したときだけ出るのか」です。想定年収が同じでも、当番の頻度と手当の付き方で実質的な時給は大きく変わります。面接で具体的な回数と金額を聞いておきましょう。

在宅への関わり方別の違い

在宅医療への関わり方は、薬局での立場や訪問先によって大きく4つに分かれます。

関わり方
仕事の特徴
年収面のポイント
調剤と兼務
外来調剤の合間に訪問する。在宅の入口として一般的
一般の調剤薬局と同じ給与体系に、在宅手当が加わるかどうか
在宅専任
訪問と、その準備・報告書作成が中心
専任手当やオンコールの有無で差がつく
施設在宅が中心
1回の訪問で多数の入居者に対応。一包化や配薬カートのセットなど準備作業が多い
件数が多い分、チームを束ねる役職のポストがある職場も
個人宅が中心
1件ごとに移動し、生活状況に合わせた個別の対応が求められる。終末期の麻薬管理を担うことも
緊急訪問やオンコールに対応できる人材は評価されやすい

なお、薬局から施設へ訪問するのではなく、介護施設そのものに雇用されて働く形もあります。そちらの年収は介護施設の薬剤師の年収相場で解説しています。

💬 くらげのひとこと

「在宅あり」の求人でも、施設中心か個人宅中心かで毎日の仕事はまったく違います。施設中心なら準備作業の段取り力、個人宅中心なら1人で判断する力と移動の負担が求められます。どちらが自分に合うか、訪問先の内訳を必ず確認してください。

在宅医療の薬剤師の仕事内容

訪問そのものより、前後の準備や連携に多くの時間を使うのが在宅の特徴です。主な業務は次のとおりです。

在宅の主な業務

  • 処方内容の確認と、一包化・服薬カレンダーなど飲みやすい形での調剤
  • 訪問時の服薬状況・残薬・副作用・生活状況の確認
  • 医師への処方提案や、ケアマネジャー・訪問看護師との情報共有
  • 訪問後の報告書作成と薬歴の記録
  • 夜間・休日の電話相談や緊急訪問への対応(職場による)

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、原則として患者1人につき月4回までの算定です(末期の悪性腫瘍の患者などは週2回かつ月8回まで)。訪問の頻度は患者ごとの計画で決まり、それに合わせて毎週の訪問スケジュールを組んでいきます。

💬 くらげのひとこと

在宅では、医師への処方提案やケアマネジャーとのやりとりが日常的に発生します。外来調剤よりも「薬剤師の意見が処方に反映される手応え」を感じやすい分野です。報告書を書く時間も業務のうちなので、求人を見るときは訪問件数だけでなく事務時間の確保にも目を向けましょう。

2026年度の報酬改定から読む在宅の将来性

在宅の経験が今後の市場価値につながるかどうかは、国が調剤報酬で何を評価しているかを見ると分かります。2026年6月1日に施行された調剤報酬改定では、在宅に関わる見直しが複数行われました(厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要(調剤))。

見直しの内容
読み取れる方向性
在宅薬学総合体制加算2を、個人宅への訪問(100点)とそれ以外(50点)に区分
移動や個別対応の負担が大きい個人宅訪問を、より高く評価
地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績要件に、個人宅での在宅の実績を組み込み
地域を支える薬局の条件として、在宅対応がより重視される

薬局が体制加算を届け出るには、在宅に対応できる薬剤師の確保が欠かせません。とくに個人宅への訪問や緊急時の対応を任せられる薬剤師は、薬局の経営に直結する人材として評価されやすい環境が整いつつあります。

ただし、報酬の点数は2年ごとの改定で見直されます。「今の点数が高いから安泰」と考えるより、医師への処方提案や多職種との連携といった、改定があっても求められ続けるスキルを積み上げる意識が大切です。認定資格でスキルを示したい人は認定薬剤師の取得と転職への影響も参考にしてください。

💬 くらげのひとこと

転職の面接で在宅経験を伝えるときは、「在宅をやっていました」だけでなく、担当件数、個人宅か施設か、処方提案が採用された例などを具体的に話せると強い武器になります。経験を積んでいる最中から、記録を残しておくのがおすすめです。

メリット・デメリットと向いている人

メリット
デメリット
報酬改定で評価が高まっている分野の経験を積める
運転や移動、施設での準備作業など体力的な負担がある
在宅手当や役職で年収を上げる道がある職場もある
オンコールがある職場では、夜間・休日も待機が生じる
患者の生活に寄り添い、処方に意見を反映させやすい
訪問先では1人で判断する場面が多い
医師・看護師・ケアマネジャーとの連携で視野が広がる
報告書作成など事務作業の比重が大きい

在宅に向いているのは、患者と長く関わりたい人、処方提案など薬学的な判断に力を発揮したい人、将来を見据えて評価される経験を積みたい人です。運転に抵抗がないことや、オンコールの負担を許容できることも大切な条件になります。

💬 くらげのひとこと

在宅は負担もある分野ですが、未経験からでも調剤との兼務で少しずつ始められます。いきなり専任を目指すより、まず兼務で自分に合うかを確かめるのが現実的です。合うと感じたら、専任や責任者のポジションで年収アップを狙う流れが無理のない道筋です。

在宅の求人で確認したい5つのポイント

  1. 訪問先の内訳(個人宅と施設の割合)と、1日・1か月の訪問件数
  2. 在宅手当の有無と支給方法(月額固定か件数ごとか)
  3. オンコールの頻度、待機手当と出動手当の金額
  4. 社用車の有無、自家用車の場合の燃料代や保険の扱い
  5. 未経験者への同行訪問や研修の体制

とくにオンコールと訪問件数は、想定年収の数字だけでは見えない負担の大きさを左右します。面接で聞きにくい項目は、転職エージェントを通じて確認してもらいましょう。年収アップ全体の進め方は年収アップを実現する転職ガイドにまとめています。

💬 くらげのひとこと

見学ができるなら、訪問用のバッグや車、報告書の書式など、在宅の「道具」を見せてもらうのがおすすめです。道具や書式が整っている薬局は、在宅に本気で取り組んでいて、新人への教え方も体系化されていることが多いと感じます。

よくある質問

在宅医療の薬剤師の年収はいくらですか?▼

在宅に携わる薬剤師だけの公的な統計はありません。基準となる薬剤師全体の平均年収は、令和7年賃金構造基本統計調査から算出すると約567万円です。在宅では、在宅手当・オンコール手当・役職手当の有無によって、この基準からの上乗せ幅が職場ごとに変わります。

在宅医療は未経験でも始められますか?▼

始められます。在宅に取り組む調剤薬局では、先輩薬剤師との同行訪問から始める求人もあります。まずは調剤と兼務で経験を積み、その後に専任や責任者を目指すのが現実的な流れです。研修体制の有無は応募前に確認しましょう。

運転免許がないと在宅はできませんか?▼

車での訪問を前提に、運転免許を応募条件にしている求人は少なくありません。ただし、都市部では自転車や徒歩で訪問する薬局や、施設在宅が中心で移動が少ない薬局もあります。移動手段は求人ごとに確認しましょう。

在宅を担当すると必ずオンコールがありますか?▼

必ずではありません。夜間・休日の対応を当番制にしている薬局もあれば、担当を限定している薬局もあります。個人宅や終末期の患者が多い薬局ほど、夜間の連絡に対応する体制が求められやすいため、頻度と手当を事前に確認しておきましょう。

在宅経験は転職で有利になりますか?▼

2026年度の調剤報酬改定では個人宅への訪問を手厚く評価する見直しが入り、在宅に対応できる薬剤師を求める薬局は多い状況です。担当件数、訪問先の種類、処方提案の経験などを具体的に伝えられれば、アピール材料になります。

まとめ

在宅医療の薬剤師の年収と将来性について、要点を整理します。

📌 この記事の要点
  • 在宅専任の年収を示す公的統計はなく、基準は薬剤師全体の平均(令和7年調査から算出して約567万円)
  • 年収は在宅手当・オンコール手当・役職・地域・移動の扱いで職場ごとに変わる
  • 2026年度の改定で個人宅訪問の評価が手厚くなり、在宅に対応できる薬剤師の価値は高まっている
  • 求人では訪問先の内訳、訪問件数、オンコールの頻度と手当を必ず確認する

在宅医療は、負担もある一方で、これから評価が高まる経験を積める分野です。手当や体制の違いを見極めて、自分の生活と両立しながら長く続けられる職場を選んでいきましょう。

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※本記事の情報は2026年9月時点のものです。
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