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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
転職や再就職を考えるとき、国の公的な支援制度を知っているかどうかで、経済的な負担も選択肢の広さも大きく変わります。失業中の生活費を支える給付、学び直しの費用を補助する給付、無料で受けられる職業訓練など、薬剤師も使える制度は意外とたくさんあります。けれど「制度が多すぎて、自分が何を使えるのか分からない」という人も多いはずです。
しかもこの分野は2024年10月・2025年4月・2025年10月と立て続けに改正が入っており、数年前の情報が通用しなくなっています。給付率が上がった制度も、新しく生まれた制度もあります。
この記事では、薬剤師が転職・再就職で使える公的支援制度を、最新の内容にそろえて整理します。制度は大きく、雇用保険に入っているかどうかで分かれます。それぞれ何が使えるのかを、現役薬剤師の視点でまとめました。
先に結論
- 使える制度は雇用保険に入っているかどうかで分かれる。会社員の薬剤師なら基本的に対象
- 2025年4月から自己都合退職の給付制限が原則1か月に短縮。教育訓練を受ければ制限そのものが解除される
- 教育訓練給付は2024年10月に拡充され、専門実践は条件を満たせば最大80%(年間上限64万円)まで戻る
- 2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金は、勤務先に休暇制度があることが前提。ここが最大の関門
- 年収を下げて転職した人には就業促進定着手当という差額を補う制度がある
この記事でわかること
- 公的支援制度の全体像と、自分が使えるものの見分け方
- 失業給付・再就職手当・就業促進定着手当のしくみ
- 2025年4月の給付制限の改正で何が変わったか
- 教育訓練給付3種類の給付率と、薬剤師の使いどころ
- 2025年10月新設の教育訓練休暇給付金の要件と注意点
- 雇用保険がない人向けの求職者支援制度
- 相談・職業紹介の公的な窓口と、転職活動での動くタイミング
結論|薬剤師が使える公的支援制度の全体像
まず全体像を1枚で押さえてください。自分の状況に当てはまるものだけを、あとから深く読めば十分です。
薬剤師の場合、実際に使う頻度が高いのは失業給付・再就職手当・教育訓練給付の3つです。転職先が決まってから辞める人が多い職種なので、失業給付を使わずに済むケースも少なくありませんが、その場合でも教育訓練給付は在職中から使えます。
公的支援制度は「雇用保険に入っているか」で分かれる
転職・再就職の公的支援制度を理解する一番のポイントは、雇用保険に加入しているか(していたか)です。多くの主要な制度は雇用保険を財源にしているため、加入期間がある人ほど使える制度が増えます。会社員として働いてきた薬剤師なら、基本的に雇用保険に加入しているはずです。
一方、雇用保険に入っていない、または加入期間が足りずに失業給付を受けられない人にも、別の支援制度が用意されています。まずは自分がどちらに当てはまるかを押さえると、使える制度が見えてきます。
薬剤師で「雇用保険がない」ケース
- 週の所定労働時間が20時間未満のパートで働いていた
- 長期のブランクがあり、直近に雇用保険の加入期間がない
- すでに失業給付を受け終えている
- 自営やフリーランスとして働いていた
なお、雇用保険の加入は週の所定労働時間20時間以上・31日以上の雇用見込みが基準です。パート薬剤師として働いていた期間がある方は、給与明細や離職票で雇用保険料が引かれていたかを確認すると早く判断できます。
「知らなかった、もっと早く使えばよかった」という声が本当に多い分野です。給付には申請期限があるものも多いので、転職を考え始めた段階で、自分が何を使えるかをざっと把握しておくと損をしません。
雇用保険に入っている人が使える制度
会社員として雇用保険に加入してきた薬剤師が使える、代表的な制度を見ていきます。
失業給付(基本手当)
退職して次の仕事を探す間の生活を支えるのが、いわゆる失業保険(基本手当)です。原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが受給の条件になります(会社都合など特定受給資格者は1年間に6か月以上)。受給の条件や手続きの流れは、失業保険を扱った別の記事で詳しく解説しています。
再就職手当
失業給付を受けている人が早期に再就職すると、受給の残り日数に応じて再就職手当が支給されます。所定給付日数の3分の2以上を残して就職すれば70%、3分の1以上を残していれば60%が、基本手当日額に残日数を掛けた額に対して支給されます。早く決まるほど手厚くなる仕組みです。
見落としやすい条件
給付制限がある人が待期満了後1か月以内に就職する場合、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。自分で直接応募して早期に決めると、この要件を満たせず支給対象から外れることがあります。転職エージェント(許可を受けた職業紹介事業者)経由であれば要件を満たせるため、早期就職を狙うなら経路にも注意してください。
就業促進定着手当(年収が下がった人向け)
再就職手当を受けた人が、その再就職先に引き続き6か月以上雇用され、かつ再就職後の賃金が離職前より下がっている場合に、差額を補う手当が受けられます。これが就業促進定着手当です。
支給額は、離職前の賃金日額と再就職後6か月の賃金の1日分の差額に、その6か月間の賃金支払いの基礎となった日数を掛けた額です。働き方を優先して年収を下げる転職をした薬剤師にとって、実質的な緩衝材になる制度ですが、再就職手当と同時に自動で支給されるわけではなく、6か月経過後にあらためて申請が必要です。忘れやすいので、再就職した日に6か月後の予定として控えておいてください。
就業促進定着手当は、存在自体を知らない人がとても多い制度です。ドラッグストアから調剤薬局へ移って年収が下がったようなケースはまさに対象になり得ます。該当しそうなら、6か月経ったところでハローワークに確認してみてください。
2025年4月の改正|給付制限が1か月に短縮された
自己都合で退職した場合、これまでは7日間の待期期間に加えて2か月の給付制限があり、実際に給付が始まるまで2か月半ほどかかっていました。2025年4月からこの給付制限が原則1か月に短縮されています。
知っておくと得をする「給付制限の解除」
自己都合で退職する人が、離職期間中または離職日前1年以内に、教育訓練給付の対象講座などの教育訓練を受けた場合、給付制限そのものが解除されます。7日間の待期期間が終われば、すぐに基本手当を受け取れるようになります。
対象は2025年4月1日以降に受講を開始したものに限られ、受給資格決定日や初回認定日までにハローワークへ申し出る必要があります。退職を予定している段階で先に講座を受け始めておけば、退職後すぐに給付を受けられるという使い方ができます。
「在職中に講座を受け始める」というひと手間で、給付開始が1か月早まる可能性があります。学び直しの意思がある方は、退職の意向を固めた時点で講座選びを始めておくと、時間とお金の両方で有利になります。
教育訓練給付制度|3種類の違いと薬剤師の使いどころ
スキルアップや資格取得のための講座を受けると、受講費用の一部が戻ってくる制度です。レベルに応じて3種類あり、給付率が異なります。2024年10月の改正で、成果を出すほど給付率が上がる設計に変わりました。
支給額が4,000円を超えない場合は支給されません。また専門実践教育訓練には、10年間の通算で192万円という支給上限も設けられています。
受けるための条件と手続き
- 支給要件期間|在職中なら原則3年以上(初めて利用する場合は1年以上)の雇用保険加入期間が必要
- 離職後に使う場合|離職日の翌日から原則1年以内に受講を開始すること
- 事前手続き|特定一般と専門実践は、受講前にハローワークでキャリアコンサルティングを受け、就業に関する計画書を作成したうえで受給資格の確認が必要
- 年齢制限|教育訓練給付そのものに年齢の上限はない
対象講座かどうかは、厚生労働省の教育訓練講座の検索システムで調べられます。地域・資格名・訓練の種別・受講方法から絞り込めるので、まずは検討中の講座が指定対象かを確認し、そのうえでハローワークに受給資格を照会するのが確実です。
失業中に専門実践を受ける人向けの生活支援
失業中に専門実践教育訓練を受ける受講開始時に45歳未満の人には、生活費を支える教育訓練支援給付金が別途用意されています。基本手当を受け終えたあとも訓練が続く場合の支えになる制度です。
薬剤師の場合、業務に直結する短期講座は一般教育訓練に該当することが多い印象です。まずは20%が戻る一般教育訓練から試して、制度の使い勝手をつかんでおくと、いざ大きな講座を受けるときに動きやすくなります。
2025年10月新設|教育訓練休暇給付金の要件と落とし穴
2025年10月1日に新しく始まった制度です。会社を辞めずに教育訓練のための無給休暇を取ると、失業給付と同水準の給付金を受け取れます。年齢制限がなく、在職したまま学び直しに専念できるのが特徴です。
受給に必要な条件
- 休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること
- 休暇開始前に5年以上の雇用保険の加入期間があること(離職期間があっても一定の要件を満たせば通算できる)
- 就業規則や労働協約などに定められた休暇制度に基づく、30日以上の無給休暇であること
- 業務命令ではなく、本人の希望により事業主の承認を得て取得する休暇であること
給付日数は被保険者期間によって変わり、5年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。「最大150日」と紹介されることが多いですが、実際の日数は加入期間次第という点に注意してください。
2つの落とし穴
① 勤務先に休暇制度がないと使えない
この給付金は、勤務先が就業規則等に教育訓練休暇の制度を設けていることが前提です。制度の導入は事業主の任意であり、中小の調剤薬局では整備されていないことがほとんどです。使いたい場合は、まず勤務先に制度があるかを確認してください。
② 使うと失業給付の被保険者期間がリセットされる
この給付金を受けると、休暇開始日より前の被保険者期間は、原則として離職後の失業給付の受給資格を計算する際に算入されません。学び直しの直後に退職・転職を考えている人は、失業給付との関係を必ず確認してから使うべき制度です。
出典:厚生労働省「教育訓練休暇給付金について」
制度としては魅力的ですが、正直なところ薬局勤務でこれを使える人はまだ少ないと思います。就業規則に休暇制度がなければ入口にすら立てません。逆に言えば、この制度を整備している法人は人材育成に投資している証拠なので、転職先を選ぶときの判断材料にもなります。
雇用保険に入っていない人が使える制度
雇用保険に加入していない、または加入期間が足りずに失業給付を受けられない人もいます。長くブランクがある、パートで雇用保険に入っていなかった、すでに失業給付を受け終えた、といったケースです。こうした人を支えるのが求職者支援制度です。
求職者支援制度では、無料の職業訓練を受けながら、要件を満たせば月10万円の職業訓練受講手当と通所手当を受け取れます。雇用保険の枠の外にいる人でも、訓練でスキルを身につけながら再就職を目指せる仕組みです。
給付金の主な支給要件
- ハローワークに求職の申込みをしており、雇用保険の被保険者・受給資格者でないこと
- 本人の収入が月8万円以下であること
- 世帯全体の収入と金融資産について、それぞれ一定の基準以下であること
- 現在住んでいるところ以外に土地や建物を所有していないこと
- 訓練の全日程に出席すること(やむを得ない理由がある場合を除く)
収入・資産の基準は世帯単位で判定されるため、配偶者に十分な収入がある薬剤師の場合は給付金の対象外になることが多い点は正直に押さえておきたいところです。ただし、給付金の要件を満たさない場合でも、職業訓練そのものは無料で受講できます。具体的な基準額は改正されることがあるため、対象になるかどうかは必ずハローワークで確認してください。
出典:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
相談・職業紹介の公的な窓口
お金の給付だけでなく、仕事探しそのものを支える公的な窓口もあります。
- ハローワーク:求人紹介・職業相談の基本窓口。給付の手続きもここで行う。薬剤師求人の探し方は別の記事で解説
- マザーズハローワーク:子育てをしながら再就職を目指す人向けの専門窓口。仕事と育児の両立に配慮した相談ができる
- 都道府県の薬剤師会:地域によっては、薬剤師向けの無料の職業紹介を行っているところがある
- 都道府県のナースセンターに相当する薬剤師向け窓口:地域により名称や実施状況が異なるため、居住地の薬剤師会に確認するのが確実
こうした公的制度は、知っているかどうかで転職活動全体の負担が大きく変わります。実際にこうした制度を活用しながら転職した薬剤師の実例は、転職体験談のまとめでも紹介しています。
▶ あわせて読みたい
薬剤師の転職体験談まとめ|リアルな成功・失敗ケースと教訓公的な窓口は無料で使えるのが強みです。民間の転職エージェントと公的窓口は、どちらかではなく併用してかまいません。給付や訓練は公的制度、求人の幅や条件交渉はエージェント、と役割で使い分けると、選択肢を最大限に広げられます。
転職活動のどの段階で、どの制度に動くか
制度を知っていても、動くタイミングを外すと使えません。転職の流れに沿って、いつ何をするかを整理します。
▶ あわせて読みたい
転職活動そのものの手順と期間の目安は、こちらで段階ごとに解説しています。
薬剤師の転職の流れ
薬剤師は「次を決めてから辞める」人が多いので、失業給付を使わずに終わることも珍しくありません。それでも離職票は必ず受け取っておいてください。予定が変わって空白期間ができたとき、手元にないと手続きが止まります。
よくある質問
まとめ
薬剤師の転職・再就職を支える公的制度は、思っている以上に充実しています。最後に要点を整理します。
- 使える制度は、雇用保険に入っているかどうかで大きく分かれる
- 2025年4月から自己都合退職の給付制限は原則1か月。教育訓練の受講で解除もできる
- 教育訓練給付は3種類。専門実践は条件次第で最大80%(年間上限64万円)まで戻る
- 2025年10月新設の教育訓練休暇給付金は、勤務先の休暇制度と5年以上の加入期間が前提
- 年収を下げて転職した人は、6か月後に就業促進定着手当を申請できる可能性がある
- 雇用保険がない人は、無料訓練と給付金が受けられる求職者支援制度がある
給付には申請期限や細かな要件があり、内容も改正されていきます。気になる制度があれば、まずはハローワークで自分が対象かどうかを確認するのが確実です。公的制度と民間のサポートを上手に組み合わせて、納得のいく転職・再就職につなげてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。給付率・上限額・支給要件は改正される場合があり、個別の適用可否は状況によって異なります。最新の制度内容と自分が対象かどうかは、必ず最寄りのハローワークや各窓口にご確認ください。

