この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、徳島県は「人口あたりの薬剤師数は全国1位。ただし余っているのは病院側で、薬局薬剤師の偏在指標はむしろ全国平均を下回る」県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、徳島の病院薬剤師は0.94と京都府に次ぐ全国2番目の高さ、一方の薬局薬剤師は1.03で全国の1.08を下回ります。
「薬学部が2校あって薬剤師が余っている県」と語られがちですが、数字を分解すると話はもう少し複雑です。この記事では公的統計をもとに、徳島の転職市場の実像を整理します。
この記事でわかること
- 徳島県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 薬剤師数が全国1位でも薬局は「余っていない」という構図
- 年収ランキングが1年で47位から30位に動いた背景
- 徳島市への54%集中と、製薬企業という選択肢
徳島県の薬剤師転職データ早見表
まず、徳島県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・月間勤務時間は厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」および「令和5年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(勤務時間は令和6年分)/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
徳島は「薬剤師数が全国1位」という数字が一人歩きしやすい県です。でも偏在指標を見ると、余っているのは病院側で、薬局は全国平均以下。この違いを知っているかどうかで、求人の見え方がまったく変わります。
「供給過剰」は病院と薬局で意味が違う
薬剤師数は全国1位、薬局数は四国で最少
徳島県の人口10万人あたりの薬剤師数は256.6人で、47都道府県で最も多い数字です。全国平均210.6人を46人も上回ります。ところが人口10万人あたりの薬局数は55.3施設で全国13位。全国平均は超えているものの、高知県60.4施設、香川県57.6施設と比べると四国4県のなかでは最も少ないという結果です。
薬剤師の頭数は全国一多いのに、薬局の数はそれほどでもない。この非対称の意味は、偏在指標を見るとはっきりします。
出典:厚生労働省が公表した現在時点および将来時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院薬剤師の充足度は全国2番目
徳島県の病院薬剤師の偏在指標0.94は、京都府の0.95に次ぐ全国2番目の高さです(東京都と同値)。全国平均0.80と比べても差は大きく、病院薬剤師については全国でもっとも恵まれた環境のひとつといえます。徳島大学病院をはじめとする大規模病院があり、県内に薬学部が2校あることで若手が供給されている影響が大きいと考えられます。
病院を志望する人にとっては、学べる環境が整っている一方で人気の職場は競争が激しいということでもあります。認定資格や病棟業務の経験など、アピールできる材料を整えて臨むほうが有利です。
薬局薬剤師はむしろ全国平均を下回る
対照的に、薬局薬剤師の指標は1.03で全国の1.08を下回ります。隣の香川県1.09よりも低い数字です。「徳島は薬剤師が余っているから薬局に入りにくい」というのは正確ではありません。
徳島の薬剤師数が全国1位になる理由のひとつは、大学や製薬企業に勤める薬剤師が多いことです。頭数には数えられていても、その全員が薬局や病院で調剤をしているわけではありません。薬局志望なら、全国1位という数字に萎縮する必要はないと考えてよいでしょう。
ただし将来時点の推計では、薬局薬剤師の指標は1.25、地域全体は1.16まで上がる見通しです。長期的には需給が緩む方向なので、在宅対応や専門性など、処方箋の枚数以外で価値を出せるスキルを持っておくと安心です。
「全国1位だから就職しにくい」と思い込んで徳島を候補から外すのは、もったいないと思います。薬局に限れば全国平均以下。病院を目指すなら準備して挑む、薬局なら普通に戦える。この見立てで動くのが正解です。
年収は1年で全国47位から30位へ
「徳島の薬剤師年収は全国最下位クラス」という説明を見かけますが、これは特定の年のデータに基づくものです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計を並べると、次のようになります。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
1年で124.9万円上がり、順位は47位から30位へ17ランク上昇しています。徳島の給与が実際に急上昇したわけではありません。都道府県別の年収データは抽出調査のため、母集団が小さい県ほど、たまたま調査対象になった職場の顔ぶれで平均値が大きく動くためです。
つまり「徳島は全国最下位」という説明は、令和5年の1年分の数字を切り取ったものということです。単年の順位で判断せず、実際に募集されている求人の提示額で確かめてください。なお全国の薬剤師の平均年収は、令和7年調査では566.8万円まで下がっています。
月間勤務時間は全国より10時間長い
年収より安定して確認できるのが勤務時間です。令和6年調査での徳島県の薬剤師の月間勤務時間は177時間で、全国の167時間より10時間長いという結果でした。1日あたりおよそ30分の差です。年収の額面だけでなく、月の所定労働時間・残業の実績・年間休日をセットで確認してください。
「徳島は年収が全国最下位」と書いてある記事は、令和5年のデータを見ています。翌年には30位。ランキングは母集団が小さい県ほど当てにならないので、目の前の求人票で判断してください。
県内薬剤師の54%が徳島市に集中
徳島の需給を語るうえで、県全体の平均より重要なのが県内の偏りです。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数は次のとおりです。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)。当時の県全体は2,595人
県全体2,595人のうち徳島市が1,402人で、割合にすると約54%。2位の鳴門市とは5倍以上の差があります。全国1位という薬剤師の多さは、実質的に徳島市に集まっている多さだということです。
逆に言えば、徳島市を離れたエリアでは人材の希少性が高まります。県西部の美馬・三好、県南部の海部郡などは求人数こそ限られますが、条件面で交渉の余地が生まれやすいエリアです。
徳島市に54%が集中しているということは、残り46%が県内の他の全市町村に散らばっているということです。徳島市にこだわらず視野を広げるだけで、見える求人はかなり変わりますよ。
薬学部2校と製薬企業という強み
徳島県内には、徳島大学と徳島文理大学の2つの薬学部があります。人口約70万人の県に薬学部が2校あるのは全国的にも珍しく、これが人口あたりの薬剤師数を全国1位に押し上げている最大の要因です。研修体制の整った職場が見つけやすいのも、この環境があってこそといえます。
もうひとつの特徴が、製薬企業の存在です。徳島は大手製薬グループの創業の地として知られ、鳴門市などに拠点があります。従業地別の薬剤師数で鳴門市が県内2位(270人)となっているのも、この立地が背景にあると考えられます。
調剤や病院以外の進路を県内で探せるのは、地方では貴重な環境です。研究・開発・品質管理・薬事といった職種に関心があるなら、徳島は現実的な選択肢になります。求人数は限られるため、早い段階から情報を集めておくことをおすすめします。
徳島県のエリア別の傾向
徳島県は東西に長く、エリアごとに事情が異なります。
徳島市から三好市までは車で1時間半ほど、海部郡までも同程度かかります。県内をまとめて通勤圏にはできないため、住むエリアを先に決めてから求人を探すのが現実的です。
徳島で働くメリットと注意点
- 病院薬剤師の偏在指標は0.94と全国2番目。学べる病院が多い
- 薬局薬剤師の指標は1.03で全国1.08を下回り、薬局志望なら十分に戦える
- 薬学部が2校あり、研修体制の整った職場が見つけやすい
- 製薬企業の拠点があり、企業系の職種を県内で探せる
- 徳島市を離れたエリアは人材の希少性が高く、条件交渉の余地がある
- 年収ランキングは1年で47位から30位まで動き、判断材料にしにくい
- 月間勤務時間は177時間と、全国平均より10時間長い
- 県内薬剤師の約54%が徳島市に集中し、市内の競争は激しい
- 薬局の偏在指標は将来1.25まで上がる推計で、長期では需給が緩む
- 県西部・県南部は求人が限られ、車通勤が前提になる職場が多い
徳島で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 病院志望か薬局志望かで戦略を変える
偏在指標が示すとおり、徳島は病院と薬局で需給がまったく違います。病院は全国2番目に充足しているため、認定資格や病棟経験といった強みを整えて臨むほうが有利です。薬局は全国平均を下回るので、条件面での交渉余地を探る動き方が向いています。
② 徳島市にこだわらず県西部・県南部も見る
県内薬剤師の54%が徳島市に集まっているぶん、市外では人材の希少性が高まります。三好・美馬・阿南・海部郡などまで視野を広げると、条件面で余裕のある求人に出会える可能性が上がります。エリアを広げるほど、比較できる材料が増えます。
③ 製薬企業や管理薬剤師で専門性の差をつける
薬剤師の頭数が多い県では、誰でもできる業務だけでは待遇が上がりにくくなります。製薬企業への転職、管理薬剤師としてのキャリア、在宅対応や認定薬剤師の資格。こうした評価される材料を持っているかどうかで、提示される条件がはっきり変わります。
④ 勤務時間の実態を数字で確認する
徳島は統計上の勤務時間が全国より10時間長く出ています。応募前に、1日の平均処方箋枚数、在籍薬剤師数、直近数か月の平均残業時間、年間休日数の4点は具体的に確認しましょう。年収が同じでも、この4点で働きやすさはまったく変わります。
徳島は「薬剤師が多いから不利」と言われがちですが、実際は職場の種類とエリアで景色が変わる県です。自分がどの市場で戦うのかを決めてから動くと、結果がかなり変わりますよ。
よくある質問
まとめ
徳島県の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 人口10万人あたり薬剤師数256.6人は全国1位だが、薬局数は四国で最少
- 偏在指標は病院0.94(全国2番目)に対し薬局1.03で、全国1.08を下回る
- 年収ランキングは1年で47位から30位まで動いており、判断材料にしない
- 月間勤務時間は177時間と、全国平均より10時間長い
- 県内薬剤師の約54%が徳島市に集中。市外は人材の希少性が高い
- 薬学部2校と製薬企業の拠点があり、企業系の進路も県内で探せる
徳島は「薬剤師が余っている県」と一括りにされがちですが、実際は病院と薬局、徳島市とそれ以外で景色がまったく違います。この2つの軸で分けて考えれば、自分がどこで勝負すべきかが見えてきます。数字の構造を理解したうえで、納得のいく職場を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

