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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、山形県は「薬局数は全国3位なのに薬剤師数は全国平均以下。病院薬剤師の不足は全国ワースト3位」という、需給のギャップが全国でも指折りに大きい県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、山形の病院薬剤師は0.60と青森県・秋田県に次いで全国3番目に低い水準にあります。
一方で、年収データの扱いには注意が必要です。同じ賃金構造基本統計調査でも、直近1年で全国27位から45位まで動いています。この記事では公的統計をそのまま示しながら、山形の転職市場を数字で読み解いていきます。
- 山形県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 年収ランキングが1年で27位から45位に動いた理由と、正しい読み方
- 偏在指標で見た不足の深刻さと、1薬局あたりの薬剤師数の試算
- 村山・置賜・最上・庄内の地域別の傾向と、職場選びのコツ
山形県の薬剤師転職データ早見表
まず、山形県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)および届出薬剤師総数/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
山形の数字でいちばん目を引くのは、薬局数が全国3位なのに薬剤師数は全国平均以下という組み合わせです。この差の大きさは全国でも屈指。転職する側から見れば、それだけ求められているということでもあります。
年収データは調査年で大きく振れる
1年で全国27位から45位へ
同じ厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計で、山形県の薬剤師の平均年収は次のように動いています。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
1年で116.2万円下がり、順位は27位から45位へ。山形の薬剤師の給与が実際に急落したという話ではありません。統計の性質によるものです。
平均年齢が1年で8.5歳動いている
同じ期間に、山形県の薬剤師の平均年齢は43.9歳から52.4歳へ8.5歳動いています。実態としてこんな変化は起こりません。調査対象に入った事業所の顔ぶれが入れ替わったと考えるのが自然です。
背景にあるのは標本の少なさです。山形県の届出薬剤師は2,251人と規模が小さく、賃金構造基本統計調査は抽出調査のため、母集団が小さい県ほど、たまたま調査対象になった職場の構成で平均値が大きく動きます。山形の都道府県別年収ランキングは、単年で判断材料にしないのが正解です。
では何で判断すればよいか
代わりに使うべきなのは、実際に募集されている求人の提示額と、手当を含めた年間の実額です。山形の地方部の求人には住宅補助や引っ越し代の補助が付くものもあり、基本給の比較だけでは実際の手取りを取りこぼします。3社ほど並べて、年間の実額で比べるほうが、統計より確実に自分の相場がわかります。
そしてもうひとつ、判断材料として信頼できるのが次の章で紹介する偏在指標です。こちらは制度に基づいて算出されているぶん、年ごとに乱高下しません。
都道府県別の年収ランキングは、人口の少ない県ほど当てになりません。山形はその典型です。「27位だから高い」「45位だから安い」のどちらも外します。転職の判断は、目の前の求人票でしてください。
偏在指標で見ると全国でも指折りの不足県
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点および将来時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院の0.60は全国ワースト3位
山形県の病院薬剤師の偏在指標0.60は、青森県の0.55、秋田県の0.56に次いで全国で3番目に低い数値です。全国の0.80と比べても差は大きく、病院での薬剤師確保が構造的に難しい県だとわかります。将来時点の推計でも0.66にとどまります。
病院薬剤師を目指す人にとっては、需要が構造的に強いエリアです。経験があれば歓迎されやすく、病棟業務やチーム医療に早くから関われる可能性も高いといえます。一方で、人が足りない状態は1人あたりの負担が重いことの裏返しでもあるため、薬剤部の人数と当直の頻度は必ず確認してください。
地域全体の0.79も全国で3番目に低い
薬局薬剤師の指標も0.85で、全国の1.08を大きく下回ります。病院と薬局を合わせた地域全体の指標は0.79で、これは青森県の0.69、福井県の0.74に次いで全国3番目に低い水準です(三重県と同値)。山形は職場を問わず薬剤師が足りていない県だといえます。
将来時点の推計では地域全体が0.94、薬局薬剤師は1.04まで上がる見通しですが、それでも全国平均に並ぶ程度。長期にわたって人材が求められ続けるエリアと考えてよいでしょう。
年収の数字はぶれても、偏在指標は制度に基づいて算出されているぶん安定しています。山形で職場を選ぶなら、ランキングより偏在指標を見るほうが役に立ちます。数字の上では、間違いなく求められている県です。
薬局は全国3位に多いのに、薬剤師は足りない
山形県の人口10万人あたりの薬局数は60.0施設で、全国平均50.5施設を大きく上回る全国3位です。1位の佐賀県64.5施設、2位の高知県60.4施設に続く水準。一方で薬剤師数は186.7人と全国平均210.6人を下回ります。東北6県で並べると次のとおりです。
出典:薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」。「1薬局あたり」は当サイトが両者を割って算出した目安で、薬剤師数には病院勤務者も含まれるため実際の薬局配置人数そのものではありません
1薬局あたりは東北6県で最も薄い
人口10万人あたりの薬剤師数を薬局数で割ると、山形は約3.1人。全国の約4.2人と比べて1人以上少なく、東北6県のなかでも最も薄い計算になります。都道府県どうしを同じ条件で比べる目安ですが、山形の需給ギャップの大きさをよく表しています。
薬局の数が多いということは、それだけ小規模な薬局が多いということでもあります。応募先の在籍薬剤師数は、山形では特に重要な確認項目です。
県内に薬学部が1校もない
山形県内には薬学部・薬科大学がひとつもありません。薬学部のある県では地元の大学から毎年新卒薬剤師が供給されますが、山形にはその流れがなく、薬局も病院も他県の薬学部を卒業した薬剤師を採用する必要があります。
なお人口10万人あたりの薬剤師数は、令和4年の177.0人から令和6年は186.7人へと10人近く増えています。全国平均には届いていませんが、不足の度合いはやや和らいでいるという読み方もできます。県としても、小中学生向けの学習会や高校生向けの医療福祉座談会を通じて、将来の医療人材の確保に取り組んでいます。
1薬局あたり3.1人という数字は、実際には1人薬剤師や2人体制の店舗がかなりあるということを示しています。求人票の年収が良くても、その店舗に何人いるかで働きやすさは全然違います。ここは遠慮なく聞いてください。
村山・置賜・最上・庄内の地域別の傾向
山形は大きく4つの地域に分かれます。とくに庄内は山地で隔てられ、内陸とは別の医療圏として独立しているのが特徴です。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数は次のとおりです。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
山形市の765人は2位の酒田市の3倍以上。2位と3位を庄内の2市が占めているのも山形の特徴で、庄内が独立した医療圏として機能していることがうかがえます。
求人数で選ぶなら村山、地域医療にじっくり関わりたいなら庄内、条件面の交渉余地を狙うなら最上や郡部、という選び分けが基本です。庄内は山形市側から山を越えての移動になるため、内陸と庄内は別のエリアとして探すのが現実的です。山形はどの地域も積雪が多いため、冬の通勤の備えもあわせて考えておきましょう。
山形で働くメリットと注意点
- 地域全体の偏在指標が0.79と全国3番目に低く、人材が求められている
- 病院薬剤師の偏在指標は0.60と全国ワースト3位。病院志望なら需要が強い
- 人口10万人あたり薬局数は60.0施設で全国3位。通える範囲に職場が多い
- 住宅補助や引っ越し代の補助が付く求人があり、実質の手取りが上がることも
- 県内に薬学部がなく、県外からの転職者を迎える土壌がある
- 年収ランキングの振れ幅が大きく、統計を判断材料にしにくい
- 1薬局あたりの薬剤師数は約3.1人と東北6県で最も薄い
- 人手が足りない職場では1人あたりの業務負担が重くなりやすい
- 庄内は内陸と別エリアで、県内をまとめて通勤圏にはできない
- 積雪が多く、車通勤と冬の備えが前提になる職場が多い
山形で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 暮らしたい地域を先に決める
山形は内陸と庄内が山で隔てられ、県全体を通勤圏にはできません。求人数を取るなら村山、地域医療なら庄内、条件交渉の余地なら最上や郡部。まず地域を1つか2つに絞ると、比較の軸がぶれません。
② 統計ではなく求人の実額で比べる
山形では都道府県別ランキングが当てになりません。基本給・賞与・住宅補助・引っ越し代の補助を足した年間の実額で、3社ほど並べて比較してください。求人票に書かれていない手当がある場合もあるので、面談で「支給される手当をすべて教えてください」と確認するのが確実です。
③ 在籍薬剤師数と冬の通勤条件を必ず確認する
1薬局あたりの薬剤師数が東北で最も薄い県です。応募前に、在籍薬剤師数、1日の平均処方箋枚数、直近の平均残業時間、休みを取るときの応援体制の4点は具体的に確認しましょう。加えて雪の日の出勤ルール、駐車場の除雪体制も聞いておくと安心です。
④ 東北に強いエージェントを複数使う
山形の求人は数が限られ、好条件のものが非公開で動くこともあります。1社だけだと、その会社が持っている求人しか見えません。2社から3社に登録して比べると、同じ条件でもより良い職場に出会える確率が上がりますし、雪道通勤や補助といった山形特有の確認も任せやすくなります。
山形は需給の面では確実に求められている県です。だからこそ、条件を受け入れるだけでなく「この体制なら」と交渉する余地もあります。人数と業務量の実態を確かめたうえで、納得して決めてください。
よくある質問
まとめ
山形の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 年収ランキングは1年で27位から45位まで動いており、判断材料にしない
- 病院薬剤師の偏在指標は0.60で全国ワースト3位。病院志望には追い風
- 地域全体の偏在指標0.79も全国3番目に低く、職場を問わず人材が求められている
- 薬局数は全国3位だが薬剤師数は全国平均以下。1薬局あたり約3.1人と東北で最も薄い
- 村山・置賜・最上・庄内で事情が異なり、庄内は独立した医療圏
- 在籍薬剤師数と冬の通勤条件を確認し、手当を含めた実額で比べる
薬剤師が足りないという山形の構図は、働く側にとってはチャンスでもあります。統計の数字に振り回されず、暮らしたい地域を決めたうえで、目の前の求人を丁寧に比べながら納得のいく転職につなげてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

