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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、福島県は「病院薬剤師の不足が全国5番目に深刻。最新調査では年収が全国平均を上回り、薬剤師も対象になる移住支援金が最大320万円ある」という3点で特徴づけられる県です。厚生労働省の薬剤師偏在指標で、福島の病院薬剤師は0.65と全国平均0.80を大きく下回ります。
もうひとつ、福島には全国でも珍しい特徴があります。郡山市・いわき市・福島市の3市に薬剤師がほぼ均等に分かれていて、突出した中心都市がありません。この記事では公的統計をもとに、地域による違いと使える制度まで整理します。
- 福島県の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 病院薬剤師の不足が全国5番目という需給の構図
- 薬剤師も対象になる12市町村移住支援金の中身(最大320万円)
- 中通り・浜通り・会津の地域別の傾向と、職場選びのコツ
福島県の薬剤師転職データ早見表
まず、福島県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・平均年齢は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)および届出薬剤師総数/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
福島の数字で意外なのは、平均年齢が36.5歳と全国より4歳近く若いことです。年功で押し上げられていない状態で全国平均を超えているというのは、単価そのものが悪くないという読み方ができます。
最新調査では年収が全国平均を上回った
37位から24位へ、全国平均を超えた
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計では、福島県の薬剤師の平均年収は次のように変化しています。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
最新の令和7年調査では573.6万円で全国24位。全国平均566.8万円を6.8万円上回りました。「福島は年収が全国平均より低い」という説明は、少なくとも最新のデータでは当てはまりません。
平均年齢が全国より3.6歳若い
この数字を読むうえで重要なのが平均年齢です。令和7年調査での福島県の薬剤師の平均年齢は36.5歳で、全国の40.1歳より3.6歳若い。薬剤師の給与は勤続年数で上がっていくため、年齢構成が若い県は平均年収が低めに出やすくなります。
それでも全国平均を上回っているということは、同じ年齢帯で比べれば福島の水準は決して低くないと読めます。若手の段階で福島に入るという選択は、数字のうえでも合理性があります。
ただし単年の順位で決めつけない
都道府県別の年収データは、抽出調査であるために年ごとに動きます。福島も1年で37位から24位へ13ランク上がっています。単年の順位を根拠に判断するのではなく、複数年の傾向として「福島は全国平均前後の水準」ととらえたうえで、実際の求人の提示額で確かめるのが確実です。
「地方だから安い」と決めつけて福島を候補から外すのは、もったいないと思います。平均年齢の若さを考えると、実質的にはむしろ健闘している県です。あとは後で紹介する支援制度をどう乗せるか、という発想で見てみてください。
病院薬剤師の不足は全国5番目に深刻
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点および将来時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院の0.65は全国でも下位グループ
福島県の病院薬剤師の偏在指標0.65は、青森県・秋田県・山形県・三重県に次いで全国で5番目に低い水準です(岩手県・宮崎県と同値)。全国平均0.80との差は大きく、病院での薬剤師確保が構造的に難しい県だとわかります。
病院薬剤師を目指す人にとっては、需要が構造的に強いエリアです。経験があれば歓迎されやすく、病棟業務やチーム医療に早くから関われる可能性も高いといえます。一方で、人が足りない状態は1人あたりの負担が重いことの裏返しでもあるため、人員体制と当直の頻度は必ず確認してください。
薬局は将来1.17まで上がる見通し
薬局薬剤師の指標は現在0.95で全国の1.08を下回りますが、将来時点の推計では1.17まで上がる見通しが示されています。人口減少で処方箋の総量が減っていくことが背景です。地域全体の指標も0.86から1.01へと、全国並みに追いつく推計になっています。
つまり、いまは薬局も人手が足りていないが、長期では需給が緩む方向に向かうという見立てです。福島で長く働くつもりなら、在宅対応や地域連携など、処方箋の枚数以外で価値を出せるスキルを持っておくと安心です。
福島で病院を志望する人には、かなり追い風の数字です。ただ「歓迎される」と「働きやすい」は別なので、そこは冷静に。応募前に薬剤部の人数と当直回数だけは必ず聞いてください。
中心都市が3つに分散する全国でも珍しい県
多くの県では県庁所在地に薬剤師が集中しますが、福島は事情が違います。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数は次のとおりです。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
1位の郡山市と3位の福島市の差はわずか69人。これは全国的にかなり珍しい構図です。たとえば石川県は県内薬剤師の約半数が金沢市に、香川県は約46%が高松市に集中しています。福島には「ここに行けば求人が一番多い」という都市が存在しないということです。
この分散は、求人を探すうえで扱いにくさにもなります。3市それぞれを別々に見なければならないうえ、郡山からいわきまでは高速道路でも1時間以上。県内すべてを通勤圏にはできません。最初に住むエリアを決めてから求人を探すのが、福島では特に重要になります。
薬剤師数は改善傾向にある
なお人口10万人あたりの薬剤師数は、令和4年の178.1人から令和6年は188.9人へと10人以上増えています。全国平均210.6人には届いていませんが、不足の度合いはやや和らいでいるという読み方ができます。
福島は「県で探す」より「市で探す」ほうが向いている県です。郡山・いわき・福島は、それぞれ別の労働市場だと思ったほうが実態に近い。住みたい街を先に決めると、一気に探しやすくなります。
中通り・浜通り・会津の地域別の傾向
福島は大きく3つの地域に分かれ、気候も求人の色合いも異なります。希望する暮らしに合わせて地域を絞ると、職場探しが進めやすくなります。
求人数で選ぶなら中通り、移住支援を活かすなら浜通り、条件面の交渉余地を狙うなら会津や内陸の地方部、という選び分けが基本です。同じ県内でも冬の環境がまったく違うため、通勤の備えもあわせて考えておきましょう。
薬剤師も対象になる移住支援金は最大320万円
福島県には「福島県12市町村移住支援金」という制度があり、令和7年4月から薬剤師を含む医療・介護・福祉の有資格者への加算が新設されました。転職と移住を同時に考えている人にとっては、他県にはない大きな材料です。
出典:福島県「福島県12市町村移住支援金」募集案内。要件・金額は年度により変わるため、申請前に必ず県および該当市町村の最新情報を確認してください
世帯で移住し、薬剤師として12市町村内の施設に就業した場合、基本額200万円に有資格者加算120万円が乗って合計320万円。子育て加算の要件を満たせばさらに上積みされます。年収を数十万円上げる交渉よりも、はるかに大きなインパクトになり得る金額です。
ただし、加算を受けるには県が定める機関等で紹介されている求人に応募する必要があるなど、条件が細かく決まっています。転職エージェント経由の求人が対象になるとは限らないため、この制度を使いたい場合は求人探しの入口から確認しておくことが大切です。
薬剤師を名指しで120万円加算する制度は、なかなかありません。金額もさることながら、県が薬剤師を本気で求めているというメッセージそのものだと思います。浜通りを候補に入れるなら、まずこの制度から調べてみてください。
県内の薬学部が2校から1校へ
福島県内で薬学部を持つ大学は、郡山市の奥羽大学といわき市の医療創生大学の2校です。ところが医療創生大学は2025年1月、2026年度から6年制薬学部薬学科の新入生募集を停止すると発表しました。過去10年で入学定員を満たしたのは2015年度のみで、2024年度の充足率は50%を割り込んでいたことが理由と報じられています。
6年制薬学部の学生募集停止としては、姫路獨協大学に続く全国2校目でした。この結果、福島県内で新たに薬剤師を育てる場は、事実上奥羽大学の1校のみになっていきます。
もともと人口10万人あたりの薬剤師数が全国平均を下回る県で、供給源がさらに細るということです。とくにいわき市を含む浜通りでは、地元大学からの新卒供給が期待しにくくなります。中長期で見れば、県外からの転職者を求める動きは強まる方向と考えられます。
福島で働くメリットと注意点
- 最新調査では平均年収573.6万円・全国24位と、全国平均を上回った
- 平均年齢36.5歳と若く、同年代で比べれば水準は悪くない
- 病院薬剤師の偏在指標が0.65と低く、病院志望なら需要が構造的に強い
- 薬剤師も対象の移住支援金があり、条件次第で最大320万円が上乗せされる
- 県内の薬学部が1校に減る見通しで、県外からの転職者が求められやすい
- 中心都市が3つに分散し、県内をまとめて通勤圏にはできない
- 人口10万人あたり薬剤師数は188.9人で、全国平均210.6人を下回る
- 病院薬剤師の不足は、1人あたりの業務負担が重いことの裏返しでもある
- 移住支援金は対象市町村や求人の入口が限定され、要件確認が必須
- 会津など内陸は積雪が多く、車通勤と冬の備えが前提になる
福島で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 住むエリアを先に決める
福島は中心都市が3つに分かれ、郡山からいわきまでは車でも1時間以上かかります。県全体を漠然と眺めると求人が散らばって見え、比較ができません。求人数を取るなら中通り、移住支援を使うなら浜通り、条件交渉の余地を狙うなら会津。まず地域を1つか2つに絞ってください。
② 移住支援金の要件から逆算する
県外から福島に移るなら、12市町村移住支援金は最初に検討すべき制度です。世帯移住なら基本額200万円に薬剤師としての加算120万円が乗ります。ただし県が定める機関等で紹介されている求人に応募することが条件のため、求人を探し始める前に対象市町村と対象求人の範囲を確認しておきましょう。順番を間違えると受け取れなくなります。
③ 病院志望なら需給を武器にする
病院薬剤師の偏在指標が全国5番目に低いという事実は、そのまま交渉材料になります。経験や認定資格があるなら、条件面での相談余地は小さくありません。応募前に、薬剤部の在籍人数、当直の頻度、病棟業務への関与度の3点は具体的に確認しておきましょう。
④ 東北に強いエージェントを複数使う
福島は求人が3市に分散しているぶん、1社だけでは全体像が見えません。東北や福島の求人に強いエージェントを2社から3社登録しておくと、地域ごとの相場感や職場の内情まで把握しやすくなります。移住を考えていることを最初に伝えておくと、支援制度を踏まえた提案を受けやすくなります。
福島は情報を集めるほど有利になる県だと思います。年収の額面だけを追うより、支援制度や地域ごとの需給まで含めて考えたほうが、結果的に手元に残るものが大きくなります。
よくある質問
まとめ
福島の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 最新調査の平均年収は573.6万円・全国24位で、全国平均を6.8万円上回った
- 平均年齢36.5歳と全国より3.6歳若く、同年代で比べれば水準は悪くない
- 病院薬剤師の偏在指標は0.65で全国5番目に低く、病院志望には追い風
- 郡山・いわき・福島の3市がほぼ横並びで、中心都市が分散している
- 12市町村移住支援金は薬剤師も対象。世帯移住なら最大320万円
- 県内の薬学部が2校から実質1校へ。県外からの転職者が求められやすくなる
福島は、住むエリアを決めるだけで自分に合った職場が見えてくる県です。年収の額面だけでなく支援制度まで含めて条件を比べ、地域に詳しい担当者を味方につけて、納得のいく転職につなげてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や支援制度の内容は市町村・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

