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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「愛媛で薬剤師として働きたい」「地元の愛媛に戻って転職したい」と考える人は少なくありません。愛媛は県全体で見ると薬剤師の数が全国平均並みですが、松山市とそれ以外では状況がまったく違います。この差を知らずに県の平均だけで判断すると、条件のいい求人を見落とします。
この記事では、厚生労働省の統計をもとにした愛媛の薬剤師事情、松山市への集中の実態、年収データの読み方、地域別の傾向と職場の選び方を、現役薬剤師の目線で整理します。愛媛での転職を考えるときの判断材料にしてください。
- 愛媛の薬剤師は人口10万人あたり211.7で、全国平均210.6とほぼ同水準です
- ただし松山市251.1に対し、松山市以外は186.4。1.35倍の開きがあります
- 医師密度は294.8で全国平均267.4を上回ります。医療需要は厚い県です
- 松山市以外は医師274.5に対し薬剤師186.4。東予・南予は需給の面で明確にねらい目です
愛媛の薬剤師事情を数字で見る
まず、愛媛の基本データを公的統計で確認します。厚生労働省の令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計によると、愛媛県で働く届出薬剤師は3,188人。このうち薬局と医療施設で働くのは2,701人で、人口10万人あたりに直すと211.7です。全国平均210.6とほぼ同水準で、四国4県のなかでは最も薄い数字になります。
出典:薬剤師数・医師数は厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」(従業地ベース・令和6年12月31日現在)、薬局数は厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例」(令和6年度末現在)。
注目すべきは下から2行目です。愛媛の医師密度294.8は全国平均267.4を1割以上上回っています。医師が多いということは処方箋も多く発行されるということ。それに対して薬剤師は211.7と全国平均並み、薬局密度50.0にいたっては全国平均を下回ります。
つまり愛媛は、医療需要の厚さに対して薬剤師と薬局が追いついていない県です。四国4県のなかでも、薬局密度が全国平均を下回るのは愛媛だけ(徳島56.5・香川57.9・高知61.0)。県全体としては需給が締まっている状態にあります。
四国は全体として薬剤師が全国平均より多いエリアなのですが、愛媛だけは違います。医師が多くて薬局が少ない。四国のなかで愛媛を選ぶ理由は、まさにここにあります。
松山市への集中を数字で分解する
「愛媛は松山市に薬剤師が集中している」とはよく言われますが、実際どれくらいの差なのか。統計から松山市とそれ以外を分けて計算してみました。
出典:厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計」の愛媛県・松山市(中核市の再掲)の公表値と、同統計の付表にある人口をもとに本記事で算出。松山市以外は県全体から松山市を差し引いて求めています。
松山市の薬剤師密度251.1に対し、松山市以外は186.4。1.35倍の開きがあります。松山市は全国平均210.6を2割近く上回る一方、松山市以外は全国平均を1割以上下回ります。県の平均211.7という数字は、この2つを均した結果にすぎません。
さらに重要なのが右の列です。松山市以外でも、医師密度274.5は全国平均267.4を上回っています。東予や南予は「医師も薬剤師も少ない過疎地域」ではありません。医師は全国平均以上いるのに、薬剤師だけが足りていない。これが東予・南予で条件のいい求人が出る本当の理由です。
県内に薬学部は松山大学薬学部の1校のみで、松山市にあります。県内で育った薬剤師がそのまま松山市に残る構造が、この偏りを支えていると考えられます。
松山市以外でも医師が全国平均を超えているというのは、私も計算してみて意外でした。「地方だから医療が手薄」ではなく「医療はあるのに薬剤師がいない」。この違いは職場の忙しさにも直結するので、応募前に必ず処方箋枚数を聞いてください。
年収データをどう読むか
愛媛の薬剤師年収は、調査によって示される水準に大きな幅があります。全国上位とする調査もあれば、全国平均を下回るとする調査もある。どちらかが間違っているというより、測り方が違うためです。
同じ調査でも、年が変われば数字は動く
分かりやすい例があります。同じ賃金構造基本統計調査をもとにした薬剤師の全国平均年収は、令和6年調査では約599万円でしたが、令和7年調査では約567万円へと30万円以上下がっています。全国平均がこれだけ動くのですから、都道府県別の順位はさらに大きく入れ替わります。
加えて、同じ調査でも「所定内給与」で計算するか「きまって支給する現金給与額」で計算するかによって、年収は数十万円単位で変わります。「愛媛は全国◯位」という数字を見たら、調査年と計算方法を必ず確認してください。
高い年収が労働時間の長さによる場合もある
もうひとつ注意したいのが、年収の中身です。愛媛では月間労働時間が全国平均より長いとする指摘があり、年収の高さが労働時間の長さによって押し上げられている可能性があります。とくに松山市以外は薬剤師が薄いため、1人あたりの負担が大きくなりやすい構造です。
より安定した判断材料は需給です。愛媛は医師が全国平均を上回るのに薬剤師と薬局は追いついておらず、とくに松山市以外でその差が大きい。この構造は年ごとに揺れません。順位を追うより、この構造を前提に「時間あたりの条件」で比べるほうが確実です。
「年収が高い」と「割に合う」は別の話です。愛媛で高年収の求人を見つけたら、なぜその金額なのかを聞いてみてください。人手不足で採用に苦戦しているなら納得できますが、残業前提の設計ならもう一度考える価値があります。
愛媛で働くメリットと注意点
愛媛で薬剤師として働くメリットと、知っておきたい注意点の両面を整理しました。
- 医師密度294.8が全国平均超で、医療需要そのものが厚い
- 松山市以外は薬剤師186.4と薄く、条件交渉の余地が大きい
- 薬局密度50.0は四国で唯一の全国平均割れ。県全体で需給が締まっている
- 松山市は求人数が多く、調剤薬局・病院・ドラッグストアと選択肢が広い
- 瀬戸内の温暖な気候で、豪雪への備えが不要
- 家賃などの生活費が都市部より低く、手取りの実感が上がりやすい
- 松山市251.1は全国平均を2割近く上回り、市内での上乗せは期待しにくい
- 松山市以外は医師が多いのに薬剤師が薄く、1人あたりの負担が大きい職場もある
- 高年収の求人が労働時間の長さによる場合がある
- 松山市の中心部以外は車通勤が前提のエリアが多い
- 企業や行政の薬剤師は全国平均の7割程度で、調剤・病院以外の道は狭い
補足すると、愛媛の届出薬剤師は人口10万人あたり249.8、うち薬局・医療施設で働く人が211.7。差の38.1が企業や行政などにあたり、全国平均55.2を下回ります(届出上の無職者を含みます)。愛媛で働くなら、調剤薬局・ドラッグストア・病院のいずれかが現実的な軸になります。
愛媛は気候が穏やかで暮らしやすいエリアです。雪への備えがいらないだけでも、東北や北陸と比べると生活の負担がずいぶん違います。地元に戻る転職を考えている人には、この点も判断材料に入れてほしいと思います。
地域別の傾向と職場の選び方
愛媛県内は、松山市を中心とした中予、今治市・新居浜市・四国中央市などの東予、宇和島市・八幡浜市などの南予に大きく分けられます。エリアごとの傾向を整理しました。
- 年収を狙うなら、松山市にこだわらず東予・南予まで範囲を広げる
- 求人の多さや利便性を重視するなら松山市を軸にする
- 医師が多いエリアは処方箋も多い。年収と忙しさをセットで確認する
- 管理薬剤師など、役職手当の付くポジションを狙う
- 在宅対応など、加算の取れる業務がある職場を選ぶ
- 求人数が限られるため、複数の転職支援サービスで比較する
松山市以外は医師が全国平均を上回るのに薬剤師が薄いため、1店舗あたりの処方箋が多くなりやすい構造です。条件のいい求人ほど、1日の処方箋枚数・在籍薬剤師数・残業の実績を必ず確認してください。愛媛は労働時間が長めとする指摘もあるため、年収を時給換算して比べると判断を誤りません。車の維持費を通勤手当が賄えるかもあわせて試算しておきましょう。
「暮らしやすさ重視なら松山市、年収重視なら東予」というのが愛媛の基本です。ただし東予は年収が高いぶん忙しい可能性もあるので、額面ではなく時間あたりで比べるくせをつけてください。同じ600万円でも、中身がまったく違うことがあります。
よくある質問
まとめ
- 愛媛の薬剤師は人口10万対211.7で、全国平均210.6とほぼ同水準
- 松山市251.1に対し松山市以外は186.4。1.35倍の開きがある
- 医師密度294.8は全国平均超。松山市以外でも274.5と平均を上回る
- 薬局密度50.0は四国4県で唯一、全国平均を下回る
- 年収の順位は調査年と計算方法で動く。時間あたりで比べるのが確実
- 年収重視なら東予・南予、利便性重視なら松山市
愛媛は、医療需要の厚さに対して薬剤師が追いついていない県です。とくに松山市以外は、医師が全国平均を上回るのに薬剤師は1割以上下回るという明確なずれがあります。県の平均だけを見て判断せず、松山市かそれ以外かまで踏み込んで検討してください。四国の他県と比べたい方は四国の薬剤師転職ガイド、全国と比べたい方は薬剤師の都道府県別転職ガイドもあわせてご覧ください。
- 厚生労働省「令和6年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
- 厚生労働省「令和6年度 衛生行政報告例の概況」(令和6年度末現在)
- 厚生労働省「令和7年 賃金構造基本統計調査 結果の概況」
※本記事の統計数値は上記の公的統計にもとづき、2026年9月時点で確認したものです。松山市以外の人口10万対の値は、愛媛県と松山市の公表値および同統計の付表人口をもとに本記事で算出したものです。薬局・医療施設以外で働く薬剤師の値も同様に算出しており、届出上の無職者を含みます。薬学部の設置状況は薬学教育協議会および日本薬剤師研修センターの公表情報にもとづきます。求人数・年収・働き方の傾向はエリアや職場、時期によって異なります。年収に関する民間調査の数値は調査元・調査年・計算方法によって大きく異なるため、本記事では特定の順位や金額を掲載していません。詳細は各求人や転職支援サービスにご確認ください。

