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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、佐賀県は「人口あたりの薬局数が全国1位、平均年収は全国平均を上回る、病院薬剤師の確保はとくに難しい」という3点で特徴づけられる県です。薬剤師の平均年収は622.3万円で全国17位、人口10万人あたりの薬局数は64.5施設で全国1位。一方で厚生労働省の薬剤師偏在指標を見ると、佐賀の病院薬剤師の指標は0.69と全国平均0.80を大きく下回っています。
この記事では、佐賀県の薬剤師転職の実態を、厚生労働省の統計と佐賀県薬剤師会の公表資料をもとに整理します。年収の数字だけでは見えない「どこが足りていて、どこが足りていないのか」まで踏み込むので、佐賀での転職を具体的に考えるときの土台にしてください。
- 佐賀県の薬剤師の年収・薬局数・薬剤師数の最新データと出典
- 偏在指標で見る「薬局は足りていて病院が足りない」という構図
- 県内に薬学部がないことの影響と、県薬剤師会の奨学金制度
- 佐賀市・鳥栖市・唐津市など地域別の傾向と転職成功のコツ
佐賀県の薬剤師転職データ早見表
まず、佐賀県の薬剤師をとりまく数字を全国平均と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・平均年齢・月間勤務時間はマイナビ薬剤師「全国の薬剤師年収ランキング」佐賀県ページ(厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに算出、2026年2月更新)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
佐賀の数字でおもしろいのは、薬局の多さと病院薬剤師の少なさがはっきり分かれていることです。「薬剤師が足りない県」とひとくくりにされがちですが、実際は職場によって事情がまったく違います。ここを理解して求人を見ると、選び方がかなり変わりますよ。
佐賀の平均年収が全国平均を上回る理由
佐賀県の薬剤師の平均年収は622.3万円で、全国平均の599.3万円を23.0万円上回り、都道府県別では17位に位置します。地方だから年収が低い、という一般的なイメージとは逆の結果です。
平均年齢が全国より5.9歳高い
同じ調査で佐賀県の薬剤師の平均年齢は46.8歳、全国は40.9歳です。薬剤師の給与は勤続年数や役職で上がっていくため、平均年齢が高い県は平均年収も高く出やすくなります。佐賀の622.3万円という数字には、この年齢構成の影響が含まれていると考えるのが自然です。
言い換えると、若手が県外に流れて残りにくく、ベテランが現場を支えている県ということでもあります。20代・30代で佐賀に入る場合、いきなり622万円が提示されるわけではない点は押さえておきましょう。
月間勤務時間が全国より9時間長い
同じ調査での月間勤務時間は佐賀176時間、全国167時間で、佐賀のほうが9時間長くなっています。年収の差の一部は労働時間の差でもあるということです。求人票を見るときは、年収の額面だけでなく、月の所定労働時間・残業の実態・年間休日をセットで確認してください。
調査によって数字に幅がある
都道府県別の薬剤師年収は、集計のもとになるデータや調査年で結果が大きく動きます。同じ賃金構造基本統計調査でも、1年前のデータでは佐賀は612.7万円・全国9位という集計になっていました。求人票をもとに集計する媒体では500万円台という結果も出ています。
複数の調査に共通しているのは「佐賀は全国平均を上回る」という傾向で、これは安定して確認できます。一方、順位や絶対額は調査ごとに動くので、目安として受け止め、最終的には実際の求人で確認するのが確実です。
「佐賀は年収が高い」で終わらせず、平均年齢と勤務時間まで見るのが大事だと思っています。高いのは事実ですが、その内訳を知っていれば面接で条件を確認するときの目の付けどころが変わります。時間あたりで見たらどうか、という視点を持っておくと失敗しにくいですよ。
偏在指標が示す「薬局は足りていて、病院が足りない」
佐賀の転職市場を読むうえで、いちばん重要なのがこのデータです。厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
薬局は「不足県」ではない
佐賀の薬局薬剤師の偏在指標は1.10で、全国の1.08をわずかに上回ります。つまり佐賀の薬局は、全国と比べて薬剤師が特別に不足しているわけではありません。「地方だから薬局薬剤師が足りず、誰でも好条件で入れる」という理解は、佐賀に関しては正確ではないということです。
さらに将来時点の推計では、佐賀の薬局薬剤師の偏在指標は1.28まで上がる見込みが示されています。薬局については、これから供給がより余裕のある方向に進むと国は見ているわけです。
病院薬剤師は全国でも低い水準
対照的に、佐賀の病院薬剤師の偏在指標は0.69で、全国平均の0.80を大きく下回り、47都道府県のなかでも低いグループに入ります。将来時点の推計でも0.75にとどまり、病院薬剤師の確保が長期的な課題であることが読み取れます。
病院薬剤師として佐賀で働きたい人にとっては、これはむしろ追い風です。需要が構造的に強いエリアなので、経験があれば歓迎されやすく、病棟業務やチーム医療に関わるポジションも得やすい環境といえます。
薬剤師の実数は2年で減っている
令和6年の統計では、佐賀県で薬局・医療施設に従事する薬剤師は1,697人(届出薬剤師の総数は1,983人)でした。前回の令和4年は1,727人だったので、2年で約30人、率にして1.7%ほど減っています。同じ2年間で全国は253,198人から260,727人へと3.0%増えており、佐賀は全国の増加傾向から取り残された形です。
人口10万人あたりで見れば215.4人と全国平均の210.6人を上回っていますが、実数が減っているという事実は、佐賀の人材確保の難しさをよく表しています。
偏在指標を見ると、佐賀は「薬局志望か病院志望か」で難易度がまったく変わる県だとわかります。病院を目指すなら佐賀はかなり狙い目です。薬局を目指すなら、数の多さではなく中身で選ぶ意識を持ったほうがいいと思います。
薬局数が全国1位でも1薬局あたりは手薄になる
佐賀県の人口10万人あたりの薬局数は64.5施設で、全国平均50.5施設を大きく上回る全国1位です。2位は高知県の60.4施設、3位は山形県の60.0施設で、最も少ない沖縄県は39.4施設。九州のなかでも佐賀は突出しており、福岡県58.1施設、長崎県57.0施設を上回ります。
背景には医薬分業の早さがあります。日本薬剤師会の集計では、2022年度の佐賀県の処方箋受取率(医薬分業率)は83.0%で、全国の76.6%を上回り、80%を超えた13道県のひとつでした。古くから院外処方が定着し、それを受ける薬局が県内にきめ細かく整備されてきたわけです。
1薬局あたりの薬剤師数を試算すると
薬局数と薬剤師数を人口10万人あたりで割り算すると、薬局1施設に対して何人の薬剤師がいるかの目安が出せます。佐賀は215.4人÷64.5施設で約3.3人、全国は210.6人÷50.5施設で約4.2人。佐賀は全国と比べて、1施設あたりに配置できる薬剤師が薄くなる計算です。
これは当サイトが公的統計から算出した目安で、薬剤師数には病院勤務者も含まれるため実際の薬局配置人数そのものではありません。ただ、都道府県どうしを同じ条件で比べる指標としては傾向をよく表しています。佐賀県薬剤師会自身も奨学金制度の説明資料のなかで、県内は1人薬剤師の薬局が多いと明記しています。
薬局が多いということは、それだけ小規模な薬局が多いということでもあります。1人薬剤師は自分の裁量で動ける良さがある一方、休みが取りにくかったり、判断を相談できる相手がいなかったりします。佐賀の求人を見るときは、その店舗に薬剤師が何人いるかを必ず聞いてください。
県内に薬学部がなく、県薬剤師会が奨学金で補っている
若手の供給源が県内にない
佐賀県内には薬学部・薬科大学がひとつもありません。薬学部のある県では地元の大学から毎年新卒薬剤師が供給されますが、佐賀にはその流れがなく、県内の薬局や病院は他県の薬学部を卒業した薬剤師を採用する必要があります。
しかも隣は薬学部が複数ある福岡県で、県内の薬学生が進学先の都市部にそのまま就職してしまいやすい立地でもあります。薬剤師の実数が2年で減っている背景には、この供給構造があると考えられます。
佐賀県薬剤師会の薬剤師奨学金制度
この状況に対して佐賀県薬剤師会は、佐賀県の補助金を受けて平成27年度から独自の奨学金制度を運営しています。現在は第3期にあたり、公表資料によると内容は次のとおりです。
出典:一般社団法人佐賀県薬剤師会「第3期 佐賀県薬剤師会薬剤師奨学金制度の概要」
薬学生と指定薬局のマッチングセミナーを県薬剤師会が主催し、学生・薬局・県薬剤師会の三者で契約を結ぶ仕組みです。すでに薬剤師免許を持っている転職者は対象外ですが、「県として地域連携薬局や在宅対応を担う人材を計画的に確保しようとしている」という県内の空気は、この制度からよく伝わってきます。
県薬剤師会が自前で奨学金まで作って人を集めているというのは、なかなかない話です。裏を返せば、それだけ本気で人手を求めているということ。中途採用でも、在宅に前向きな人は歓迎されやすい土壌があると感じます。
佐賀県の地域別の傾向
佐賀県内でも、地域によって求人の状況は変わります。厚生労働省の統計をもとにした従業地別の薬剤師数は次のとおりです。
出典:厚生労働省「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」の従業地による市区町村別薬剤師数(総数)
この3市の合計は1,289人で、当時の県内総数2,013人の約6割にあたります。裏を返せば、残りの4割が伊万里市・武雄市・鹿島市・嬉野市・小城市・神埼市・多久市と、町部に分散しているということです。人数の少ないエリアほど、1人薬剤師や少人数体制になりやすい傾向があります。
佐賀市(県庁所在地)
県内薬剤師の約4割が集まる最大の市です。調剤薬局・病院・ドラッグストアと職場の選択肢が幅広く、求人を比較しながら選びたい人に向いています。佐賀大学医学部附属病院をはじめ規模の大きい病院もあるため、病院薬剤師を目指す場合の中心地でもあります。
鳥栖市(福岡都市圏に隣接)
鳥栖市は福岡県久留米市と隣接し、九州自動車道と長崎自動車道が交わる交通の要衝です。新鳥栖駅からは九州新幹線で博多駅まで12〜13分程度と、県内でもっとも福岡へアクセスしやすいエリアといえます。
その分、福岡都市圏で働く人の居住地としても選ばれやすく、薬剤師が集まりやすいエリアです。「佐賀に住んで福岡で働く」「福岡寄りに住んで佐賀で働く」といった選び方ができるのが、鳥栖の大きな強みです。
唐津市・伊万里市・武雄市など
唐津市(県北)、伊万里市・武雄市・嬉野市(県西)などは、県庁所在地から離れるほど薬剤師数が少なくなり、確保の難しさが強まる傾向があります。人材を集めるために条件を手厚くする求人も出やすい一方、少人数体制で1人あたりの業務量が多くなりやすいエリアでもあります。
この地域を検討する場合は、提示条件だけで判断せず、1日の処方箋枚数・在籍薬剤師数・在宅訪問の件数まで具体的に確認しておくと安心です。
佐賀は東西に細長く、車で県内を横断してもそれほど時間がかかりません。だからこそ「住む場所」と「働く場所」を分けて考えやすい県です。福岡へのアクセスを取るか、地元密着を取るか。ここを先に決めると求人選びが一気に楽になりますよ。
佐賀で働くメリットと注意点
- 人口あたりの薬局数が全国1位で、通える範囲に職場の選択肢が多い
- 平均年収は622.3万円と、全国平均の599.3万円を上回る
- 病院薬剤師の偏在指標が0.69と低く、病院志望なら需要が構造的に強い
- 医薬分業が早くから進み、在宅や地域連携に取り組む薬局が多い
- 福岡県に隣接し、鳥栖からは博多まで新幹線で12〜13分程度
- 県薬剤師会も認めるとおり1人薬剤師の薬局が多く、体制の確認が必須
- 平均年収が高い背景に平均年齢の高さ(46.8歳)と勤務時間の長さがある
- 薬局薬剤師の偏在指標は全国並みで、薬局は「売り手一辺倒」ではない
- 車社会のため、マイカー通勤が前提になる職場が多い
- 古くからの薬局も多く、理念や運営方針が職場ごとに大きく異なる
佐賀で転職を成功させる4つのポイント
① 薬局志望か病院志望かで戦略を変える
偏在指標が示すとおり、佐賀は薬局と病院で需給がまったく違います。病院志望なら、需要が強いぶん経験を評価してもらいやすく、条件交渉の余地もあります。薬局志望なら、数の多さに頼らず、店舗の規模や体制で選別する姿勢が必要です。同じ「佐賀の求人」でも、この2つはまったく別の市場だと考えてください。
② 在籍薬剤師数と処方箋枚数を必ず確認する
佐賀は1薬局あたりの薬剤師数が薄くなりやすい県です。求人票の年収が良く見えても、実態が1人薬剤師で、有給も取りにくい体制ということはあり得ます。応募前に、その店舗の在籍薬剤師数、1日の平均処方箋枚数、在宅訪問の件数、休みを取るときの応援体制の4点は具体的に確認しておきましょう。
③ 福岡との通勤も視野に入れて考える
佐賀は福岡に近いため、勤務地を佐賀県内に限定せず、福岡都市圏まで含めて考えると選択肢が大きく広がります。特に鳥栖・基山・みやきなど東部に住めば、佐賀と福岡の両方の求人が現実的な通勤圏に入ります。住みやすさを取るのか、年収を取るのか、優先順位を1〜2つに絞ると求人を選びやすくなります。
④ 薬局の理念・運営方針までチェックする
佐賀は古くからの調剤薬局が多く、職場によって理念や運営方針が大きく異なります。在宅に力を入れている薬局もあれば、門前の処方に専念している薬局もあります。年収だけで選ぶと入ってから合わないと感じやすいので、どんな薬剤師像を求めている職場なのかまで確認しておくと安心です。こうした内部情報は求人票に載らないため、地域に強い転職エージェントに聞くのが近道です。
佐賀のように選択肢が多い県では、条件を全部満たそうとすると逆に決まりません。「1人薬剤師は避ける」「通勤は30分以内」のように、ゆずれない線を2つだけ決めて、あとは面談で確かめる。この進め方がいちばん失敗しにくいと思います。
よくある質問
まとめ
佐賀県は「薬局が日本一多く、平均年収も全国平均を上回る」一方で、「病院薬剤師はとくに足りず、薬局は1施設あたりが手薄になりやすい」県です。ポイントを整理します。
- 平均年収は622.3万円で全国17位、全国平均599.3万円を上回る
- 人口10万人あたり薬局数64.5施設で全国1位、医薬分業の先進県
- 偏在指標は薬局1.10(全国1.08)、病院0.69(全国0.80)で病院が手薄
- 応募前に在籍薬剤師数・処方箋枚数・応援体制を確認するのが失敗しないコツ
佐賀での転職は、「薬局数全国1位なのに薬学部ゼロ」という構図と、「薬局と病院で需給が真逆」という実態の両方を踏まえて選ぶことが大切です。働く場所の選択肢が豊富で福岡にも近い、バランスの良い県なので、地元志向の人もUターン希望の人も、ぜひ前向きに検討してみてください。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

