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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
在宅医療に関わる薬局を中心に、薬剤師にも「オンコール」のある職場が増えています。「オンコールって大変そう」「呼び出しはどのくらいあるの」と、転職先を考えるうえで気になる方は多いはずです。
結論から言うと、オンコールは当直や夜勤とは違い、自宅で待機できる勤務形態です。呼び出しの頻度は職場によりますが、複数人でローテーションを組むのが一般的で、想像されるほど頻繁ではないケースも少なくありません。
この記事では、当直・夜勤との違い、オンコールのある職場、呼び出しの実態、手当と労働時間の扱い、メリットとデメリット、避けたい人の選択肢、求人の見極め方までを、現役薬剤師の目線で整理します。待機時間が労働時間にあたるかどうかは厚生労働省のガイドラインに判断基準があるので、そこも根拠を示しながら解説します。
✅ この記事でわかること
- 薬剤師のオンコールとは何か。当直・夜勤との違い
- オンコールのある職場と、呼び出しの実態
- 待機時間が労働時間にあたる判断基準(公的ガイドライン)
- 手当の考え方と、メリット・デメリット
- 避けたい人の選択肢と、求人の見極め方
薬剤師のオンコールとは|当直・夜勤との違い
オンコールとは、勤務時間外に自宅などで待機し、患者さんや職場から緊急の連絡があったときに、電話で対応したり薬局に出向いて調剤・配達をしたりする勤務形態です。「待機」とも呼ばれます。携帯電話を持っておき、連絡がなければ普段どおりの生活を送れるのが、当直や夜勤との大きな違いです。
3つの違いを一言でまとめると、場所と業務の有無です。夜勤は夜に働く、当直は職場で待つ、オンコールは自宅で待つ。この順に拘束は軽くなりますが、あとで触れるとおり、オンコールにも自由に過ごせない部分は残ります。
病院にいたころは当直がありました。職場で寝るので、鳴らなくても身体は休まりません。その点オンコールは自宅にいられるぶん、体力的には確実に楽です。ただし「休みの日に酒が飲めない」のは地味に効きます。負担の質が違う、と捉えておくといいと思います。
オンコールがある薬剤師の職場
薬剤師でオンコールがあるのは、主に在宅医療に対応している薬局です。在宅患者さんの急な発熱や痛みに対して、夜間や休日でも臨時の処方に応じる必要があるため、待機の体制をとっています。ほかにも、24時間対応をうたう薬局や、地域で夜間・休日の調剤を担う薬局でオンコールが発生します。
病院でも、無菌調製や緊急の注射薬対応のために、当直ではなくオンコールで薬剤師を確保している施設があります。特に薬剤部の人数が限られる中小規模の病院では、当直を置かずオンコールで回すケースが見られます。
在宅医療の広がりを受けて、こうした職場は今後も増えていくと見られます。令和8年度(2026年度)の調剤報酬改定では、休日・夜間を含む開局時間外の対応体制について、患者への情報提供が要件として整理されました。連絡先の電話番号や緊急時の注意事項を、原則として初回訪問時に文書で交付する形です。あわせて、近隣の在宅協力薬局と連携して時間外の体制を整える場合の取扱いも明確化されており、その場合は協力薬局の名称や連絡先も交付文書に含めることになります。オンコールを複数の薬局や薬剤師で分担する動きは、こうした制度の後押しもあって広がりつつあります。
一方、製薬企業などの企業内の職場、日勤のみの調剤薬局、24時間営業でないドラッグストアでは、基本的にオンコールはありません。
オンコールの実態|呼び出しの頻度と過ごし方
「オンコールは頻繁に呼び出される」というイメージを持たれがちですが、実態は少し違います。多くの薬局では、1人の薬剤師がずっと担当するのではなく、何人かでローテーションを組んで対応します。さらに、あらかじめ予想される症状に備えて薬を準備しておくなどの工夫により、実際に夜間に呼び出されることはそれほど多くない職場もあります。
とはいえ、待機中は「いつ電話が鳴るか分からない」状態のため、飲酒や遠出は避ける必要があります。呼び出しがなくても行動に一定の制約がかかる点が、オンコールの本当の負担です。逆にいえば、連絡が来なければ自宅で比較的自由に過ごせるのが、当直や夜勤にはない特徴といえます。
負担を左右する3つの要素
- 担当人数:3人で回すのと6人で回すのとでは、月の当番回数が倍違う
- 駆けつけまでの時間:「30分以内」といった条件があると、行動範囲が実質的に固定される
- 担当患者の状態:末期がんや麻薬を使う患者さんが多いほど、緊急対応の可能性は上がる
この3つは求人票にはまず書かれていません。面接で聞くか、転職支援会社に確認してもらう項目だと考えてください。
「在宅は大変そう」と敬遠される一番の理由がオンコールですが、ふたを開けてみると呼び出しは思ったより少ない職場が多いです。大事なのは何人で回しているか。担当が薄い薬局ほど負担が偏るので、体制を必ず確認してください。
待機時間は労働時間になるのか|公的な判断基準
オンコールで最ももめやすいのが、待機している時間が労働時間にあたるかどうかです。ここは感覚論ではなく、厚生労働省が示した基準があります。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義したうえで、労働時間として扱わなければならない時間の一つに、次を挙げています。
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる手待時間)
出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
厚生労働省の該当ページを開く
つまり判断の分かれ目は、労働から離れることが保障されているかどうかです。携帯を持っているだけで、外出も飲食も基本的に自由という運用なら、待機時間そのものは労働時間に含まれないと整理されることが多くなります。反対に「何分以内に薬局へ来ること」「必ずすぐ電話に出ること」といった強い拘束があれば、待機している時間も労働時間として扱われる可能性があります。
実際に呼び出されて対応した時間は、いずれの場合も労働時間です。深夜帯であれば深夜割増の対象にもなります。ここは求人票の「オンコール手当あり」という一行だけでは判断できないため、就業規則や労働条件通知書で確認しておきたい部分です。
手当は「待機」と「出動」の2階建てで見る
オンコールの手当は、待機しているだけの場合と、実際に呼び出されて対応した場合とで分けて定められているのが一般的です。待機に対する手当に加えて、出動した際には出動手当や時間外の割増賃金が支払われるケースが多く見られます。
確認したいのは、この2つが両方あるかどうかです。待機手当が一律で低く設定され、呼び出されても追加がない設計だと、実際に鳴ったときに割に合いません。金額そのものは職場や地域によって幅があるため、具体的な額は募集要項と就業規則で確かめてください。
「何分以内に来られること」という条件があるかどうかは、必ず聞いてください。これがあると待機時間の性格が変わりますし、生活の自由度もまったく違ってきます。聞きにくい質問ではありますが、入職後に毎月効いてくる条件です。
オンコールのメリット・デメリット
オンコールには、良い面と負担になる面の両方があります。転職先を選ぶ前に、両方を理解しておきましょう。
- 自宅で待機でき、当直や夜勤より体力的な負担が軽い
- 待機や出動に対して手当がつき、収入の上乗せになる
- 呼び出しがなければ自宅で比較的自由に過ごせる
- 在宅医療に深く関わり、緊急対応の経験を積める
- 待機中は飲酒や遠出ができず、行動が制限される
- いつ電話が鳴るか分からない精神的なプレッシャーがある
- 呼び出されれば夜間でも対応が必要で、生活リズムが乱れることも
- 担当人数が少ない職場では、当番が特定の人に偏りやすい
オンコールを避けたい人の転職先
「オンコールのない職場で働きたい」という人も少なくありません。その場合は、次のような転職先が選択肢になります。
- 在宅対応をしていない、日勤のみの調剤薬局
- 夜勤・当直のない製薬企業などの企業内の職場
- 24時間営業でないドラッグストア
- 在宅対応をしていない外来中心の医療機関
求人票に「在宅あり」と書かれていても、オンコールの体制は職場によって異なります。在宅訪問はするが夜間対応は協力薬局に任せている、というケースもあるため、有無と頻度は事前に確認しておきましょう。
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オンコールのある求人を見極めるポイント
オンコールのある職場に転職する場合は、負担が偏らない体制かどうかを見極めることが大切です。次の点を事前に確認しましょう。
- 何人の薬剤師でローテーションを組んでいるか
- 1人あたり月に何回、当番が回ってくるか
- 実際の呼び出しの頻度はどのくらいか
- 待機手当と出動手当がそれぞれあるか、金額はいくらか
- 駆けつけまでの時間の指定など、待機中の行動制限があるか
- 呼び出し後、翌日の勤務はどう調整されるか
- 在宅協力薬局と分担しているか、自薬局だけで抱えているか
これらは求人票だけでは分かりにくいため、薬剤師に強い転職支援会社に確認してもらうのが確実です。「在宅に関わりたいが、オンコールの負担は抑えたい」といった希望も、具体的に伝えておきましょう。
よくある質問
まとめ
薬剤師のオンコールについて、ポイントを整理します。
- オンコールは自宅で待機し、緊急時に電話対応や出動をする勤務形態
- 主に在宅医療に対応する薬局にあり、中小規模の病院で採用されることもある
- 待機時間が労働時間にあたるかは、労働から離れることが保障されているかで分かれる
- 手当は待機と出動の2階建て。両方あるかを必ず確認する
- 負担を左右するのは担当人数・駆けつけ時間・担当患者の状態の3つ
- 避けたい人は、在宅対応のない日勤のみの職場を選ぶ
オンコールは、体制しだいで負担が大きく変わる働き方です。在宅に関わりたい人も、避けたい人も、求人ごとの実態を見極めて、自分に合う職場を選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。オンコールの体制・頻度・手当・労働条件は、薬局や地域・時期によって異なります。調剤報酬の算定要件の詳細は地方厚生局に、賃金や労働時間に関する個別のご相談は労働基準監督署や専門家にお問い合わせください。

