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くらげ|現役薬剤師。調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信。薬剤師目線でエージェントを徹底調査しています。
「開局前の準備や勉強会の時間、残業代が出ていない気がする」「みなし残業込みと言われているけど、それで全部カバーされているの?」——薬剤師の現場では、こうした残業代の疑問を抱く人が少なくありません。
結論からいうと、薬剤師も労働者であり、要件を満たす残業には残業代が発生します。まずは仕組みと計算方法を知り、自分の残業代が適正かを確認することが第一歩です。
この記事では、残業代の計算方法(自分で概算する手順)、薬剤師に多い未払いになりやすい残業、みなし残業との関係、そして未払いがあったときの進め方まで、現役薬剤師の視点で整理します。
この記事でわかること
- 薬剤師も残業代を請求できるという大前提
- 残業代の計算方法(自分で概算する手順)
- 薬剤師に多い「未払いになりやすい残業」
- みなし残業(固定残業代)と未払いの関係
- 未払い残業代があったときの進め方
まず大前提:薬剤師も残業代を請求できる
薬剤師は専門職ですが、雇用されて働く以上は労働基準法上の「労働者」です。したがって、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いた分には、原則として割増賃金(残業代)が発生します。
よく誤解されるのが管理薬剤師の扱いです。管理薬剤師は、必ずしも労働基準法上の「管理監督者」にあたるわけではありません。役職名が「管理」とついていても、経営に関わる権限や労働時間の裁量、相応の待遇がなければ、いわゆる「名ばかり管理職」として残業代の対象になり得ます。
「管理薬剤師だから残業代は出ない」と言われて諦めている人を時々見かけます。でも、管理薬剤師であることと、残業代の出ない管理監督者であることはイコールではありません。まずはここを正しく知っておきましょう。
残業代の計算方法【自分で概算してみる】
残業代は、次の式で計算します。
残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間
ステップ1:1時間あたりの基礎賃金を出す
基礎賃金は、月給から一部の手当を除いたものです。家族手当・通勤手当・住宅手当・別居手当・子女教育手当などは、基礎賃金から除外できるとされています(賞与など臨時の賃金も除外)。残った金額を1か月の平均所定労働時間で割ると、1時間あたりの基礎賃金が求められます。
計算例:除外手当を引いた基礎賃金が24万円、1か月の平均所定労働時間が160時間の場合
240,000円 ÷ 160時間 = 1時間あたり1,500円
ステップ2:割増率を当てはめる
残業の種類によって、法律で定められた割増率(下限)が異なります。
| 残業の種類 | 割増率(下限) |
|---|---|
| 時間外労働(1日8h・週40h超) | 25%以上(1.25倍) |
| 時間外労働が月60時間を超える部分 | 50%以上(1.5倍) |
| 深夜労働(22時〜翌5時) | +25%(時間外と重なれば1.5倍) |
| 法定休日労働 | 35%以上(1.35倍) |
なお、月60時間を超える時間外労働の割増率50%は、2023年4月から中小企業にも適用されています。中小規模の薬局でも対象です。
ステップ3:残業時間をかける
計算例:基礎時給1,500円・通常の時間外残業が月20時間の場合
1,500円 × 1.25 × 20時間 = 37,500円(1か月分の概算)
これはあくまで概算で、実際は手当の扱いや所定労働時間の算出方法で変わります。給与明細の「時間外手当」と、自分の概算を比べてみると、過不足の目安がわかります。
まずは大まかでいいので、自分の基礎時給と残業時間で概算してみてください。「思っていたより支払われていないかも」と気づくきっかけになります。正確な金額は、後述のとおり専門家に確認するのが確実です。
薬剤師に多い「未払いになりやすい残業」
薬剤師の職場では、本来は労働時間にあたるのに残業代が支払われていない、いわゆるサービス残業が起きやすい場面があります。代表的なものを挙げます。
- 開局前の準備・閉局後の片付け:開局前の清掃や準備、閉局後のレジ締め・清掃なども、指揮命令下にあれば労働時間です。
- 勉強会・研修:参加が事実上強制されている勉強会や研修は労働時間にあたり得ます。「自己研鑽だから」と一律に除外されるとは限りません。
- 在庫管理・発注・薬歴記入:定時後に行う在庫確認や薬歴の記入なども、業務である以上は労働時間です。
- 持ち帰り残業:自宅での業務も、会社の指示や黙認のもとで行われていれば対象になることがあります。
経営者の「言い分」に注意
「準備や片付けは労働時間ではない」「ダラダラ残業だ」「無断・自発的な残業だから払わない」といった理由で残業代が支払われないことがあります。しかし、業務を指揮命令下で行っていれば労働時間と評価されるのが原則で、こうした言い分が常に通るわけではありません。
「みなし残業(固定残業代)」と未払いの関係
「給与にみなし残業代◯時間分を含む」という形の職場も多くあります。ここで押さえたいのは、みなし残業の時間を超えて働いた分には、別途、割増賃金を支払う義務があるという点です。
たとえば「固定残業代として月20時間分を含む」とされていても、実際に月30時間残業していれば、超過した10時間分は追加で支払われなければなりません。「みなし込みだから何時間働いても同じ」というのは誤りです。
また、契約書に固定残業代の金額や時間数が明確に区分されていない場合は、そもそも固定残業代として認められず、残業代が発生していると判断されることもあります。自分の雇用契約書や給与明細で、みなし残業の内訳(何時間分・いくら)が明示されているかを確認しておきましょう。
入職時に「みなし残業込み」とだけ言われ、内訳を知らないまま働いている人は多いです。まずは契約書を見直して、何時間分が含まれているのかを確認するところから始めてみてください。
未払い残業代があったときの進め方
未払いの可能性に気づいたら、次のような流れで進めるのが一般的です。
① 証拠を集める
残業の事実を示す証拠が重要です。タイムカード、シフト表、給与明細、業務日報、勤怠記録、入退館記録、業務上のメールなどが該当します。とくにタイムカードなどの客観的な記録は、労働時間の有力な証拠になります。日々の出退勤をメモしておくだけでも役立ちます。
② 時効に注意する
残業代を請求できる権利には時効があります。賃金請求権の時効は、当面の間「3年」とされています(2020年4月以降に発生した賃金が対象)。時間が経つほど請求できる範囲が狭まるため、気づいたら早めに動くことが大切です。
③ 相談先に相談する
まずは会社に確認・請求する方法のほか、労働基準監督署への相談、弁護士への相談といった選択肢があります。金額が大きい、会社が応じないといった場合は、労働審判や訴訟に発展することもあります。個別の事情によって最適な進め方は変わるため、専門家に相談するのが確実です。
大切な前提
本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案について結論を示すものではありません。実際の請求可否や金額は、契約内容や勤務実態によって異なります。具体的なケースは、労働基準監督署や弁護士などの専門家にご相談ください。
なお、残業代の未払いが常態化しているような職場は、労働環境そのものに課題があることも少なくありません。状況が改善しない場合は、働く環境を変えることも選択肢の一つとして視野に入るでしょう。
よくある質問
まとめ
- 薬剤師も労働者であり、要件を満たす残業には残業代が発生する
- 残業代=基礎時給 × 割増率 × 残業時間。割増率は時間外25%・休日35%・深夜+25%
- 月60時間超の時間外50%は、2023年4月から中小企業にも適用
- 開局前後の準備・勉強会・在庫管理などは未払いになりやすい
- みなし残業を超えた分は別途支払い義務がある
- 賃金請求権の時効は当面3年。証拠を集め、早めに専門家へ相談を
残業代は、仕組みと計算方法を知ることで「適正に支払われているか」を自分でチェックできます。薬剤師だからと諦める必要はありません。まずは自分の残業を概算し、気になる点があれば、労働基準監督署や弁護士などの専門家に相談してみてください。
※本記事の情報は2026年6月時点のものです。法令・割増率等は厚生労働省の公表資料を参考にしています。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に関する法的助言ではありません。具体的なご相談は労働基準監督署や弁護士などの専門家にお問い合わせください。

