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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「早番・遅番のシフト勤務ってきつい?」「転職先がシフト制かどうか、どこを見れば分かる?」。薬剤師の勤務時間は職場によって大きく違い、シフト制かどうかは毎日の暮らしやすさを左右します。
結論から言うと、早番・遅番シフトは、薬局の開店時間中ずっと薬剤師を置くという法令上のルールを、複数の薬剤師で分担して守るための仕組みです。きつさの正体は「シフトそのもの」よりも、早番と遅番の混ざり方、夜の一人薬剤師、手当の有無といった職場ごとの運用の差にあります。
この記事では、シフトが組まれる法的な背景から、シフト制が多い職場、きついと言われる理由、深夜割増などの手当のルール、転職前の確認ポイントまで、管理薬剤師としてシフトを組む側も経験した立場から整理しました。
- 早番・遅番シフトの時間割と、法令上シフトが必要になる理由
- シフト制が多い職場・少ない職場の違い
- シフト勤務がきついと言われる理由と、深夜割増などの手当のルール
- シフト制の職場を選ぶときに、求人票と面接で確認すべきこと
薬剤師の早番・遅番シフトとは
早番・遅番シフトとは、店舗の営業時間に合わせて、薬剤師が勤務時間をずらして交代で働く勤務形態です。開店から閉店まで途切れずに薬剤師がいる状態をつくるために組まれます。
典型的な時間割の例
たとえば10時開店・22時閉店の店舗なら、次のような組み方が一例です。実際の時間は店舗ごとに異なります。
いずれも拘束9時間・休憩1時間で、実働8時間の例です。中番を置かず早番・遅番の2区分で回す店舗も多く、土日祝の勤務がシフトに含まれるため、休日が平日になりやすいのも特徴です。
シフトが必要になる法的な理由
薬局は、医薬品医療機器等法にもとづく薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令(体制省令)により、開店時間中は常時、調剤に従事する薬剤師を置くことが求められています。営業時間が12時間ある店舗なら、1人の薬剤師では法定労働時間の中で回せないため、勤務時間をずらした交代制が必要になるわけです。
2017年9月26日の省令改正では、緊急の在宅対応など「やむを得ず、かつ一時的に」薬剤師が店を離れる時間(薬剤師不在時間)について、事前に届け出れば閉局せずに営業を続けられる仕組みができました(厚生労働省の施行通知)。1日の不在時間は、4時間または開店時間の2分の1が上限とされています。
ただし、自治体の届出の手引きでは、休憩などの私的な外出で薬剤師が抜ける場合は、この届け出の対象にならず、従来どおり閉局が必要と案内されています。つまり夜の時間帯を薬剤師1人で担当する店舗では、その薬剤師が休憩で店を離れにくくなります。これが後で触れる「きつさ」の一因です。
夜や休日も開ける薬局がある背景
調剤報酬には、薬局が表示する開局時間内に、平日19時以降・土曜13時以降・休日に処方箋を受け付けた場合の「夜間・休日等加算」(処方箋受付1回につき40点、厚生労働省の調剤報酬点数表)があります。夜間や休日に医療機関を受診した患者の受け皿として開局時間を延ばす薬局では、その分だけ遅番や土日のシフトが生まれます。
管理薬剤師としてシフトを組んでいたころ、いちばん頭を悩ませたのは「開店から閉店まで、薬剤師が必ず誰かいる状態」を全員の希望休と両立させることでした。シフトは店側の都合というより、法令上の体制を守るための必然です。だからこそ、組み方の工夫で働きやすさに大きな差が出ます。
シフト制が多い職場・少ない職場
早番・遅番シフトがあるかどうかは、営業時間の長さと、近隣の医療機関の診療時間に合わせているかどうかで大きく分かれます。
同じ「調剤薬局」でも、店舗ごとの営業時間でシフトの有無は変わります。求人票の「勤務時間」欄に時間帯が複数並んでいたり、「シフト制」「週40時間」とだけ書かれていたりする場合は、シフト勤務を前提にしていると考えて確認しましょう。
夜間の電話当番は薬剤師のオンコール、病院の夜間勤務は夜勤・当直手当の相場で詳しく解説しています。
「調剤薬局だから日勤のはず」と思い込むのは危険です。同じ会社でも、住宅街の門前店は18時閉局、駅ビルの店舗は21時閉局ということはよくあります。配属先の店舗が決まっているか、異動でシフト制の店に回る可能性があるかまで確認しておくと安心です。
早番・遅番シフトがきついと言われる4つの理由
シフト勤務の負担は、勤務時間の長さよりも「組み方」から生まれることがほとんどです。代表的な理由を4つに分けて整理します。
① 早番と遅番が混ざり、生活リズムが崩れる
週の中で早番と遅番が入れ替わると、起床時間や食事の時間が日ごとにずれます。とくに22時まで働いた翌日に9時台の早番が入る組み方は、睡眠時間を確保しにくく、疲れが抜けにくい原因になります。
終業から次の始業まで一定の休息時間を空ける「勤務間インターバル」は、労働時間等設定改善法で事業主の努力義務とされています(2019年4月施行)。法律で禁止されているわけではないため、実際に何時間空くかは職場の運用次第です。
② 休日がバラバラで、家族や友人と合わせにくい
土日祝も営業する店舗では、休日は平日の不定休になりがちです。労働基準法35条が求める休日は「毎週少なくとも1回、または4週間で4日以上」なので、連休が取りにくい組み方も法律上は成り立ちます。家族と休みを合わせたい人は、年間休日数と連休の取り方を必ず確認しましょう。
③ 夜の一人薬剤師で、休憩も判断も1人になる
夜の時間帯は来局者が減るため、薬剤師1人で回す店舗は珍しくありません。先ほど触れたとおり、休憩で薬剤師が店を離れることは薬剤師不在時間の対象にならないため、1人体制の時間帯は休憩を取りにくくなります。疑義照会や監査も1人で完結させる必要があり、精神的な負担を感じる人は少なくありません。
④ 閉店後の作業や、若手への偏りがある
遅番は閉店時刻ちょうどに帰れるとは限らず、レジ締めや翌日の準備で退勤が遅れることがあります。また、職場によっては新人や独身者に遅番・土日が集まりやすいこともあります。シフトの割り振りルールが明文化されているかは、働きやすさを大きく左右します。
シフトを組む側から見ると、「遅番の翌日は早番を入れない」「一人薬剤師の時間帯には中番を重ねて休憩を回す」といった配慮は、人員に少し余裕があればできることです。面接で「遅番のあとの勤務はどう組んでいますか」と聞いて、具体的な答えが返ってくる職場は、運用がしっかりしていることが多いと感じます。
シフト勤務の手当と労働時間のルール
シフト勤務では「手当がつくから収入が増える」と言われますが、法律で決まっている部分と、会社ごとに決めている部分を分けて理解しておくことが大切です。
法律で決まっていること
遅番で22時閉店の店舗の場合、閉店後の締め作業で22時を過ぎれば、22時以降の勤務には25%以上の割増賃金が発生します(労働基準法)。締め作業を「タイムカードを押してから」行う慣習がないかは、見学時に確認したいポイントです。
また、シフト制の職場では「1か月単位の変形労働時間制」(労働基準法32条の2)を採用し、月の平均で週40時間以内に収める形をとる場合があります。この制度では、あらかじめシフトで決めた日に8時間を超えて働いても、その日の時間外労働にはなりません。求人票に「変形労働時間制」とあれば、残業代の計算方法を確認しておきましょう。計算の考え方は薬剤師の残業代の計算方法で解説しています。
会社ごとに決めていること
「シフト手当」「遅番手当」「休日出勤手当」などは法律で決まったものではなく、会社の賃金規程で定めるものです。支給の有無も金額も職場によってまったく違います。年収を比べるときは、手当込みの想定年収だけでなく、手当が「毎月固定」か「勤務した回数に応じて変動」かまで確認しておくと、入職後の収入のぶれを見込めます。職場別の年収水準は薬剤師の職場別年収ランキングが参考になります。
給与明細で見落としやすいのが深夜割増です。22時閉店の店で毎日15分でも締め作業がはみ出すなら、その15分は深夜の時間帯の労働です。「少しだから」と流さず、どう扱われているかを確認する習慣をつけておくと、自分の身を守れます。
シフト勤務のメリットと向いている人
シフト勤務は、暮らし方によってはむしろ働きやすい面もあります。きつさとあわせて利点も把握しておくと、自分に合うかどうかを冷静に判断できます。
シフト勤務のメリット
- 平日に休みを取りやすく、役所・銀行・通院などの用事を済ませやすい
- 遅番の日は朝にゆとりがあり、午前中を自分の時間に使える
- 混雑を避けて買い物や旅行に出かけられる
- 手当が設けられている職場では、日勤のみより収入が増えることがある
向いていない側に当てはまる場合でも、固定シフトや時短勤務を選べる職場なら両立できることがあります。毎日同じ時間に働きたい人は日勤のみで働ける転職先、子育てとの両立を重視する人は子育てと両立しやすい転職先もあわせて検討してみてください。
シフト勤務は「悪いもの」ではありません。平日に休めて病院や役所に行きやすいのは、日勤中心の門前薬局にはない利点です。大切なのは、自分の生活リズムや家庭の事情に合うかどうか。合えば快適、合わなければ負担になる働き方です。
シフト制の職場を選ぶときの確認ポイント
シフトのきつさは職場ごとの運用で決まるため、入職前の確認がすべてです。求人票で分かることと、面接や見学で聞くべきことを分けて整理しました。
なかでも重視したいのは、夜間に一人薬剤師になる時間があるかと、その間の休憩をどう確保しているかです。求人票にはまず書かれないため、見学のときに実際の勤務表を見せてもらえるか聞いてみましょう。見学で確認すべき項目は薬剤師の職場見学チェックリストにまとめています。
面接で聞きにくい内容は、転職エージェントを通じて確認してもらう方法もあります。土日の休みを最優先したい場合は、土日休みを取りやすい職場から探すのが近道です。
「シフトは相談に応じます」という言葉だけで安心しないでください。相談に応じた結果、ほかのスタッフに負担が偏れば、結局は職場に居づらくなります。薬剤師の人数と営業時間を聞いて、無理なく回る体制かどうかを自分でも計算してみるのがおすすめです。
よくある質問
まとめ
薬剤師の早番・遅番シフトについて、要点を整理します。
- シフトは、開店時間中の薬剤師の常時配置という法令上の体制を、複数人で分担する仕組み
- ドラッグストアや駅前・商業施設の薬局はシフト制が中心で、門前の調剤薬局は日勤が基本
- きつさの原因は、早番と遅番の混在、夜の一人薬剤師、休日の不規則さといった運用面にある
- 深夜割増は法律で決まり、シフト手当は会社次第。夜の体制と手当の扱いを入職前に確認する
シフト勤務が合うかどうかは人それぞれです。平日休みを活かせる人には快適な働き方になり、合わなければ固定シフトや日勤のみの職場という選択肢もあります。自分の生活リズムと家庭の事情に照らして、無理なく続けられる職場を選んでいきましょう。

