薬剤師の出戻り転職はアリ?メリットと注意点・成功のコツを解説

薬剤師の出戻り転職はアリ?メリットと注意点・成功のコツを解説

この記事を書いた人

くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。

「前の職場のほうがよかったかもしれない」。転職してしばらく経つと、こう思う瞬間が訪れることがあります。かつては出戻りに後ろ向きな空気がありましたが、いまは事情が変わってきました。

ただ、判断の軸はシンプルです。自分が辞めた理由が、その職場で解決しているかどうか。これに尽きます。人が入れ替わって解決したのなら戻る価値はありますし、仕組みの問題なら戻っても同じことが起きます。懐かしさと、条件の良さは別のものだと切り分けて考えてください。

この記事では、出戻りが実際どれくらい行われているのかを調査データで確認したうえで、メリットと注意点、戻りやすいケースとそうでないケースの見分け方、条件がどう仕切り直されるか、打診の方法と伝え方までを整理します。ほかの選択肢も含めて考え直したい方は、職場別に比較した薬剤師の転職先一覧もあわせてご覧ください。

✅ この記事でわかること
  • 出戻りがどれくらい行われているのか、調査データで見た実態
  • 出戻りのメリットと、見落とされやすい注意点
  • 戻りやすいケース・戻らないほうがよいケースの見分け方
  • 勤続年数・有給・退職金・役職がどう仕切り直されるか
  • 元上司への打診のしかたと、そのまま使える伝え方
  • 戻ったあとにうまくやるためのコツ
目次

出戻りは特別なことではなくなった

まず実態から確認します。退職者を再び迎え入れる採用は、いまや珍しいものではありません。

項目
割合
退職者の再雇用を実施している企業
40.9パーセント
実際に出戻り転職をした正社員
12.3パーセント
退職した会社の人と今も連絡を取っている人
57.5パーセント

出典:マイナビ「中途採用・転職活動の定点調査」をもとにした集計(2024年公表)。全産業の数値であり、薬剤師に限定した統計ではありません。
調査の該当ページを開く

この3つの数字から読み取れることがあります。企業側の4割が受け入れる姿勢を持っているのに、実際に戻った人は1割強にとどまる。つまり「戻れない」のではなく「戻ろうとしていない」人が多いということです。

3つ目の数字も見逃せません。退職した会社の人と今も連絡を取っている人が過半数います。打診するための経路は、思っているより残っているのです。「気まずくて連絡できない」と感じている人ほど、この現実とのずれが大きいかもしれません。

薬剤師の場合、受け入れ側の事情も追い風です。厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計では、薬局に従事する薬剤師は197,437人で、前回調査から6,702人増えています。7つの区分のなかで最も伸びており、人を必要としている職場が多いことがうかがえます。教育コストがかからず、すぐに現場に入れる経験者は、採用する側にとって魅力的な存在です。

出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
厚生労働省の該当ページを開く

💬 くらげのひとこと

薬剤師の世界は意外と狭くて、地域の中では顔見知りが多いものです。だからこそ「辞めたのに戻るなんて」と思いがちですが、受け入れる側からすると、人柄も仕事ぶりも分かっている人は本当にありがたい存在。想像しているほど、相手は気にしていないことが多いですよ。

戻る前に、ほかの選択肢も見ておきませんか

比べる相手がいると、前の職場の良さも課題も客観的に見えてきます。複数の窓口で条件を確認しておくと判断がぶれません。

薬剤師転職サイトの比較を見る

出戻りのメリットと注意点

メリット
  • 業務の流れ・調剤の手順・処方元の特徴を知っているため、初日から戦力になれる
  • 人間関係や職場の雰囲気が分かっているので、入職後のずれが起きにくい
  • 採用する側も人柄と仕事ぶりを把握しており、選考が短く済むことが多い
  • 外で得た経験を持ち帰れるため、以前より高い評価を受けられることがある
  • 通勤経路や生活リズムの見通しが立ち、家庭への影響を読みやすい
注意点
  • 辞めた理由が解決していなければ、同じ不満が必ず再燃する
  • 条件は前と同じとは限らない。給与も役職も改めて設定されるのが一般的
  • 勤続年数がリセットされ、有給や退職金の扱いが変わることがある
  • 「また辞めるのでは」と見られやすく、最初のうちは信頼の積み直しが要る
  • かつての後輩が上司になっているなど、立場が変わっていることがある
  • 戻った経緯が周囲に伝わっており、当時の事情を蒸し返されることがある

最も重いのは1つ目です。出戻りで失敗する人のほとんどは、辞めた理由を検証しないまま戻っています。「今の職場よりマシ」という消去法で決めると、前の職場の嫌だった部分は記憶から薄れていて、戻ってから思い出すことになります。

戻りやすいケース・戻らないほうがよいケース

判断の軸は1つです。辞めた理由が「属人的」だったのか、「構造的」だったのか。人に起因する問題は、その人がいなくなれば解決します。仕組みに起因する問題は、仕組みが変わらない限り残ります。

辞めた理由
性質
戻る前に確かめること
特定の上司や同僚との関係
属人的
その人がまだ在籍しているか。異動していれば戻る価値は高い
家庭の事情・転居・育児
属人的
自分側の事情が解消しているなら、最も戻りやすいケース
他分野に挑戦したかった
属人的
挑戦した結果を持ち帰れる。むしろ評価が上がる可能性がある
人員不足による業務過多
構造的
今の人員体制が当時と比べてどうか。改善していなければ同じことになる
給与水準・評価制度への不満
構造的
制度が改定されたか。されていなければ戻る理由にならない
経営や方針への不信
構造的
経営者が交代していない限り、方針は変わりにくい。慎重に

※一般的な選考実務と職場の実情をふまえた当サイトの整理です。統計値ではなく、個別の判断は状況によって異なります。

この表を使うときのコツは、「解決したはず」ではなく「解決したかを確かめる」という姿勢です。元同僚に連絡して、当時の課題が今どうなっているかを具体的に聞いてください。「あの先生、まだいる?」「人は増えた?」という質問の答えが、判断の材料になります。

もうひとつ。今の職場を辞めたい理由と、前の職場に戻りたい理由は別のものです。前者だけで動くと、戻り先の選定が雑になります。転職で後悔する典型例は薬剤師が転職で失敗する理由にまとめているので、動く前に一度目を通してみてください。

💬 くらげのひとこと

「あの人が辞めたらしい」という一報だけで戻りを決める人がいますが、危ないです。その人が抜けた分の仕事を誰が持っているのか、体制はどう変わったのか。そこまで聞いてから判断してください。人が1人減っただけで、負担がむしろ増えていることもありますから。

条件はどう仕切り直されるか

見落とされやすいのがここです。出戻りは「元に戻る」のではなく「新しく入り直す」手続きです。以前の条件がそのまま復活するわけではありません。

項目
一般的な扱いと、確認すべきこと
給与
新たに設定されるのが一般的。退職時の額が保証されるわけではない。外で得た経験を根拠に交渉する余地はある
役職
以前の役職に戻れるとは限らない。管理薬剤師だった場合、ポストが埋まっていることも多い
勤続年数
原則としてリセットされる。通算するかどうかは会社の制度によるため、必ず書面で確認する
有給休暇
勤続年数がリセットされれば、付与も入職6か月後からになるのが通常。直後に休みが必要な予定があるなら先に相談する
退職金
前回分は清算済みで、新たに積み上げ直すのが一般的。支給対象になる勤続年数の条件も確認する
試用期間
経験者でも設定されることがある。期間中の条件が本採用後と違うかを確認する

※一般的な雇用実務をふまえた当サイトの整理です。取り扱いは会社の就業規則や退職金規程によって異なります。個別の条件は必ず書面でご確認ください。

気心の知れた相手だからこそ、条件の話が口頭だけで済まされやすいのが出戻りの落とし穴です。「前と同じ感じで」という曖昧な合意のまま入職すると、給与明細を見て驚くことになります。知っている相手だからこそ、書面はきちんともらってください。労働条件の明示は法律上の義務であり、遠慮する筋合いのものではありません。

書面で確認すべき項目は薬剤師の雇用契約書の見方|確認すべきポイント、条件面の交渉のしかたは薬剤師の給与交渉のやり方にまとめています。

打診のしかたと伝え方

戻りたいと思っても、どう切り出すかで迷う人が多い部分です。経路は大きく3つあります。

経路
向いている場面
元上司に直接
円満に退職していて、今も連絡が取れる場合。いちばん話が早い
元同僚を通して様子を聞く
まず内情を知りたい段階。いきなり打診せず、状況を確かめてから判断できる
求人に通常どおり応募
気まずさがある場合や、条件面をきちんと詰めたい場合。第三者が間に入ると話しやすい

※一般的な進め方をふまえた当サイトの整理です。適した経路は関係性によって異なります。

伝え方の例

いきなり「戻らせてください」と切り出す必要はありません。まずは近況を伝え、相手の状況を聞くところから始めます。

ご無沙汰しております。退職の際は大変お世話になりました。その後◯◯の分野で経験を積んでまいりましたが、あらためて前職での働き方が自分に合っていたと感じております。もし人員の状況などでご検討いただける余地がありましたら、一度お話をうかがえないでしょうか。

ポイントは3つです。当時の感謝を最初に述べること、外で何を得たかを具体的に伝えること、そして相手に断る余地を残した聞き方をすること。「人員の状況などで」という一言があるだけで、相手は断りやすくなり、結果的に話が進みやすくなります。

逆に避けたいのは、今の職場の不満から入ることです。「今のところがひどくて」と言えば、相手は「うちでも同じことを言うのでは」と受け取ります。戻りたい理由は、逃げではなく選択として語ってください。退職理由を前向きに言い換える考え方は薬剤師の退職理由の伝え方|面接で好印象な例文6パターンが参考になります。

💬 くらげのひとこと

打診は、相手の忙しい時期を外すのが基本です。月初のレセプトの週や、インフルエンザの流行期に連絡しても、ゆっくり考えてもらえません。落ち着いている時期を選ぶだけで、返ってくる答えの質が変わります。

戻ったあとにうまくやる4つのコツ

出戻りは、入職してからのほうが気を使う場面が多くなります。押さえておきたいのは次の4点です。

  • 「知っているつもり」で入らない。数年経てば、手順も採用薬も変わっています。分かっている前提で動くと、かえってミスにつながります
  • 前の職場のやり方を持ち込みすぎない。外で得た知見は価値がありますが、最初から改善提案を並べると反発を招きます。半年は観察に徹するくらいでちょうどよいです
  • 立場の変化を受け入れる。かつての後輩が上司になっていることがあります。役職ではなく役割として接するほうが、双方にとって楽です
  • 辞めた経緯を聞かれたら、短く前向きに答える。長い言い訳より、一度離れて何を得たかを簡潔に語るほうが信頼につながります

2つ目はとくに重要です。出戻りが歓迎されるのは即戦力だからであって、改革者として期待されているわけではありません。提案したいことがあるなら、まず現場の信頼を取り戻してからにしてください。順番を守れば、外での経験は必ず活きます。

よくある質問

出戻りを打診するのは、図々しいと思われませんか?▼

思われにくくなっています。調査では退職者の再雇用を実施している企業が40.9パーセントあり、受け入れ体制を持つ職場は珍しくありません。採用する側から見ても、教育コストがかからず人柄も分かっている経験者は貴重です。相手に断る余地を残した聞き方をすれば、関係を損ねることはほとんどありません。

円満退職ではなかった場合でも戻れますか?▼

難しくなりますが、不可能ではありません。当時の担当者が異動や退職でいなくなっていれば、状況が変わっていることもあります。直接の打診が気まずい場合は、通常の求人に応募する形で第三者を間に入れるほうが話を進めやすくなります。応募の段階で過去の在籍を隠すのは避けてください。

給与は辞めたときの額に戻りますか?▼

戻るとは限りません。出戻りは新しく入り直す手続きで、給与は改めて設定されるのが一般的です。ただし外で得た経験を根拠に交渉する余地はあります。気心の知れた相手だと口頭で済まされがちですが、必ず書面で条件を確認してください。労働条件の明示は法律上の義務です。

勤続年数や有給は引き継がれますか?▼

原則としてリセットされます。勤続年数がリセットされれば、有給の付与も入職から6か月後になるのが通常です。通算するかどうかは会社の制度によるため、就業規則や退職金規程を確認してください。入職直後に休みが必要な予定があるなら、その点は事前に相談しておくと安心です。

どれくらい期間が空いていると戻りにくくなりますか?▼

期間そのものより、当時を知る人が残っているかが影響します。人柄と仕事ぶりを知る人がいれば話は早く、全員入れ替わっていれば通常の中途採用と同じ扱いになります。一方で期間が空くほど、採用薬や手順、システムは変わっています。「知っているつもり」で入らないことのほうが、期間の長さより重要です。

戻ったあと、また辞めたくなったらどうすればよいですか?▼

辞める選択肢はいつでも残っています。ただ、その前に「戻る前に確かめたつもりだったことが、実際は違っていたのか」を整理してください。確認不足だったのなら次に活かせますし、想定どおりでも合わなかったのなら、そもそも職場の問題ではなく働き方の方向性を見直す段階かもしれません。同じ理由で3度目を繰り返さないための材料になります。

面接で「なぜ戻りたいのか」と聞かれたら、どう答えますか?▼

今の職場の不満から入らないことが鉄則です。「外で◯◯を経験した結果、あらためて前職の働き方が自分に合っていると分かった」という形で、離れたからこそ見えたものを語ってください。あわせて「当時気になっていた点は、今どうなっているか」を自分から確認する姿勢を見せると、検証したうえで戻ろうとしていることが伝わります。

在職中に打診してもよいですか?▼

在職中に打診するほうが安全です。収入が続いているぶん条件を妥協せずに判断でき、断られた場合も今の職場に残るという選択肢が残ります。辞めてから打診すると、受け入れてもらえなかったときに動きが取れなくなります。進め方の全体像は薬剤師の転職の流れも参考にしてください。

まとめ

薬剤師の出戻り転職について、要点を整理します。

  • 退職者の再雇用を実施している企業は40.9パーセント。一方で実際に戻った正社員は12.3パーセントで、「戻れない」より「戻ろうとしていない」人が多い
  • 退職した会社の人と連絡を取っている人は57.5パーセント。打診の経路は思うより残っている
  • 判断軸は、辞めた理由が属人的か構造的か。人の問題なら解決しうるが、仕組みの問題は残る
  • 出戻りは「元に戻る」のではなく「新しく入り直す」手続き。給与・役職・勤続年数・有給は仕切り直される
  • 知っている相手だからこそ、条件は必ず書面で確認する
  • 戻ったあとは「知っているつもり」で入らず、改善提案より先に信頼を取り戻す

出戻りは、後ろ向きな選択ではありません。外に出たからこそ分かることがあり、それを持ち帰れるのは一度離れた人だけの強みです。大切なのは、懐かしさではなく検証で決めること。辞めた理由が解決していると確かめられたなら、迷わず動いてかまいません。ほかの選択肢と比べ直したい方は薬剤師の転職先一覧、細かい疑問は薬剤師の転職でよくある質問Q&A38選にまとめています。

※本記事の情報は2026年9月時点のものです。統計・調査は公表時点の数値です。勤続年数や退職金の通算、有給休暇の付与などの取り扱いは、会社の就業規則や諸規程によって異なります。個別の条件は必ず勤務先および応募先にご確認ください。

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