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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「薬剤師は将来も食べていけるのか」「AIや機械化で仕事がなくなるのでは」と不安に感じる薬剤師は増えています。供給過剰や調剤の自動化といった話題を聞くと、これからのキャリアに迷いも生まれるものです。
結論から言うと、薬剤師の仕事そのものがなくなるわけではありませんが、求められる役割は確実に変わっていきます。そして見落とされがちですが、供給側にもすでに変化が起きています。2026年3月発表の第111回薬剤師国家試験の合格者は8,749人。相対基準が導入された第101回以降で最も少ない数字です。
この記事では、需給の見通し、供給側で起きている変化、AIや制度の影響、これから求められるスキルまでを、公的データに当たりながら整理します。漠然とした不安を、具体的な備えに変えていきましょう。職場ごとの選択肢を先に把握したい方は、薬剤師の転職先一覧もあわせてご覧ください。
- 薬剤師の需給推計の中身と、その前提
- 国家試験・薬学部で起きている「供給側の変化」
- AI・機械化と制度が仕事に与える影響
- これからの薬剤師に求められるスキル
- 将来も活躍するためのキャリア戦略
薬剤師の将来性をどう考えるか
薬剤師の将来を考えるうえで大切なのは、「なくなるか・残るか」という極端な見方をしないことです。実際には、定型的な業務は機械化や効率化が進む一方で、人にしかできない対人業務の重要性はむしろ高まっていきます。つまり、仕事の総量より中身が変わっていくと捉えるのが現実的です。
もうひとつ大切なのが、「需要」と「供給」を分けて考えることです。将来性の議論はたいてい需要側(患者数・業務量)に集中しますが、実際には供給側(新しく薬剤師になる人の数)でも大きな変化が始まっています。この記事では両方を見ていきます。
「薬剤師は将来なくなる」という見出しをよく見かけますが、現場にいる実感としては、なくなるというより役割が変わっていくという感覚です。漠然と不安がるより、これから何が求められるのかを知って動くほうが、ずっと前向きでいられます。
需給の見通し|推計の中身を正確に読む
厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」が示した需給推計では、将来的に薬剤師の供給が需要を上回る見通しが示されています。数字を正確に押さえておきましょう。
出典:厚生労働省「薬剤師の需給推計」(薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会、推計期間 令和2年〜令和27年)。2026年9月時点。
ここで重要なのは、「全国一律に余る」という推計ではないということです。検討会自身が、現時点では病院を中心に薬剤師が足りていないと明記しています。実際、令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計でも、薬局従事者が197,437人(前回比3.5%増)と伸びているのに対し、医療施設従事者は63,290人(同1.3%増)と伸びが緩やかで、偏在は続いています。
また、需要推計に幅があるのは「業務がどこまで充実するか」で結果が変わるからです。在宅医療や対人業務が広がれば需要は40.8万人側に近づき、過剰は2.4万人程度にとどまります。つまり過剰の規模は、薬剤師自身がどんな仕事をするかによっても変わります。地域ごとの状況は都道府県別の薬剤師転職ガイドで確認できます。
「12.6万人過剰」という数字だけが独り歩きしがちですが、これは最も厳しい前提の場合の話です。しかも同じ資料に「今後10年は需要と供給が同程度」「現時点では病院を中心に足りていない」と書いてあります。数字を引用するときは、その前提までセットで読む癖をつけておくと、不安に振り回されずに済みます。
供給側は、すでに絞られ始めている
需給推計は「毎年一定数の薬剤師が新たに生まれ続ける」という前提で組まれています。ところが、その前提そのものが揺らぎ始めています。将来性を語る記事のほとんどが触れない、供給側の変化を見ていきましょう。
① 国家試験の合格者数が減っている
2026年3月25日に発表された第111回薬剤師国家試験の結果は、受験者12,774人、合格者8,749人、合格率68.49%でした。注目すべきは絶対数です。合格者数が9,000人を下回ったのは、相対基準が導入された第101回以降で初めてで、受験者数も13,000人を割り込みました。近年は毎年9,100〜9,600人前後が合格していたことを踏まえると、明確な変化です。
② 薬学部の新設・定員増が原則できなくなった
文部科学省は、2025年度以降の6年制薬学部の新設と定員増を原則として認めない方針を決めています(薬剤師が不足する都道府県は例外)。供給の蛇口が、制度として絞られたということです。
③ 定員割れと募集停止が現実に起きている
財務省の資料によれば、私立の6年制薬学部60学部のうち、2024年度入学者で定員割れしたのは31学部。このうち10学部は入学定員充足率が50%未満でした。文部科学省も、私立大学薬学部の志願倍率と入学志願者数が減少傾向にあり、入学定員充足率80%以下の大学が約3割に達していると説明しています。
実際に姫路獨協大学が2025年度から、医療創生大学が2026年度から薬学部の募集を停止しました。さらに文部科学省の学則変更認可申請一覧(2026年4月)では、2027年度に私立薬学部8校が定員減となる予定です。
✅ この3つが意味すること
需給推計が示した「2045年に最大12.6万人過剰」というシナリオは、毎年の新規参入がこれまでのペースで続く前提のものです。国家試験の合格者数が減り、薬学部の定員が絞られ、募集停止まで出ている状況は、この前提を下振れさせる方向に働きます。
もちろん「だから安泰」とは言えません。ただ、10年前に語られた供給過剰の未来と、いま見えている未来は同じではないということは知っておく価値があります。
出典:厚生労働省「第111回薬剤師国家試験の結果について」(2026年3月25日発表)、文部科学省の薬学部定員に関する方針および「令和9年度からの私立大学の収容定員の変更に係る学則変更認可申請一覧」(2026年4月)、文部科学省「薬学部における修学状況等」、財務省の薬学部定員に関する資料(2026年4月)。2026年9月時点。
私が薬学生だった頃と比べて、いま薬学部に入る人数は目に見えて減っています。供給過剰の記事は10年前の前提で書かれたものがまだ多く残っていますが、足元の数字は違う方向を向き始めました。だからといって油断はできませんが、「もう終わりだ」と決めつける必要もありません。
自分の市場価値は、動かなくても確認できます
いまどんな求人が自分に来るのかを知るだけで、漠然とした不安はかなり和らぎます。病院に強い会社、企業求人に強い会社、地方の薬局に強い会社はそれぞれ別です。目的別の使い分けから確認してみてください。
薬剤師転職エージェントの比較を見るAI・機械化で仕事はなくなる?
調剤の自動化やAIの進歩で「薬剤師の仕事がなくなる」と言われることがあります。これは半分正しく、半分は誤解です。
この議論を正確にするうえで押さえておきたいのが、2019年(平成31年)4月2日の厚生労働省通知「調剤業務のあり方について」、いわゆる0402通知です。この通知は、薬剤師の指示にもとづき、薬剤師以外の従事者が対物業務の一部(一定の条件下でのピッキングや一包化された薬剤の数量確認など)を行える範囲を整理したものでした。「薬剤師でなくてもできる作業」が制度として切り分けられたという点で、転機になった通知です。
薬を数え、用意するといった対物業務は、自動調剤機やシステム、そして人員の役割分担によって効率化が進んでいきます。一方で、患者の状態を見て服薬指導を行い、副作用や飲み合わせを薬学的に管理する対人業務は、薬剤師にしかできない領域として制度上も明確に位置づけられています。仕事がまるごと消えるのではなく、価値の中心が対物から対人へと移っていくと考えるのが現実的です。
電子処方箋やオンライン服薬指導の広がりも同じ方向を向いています。デジタル技術そのものに関わるキャリアに興味があれば、薬剤師のデジタルヘルス転職という選択肢もあります。
現場でも自動化は確実に進んでいますが、それで生まれた時間を、患者さんとの対話や薬学的な管理に回せるようになりました。AIや機械は敵ではなく、対人業務に集中するための味方と捉えると、向き合い方が変わってきます。怖いのは自動化そのものではなく、自動化された後に自分の手元に何も残らないことです。
制度の変化|2026年の改定が示した方向
将来性を考えるうえで、制度の方向性も見逃せません。2026年6月1日に施行された令和8年度診療報酬改定は、その方向をはっきり示しています。
- 調剤の改定率は+0.08%。診療報酬本体は2年度平均で+3.09%でしたが、内訳は賃上げ分+1.70%と物価対応分+0.76%が中心で、薬価は▲0.86%。技術料はほぼ横ばいです
- 「門前薬局等立地依存減算」(15点減算)が新設。2026年6月1日以降に新規開設する薬局のうち、都市部立地・処方箋集中率85%超などの要件に該当するものが対象。面分業への転換を促す仕組みです
- かかりつけ薬剤師指導料が廃止され、服薬管理指導料に統合。届出という「形」ではなく、実際の関与という「実績」を評価する方向へ転換しました
- 在宅医療の評価が拡充。医師と薬剤師が患家を同時訪問する場合の評価が新設され、在宅薬学総合体制加算の要件強化と評価引き上げが行われました
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(改定率・調剤点数表・特掲診療料の施設基準等)。2026年9月時点。
読み取れるメッセージは明確です。「薬を渡すだけ」の業務は評価されず、対人業務・在宅・面分業へ向かう薬局と薬剤師が評価される。立地に依存した経営が減算の対象になったことは、その象徴と言えます。門前と面分業の違いは面薬局とは?門前薬局との違いで整理しています。
制度が対人業務を評価する方向に動いているのは、現場にいると年々はっきり感じます。逆に言えば、国が示す方向にいち早く対応した薬剤師ほど、これからも求められ続けます。改定の流れは、自分のキャリアの羅針盤として使えます。
これからの薬剤師に求められること
需給・供給側の変化・AI・制度の流れを踏まえると、これからの薬剤師に求められる力が見えてきます。次のような強みを持つ薬剤師は、将来も選ばれ続けます。
- 患者に寄り添う服薬指導とコミュニケーション力
- 在宅医療や多職種連携に対応できる力(制度上も評価が拡充されている領域)
- かかりつけ薬剤師として実績を積める関係構築力
- がん・救急・感染制御・無菌調製などの専門領域のスキル
- 制度や改定を一次資料で読み解ける力
- 変化を前向きに学び続ける姿勢
共通するのは、機械や他の薬剤師に置き換えられにくい「人ならではの価値」を磨くことです。ここで大事な順序がひとつあります。専門資格の多くは、症例数や施設要件を満たす職場でなければ受験資格すら得られません。たとえばがん専門薬剤師は認定研修施設での5年以上の研修歴と3領域以上のがん種50症例が必要です。つまり「資格を取ってから転職」ではなく「資格を取れる職場へ転職」が正しい順序になります。
まず何から始めるかは、認定薬剤師の取得と転職への影響で全体像をつかんでから決めるのが効率的です。がん領域を目指すならがん専門薬剤師になるには、在宅なら在宅医療の薬剤師の年収相場が入口になります。
「何か一つでも、人より得意な領域を持っているか」が、これからの分かれ目になります。在宅でも漢方でも認定資格でも構いません。小さくても自分の強みがあると、需要が縮む時代でも声がかかり続けます。ただし、その強みが育つ環境にいるかどうかは先に確認してください。
将来も活躍するためのキャリア戦略
将来性への不安は、具体的な行動に変えることで小さくできます。今からできるキャリア戦略を整理しました。
- 対人業務や在宅など、制度上も評価が拡充されている領域の経験を積む
- 認定資格や専門スキルで、置き換えられにくい強みをつくる
- 病院を中心に不足が続く領域や、対人業務に力を入れる職場を選ぶ
- かかりつけ薬剤師の在籍要件が6か月に短縮された今、実績を積みやすい職場へ動く
- 自分の市場価値を客観的に把握し、定期的に見直す
4つ目は2026年改定を踏まえた新しいポイントです。かかりつけ薬剤師として算定するための当該薬局での在籍期間は、1年以上から6か月以上に短縮されました。転職してから実績を積み始めるまでの待ち時間が半分になったということです。
自分の市場価値や、需要の高い領域の求人状況を知りたいときは、薬剤師に詳しい転職エージェントに相談すると客観的な視点が得られます。動くかどうかは後で決めればよく、情報を集めて選択肢を持っておくこと自体が、将来の安心につながります。進め方は薬剤師の転職の流れで整理しています。
将来が不安なときほど、立ち止まるより小さく動くことをおすすめします。今の自分にどんな求人があるかを知るだけでも、漠然とした不安はかなり和らぎます。情報を持っているという状態が、何よりの安心材料になります。
よくある質問
まとめ
- 薬剤師の仕事はなくならないが、対物から対人へ役割が変わっていく
- 需給推計は2045年に2.4万〜12.6万人の過剰。ただし「今後10年は需給同程度」「病院を中心に充足していない」とも明記されている
- 供給側も変化。第111回国試の合格者は8,749人で第101回以降最少。薬学部の新設・定員増は原則不可、定員割れや募集停止も相次ぐ
- 0402通知で対物業務の一部が切り分けられ、対人業務の価値が相対的に高まった
- 2026年改定も対人業務・在宅・面分業を後押しする方向
- 専門資格は「取ってから転職」ではなく「取れる職場へ転職」が正しい順序
薬剤師の将来は、決して悲観一色ではありません。需要側だけでなく供給側の数字も見れば、10年前に語られた未来といまの見通しは同じではないことがわかります。大切なのは、漠然とした不安にとどまらず、対人スキルや専門性という自分の強みを育て、それが育つ場所を選んでいくことです。変化の時代だからこそ、備えた人が活躍できます。
▶ あわせて読みたい
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「薬剤師の需給推計」(薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会)
- 厚生労働省「第111回薬剤師国家試験の結果について」(2026年3月25日発表)
- 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
- 厚生労働省「調剤業務のあり方について」(平成31年4月2日 薬生総発0402第1号)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 文部科学省の薬学部の定員に関する方針、「薬学部における修学状況等」、収容定員の変更に係る学則変更認可申請一覧
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。需給推計は一定の前提に基づく見通しであり、制度改正や社会の変化によって状況は変わります。統計・試験結果・定員に関する数値は公表時点のものです。最新の動向は厚生労働省・文部科学省など公的機関の発表をあわせてご確認ください。

