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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
転職を考えるとき、多くの薬剤師が迷うのが「正社員とパート、どちらを選ぶか」です。収入や安定を取るか、時間の自由を取るか。どちらにも良さがあり、ライフステージによって最適な答えは変わります。
この記事では、薬剤師の正社員とパートの違い、公的統計で見た賃金の実態、それぞれのメリットとデメリット、2026年に大きく変わった年収の壁、自分に合う選び方を整理します。数字の部分は厚生労働省と国税庁の公表資料をもとに確認しました。
- 薬剤師の正社員とパートの違いを項目ごとに比較
- 公的統計で見ると、時給換算はどちらが高いのか
- 正社員とパート、それぞれのメリットとデメリット
- 2026年に大きく変わった年収の壁の最新ルール
- ライフステージに合わせた選び方
薬剤師の正社員とパートの違い
まずは、正社員とパートの違いを項目ごとに見てみましょう。薬剤師は資格職のため、パートでも比較的高い時給が得られるのが特徴です。
⏱ 30秒でわかる要点
薬剤師は資格があるおかげで、パートでも時給水準が高め。だからこそ「正社員でないと食べていけない」という発想にとらわれず、自分のライフステージで柔軟に選べるのが強みです。大事なのは収入だけでなく、今の自分が何を優先したいかを見極めることです。
正社員とパートの求人を比べたい方へ
同じ職場でも、雇用形態によって賞与や社会保険の扱いは変わります。両方の条件を並べて比べられると、判断がしやすくなります。薬剤師向けの転職支援サービスを条件別に比較しています。
公的統計で見る、正社員とパートの賃金の実態
「パートは時給が高いから、効率よく稼げる」。よく言われる話ですが、公的な統計を見ると少し違う姿が見えてきます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査から、薬剤師の数字を並べてみます。
つまり、賞与まで含めて時給に換算すると、一般労働者のほうが短時間労働者より高いという結果です。求人票に並ぶ額面だけを見るとパートの時給が高く見えることはありますが、正社員には賞与・退職金・各種手当が加わるため、総額では逆転します。
パートを選ぶ理由は「時給が高いから」ではなく、働く時間を自分でコントロールできるからだと整理しておくと、判断を誤りません。逆に言えば、時間の制約がないのに収入だけを目的にパートを選ぶ理由は、統計上は見あたらないということです。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(実際の賃金は地域・職場・経験年数により異なります)
この数字を見て「そうだったのか」と思う人は多いと思います。私も以前は「パートのほうが時間あたりでは得」と思い込んでいました。実際は、賞与や退職金まで含めると正社員の厚みが効いてきます。パートは時間を買う選択なんだ、と考えると納得しやすいです。
正社員のメリット・デメリット
- 賞与や昇給があり、年収を安定して伸ばしやすい
- 社会保険や福利厚生が手厚く、将来の備えになる
- 管理薬剤師など、責任ある役割でキャリアを築ける
- 研修や認定資格の取得を支援してもらえる職場が多い
- フルタイム勤務が基本で、時間の融通が利きにくい
- 転勤や残業、責任の重さが負担になることがある
- 子育てや介護との両立に工夫が必要なことも
正社員は、収入と安定、キャリアを重視する人に向いています。一方で、働く時間の自由度は下がるため、生活との両立をどう設計するかが鍵になります。
なお、育児との両立については制度上の支えがあります。育児・介護休業法により、3歳に満たない子を養育する労働者が希望した場合、事業主は短時間勤務の措置(原則1日6時間)を講じる義務があります。さらに2025年10月からは、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者についても、柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されました。「正社員だから融通が利かない」と決めつける前に、勤務先の制度を確認してみてください。
パートに切り替える前に、まず「正社員のまま時短にできないか」を確認してほしいです。社会保険や賞与を維持したまま働く時間を減らせるなら、それがいちばん条件がいい。制度があるのに使われていない職場も多いので、聞いてみる価値はあります。
パートのメリット・デメリット
- 勤務日数や時間を選びやすく、生活に合わせやすい
- 資格職のため時給が高く、短時間でも一定の収入を得やすい
- 責任が比較的軽く、気持ちの負担を抑えて働ける
- 複数の職場を経験しやすく、自分に合う環境を探しやすい
- 賞与が少なく、年収は正社員より下がりやすい
- 契約更新の形が多く、雇用の安定性は相対的に低い
- 役職に就きにくく、キャリアの幅が広がりにくい
- 研修や資格取得の支援を受けにくい職場がある
パートでも守られている権利がある
「パートだから仕方ない」と思われがちですが、法律で保障されているものもあります。知らないと損をするので、押さえておいてください。
- 年次有給休暇:6ヶ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤すれば、パートにも所定労働日数に応じて付与されます(労働基準法)
- 不合理な待遇差の禁止:職務の内容や配置の変更範囲などが同じ場合、正社員との間に不合理な待遇差を設けることはパートタイム・有期雇用労働法で禁止されています
- 労働条件の明示:パートでも労働条件通知書の交付が必要で、2024年4月以降の契約なら就業場所・業務の変更の範囲も明示されます
パートは、時間の自由や生活との両立を重視する人に向いています。子育てや介護の時期、あるいは無理なく働きたい時期に、有力な選択肢になります。
パートでも有給が付くことを知らない人が、いまだにいます。日数は所定労働日数に応じて計算されますが、権利は権利。面接のときに「有給の付与日数はどうなりますか」と聞いても、まったく失礼ではありません。
2026年に大きく変わった「年収の壁」
パートを選ぶうえで避けて通れないのが、年収の壁です。ここ数年で金額も判定方法も大きく変わっているため、古い情報のまま調整していると計算が合わなくなります。現在の状況を整理しました。
税金の壁|扶養の判定は136万円に
かつて「103万円の壁」として知られていた税金の壁は、基礎控除と給与所得控除の見直しにより段階的に引き上げられてきました。配偶者控除・扶養控除の対象となる給与収入の上限は、令和7年分の123万円から、令和8年分は136万円になっています。
また、本人に所得税がかかり始めるラインも令和8年分から178万円に引き上げられました。ただし、この改正が毎月の源泉徴収に反映されるのは令和9年1月以降で、令和8年中は年末調整で精算される扱いです。毎月の手取りだけを見て「引かれている」と感じても、年末に戻ってくる場合があるという点は覚えておいてください。
出典:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
社会保険の壁|106万円は撤廃へ、130万円は判定方法が変更
短時間労働者が勤務先の社会保険に加入する要件は、現在おおむね「従業員数51人以上の特定適用事業所」「週の所定労働時間20時間以上」「月額賃金8万8千円以上」「2か月を超える雇用の見込み」「学生でない」の5つです。
このうち月額賃金の要件(いわゆる106万円の壁)は2026年10月に撤廃される予定で、企業規模の要件も段階的になくなっていきます。撤廃後は、週20時間以上働くかどうかが実質的な分かれ目になります。「扶養の範囲で働く」という前提そのものが、今後は変わっていくということです。
もう一方の130万円の壁については、判定の方法が変わりました。2026年4月から、労働契約書や労働条件通知書に記載された内容をもとに年間収入を算定する方式が導入されています。契約上の年間収入が130万円未満であれば、繁忙期の残業などで一時的に収入が増えても、扶養から外れずに済みます。ただし、契約書に残業の見込みが書かれていない場合など、書類から年間収入を算定できないときは、従来どおり給与明細などで判定されます。
出典:厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」/同 質疑応答集
⚠️ 会社の家族手当は別の基準で動いていることがある
税金の壁が引き上げられても、配偶者の勤務先が支給する家族手当・配偶者手当の基準は、就業規則で別に定められています。税制改正に合わせて自動的に変わるわけではないため、配偶者の勤務先の規程を確認しておいてください。
このように、年収の壁は金額も判定方法もここ数年で大きく動いています。今後も見直しが続く可能性があるため、扶養の範囲内に収めるのか、社会保険に加入してしっかり働くのか、方針を決めたうえで、勤務先や年金事務所、税務署に最新の基準を確認しておくと安心です。
薬剤師は時給が高いぶん、少し働いただけで壁に届きやすいのが悩みどころです。週の勤務日数や1日の時間を少し調整するだけで、超えるか超えないかが変わります。ただ、106万円の要件が撤廃される流れを考えると、そろそろ「壁を気にせず働いて社会保険に入る」ほうが素直かもしれません。
正社員とパート、どう選ぶ?
どちらが正解ということはありません。今の自分が何を優先したいかで選ぶのが基本です。目安を整理しました。
薬剤師の大きな強みは、資格があるため正社員とパートを行き来しやすいことです。子育て期はパート、落ち着いたら正社員へ戻る、といった切り替えも十分可能です。今の選択がずっと続くわけではないので、肩の力を抜いて選んで構いません。
「正社員かパートか」で悩みすぎる必要はありません。薬剤師は、ライフステージに合わせて働き方を変えられる恵まれた資格職です。今はパートでも、数年後に正社員へ戻る人をたくさん見てきました。大切なのは一度で完璧に決めることより、その時々の自分に合った働き方を選び続けることです。
よくある質問
まとめ
- 正社員は収入・安定・キャリア、パートは時間の自由と両立のしやすさが強み
- 公的統計では時給換算でも一般労働者2,828円が短時間労働者2,540円を上回る
- パートを選ぶ理由は「時給の高さ」ではなく「時間をコントロールできること」
- パートにも有給休暇は付与され、不合理な待遇差は法律で禁止されている
- 扶養の税金の壁は令和8年分から136万円、本人の課税ラインは178万円に
- 106万円の賃金要件は2026年10月に撤廃予定、130万円は判定方法が変更済み
- 資格があるので正社員とパートは行き来しやすく、柔軟に選び直せる
正社員とパートは、どちらが優れているというものではなく、今の自分のライフステージに合うかどうかで選ぶものです。薬剤師は資格があるからこそ、状況に応じて働き方を柔軟に変えられます。迷ったときは、両方の求人を見比べたうえで、転職エージェントに自分の希望を相談してみましょう。あなたに合った働き方が、きっと見つかります。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収の壁や社会保険の制度は法改正により変わりますので、最新の情報は国税庁・厚生労働省の公表資料等でご確認ください。税金や社会保険の具体的な判断は、勤務先や税務署、年金事務所、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。求人状況や待遇は職場により異なります。

