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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「定年後も薬剤師として働きたい」「年金をもらいながら、無理のない範囲で続けたい」。そう考える方にとって、判断に必要なのは気持ちではなく、制度とお金の見通しです。
先に結論をお伝えします。厚生労働省の届出データでは、70歳以上の薬剤師が19,986人います。60歳以上は65,950人で全体の20.1パーセント。定年後も現役で続けている人は、決して例外ではありません。
そしてお金の前提が、2025年から2026年にかけて2つ動きました。在職老齢年金の基準額が大きく上がった一方、高年齢雇用継続給付は縮小されています。「働くと年金が減る」も「給付で補える」も、どちらも古い前提になりました。この記事では、制度・お金・働き方・職場の順に整理します。
この記事でわかること
- 届出データで見る定年後の薬剤師の実数
- 65歳まで・70歳までの制度の現在地と、企業ごとの差
- 在職老齢年金・高年齢雇用継続給付・繰下げ受給の3点セット
- 働き方の選択肢と、狙うべき職場
- 再雇用と転職の比べ方、定年後に見落としやすい手続き
データで見る|定年後も働いている薬剤師
厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、届出薬剤師は329,045人で平均年齢は46.9歳です。年齢の高い層を抜き出すと次のようになります。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
この表の使い方は明快です。介護保険施設と診療所は、60歳から69歳が最も多い年齢層の職場です。定年後に探すなら、まずこの2つを候補に入れてください。薬局は求人数こそ多いものの、最多層は30代です。同じ「薬剤師の求人」でも、受け入れの土壌がまったく違います。
私の周りでも、60代後半までパートで現役を続けている方は何人もいます。フルタイムの正社員は絞られますが、勤務日数を抑えた働き方まで含めれば、活躍の場はまだ広いと感じています。
制度の現在地|65歳までと、その先
高年齢者雇用安定法により、事業主には65歳までの雇用確保措置が義務づけられています。定年の引き上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止のいずれかです。継続雇用の対象者を労使協定の基準で限定できる経過措置は令和7年3月31日で終了し、令和7年度からは希望者全員が対象になりました。
出典:厚生労働省「令和7年高年齢者雇用状況等報告」集計結果(令和7年12月19日公表)
押さえておきたいのは、65歳と70歳のあいだにある大きな差です。65歳までは制度で守られていますが、その先を用意している企業は3社に1社しかありません。70歳まで働くつもりなら、応募先の定年年齢と70歳までの制度の有無を、入職前に必ず確認してください。
もう1つ、定年後に見落としやすい手続きがあります。薬剤師法第9条により、就業していなくても2年ごとの届出義務があります。2026年は届出年で、12月31日現在の状況を2027年1月15日までに届け出ます。届出をしないと、厚生労働省の薬剤師資格確認検索システムに氏名等が原則掲載されません。
定年でいったん現場を離れる方ほど、2年ごとの届出を忘れがちです。働いていなくても対象なので、退職後も続けてください。次に復帰するときの手続きが楽になります。
お金の3点セット|年金と給付
定年後の働き方を決めるうえで、押さえるべき制度は3つです。1つは緩和され、1つは縮小され、もう1つは選択の余地があります。
① 在職老齢年金は基準額が大幅に上がった
老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に加入して働くと、年金の月額(基本月額)と給与・賞与を月換算した額(総報酬月額相当額)の合計が基準額を超えたとき、超えた分の2分の1が支給停止されます。
この基準額が2026年4月から引き上げられました。法律上は62万円(2024年度価格)とされ、賃金の変動を反映した2026年度の実際の基準額は月65万円です。2026年3月分までは51万円(2025年度価格)でした。パートや嘱託で働く水準では、この基準に届かないことがほとんどです。調整の対象は老齢厚生年金の部分だけで、老齢基礎年金は減りません。
② 高年齢雇用継続給付は縮小された
逆方向の変更もあります。60歳以降に賃金が下がった場合に雇用保険から支給される高年齢雇用継続給付は、2025年4月1日以降に60歳に達する方から、給付率の上限が15パーセントから10パーセントに縮小されました。
再雇用で賃金が下がる前提の設計をしていた場合、想定より手取りが少なくなる可能性があります。2つを合わせると、「賃金を下げて給付で補う」から「働いた分だけ受け取る」へ、制度の向きが変わったと言えます。
③ 年金を後ろにずらすという選択肢
働き続けるなら、年金の受給開始を遅らせる繰下げ受給も検討の余地があります。66歳以降75歳までのあいだで繰り下げることができ、1か月遅らせるごとに増額されます。ただし、繰り下げている間は年金を受け取れません。
どの選び方が有利かは、働く年数、健康状態、家族の状況によって変わります。損得は個人の事情で逆転するため、一般論では決められません。年金事務所で自分の数字を出してもらったうえで判断してください。
支給停止の判定や給付の額、繰下げの増額率は個人の加入歴や賃金によって変わります。具体的な見込みは年金事務所やハローワークでご確認ください。
「働くと年金が減るから」と勤務を減らす方がいますが、パートや嘱託の水準では基準額に届かないことがほとんどです。不安で働き方を狭める前に、正確な数字を年金事務所で確認してみてください。
働き方の選択肢
定年後は、フルタイムの正社員にこだわらないほうが選択肢が広がります。それぞれの特徴と確認点を整理しました。
選ぶ順番としては、まず週に何日働きたいかを決めてください。そこが決まると候補が絞られます。そのうえで通勤時間を30分以内など具体的な上限で区切ると、続けられる求人だけが残ります。
スポット勤務は自由度が高い反面、収入が読めません。生活の土台はパートで作り、余裕があるときにスポットを足す。この組み合わせにしている方が、周りには多いです。
再雇用と転職の比べ方
定年を迎えるとき、多くの方が迷うのがここです。判断できない原因は、たいてい再雇用の条件が口頭でしか示されていないことにあります。
この4点を書面でもらってはじめて、外の求人と比べられるようになります。とくに4つ目が重要です。65歳で終わる契約なのか、その先も更新の道があるのかで、いま転職すべきかどうかの答えが変わります。
シニアの転職を成功させる4つのコツ
- 週に何日働きたいかを先に決める。条件が絞れて話が早くなる
- 平均年齢が自分より高い施設から当たる。介護保険施設59.7歳、診療所58.4歳
- 年金と給付の見込みを年金事務所で出しておく。数字があると迷わない
- 新しい仕組みを覚える姿勢を面接で示す。能力より、ここを見られている
4つ目について補足します。電子処方箋は2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されています。操作は職場で教えてもらえますが、「使えません」と先に言ってしまうと採用側が身構えます。「新しい仕組みは覚える前提で臨みます」と言えるかどうかが、印象を分けます。
再雇用の提示をそのまま受ける前に、一度だけでも外の求人を見ておいてください。比較対象があると、その条件が良いのか悪いのか冷静に判断できますし、交渉の材料にもなります。見るだけならリスクはありません。
よくある質問
まとめ
定年後の働き方を決めるための要点を整理します。
- 70歳以上の届出薬剤師は19,986人。定年後も続けている人は例外ではない
- 65歳までの雇用確保は99.9パーセントが実施済み。70歳までは34.8パーセントにとどまる
- 在職老齢年金の基準額は2026年4月から月65万円に。一方で高年齢雇用継続給付は上限10パーセントに縮小された
- 狙うなら平均年齢の高い施設から。介護保険施設59.7歳、診療所58.4歳はいずれも60代が最多層
定年は終わりではなく、働き方を選び直す機会です。まずは週に何日働きたいかを決め、年金の見込みを年金事務所で出してもらってください。この2つがそろえば、求人を見る目が変わります。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(年齢階級別の人数・施設別の平均年齢)
- 政府広報オンライン「在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引上げに」
- 厚生労働省「電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」(導入状況)
- 厚生労働省「令和7年高年齢者雇用状況等報告」集計結果(令和7年12月19日公表)、高年齢者雇用安定法、雇用保険法、国民年金法・厚生年金保険法、薬剤師法第9条
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

