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くらげ|現役薬剤師。病院・調剤薬局・管理薬剤師を経験。在宅や施設に関わる業務にも携わり、高齢者医療の現場で薬剤師ができることを発信しています。
「調剤室にこもるより、患者さんと深く関わりたい」「高齢者医療に貢献したい」。そんな思いから、老人ホームや訪問の仕事に関心を持つ薬剤師が増えています。高齢化で在宅医療の需要が高まり、薬剤師の役割も大きくなっているからです。
ただ、ひとくちに「施設・訪問」と言っても、働き方は一つではありません。施設に勤める薬剤師と、外部の薬局から訪問する薬剤師では仕事が異なります。さらに、施設の種類によって関われる範囲も変わります。この記事では、働き方の違いから仕事内容、年収、向き不向き、転職成功のポイントまで、現役薬剤師がまとめました。
📌 この記事でわかること
- 施設薬剤師と訪問薬剤師という2つの働き方の違い
- 訪問薬剤師の仕事内容と、医療保険・介護保険の使い分け
- 施設の種類で薬剤師の関わり方がどう変わるか
- 年収の目安とメリット・大変な点
- 向いている薬剤師と、転職を成功させるポイント
老人ホーム・訪問の薬剤師には2つの働き方がある
まず押さえたいのが、関わり方が大きく2種類に分かれる点です。一つは施設に勤める「施設薬剤師」、もう一つは外部の薬局から訪問する「訪問薬剤師」です。
| 働き方 | 特徴 |
|---|---|
| 施設薬剤師 | 介護老人保健施設などに勤め、入所者の薬を管理する。施設によっては薬剤師の配置基準が定められている。 |
| 訪問薬剤師 | 在宅に対応する保険薬局に勤め、患者の自宅や高齢者向け住宅を訪問して薬を届け、服薬を管理する。 |
求人を見るときは「どちらの働き方か」を最初に確認しましょう。施設に常駐するのか、薬局を拠点に訪問へ出るのかで、一日の動き方も求められる経験もまったく違います。なお、訪問の仕事は薬局から車で回ることが多く、運転免許が必要なケースも珍しくありません。
訪問薬剤師の仕事内容と保険の使い分け
在宅医療で療養している患者の自宅や住まいを訪問し、薬を届けて服薬状況を確認し、必要に応じて薬の管理方法を指導する。これが訪問薬剤師の中心的な仕事です。薬局へ出向くのが難しい高齢者でも、自宅にいながら支援を受けられるのが大きな価値です。医師や看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど多くの職種と連携しながら進めます。
訪問には、患者の状況によって2つの制度を使い分けます。介護保険の認定を受けている人には居宅療養管理指導、認定を受けていない人には医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導を用います。どちらを使うかで報酬や要件が変わるため、現場では正しい判断が求められます。
医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料は、同じ建物で訪問する患者の人数によって点数が変わります。2024年度改定の時点では、1人なら650点、2人から9人なら320点、10人以上なら290点が目安です。訪問の間隔や回数にも一定のルールがあります。
在宅の仕事は、調剤と服薬指導の延長というより「患者さんの生活の中に入っていく仕事」です。薬の飲み忘れや残薬、体調の変化に気づき、医師に提案して処方が変わることもあります。やりがいは大きい一方、判断の責任も重くなります。最初は先輩に同行しながら慣れていくのが安心です。
施設の種類で薬剤師の関わり方が変わる
老人ホームと一口に言っても種類が多く、薬剤師の関わり方は施設ごとに異なります。とくに、外部の薬局が訪問して指導料を算定できる施設と、できない施設がある点は重要です。代表的な施設を整理しました。
| 施設の種類 | 薬剤師の関わり方 |
|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 薬剤師の配置基準があり、施設内で入所者の薬を管理する。外部薬局による訪問の指導料は原則算定できない。 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 居住系の施設ではないため、外部薬局による訪問の指導料は原則算定できない(末期の重い病気の患者などは例外)。 |
| 有料老人ホーム・サ高住 | 外部薬局の訪問が可能。介護認定があれば居宅療養管理指導、なければ医療保険の訪問指導で対応する。 |
| グループホーム | 要介護者が対象の住まいで、居宅療養管理指導による訪問が可能。 |
大まかに言うと、老健や特養のように医療や介護の体制が施設に組み込まれている所では、外部からの訪問指導は原則行いません。一方、有料老人ホームやサ高住、グループホームのように「住まい」に近い施設では、外部の薬局が訪問して支援します。求人がどの施設に関わるものかで、仕事の中身が変わってきます。
この施設ごとの違いは、在宅未経験の薬剤師がつまずきやすいところです。「施設から訪問を頼まれたけれど、この施設では算定できるのか」と現場で迷う場面が出てきます。逆に言えば、この区別を理解している人は採用面接でも強みになります。応募前に、その薬局がどの施設と取引しているかを聞いておくと、入職後の働き方がイメージしやすくなります。
年収はどのくらい?
気になる年収ですが、在宅や訪問に携わる薬剤師の収入は、調剤薬局とほぼ変わらず、おおむね450万円から600万円程度が目安とされています。在宅医療は需要が高く人手不足が続いているため、在宅経験のある薬剤師は転職市場で評価されやすい傾向があります。
勤務先や地域、役職によって幅はありますが、在宅対応に力を入れる薬局では、経験を積むほど任される範囲が広がり、待遇に反映されることもあります。給与だけでなく、訪問の件数や移動の負担、勤務時間も合わせて確認するのがおすすめです。
メリット・大変な点と向いている薬剤師
挑戦する前に、良い面と大変な面の両方を知っておきましょう。
メリット
- 患者一人ひとりと深く関わり、生活に寄り添える
- 高齢化で需要が拡大しており、将来性が高い
- 残薬や飲み忘れの解決など、専門性を発揮しやすい
- 地域医療やチーム医療への貢献を実感できる
大変な点
- 訪問のための移動や運転の負担がある
- 体力面や天候に左右される場面がある
- 多職種との連携や調整に気を配る必要がある
- 急な体調変化への対応など、判断の責任が重い
こうした特徴をふまえると、人と関わることが好きで、高齢者医療に関心があり、フットワーク軽く動ける薬剤師に向いています。逆に、決まった場所で調剤に集中したい人や、移動や多職種連携に負担を感じやすい人は、慎重に検討した方がよいでしょう。
転職を成功させるためのポイント
入職後のミスマッチを防ぐために、応募前に押さえておきたいポイントを整理しました。
| ポイント | 確認すること |
|---|---|
| 働き方の種類 | 施設に常駐するのか、薬局から訪問するのか。一日の流れと訪問件数を聞く。 |
| 運転の有無 | 社用車での移動が必要か、運転免許が条件かを確認する。 |
| 経験の伝え方 | 服薬管理や多職種連携の経験、施設ごとの制度の理解を言葉にしておく。 |
| 求人の探し方 | 在宅に強い薬局の求人は、薬剤師の転職に詳しい窓口を活用すると見つけやすい。 |
よくある質問
まとめ
老人ホーム・訪問の薬剤師は、高齢化が進むなかで需要が高まる分野です。要点を整理します。
- 働き方は「施設薬剤師」と「訪問薬剤師」の2種類があり、求められる経験が異なる
- 訪問は介護保険の居宅療養管理指導と医療保険の訪問指導を使い分ける
- 老健や特養は外部の訪問指導が原則できず、有料老人ホームやサ高住は訪問が可能など、施設で関わり方が変わる
- 年収は調剤薬局とほぼ同等の450万円から600万円が目安。在宅経験は評価されやすい
- 働き方・運転の有無・取引先の施設を確認し、在宅に強い窓口を活用するのが成功のカギ
患者の生活に寄り添い、地域医療を支える仕事は、調剤とはまた違うやりがいがあります。働き方の違いと施設ごとの特徴を理解したうえで、自分に合う職場を選んでください。これまでの調剤経験は、この分野でも必ず力になります。
※本記事の情報は2026年6月時点のものです。診療報酬・介護報酬の点数や算定要件、施設の制度は改定により変動します。最新の内容は厚生労働省の通知や各施設・転職の窓口で必ずご確認ください。

