この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、石川県は「平均年収は全国14位と高め、病院薬剤師の充足度は全国8位、ただし薬剤師の約半数が金沢市に集中」という3点で特徴づけられる県です。厚生労働省の最新調査では石川県の薬剤師の平均年収は611.1万円で、全国平均566.8万円を44.3万円上回っています。
一方で、金沢市とそれ以外、とくに能登エリアとでは事情が大きく異なります。この記事では、石川県・金沢の薬剤師転職の実態を、厚生労働省の統計と石川県の公表資料をもとに整理します。年収の額面だけでは見えない「どこが充実していて、どこが手薄なのか」まで踏み込みます。
この記事でわかること
- 石川県・金沢の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 偏在指標で見る「病院は充足ぎみ、薬局はむしろ手薄」という構図
- 金沢・加賀・能登のエリア別の傾向と、能登の現状
- 県が実施している薬剤師確保の制度と、転職成功のポイント
石川県・金沢の薬剤師転職データ早見表
まず、石川県の薬剤師をとりまく数字を全国平均と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収・平均年齢・平均勤続年数は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
石川の数字で目を引くのは、平均勤続年数10.6年という長さです。全国平均が8.6年ですから、2年も長い。それだけ辞めずに続けている人が多い県ということで、職場環境の安定を示すひとつのサインだと思います。
石川県の薬剤師の年収は全国14位
最新調査では611.1万円・全国14位
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとにした集計では、石川県の薬剤師の平均年収は611万500円で、都道府県別では14位。薬剤師全体の平均年収566万7,900円を44万2,600円上回りました。北陸3県のなかでは、富山県が636万8,800円で6位、福井県が582万3,600円で22位となっており、石川は北陸で2番目の水準です。
同じ調査で石川県の薬剤師の平均年齢は42.4歳、平均勤続年数は10.6年。全国の40.1歳・8.6年と比べると、いずれも上回っています。長く働き続ける人が多い分だけ平均年収が押し上げられている面もあると考えられます。
調査年によって数字は大きく動く
注意したいのは、この手の数字が年によってかなり動くことです。ひとつ前の令和6年調査では、石川県は620.6万円で全国18位、全国平均は599.3万円でした。全国平均が1年で32.5万円下がっているため、順位が上がった一方で金額そのものは下がっています。
複数年に共通しているのは「石川県は全国平均を上回り、全国の上位3分の1に入る」という傾向です。ここは安定して確認できます。絶対額は目安として受け止め、最終的には実際の求人で確認するのが確実です。
月間勤務時間は全国より15時間長い
同じ調査の令和6年分では、石川県の薬剤師の月間勤務時間は182時間で、全国の167時間より15時間長いという結果が出ています。単純計算で1日あたり40分以上多い計算です。年収の差の一部は労働時間の差でもあるということになります。
求人サイトでは残業少なめの案件も多く見つかりますが、統計上は働く時間がやや長め。つまり職場ごとの差が大きいということです。求人票を見るときは、年収の額面だけでなく、月の所定労働時間・残業の実績・年間休日をセットで確認してください。
2026年度の調剤報酬改定で若手の賃上げが進む見込み
2026年度の調剤報酬改定では、保険薬局での賃上げを進める目的で「調剤ベースアップ評価料」が新設されました。40歳未満の薬局薬剤師については、2026年度・2027年度にそれぞれプラス3.2%の賃上げ目標が設定されています。これから薬局へ転職する若手にとっては、追い風になる制度変更です。
「石川は年収が高い」で終わらせず、勤務時間まで見るのが大事だと思っています。月182時間ということは、時間あたりで割ると印象が変わることもあります。面接では「先月の平均残業時間はどのくらいですか」と具体的に聞いてみてください。
偏在指標が示す「病院は充足ぎみ、薬局は手薄」
石川県の転職市場を読むうえで、いちばん重要なのがこのデータです。厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。
出典:厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
病院薬剤師の充足度は全国8位
石川県の病院薬剤師の偏在指標は0.87で、全国の0.80を上回り、47都道府県のなかで8番目に高い水準です。全国的に病院薬剤師は不足ぎみとされるなかで、石川は相対的に恵まれているといえます。金沢大学附属病院や金沢医科大学病院といった大規模病院があり、県内に薬学部が2校あることで若手が供給されている影響が大きいと考えられます。
病院薬剤師を目指す人にとっては、裏を返せば「人気の職場は競争がある」ということでもあります。認定資格や病棟業務の経験など、アピールできる材料を整えて臨むほうが有利です。
薬局薬剤師はむしろ全国平均を下回る
対照的に、石川県の薬局薬剤師の偏在指標は0.96で、全国の1.08を下回ります。人口10万人あたりの薬局数は52.0施設と全国平均50.5施設を上回っているため、薬局の数に対して薬剤師の配置が薄くなりやすい構図です。
「地方は病院が足りない」という一般論とは逆の県だという点は、石川で転職を考えるうえで押さえておく価値があります。薬局志望であれば、県内では比較的迎えられやすい環境といえます。
なお、将来時点の推計では石川県の薬局薬剤師の偏在指標は1.10、病院薬剤師は0.91まで上がる見通しが示されています。長期的には、薬局側の需給が緩む方向に向かうと国は見ています。
北陸3県を並べてみると、石川の数字の良さがよくわかります。富山も福井も病院・薬局とも石川より低い。北陸で働き先を探すなら、石川がいちばん選択肢の幅が広いエリアだと思います。
県内薬剤師の約半数が金沢市に集中
石川県の薬剤師は、金沢市に強く集中しています。厚生労働省の令和6年統計では、県内で薬局・医療施設に従事する薬剤師2,236人のうち、金沢市が1,121人。ちょうど半数が県庁所在地に集まっている計算です。
出典:厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(全国平均は210.6人)
金沢市だけを取り出すと人口10万人あたり245.8人で、全国平均の210.6人を大きく上回ります。つまり金沢市は充足、県全体で見ると全国平均以下という二層構造です。金沢市以外では、令和4年の統計で白山市278人、小松市217人と続き、それ以外の市町は人数が限られます。
「石川県の薬剤師は足りているのか」という問いに、県全体の数字ひとつで答えるのは無理があります。金沢とそれ以外では、まるで別の県のようなものです。自分が働きたいエリアの数字で判断してください。
石川県のエリア別の特徴
石川県は南北に細長く、加賀(南部)・金沢・能登(北部)でまったく事情が異なります。
奥能登の現状は必ず確認を
奥能登は、2024年1月の能登半島地震と同年9月の奥能登豪雨により、医療提供体制が大きな影響を受けたエリアです。復旧の状況は市町・施設によって差があるため、求人を検討する際は現地の受け入れ体制や住まいの確保まで含めて確認することを強くおすすめします。
また、能登北部医療圏(輪島市・珠洲市・穴水町・能登町)は、厚生労働省の会議で石川県が示した資料によると、2020年時点で約6万人だった人口が2045年には約2.9万人まで減ると推計されています。長期のキャリアを考えるうえでは、この人口動態も踏まえて判断したいところです。
石川県が実施している薬剤師確保の制度
石川県は、県内の病院に勤務する薬剤師を確保するため、令和5年4月から2つの制度を実施しています。すでに免許を持っている転職者も対象になり得る制度で、他県ではあまり見られない仕組みです。
出典:石川県健康福祉部薬事衛生課「病院薬剤師の確保事業」(2026年8月更新)
共育プログラムの指定病院は、2026年8月時点で8施設。金沢大学附属病院・金沢医科大学病院・地域医療機能推進機構金沢病院・石川県済生会金沢病院といった金沢市内の病院に加え、恵寿総合病院(七尾市)・公立宇出津総合病院(能登町)・公立穴水総合病院(穴水町)・市立輪島病院(輪島市)と、能登エリアの病院が半数を占めています。
金沢の基幹病院で学びながら能登の地域医療にも関わる、という働き方が制度として用意されているわけです。奨学金の返済が残っていて、かつ認定資格を目指したい人にとっては、検討する価値の高い選択肢といえます。要件や募集状況は変わるため、詳細は石川県薬事衛生課の公表情報を確認してください。
「複数の病院を回りながら資格を取る」という発想の制度は、なかなかありません。1つの病院にいると症例の幅が限られてしまうという病院薬剤師の悩みに、正面から応えた仕組みだと思います。石川ならではの強みですね。
石川県で働くメリットと注意点
- 平均年収611.1万円で全国14位、全国平均を44.3万円上回る
- 平均勤続年数10.6年(全国8.6年)と、腰を据えて働く人が多い
- 病院薬剤師の充足度は全国8位で、北陸3県では最も環境が整っている
- 薬学部が2校あり、研修体制の整った職場や企業求人も見つかる
- 県が病院薬剤師向けの共育プログラムと修学資金返済支援を用意している
- 月間勤務時間が全国平均より15時間長いという調査結果がある
- 金沢市は薬剤師が集まりやすく、好条件の求人は競争になりやすい
- 県全体の人口10万人あたり薬剤師数は全国平均を下回る
- 奥能登は地震と豪雨の影響が残る地域があり、現地状況の確認が必須
- 金沢市中心部を除くと、車での移動が前提となる職場が多い
石川県で転職を成功させる4つのポイント
① 病院志望か薬局志望かで戦略を変える
偏在指標が示すとおり、石川は病院と薬局で需給が逆転しています。病院志望なら充足ぎみのため、認定資格や病棟経験といった強みを整えて臨むほうが有利です。薬局志望なら県内では比較的迎えられやすいので、条件面での交渉余地を探る動き方が向いています。
② 優先したい条件を2つまでに絞る
金沢市は選択肢が多い分、迷いやすいエリアでもあります。年収・勤務地・休日・残業・研修体制のうち、ゆずれないものを2つまでに絞ってから探し始めると、比較の軸がぶれません。あとは面談で確かめる、という進め方が結局いちばん早く決まります。
③ 勤務時間の実態を数字で確認する
石川は統計上の勤務時間が長めに出ています。応募前に、1日の平均処方箋枚数、在籍薬剤師数、直近数か月の平均残業時間、年間休日数の4点は具体的に確認しておきましょう。年収が同じでも、この4点で働きやすさはまったく変わります。
④ 地域に詳しいエージェントを使う
石川県の求人は、地域の事情に詳しい転職エージェントに相談すると、表に出にくい求人や職場の内情まで教えてもらえます。金沢市と加賀、能登ではエリアごとの違いが大きいため、その差を踏まえて提案してもらえるかどうかが分かれ目です。複数社に登録して比較すると、県内の相場感もつかめます。
金沢は暮らしやすさで人気があるので、Uターン・Iターンの希望者も多いエリアです。人気の求人ほど早く決まってしまうので、情報だけでも早めに集めておくと動きやすくなりますよ。
よくある質問
まとめ
石川県・金沢は「年収は全国上位、病院薬剤師の環境も北陸で最良、ただし金沢一極集中と勤務時間の長さに注意」という県です。ポイントを整理します。
- 平均年収は611.1万円で全国14位、全国平均566.8万円を44.3万円上回る
- 平均勤続年数10.6年と長く、腰を据えて働ける環境がうかがえる
- 偏在指標は病院0.87(全国8位)、薬局0.96で、病院のほうが充足ぎみ
- 県内薬剤師の約半数が金沢市に集中し、金沢とそれ以外で事情が異なる
- 県が病院薬剤師向けの共育プログラムと修学資金返済支援を用意している
- 月間勤務時間は全国より15時間長く、応募前に実態の確認が必要
金沢は北陸新幹線で東京まで2時間半ほど、暮らしやすさでも人気の高い街です。エリアごとの違いと需給の構図を踏まえて、自分の希望に合った職場を見つけていきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や制度の内容はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

