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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
結論から言うと、兵庫県は「人口あたりの薬剤師数が全国2位。そのぶん年収は全国46位と低く出る、日本でもっとも薬剤師が多い県のひとつ」です。厚生労働省の薬剤師偏在指標でも、兵庫の薬局薬剤師は1.19と全国3番目に高い充足度を示しています。
数字が厳しく見えるかもしれませんが、兵庫の価値は年収以外のところにあります。神戸・阪神間の利便性、大阪への通勤圏、医療産業の集積、そして播磨や但馬という別の顔。この記事では公的統計をもとに、兵庫のどこで何を狙うべきかまで整理します。
この記事でわかること
- 兵庫県・神戸の薬剤師の年収・薬剤師数・薬局数の最新データと出典
- 年収が全国46位である理由が、需給データではっきり説明できること
- 薬学部5校のうち1校が募集停止に至った背景と、今後への影響
- 神戸・阪神・播磨・但馬・淡路のエリア別の傾向と、待遇を上げるコツ
兵庫県・神戸の薬剤師転職データ早見表
まず、兵庫県の薬剤師をとりまく数字を全国と並べて確認します。いずれも公的統計、または公的統計をもとに算出された数値です。
出典:年収は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」および「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの/薬剤師数は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」の薬局・医療施設従事者(人口10万対)および届出薬剤師総数/薬局数は厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」/偏在指標は厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標
兵庫の数字は、他県のように年ごとに大きくぶれません。薬剤師数が全国2位で、年収が全国46位。この2つがきれいに対応していて、需給の理屈どおりの結果が出ている県です。だからこそ、対策も立てやすいと思います。
年収が全国下位である理由は需給で説明できる
2年連続で全国下位という結果
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにした集計では、兵庫県の薬剤師の平均年収は次のようになっています。
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年をもとにマイナビ薬剤師が算出したもの(きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加算)
都道府県別の年収データは、母集団の小さい県ほど年によって大きく振れることが知られています。しかし兵庫は届出薬剤師が15,839人と規模が大きく、2年連続で全国下位という結果が安定して出ています。兵庫の年収の低さは統計のブレではなく、構造的なものと受け止めるのが妥当です。
薬剤師数は全国2位、薬局数は全国28位
構造をつくっているのが、この非対称です。兵庫県の人口10万人あたりの薬剤師数は245.6人で、徳島県に次ぐ全国2位。全国平均210.6人を35人も上回ります。ところが人口10万人あたりの薬局数は51.6施設で全国28位、全国平均50.5施設をわずかに上回る程度にとどまります。
つまり働く場所の数は全国並みなのに、薬剤師だけが突出して多い。これが兵庫の需給の実像です。採用側は高い給与を提示しなくても人が集まるため、平均年収が押し下げられます。旧来よく言われる「都市部だから年収が低い」という説明よりも、この数字のほうが実態を正確に説明します。
偏在指標でも全国トップクラスの充足
厚生労働省は、薬剤師の需給を地域ごとに比較するための「薬剤師偏在指標」を公表しています。数値が1.0より小さいほど業務量に対して薬剤師が足りず、大きいほど足りている状態を意味します。関西3府県で並べると次のとおりです。
出典:厚生労働省が公表した現在時点の薬剤師偏在指標(都道府県別)
兵庫の薬局薬剤師の指標1.19は、東京都、神奈川県に次ぐ全国3番目の水準です。病院薬剤師の0.89も全国7位で、全国平均0.80を上回ります。薬局も病院も全国トップクラスに充足している県というのが、兵庫の正確な姿です。
さらに将来時点の推計では、薬局薬剤師の指標は1.35、地域全体は1.21まで上がる見通しが示されています。長期的には供給の余裕がさらに広がる方向です。兵庫で長く働くつもりなら、この前提で自分の価値をどう高めるかを考えておく必要があります。
兵庫で「年収が上がらない」と感じている人は、自分の努力不足ではなく市場の構造だと知っておくだけでも気が楽になると思います。そのうえで、構造の中でどう抜け出すかを考える。次の章から具体的に見ていきます。
薬学部5校のうち1校が募集停止に
兵庫県内には、神戸薬科大学・神戸学院大学・武庫川女子大学・兵庫医科大学・姫路獨協大学の5校に薬学部があります。近隣の大阪府や京都府にも薬学部が多く、毎年多くの薬剤師が関西で生まれることが、兵庫の薬剤師数の多さにつながっています。
その供給過多を象徴する出来事が起きています。姫路獨協大学は2024年、2025年度入学から6年制薬学部医療薬学科の学生募集を停止すると発表しました。他大学との競争激化により定員割れが慢性化していたことが理由と報じられています。6年制薬学部の学生募集停止としては全国で初めての事例でした。
つまり、兵庫は薬剤師を育てる側でさえ供給過剰の影響を受けている県ということです。転職市場で見れば、当面は薬剤師が余りやすい環境が続くと考えるのが現実的でしょう。
薬学部が募集停止になるというのは、業界にとってかなり大きなニュースでした。それが最初に起きたのが兵庫だという事実は、この県の需給を象徴していると思います。ただ、長い目で見れば供給が絞られる方向でもあるので、悪い話ばかりではありません。
兵庫県のエリア別の特徴
兵庫県は日本海から瀬戸内海、淡路島までを含む広い県です。エリアによって事情はまったく異なります。厚生労働省の令和6年統計では、県内で薬局・医療施設に従事する薬剤師13,109人のうち、神戸市が4,112人。県内のおよそ31%が神戸市に集まっています。
令和4年の統計では、市町村別の薬剤師数は神戸市5,294人、西宮市1,527人、尼崎市1,384人の順でした。神戸市と阪神間だけで県内のかなりの部分を占め、それ以外のエリアは規模が小さくなります。
神戸には企業で働く道もある
神戸市のポートアイランドには「神戸医療産業都市」があり、医療関連企業や研究機関が集積しています。調剤薬局や病院以外の進路として、品質管理・薬事・臨床開発・治験コーディネーターといった職種を県内で探せるのは、兵庫ならではの利点です。
薬局薬剤師の需給が緩んでいる県だからこそ、こうした別の選択肢を持てることの価値は大きいといえます。企業系の求人は数が限られるため、早い段階で情報を集めておくことをおすすめします。
兵庫で働くメリットと注意点
- 求人の絶対数が多く、神戸・阪神間では職場の種類も幅広い
- 大阪への通勤圏で、隣府の求人まで含めて探せる
- 神戸医療産業都市があり、企業で働く選択肢を県内で持てる
- 病院薬剤師の偏在指標は0.89で全国7位。研修体制の整った病院が多い
- 但馬・丹波・淡路では、条件を手厚くする求人が出ることもある
- 平均年収は全国46位。2年連続で全国下位という結果が出ている
- 人口あたり薬剤師数は全国2位で、好条件の求人は競争が激しい
- 薬局数は全国28位にとどまり、薬剤師の多さに見合っていない
- 薬局の偏在指標は将来1.35まで上がる推計で、需給はさらに緩む見通し
- 但馬・淡路などは求人が限られ、車通勤が前提になる職場が多い
兵庫で年収・待遇を上げる4つのコツ
① 神戸・阪神間の外にも目を向ける
県内薬剤師の約31%が神戸市に集まり、阪神間を加えると集中はさらに強まります。同じ兵庫県内でも、播磨・但馬・丹波・淡路では人材確保の難しさが違うため、条件面で余裕のある求人が出ることがあります。神戸から姫路までは新快速で1時間程度、住まいを変えずに播磨まで通う選択肢も現実的です。
② 大阪府の求人も同時に比較する
阪神間に住んでいれば、大阪市内は十分な通勤圏です。兵庫県内だけで探すと、全国2位の薬剤師密度のなかで競争することになりますが、府県をまたいで比較すれば選択肢は一気に増えます。勤務地の条件を「兵庫県内」ではなく「自宅から45分以内」で設定し直すのが、兵庫での探し方のコツです。
③ 専門性と役職で差をつける
薬剤師が余りやすい県では、誰でもできる業務だけでは待遇が上がりません。在宅医療への対応、無菌調剤やがん領域などの専門性、認定薬剤師の資格、管理薬剤師としての経験。こうした評価される材料を持っているかどうかで、提示される条件がはっきり変わります。神戸医療産業都市の企業系求人を狙う場合も、専門性は最大の武器になります。
④ 関西に強いエージェントを複数使う
兵庫の好条件求人は競争が激しく、公開前に決まってしまうこともあります。関西エリアに拠点を持つエージェントを2社から3社登録しておくと、兵庫と大阪の求人を横断して比較でき、職場の内情まで確認しやすくなります。競争の激しい市場ほど、情報量が結果を分けます。
兵庫は「県内だけで探すと不利、範囲を広げると強い」県だと思っています。大阪も播磨も通勤圏に入る立地は、実はかなり恵まれています。勤務地の枠を最初にゆるめておくと、見える求人がまったく変わりますよ。
よくある質問
まとめ
兵庫県・神戸の薬剤師転職のポイントを整理します。
- 人口10万人あたり薬剤師数は245.6人で全国2位、薬局数は51.6施設で全国28位
- 平均年収は501.5万円で全国46位。2年連続で全国下位という構造的な結果
- 偏在指標は薬局1.19(全国3番目)、病院0.89(全国7位)と全国トップクラスの充足
- 薬学部5校のうち姫路獨協大学が2025年度から募集停止。供給過多を象徴する動き
- 県内薬剤師の約31%が神戸市に集中。播磨・但馬・淡路は事情が異なる
- 大阪も播磨も通勤圏。勤務地の枠を広げ、専門性で差をつけるのが有効
兵庫は、年収の平均値だけを見ると不利に映る県です。しかし求人の絶対数、大阪への近さ、企業という選択肢、そして県内のエリア差。使える手札は多くあります。数字の構造を理解したうえで、自分の条件に合う職場を戦略的に選んでいきましょう。
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。年収・薬剤師数のデータは調査年や集計方法により幅があり、求人状況や待遇はエリア・職場・時期により異なります。詳細は各求人および各公的機関の公表資料でご確認ください。

