この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「内定を辞退したいけれど、どう伝えればいいのか」「エージェント経由の場合はどうするのか」。気まずさや申し訳なさから、連絡が遅れてしまう人は少なくありません。
結論から言えば、内定辞退は早く・誠実に・電話で伝えるのが基本で、辞退理由は「一身上の都合」で十分です。承諾したあとでも辞退はできます。法律上の根拠を知っておくと、必要以上に怯えずに済みます。
この記事では、基本マナーと法律上の位置づけ、エージェント経由と直接応募それぞれの手順、調剤薬局版と病院版の電話・メール例文、引き止めへの切り返し、内定保留の申し出方、そして薬剤師業界特有の配慮までを整理します。
📌 この記事でわかること
- 内定辞退の基本マナーと、法律上どう位置づけられるか
- エージェント経由・直接応募で異なる辞退の手順
- 電話とメールの例文(調剤薬局版・病院版)
- 引き止めにあった場合の切り返し例文5パターン
- 内定保留を申し出るときの期限の決め方
- 薬剤師業界特有の「辞退後の関係性」への配慮
内定辞退の基本マナー
まず、内定辞退の基本的な考え方と最低限のマナーを確認しておきましょう。
▶ あわせて読みたい
薬剤師転職の応募・選考ガイドまず、いまどの段階での辞退なのかを確認する
同じ「辞退」でも、内定の連絡を受けた直後なのか、承諾書を出したあとなのか、入職日が決まったあとなのかで、相手への影響はまったく違います。まずは自分がどの段階にいるかを確認してください。応募から内定までの流れと各段階でやることは、上の記事にまとめています。
法律上はどう位置づけられるのか
承諾する前であれば、労働契約はまだ成立していないため、辞退に法的な問題はありません。承諾したあとは労働契約が成立した状態になりますが、それでも辞退はできます。民法第627条第1項は、雇用の期間を定めなかった場合について「各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」と定めています。
ただし、入職の直前や研修に参加したあとなど、相手に具体的な負担が生じている段階での辞退は、損害賠償が問題になる可能性が指摘されています。だからこそ、決めたら早く伝えることが自分を守ることにもなります。
もう一点、知っておきたい条文があります。労働基準法第15条第2項は、「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」と定めています。提示された条件と実際が違っていた場合は、即時に契約を解除できるということです。条件面の食い違いが辞退の理由であれば、この規定が根拠になります。
※法律の解釈や個別の事案への当てはめは状況によって異なります。損害賠償を求められるなど深刻なやり取りになった場合は、弁護士など専門家にご相談ください。条文へのリンクは記事末尾に掲載しています。
内定辞退でいちばん避けてほしいのは、連絡を先延ばしにすることです。企業側は辞退が分かった時点で後任の採用を再開しなければなりません。気まずさで一日延ばすほど、相手の負担は増えていきます。決断したらその日のうちに連絡するくらいの気持ちで動いてください。
辞退の連絡も、次の求人探しも、任せられます
エージェント経由なら、企業への辞退連絡は代行してもらえます。登録は無料なので、次を探しながら進めたい方にも向いています。
薬剤師向け転職エージェントのおすすめを見るエージェント経由・直接応募で異なる辞退の手順
連絡先と手順は、エージェント経由か直接応募かで変わります。間違えると二重に連絡が入るなどのトラブルになるため、確認しておいてください。
① エージェント経由の場合
② 直接応募の場合
エージェント経由なのに採用先へ直接連絡すると、話が二重になって混乱します。まずエージェントへ。連絡を先延ばしにするほど採用先への迷惑が増えるので、決めたその日に電話することを意識してください。
電話での伝え方【調剤薬局版・病院版の会話例】
内定辞退の電話は「名乗る、辞退の意思、簡潔な理由、お詫びと感謝」の順で伝えます。通話は1分から3分で終わることがほとんどです。
調剤薬局への内定辞退(電話の会話例)
▼ 採用担当者につながった場合
(薬剤師)「お世話になっております。先日内定のご連絡をいただきました〇〇と申します。管理薬剤師の〇〇様はいらっしゃいますでしょうか。」
(担当者)「はい、私です。」
(薬剤師)「このたびは内定をいただき、誠にありがとうございました。大変恐縮ではございますが、一身上の都合により、今回の内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。選考にお時間をいただき、業務内容についても丁寧にご説明いただきましたのに、このようなご連絡となり誠に申し訳ございません。貴薬局のますますのご発展をお祈り申し上げます。」
病院への内定辞退(電話の会話例)
▼ 採用担当者につながった場合
(薬剤師)「お世話になっております。先日薬剤師として内定のご連絡をいただきました〇〇と申します。人事部の〇〇様はいらっしゃいますでしょうか。」
(担当者)「はい、私です。」
(薬剤師)「このたびは内定をいただき、また薬剤部の業務についてご説明いただき誠にありがとうございました。大変恐縮ではございますが、一身上の都合により今回の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。選考から内定まで多くのお時間をいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となりまして誠に申し訳ございません。貴院のご発展を心よりお祈り申し上げます。」
▼ 担当者が不在だった場合(共通)
「お世話になっております。〇〇と申します。採用ご担当の〇〇様はいらっしゃいますでしょうか。(不在の場合)承知いたしました。それでは改めてメールにてご連絡させていただき、後ほどお電話も差し上げます。お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
電話をかけるのが怖いという気持ちはよくわかります。でも実際に話してみると、多くの採用担当者は「承知しました、またご縁がありましたら」と受け止めてくれます。会話例を一度声に出して読んでおくと、本番で落ち着いて話せます。
メールの例文【状況別】
電話後の確認メール、電話がつながらない場合のメール、エージェント宛のメールについて、状況別の例文を紹介します。〇〇の部分はご自身の情報に置き換えてお使いください。
① 電話後の確認メール(調剤薬局宛)
件名:内定辞退のご連絡/薬剤師 〇〇(氏名)
〇〇薬局 管理薬剤師 〇〇様
お世話になっております。先ほどお電話にてお伝えしましたとおり、誠に勝手ながら今回いただきました内定を辞退させていただきたく存じます。
在宅業務への取り組みや研修体制について丁寧にご説明いただき、大変魅力を感じておりました。それにもかかわらずこのようなご連絡となりましたこと、深くお詫び申し上げます。
貴薬局のますますのご発展をお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
連絡先:〇〇
② 電話後の確認メール(病院宛)
件名:内定辞退のご連絡/薬剤師 〇〇(氏名)
〇〇病院 人事部 〇〇様
お世話になっております。薬剤師として内定をいただきました〇〇と申します。先ほどお電話にてお伝えしたとおり、誠に勝手ながら今回の内定を辞退させていただきたく、改めてメールにてご連絡いたします。
薬剤部の業務内容や病棟業務についてご丁寧にご説明いただきましたにもかかわらず、このような形となりましたこと、大変申し訳ございません。
貴院のご発展をお祈り申し上げます。
〇〇(氏名)
連絡先:〇〇
③ 電話がつながらなかった場合のメール
件名:内定辞退のご連絡(お詫び)/薬剤師 〇〇(氏名)
〇〇 〇〇様
お世話になっております。〇〇と申します。先ほどお電話差し上げましたが、ご不在のようでしたのでメールにてご連絡いたします。
このたびは内定をいただき、誠にありがとうございました。大変恐縮ではございますが、一身上の都合により今回の内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。
本来であれば直接お電話でお伝えすべきところ、メールでのご連絡となりましたことをお詫び申し上げます。改めてお電話でもご連絡差し上げます。
貴院のご発展をお祈りしております。
〇〇(氏名)
連絡先:〇〇
④ エージェントへの辞退連絡メール
件名:内定辞退のご連絡/〇〇(氏名)
〇〇 〇〇様
お世話になっております。〇〇です。先ほどのお電話の件、改めてメールにてご連絡いたします。
このたびご紹介いただきました〇〇の内定ですが、一身上の都合により辞退させていただきたく存じます。
〇〇様には多くのお時間をいただき、丁寧にサポートしていただきましたこと、大変感謝しております。先方へのご連絡について、お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
〇〇(氏名)
件名に「内定辞退」と入れるのは必須です。「お世話になります」だけの件名だと埋もれて、処理が漏れることがあります。また「貴薬局」「貴院」と相手に合わせた表現を使うだけで、定型文らしさが消えて誠意が伝わります。
引き止めにあった場合の切り返し例文
辞退を伝えると引き止められることがあります。切り返しを先に用意しておくと、その場で気持ちが揺らぎにくくなります。
医療の現場では「患者さんへの影響」を持ち出されることがあります。罪悪感を覚えやすいところですが、まだ入職していない以上、あなたが担うべき責任ではありません。決意を変えないことと、誠実な言葉で伝えることは両立します。同じ言葉を落ち着いて繰り返せば大丈夫です。
内定保留(回答期限の延長)を申し出る場合
「まだ他の選考結果が出ていない」「もう少し考えたい」という場合は、辞退ではなく回答期限の延長を申し出るという選択肢があります。
期限の決め方は「逆算」で
回答期限について、法律上の決まりはありません。「何日まで待ってもらえる」という一律の基準を示した公的なデータも存在しないため、期間の目安を鵜呑みにするのではなく、自分の状況から逆算して日付を決めるのが確実です。手順は次のとおりです。
- ① まず、企業が提示した回答期限を確認する(提示がなければ、その場で確認する)
- ② 他の選考の結果が出る予定日を確認する(選考中の相手に問い合わせてよい)
- ③ その予定日の翌営業日など、具体的な日付を自分から提示する
- ④ 提示した日には、結果がどうであれ必ず連絡する
「少し待ってください」という曖昧な言い方は避けてください。企業は後任の候補者への対応を並行して進めています。日付を明示すれば、相手も採用計画を立てられます。理由は正直に伝えて構いません。「他に検討中の選考がある」で問題ありません。エージェント経由の場合は、交渉を代行してもらえます。
▼ 電話での内定保留の伝え方
「このたびは内定をいただき誠にありがとうございます。大変恐れ入りますが、今後のキャリアについて慎重に検討したく、〇月〇日までお時間をいただくことは可能でしょうか。その日には必ずご連絡いたします。」
▶ あわせて読みたい
薬剤師の内定後にやること完全まとめ承諾・保留・辞退の判断軸を整理する
保留にするか、承諾するか、辞退するか。迷ったときは、条件の内訳と譲れない条件を並べ直すのが早道です。内定を受けたあとの3つの選択肢と、それぞれの進め方は上の記事にまとめています。
保留を申し出るとき、私は必ず「〇月〇日にご連絡します」と日付で伝えるようにしています。曖昧にしておくと、こちらも気が重いまま日が過ぎてしまう。日付を切ると、自分の判断にも締め切りができます。
薬剤師業界特有の「辞退後の関係性」への配慮
薬剤師は、同じ地域で働き続けると顔を合わせる機会が生まれやすい職種です。以下は統計ではなく、現場で見聞きしてきた範囲での整理ですが、辞退の伝え方が後々に影響することは実際にあります。
とはいえ、辞退したこと自体を過度に気に病む必要はありません。合わない職場に入って早期に辞めるほうが、双方にとって損失が大きい。丁寧に、早く伝えられていれば、それで十分です。応募段階で条件を絞り込んでおけば、そもそも辞退の場面自体が減ります。
よくある質問
まとめ
最後に、この記事の要点を整理します。
- 内定辞退は「早く・誠実に・電話で」が基本。先延ばしにするほど相手の負担が増える
- 承諾後でも辞退はできる(民法第627条第1項)。ただし入職直前の辞退は避ける
- 提示条件が事実と違う場合は、即時に契約を解除できる(労働基準法第15条第2項)
- エージェント経由ならエージェントへ連絡。採用先への直接連絡は不要
- 辞退理由の詳細を話す義務はない。「一身上の都合」で十分
- 保留の期限に公的な目安はない。他の選考結果から逆算して、日付を自分から提示する
- 同じ地域で再会する可能性を踏まえ、辞退時こそ礼を尽くす
内定辞退は誰でも緊張します。それでも、早く誠実に伝えることで、相手への配慮と自分のキャリアの両方を守れます。この記事の例文を使って、気持ちよく次の一歩へ進んでください。
出典・参考(いずれも2026年9月時点で確認)
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。法令の解釈や損害賠償の可否は個別の事情により異なります。トラブルになった場合は、所轄の労働局または弁護士などの専門家にご相談ください。

