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くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「転職したばかりで妊娠がわかった」「産休・育休を考えているけれど、今転職して大丈夫か」。この不安の正体は、産休・育休・給付金がそれぞれ別のしくみで、条件もばらばらだという点にあります。
先に結論をお伝えします。産前産後休業は勤続年数に関係なく取得でき、出産手当金も加入期間の長さは条件になりません。一方、育児休業は労使協定で「入社1年未満」を対象外にできます。そして育児休業給付金は、会社の制度ではなく雇用保険の加入実績で決まります。この4つを分けて考えると、確認すべきことがはっきりします。
さらに2025年、育児に関する制度は大きく変わりました。給付が2つ新設され、子の看護等休暇からは「入社6か月未満は対象外」の規定が消えています。転職と重なる方にとって影響が大きい改正なので、その内容もあわせて整理します。
この記事でわかること
- 産休・育休・出産手当金・育児休業給付金の条件の違い
- 2025年に新設された2つの給付と、改正された休暇の制度
- 妊娠前・妊娠中・育休中・復職後、それぞれの転職時期の損得
- 薬剤師ならではの、転職先に確認しておきたいこと
- 面接での伝え方と、妊娠中に活動を進めるときの注意点
産休・育休・給付金は、それぞれ別のしくみ
混同されやすいので、根拠となる法律から分けて整理します。ここを分けて理解できると、確認すべき窓口も自然に決まります。
産前産後休業は労働基準法の定め
産前休業は出産予定日の6週間前(双子以上は14週間前)から、本人の請求により取得できます。産後休業は出産の翌日から8週間、就業が禁止されます。ただし産後6週間を過ぎたあと、本人が請求し医師が支障ないと認めた業務には就くことができます。勤続年数も雇用形態も条件になりません。入社初月でも取得できます。
出産手当金は健康保険から
産休中に給与が支払われない場合、健康保険から出産手当金が支給されます。こちらも加入期間の長さは支給要件ではありません。転職直後で新しい健康保険に入ったばかりでも、被保険者であれば対象になります。ただし国民健康保険には出産手当金の制度がないため、退職して国民健康保険に切り替えた場合は事情が変わります。退職後に前の健康保険から継続して受け取る場合は、退職日までに継続1年以上の加入などの条件が加わります。
育児休業は育児・介護休業法。ただし労使協定に例外がある
育児休業は原則として子が1歳になるまで取得でき、保育園に入れないなどの事情があれば延長できます。有期雇用の方について「引き続き雇用された期間1年以上」という一律の要件は2022年4月に撤廃されました。一方で、労使協定を結んでいる会社は、雇用形態を問わず「入社1年未満の従業員」を育休の対象から外すことができます。ここが転職直後にひっかかる最大のポイントです。求人票には書かれないため、就業規則か労使協定で確認してください。
育児休業給付金は雇用保険から
会社が育休を認めることと、給付金が出ることは別です。育児休業給付金は、休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月)が12か月以上あることが要件とされています。この期間は、条件を満たせば前職の雇用保険の加入期間と通算できる場合があります。転職を挟む方は、自分の加入履歴を持ってハローワークで確認しておくと確実です。
「産休は取れたのに育休は対象外だった」というのは実際に起こります。就業規則と労使協定は、内定が出たあと入職前のタイミングで見せてもらうのがいちばん角が立ちません。入ってから聞くと、切り出しづらくなります。
2025年に変わった制度
2025年は育児に関する制度が大きく動いた年です。数年前の情報のままだと判断を誤るため、主な変更をまとめます。
出典:厚生労働省「出生後休業支援給付」案内資料、厚生労働省コラム「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」
転職と重なる方にとって影響が大きいのは、子の看護等休暇から「入社6か月未満は対象外」の規定が消えた点です。以前は、転職して間もない時期に子どもが熱を出しても、有給休暇を使うしかない職場がありました。今は入社直後から看護等休暇を請求できます。ただし週の所定労働日数が2日以下の方は、引き続き労使協定で除外できます。
給付面では、出生後休業支援給付金によって、要件を満たせば従来の67パーセントに13パーセントが上乗せされ、給付率が80パーセントになります。育児休業給付は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、実質的に手取りの10割相当になるという説明が厚生労働省の資料でなされています。配偶者と2人で育休を取る計画があるなら、日数の組み方で受け取れる額が変わります。
薬局は少人数で回している店舗が多いので、制度があっても現場が追いつかないことがあります。だからこそ「制度がありますか」ではなく「直近で実際に使った方はいますか」と聞いてください。答え方で職場の姿勢がわかります。
転職時期の選び方
「いつ動くのが得か」に唯一の正解はありません。時期ごとに得られるものと、確認が必要になることが違います。
判断材料として押さえておきたいのが、育休を取れるかどうかは入社からの期間で決まるという点です。妊娠がわかった時点で入職日から1年が見えているなら、その職場の労使協定を先に確認してください。逆に1年に届かないことがはっきりしているなら、産休と出産手当金は使える前提で、育休期間をどう過ごすかを別途考える必要があります。
育休中の転職を考える方もいますが、休業中に退職すると給付はそこで止まります。急いで決めず、復職してから動くほうが結果的に損が少ないケースが多いです。まず給付の扱いを確認してから判断してください。
薬剤師が転職先に確認したいこと
制度の有無だけでは足りません。薬局は1店舗あたりの人数が少なく、1人欠けたときの影響が大きい職場です。次の項目は、制度より先に働きやすさを左右します。
参考になる数字もあります。厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査によると、全産業の育児休業取得率は女性88.3パーセント、男性50.9パーセントで、男性は調査開始以来はじめて5割を超えました。この水準を頭に置いて、応募先の実績を人数で聞いてみてください。
私が復職した先輩たちを見ていて思うのは、決め手になるのは制度の細かさではなく「当日の欠勤を責められない空気があるか」です。これは求人票ではわかりません。見学のとき、スタッフ同士の声のかけ方を観察してみてください。
妊娠中の転職活動と、面接での伝え方
妊娠中に転職活動をすること自体に、法律上の問題はありません。男女雇用機会均等法は妊娠・出産等を理由とする不利益な取り扱いを禁じていますが、これは主に在職中の労働者を想定した規定で、採用選考にどこまで及ぶかは状況によって考え方が分かれます。妊娠を理由にした不採用は望ましくないとされる一方、業務内容や入職時期との兼ね合いで判断が難しい場面があるのは実情です。
伝えるかどうかの考え方
結論としては、業務内容や入職時期に関わる段階なら、早めに伝えたほうが双方にとって安全です。薬局は立ち仕事が中心で、重い箱を扱う場面もあります。配慮が必要な状態で黙って入職すると、本人も職場も困ります。伝えるときは、事実と、働ける範囲と、長く続ける意思の3点をそろえてください。
伝え方の一例
「現在妊娠◯か月で、出産予定は◯月です。医師からは通常勤務に支障はないと言われていますが、重量物の取り扱いについては配慮をお願いできればと思います。産休までは通常どおり勤務し、復帰後も長く働きたいと考えています。」
体調を優先して進めるために
つわりの時期に無理をして活動を詰め込む必要はありません。面接をオンラインに変更できないか相談する、通院と日程が重ならないよう余裕をもって組む、体調が悪い日は遠慮なく変更を申し出る。どれも当然の配慮です。応じてもらえるかどうか自体が、その職場の姿勢を測る材料にもなります。
伝えるタイミングに迷うなら、転職支援の担当者に先に相談して、間に入ってもらう方法があります。本人から切り出すより角が立たず、こちらの希望も正確に伝わります。一人で抱え込まないでください。
よくある質問
まとめ
転職と産休・育休が重なるときの要点を整理します。
- 産休と出産手当金は勤続年数を問わない。育休だけが労使協定で入社1年未満を除外できる
- 育児休業給付金は会社ではなく雇用保険の判断。休業開始前2年間の加入実績で決まる
- 2025年4月に給付が2つ新設され、子の看護等休暇からは「入社6か月未満は対象外」が廃止された
- 薬剤師は1人薬剤師の時間帯と応援体制が働きやすさを左右する。制度より先に実態を聞く
確認する順番は、就業規則と労使協定(育休)、加入先の健康保険(出産手当金)、ハローワーク(育児休業給付金)の3か所です。窓口を分けて考えれば、調べることははっきりします。体調を最優先にしながら、必要な情報だけ先に押さえておいてください。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「育児休業を取得される方へ 出生後休業支援給付」案内資料
- 厚生労働省「2025年4月から、改正育児・介護休業法等が施行」
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(育児休業取得率)
- 労働基準法(産前産後休業)、育児・介護休業法、健康保険法、雇用保険法
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

