この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
「50代からの転職先なんてもうないのでは」。この年代の方から、たびたび聞く不安です。正社員の新規採用枠が絞られてくるのは事実ですが、選択肢がなくなるわけではありません。
先に結論をお伝えします。50代で変わるのは可否ではなく、狙うべき職場と雇用形態です。厚生労働省の届出データでは、診療所に従事する薬剤師の平均年齢は58.4歳、介護保険施設は59.7歳。いずれも60歳から69歳が最多層で、年代が上がるほど相性がよくなる数少ない職場です。
お金の見通しも立てておきましょう。50代前半の平均年収は642万9,900円、後半は657万4,900円。40代後半のピーク675万8,400円からは下がりますが、全体平均566万7,900円は大きく上回ります。この記事では、データと制度の両面から50代の選び方を整理します。
この記事でわかること
- 届出データで見る50代の立ち位置と、施設ごとの年齢構成
- 50代の平均年収の実数と、40代からの変化
- 選考で求められる3つのことと、伝え方
- 転職先タイプごとの相性と、50代ならではの選択肢
- 65歳以降を見据えて確認しておく制度とお金
50代の立ち位置|どの職場に同年代が多いか
まず数字から確認します。厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、届出薬剤師は329,045人で平均年齢は46.9歳です。60歳以上が65,950人おり、全体の20.1パーセントを占めます。50代は、これから最も人数の多い層に入っていく手前にあたります。
出典:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(令和6年12月31日現在)
この表の使い方はシンプルです。平均年齢が自分より高い施設から順に当たってください。同年代が多い職場のほうが、受け入れの土壌ができています。介護保険施設と診療所は、50代なら「若手」として扱われる職場です。
制度の裏づけも押さえておく
高年齢者雇用安定法により、事業主には65歳までの雇用確保措置が義務づけられています。継続雇用の対象者を労使協定の基準で限定できる経過措置は令和7年3月31日で終了し、令和7年度からは希望者全員が対象になりました。実施している企業は99.9パーセントです。転職先でも、希望すれば65歳まで働ける仕組みが整っていることになります。
一方で、70歳までの就業確保措置は努力義務にとどまり、実施している企業は34.8パーセントです。50代の転職は、この差を意識して選ぶ必要があります。
「50代だから無理」と最初から候補を狭めている方が多いのですが、探す場所がずれていることがよくあります。薬局ばかり見て「募集がない」と感じているなら、診療所や介護施設の求人も一度見てみてください。
50代の年収と、その後の見通し
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査による、年代別の平均年収です。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」。きまって支給する現金給与額の12か月分に年間賞与その他特別給与額を加えて算出した値です。
50代は「下がる一方」ではありません。50代後半のほうが前半より高く、全体平均を90万円ほど上回っています。問題は、その水準を転職後も維持できるかです。
維持するには、一般の薬剤師としてではなく、役割を伴う形で移ることが現実的です。管理薬剤師のポスト、後継の管理者を探している薬局、教育を任せたい店舗。こうした求人なら、水準を保ったままの提示も出ます。逆に、役割のない一般職として移る場合は、下がる前提で考えてください。
50代の転職で年収を守りたいなら、「薬剤師として」ではなく「何を任せられる人として」応募するかが分かれ目です。同じ人でも、募集の枠が変われば提示額が変わります。
選考で求められる3つのこと
3つ目が、50代でいちばん重要です。採用する側がためらう最大の理由は能力ではなく、既存のスタッフとうまくやれるかという不安です。この不安を面接で先に解いておくと、話が進みやすくなります。
2つ目については、電子処方箋が2026年5月時点で9割以上の薬局に導入されています。操作は職場で教えてもらえますが、「使えません」と先に言ってしまうと採用側が身構えます。直近で新しく覚えたことを1つ挙げられると印象が変わります。
50代で移った先輩から「若い店長の下で働くことに最初は戸惑ったが、教わる姿勢を見せたら関係がうまくいった」と聞いたことがあります。経験が長いからこそ、あえて低い姿勢で入るほうが結果的に早く馴染めます。
転職先タイプ別の相性マップ
50代で検討されやすい職場と、この年代での相性の目安です。◎○△は、募集の出やすさと年齢構成をもとにした編集部の目安であり、外部の調査データによるものではありません。平均年齢は届出データによる実数です。
平均年齢は厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」による施設別の値です。募集や採用では、年齢にかかわりない均等な機会を与えることが法律で定められており、この表は年齢制限を示すものではありません。
上位3つに共通するのは、募集が出る機会そのものは多くないという点です。相性がよくても、出会えなければ意味がありません。希望を登録しておき、出たときに知らせてもらう形をとると取りこぼしが減ります。
介護保険施設は全国で1,217人しか所属していない職場です。相性はよくても、募集が出るのは誰かが辞めたときだけ。だからこそ、待てる体制を作っておくことが大事になります。
50代ならではの3つの入り方
正社員の枠を正面から狙う以外に、50代だからこそ使える入り方があります。
3つ目は心理的な抵抗があるかもしれませんが、実務上は有効です。正社員という枠にこだわるほど、選べる職場が減っていきます。まず入って信頼を得てから条件を見直すほうが、結果的に長く働けることがあります。
1つ目の後継の管理薬剤師については、募集が公開されないことも多い領域です。オーナーの引退時期という事情が絡むため、条件も個別性が高くなります。興味があるなら、希望として登録しておき、話が来たときに検討する形が現実的です。
50代で1人職場に入るのは慎重に考えてください。裁量は大きいのですが、体調を崩したときの代わりがいません。管理薬剤師のポストでも、ほかに薬剤師がいるかどうかは必ず確認しておきたいところです。
65歳以降を見据えて確認すること
50代の転職は、定年と再雇用に直結します。入職前に確認しておく項目を整理しました。
4つ目は見落とされがちです。2025年4月1日以降に60歳に達する方から、高年齢雇用継続給付の上限が10パーセントに縮小されました。再雇用で賃金が下がる前提の生活設計をしていると、想定より手取りが少なくなる可能性があります。
一方、在職老齢年金については緩和されました。年金の基本月額と給与を月換算した額の合計が基準額を超えると支給停止になる仕組みですが、その基準額が2026年4月から引き上げられ、法律上は62万円(2024年度価格)、賃金変動を反映した2026年度の適用額は月65万円です。パートや嘱託の水準では、まず届きません。
50代で入る職場は、最後の職場になる可能性が高いです。年収や役職だけでなく、何歳まで働けるかまで聞いておいてください。聞くこと自体が、長く働く意思の表れとして受け取られます。
よくある質問
まとめ
50代の転職について、要点を整理します。
- 診療所58.4歳・介護保険施設59.7歳は60代が最多層。50代なら若手にあたる職場から探す
- 年収は50代前半642万9,900円、後半657万4,900円。全体平均を大きく上回る水準を保っている
- 水準を維持したいなら役割を伴う形で移る。一般職として移れば下がる前提
- 65歳までの雇用確保は99.9パーセントが実施済み。70歳までは34.8パーセントにとどまるため入職前に確認する
50代で入る職場は、最後の職場になる可能性があります。まずは平均年齢が自分より高い施設の求人を眺めてみてください。「募集がない」と思っていた景色が、少し違って見えるはずです。
この記事で参照した公的情報
- 厚生労働省「令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計」(施設別の平均年齢・年齢構成)
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年調査・年齢階級別の平均年収)
- 政府広報オンライン「在職老齢年金制度の基準額が2026年4月から引上げに」
- 厚生労働省「令和7年高年齢者雇用状況等報告」集計結果(令和7年12月19日公表)、高年齢者雇用安定法、雇用保険法
※本記事の情報は2026年9月時点のものです。

