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くらげ|現役薬剤師。調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信。薬剤師目線でエージェントを徹底調査しています。
40代で転職を考えたとき、最初に頭をよぎるのは「この年齢で受け入れてくれる職場はあるのか」ではないでしょうか。
ところが求人を何十件めくっても、年齢について書かれているのはせいぜい「59歳以下(定年年齢を上限)」くらい。どこにも「40代は不可」とは書いていません。それなのに、応募すると通らない職場がある。この食い違いに戸惑っている方は多いはずです。
種明かしをすると、求人票に「40代は不可」と書けないのには法律上の理由があります。募集・採用における年齢制限は、原則として禁止されているからです。つまり40代にとっての年齢の壁は、求人票の内側ではなく選考の過程に、見えない形で存在していることになります。
この記事では、その見えない壁がどこに引かれているのかを、業態ごとに「開いている扉」「閉じている扉」として整理します。年収の相場には立ち入らず、ここでは入れるのか、入れないのかだけを扱います。
- 求人票に「40代は不可」と書かれていない法律上の理由
- 40代を採用する側が埋めたい「3つの穴」
- 業態別の可否マップ(開いている扉・閉じている扉と、その理由)
- 法律上、40代を狙って募集できる枠が実在すること
- 求人票から「募集の穴」を読み取る視点
求人票に「40代は不可」と書かれていない理由
労働施策総合推進法(かつての雇用対策法)により、労働者の募集・採用にあたって年齢制限を設けることは原則として禁止されています。平成19年10月の改正で、それまで努力義務だったものが義務化されました。求人票に書いていなくても、書類選考や面接で年齢を理由に合否を決めれば、同じく法の趣旨に反する扱いとなります。
年齢制限が許されるのは、施行規則に定められた例外事由に当てはまる場合だけです。そして、この例外の中身を知ると、40代の景色が変わります。
「59歳以下」は40代を弾いていない
求人でよく見かける「59歳以下の方(定年年齢を上限)」という記載は、例外事由の1号にあたるものです。これは定年年齢を上限として、期間の定めのない契約で募集する場合に認められる書き方です。40代を排除する意図ではなく、むしろ「定年まで働いてもらう前提の募集ですよ」という表明に近いものです。
若手に絞れる例外は「経験不問」とセット
一方、若手に年齢を絞れる例外事由(3号のイ)もあります。長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者を募集する場合で、基本的には35歳未満が想定されています。ただしこの例外を使うには、期間の定めのない契約であること、対象者の職業経験を不問とすること、新卒者と同等の育成体制で扱うこと、という条件を満たさなければなりません。
ここが重要です。年齢を絞りながら、同時に経験者を求めることはできないのです。「35歳未満」と書いた求人に「経験者優遇」と併記することは、この例外の趣旨から外れます。
結果として何が起きるか。多くの中途採用の求人は、年齢を書かずに募集をかけます。そして40代が書類で落ちたとしても、その理由は求人票のどこにも書かれていません。壁は、求人票の外にあるのです。
求人票に年齢が書いていないのは「40代歓迎」という意味ではありません。書けないだけです。逆にいえば、書いていない以上、外から眺めていても答えは出ません。ここを「年齢不問なら大丈夫だろう」と受け取って数十件まとめて応募し、全滅してから相談に来る40代を、私は何人も見てきました。壁があるのは事実です。ただし壁は業態ごとに違う場所に引かれています。
40代を採用する側が埋めたい3つの穴
40代の選考が20代と決定的に違うのは、採用する側が「育てて長く使う」という土俵で見ていない点です。20代はポテンシャルで採られますが、40代に対しては即戦力としての力量に加えて、それ以上の役割が期待されます。
言い換えれば、40代の応募が通るのは、その職場が抱えている次の3つの穴のどれかに、自分の形がはまるときです。
① 人手の穴
単純に人が足りていない職場です。明日から一人で店舗を回せる人が欲しい。ここでは年齢よりも「すぐ立ち上がれるか」が問われます。40代の実務経験がそのまま強みになる、いちばん素直な穴です。
② 役割の穴
管理薬剤師や、若手を教える役が空いている職場です。若手には任せられない役割なので、ここは40代のほうが有利になります。管理薬剤師やエリアマネージャーとしての経験があれば、経験年数とマネジメント経験を条件に、より良い待遇が提示されることもあります。
③ 経験の穴
その分野の実務経験を持つ人がいない、という穴です。特定の疾患領域の知識、在宅の経験、無菌調製の経験、企業での開発経験など。40代が専門性で勝負できるのはこの穴に対してです。ただし裏を返せば、その分野の経験がないと、この穴には入れません。
「経験を活かして頑張ります」だけの応募は、若手と同じ土俵に自分から立つことになります。その土俵では、体力があり、当直や夜勤も頼みやすく、給与も抑えられる若手のほうが選ばれます。40代が落ちるのは能力が足りないからではなく、その求人が埋めたい穴と、自分の形が合っていないだけ、というケースがほとんどです。
40代の転職は「自分を高く売る」よりも「どの穴に自分がはまるか」を探す作業に近いと感じます。私の周りでも、うまく決まった人ほど応募数は少なめでした。10件出して1件通るより、穴の形を見極めて3件出したほうが、結果的に早い。落ち続けている方は、応募先を増やす前に、この3つのどれを狙っているのかを紙に書き出してみてください。
40代に開いている扉・閉じている扉
3つの穴を踏まえて、業態ごとの扉の開き具合を整理します。同じ「病院」でも機能によって開閉が逆になる点に注目してください。
| 転職先 | 40代の扉 | 開閉を決めているもの |
|---|---|---|
| 中小・個人の調剤薬局 | 開いている | 人手の穴。即戦力がそのまま評価される |
| 大手チェーンの管理薬剤師候補 | 開いている | 役割の穴。経験年数とマネジメント経験が条件になりやすい |
| 調剤併設のドラッグストア | 開いている | 出店数に薬剤師が追いついておらず、人手の穴が大きい |
| 在宅に力を入れる薬局 | 開いている | 患者や多職種とのやりとりの経験が直接効く。運転が要ることが多い |
| 慢性期・療養・精神科の病院 | 条件つきで開く | 幅広い年齢を受け入れる施設がある。夜勤や呼び出しの有無は要確認 |
| 急性期・大学病院 | 閉じやすい | 若手の育成に力を入れており、当直の体力も見られる。年齢が上がるほど難しい傾向 |
| 製薬・開発関連(その分野の経験あり) | 条件つきで開く | 経験の穴。専門性と、案件を回した経験が問われる |
| 製薬・開発関連(未経験から) | 閉じやすい | 40代向け求人の多くが募集分野の実務経験を求める。資格だけでは届かない |
| 公務員(一般の採用枠) | 閉じている | 受験資格そのものに年齢上限があり、40代は対象外のことが多い |
| 公務員(経験者・社会人の採用枠) | 条件つき | 一般枠より上限が高く設定される。上限は自治体ごとに幅がある |
見ていただくとわかるとおり、扉の開閉を決めているのは年齢そのものではなく、その職場が何を埋めたいかです。急性期病院が閉じやすいのは40代が劣っているからではなく、あの現場が「若手を育て、当直を回す」設計になっているからです。
そして唯一、年齢そのもので明確に線が引かれているのが公務員です。ここだけは求人票に堂々と年齢が書かれています。民間の年齢制限が原則禁止であるのとは、別の枠組みで動いているためです。
40代で「病院に行きたい」と言う方には、必ず「どの病院ですか」と聞き返しています。同じ病院薬剤師でも、急性期と慢性期では扉の重さがまるで違うからです。急性期を10件受けて全滅した方が、療養型に1件出して決まった、という話は珍しくありません。業態ではなく機能で見ること。40代はここで結果が分かれます。
法律上、40代を狙って募集できる枠がある
ここまで「壁」の話をしてきましたが、実は40代を狙い撃ちで募集できる例外事由も、法律の中に用意されています。あまり知られていない話なので、ぜひ知っておいてください。
例外事由の3号ロ、「技能やノウハウの継承」を理由とする募集です。特定の職種において、ある年齢層の労働者が相当程度少ない場合に限り、その年齢層に絞って募集・採用ができます。ここでいう特定の年齢層とは30歳から49歳までのうち、5歳から10歳の幅を持つ層。相当程度少ないとは、同じ年齢幅の上下の層と比べて人数が半分以下である状態を指します。
若手ばかりが増えて中間層がごっそり抜けている職場は、法律上も「40代を指名して募集していい」立場にあります。そういう職場にとって、40代は採りたくても採れない人材です。技術を引き継ぎ、若手を教え、現場を締める人がいない。この穴は、40代にしか埋められません。
求人に「20代から30代の若手が活躍中」と書かれていたら、多くの人はそれを「若い人向けの職場だ」と読みます。しかし裏返せば、中間層が薄い可能性があるということでもあります。前向きなアピールの言葉が、そのまま募集の穴を示していることは少なくありません。
私が管理薬剤師をしていたころ、まさにこの状態でした。20代が5人いるのに、上が私しかいない。誰が新人を見るのか、誰が休みを回すのか、いつも綱渡りでした。あのとき40代の経験者が来てくれたら、条件を多少無理してでも迎えたと思います。40代は「もう遅い」のではなく、そういう現場から見れば喉から手が出るほど欲しい存在なんです。
求人票から「穴」を読む3つの視点
年齢が書かれていない以上、40代がやるべきは「年齢の記載を探すこと」ではなく「募集の穴を読むこと」です。求人票には、意外とヒントが残っています。
① 募集背景の一文
「増員のため」「欠員補充のため」「新規開局にともない」「体制強化のため」。この一文が、どの穴かをほぼ言い当てています。欠員補充なら人手の穴、体制強化なら役割の穴である可能性が高い。記載がない求人は、面接前に必ず確認したいところです。
② 年齢構成についての記述
「20代から50代まで幅広く活躍中」なら、40代が浮かない職場だと読めます。「若手が中心」なら、中間層の穴がある可能性と、若手向けの育成設計になっている可能性の両方があります。どちらなのかは、募集背景と重ねて読むと見当がつきます。
③ 「管理薬剤師候補」という言葉
この4文字が入っている求人は、はっきりと役割の穴を埋めにきています。40代にとっては最も扉が開いている表現のひとつです。反対に「経験不問・イチから育てます」という求人は、若手向けの設計である可能性を頭に置いて臨んだほうがいいでしょう。
求人票に書かれていない部分は、面接で聞いてしまうのがいちばん確実です。「今回の募集はどういう背景ですか」「入ってすぐ期待される役割は何ですか」。この2つを聞くだけで、自分がはまる穴かどうかがだいたい判断できます。40代の面接は品定めされる場ではなく、穴の形を確認しに行く場だと考えると、少し気が楽になります。
よくある質問
まとめ
40代薬剤師の転職先選びについて整理します。
- 募集・採用の年齢制限は原則禁止。だから「40代は不可」と求人票には書けず、壁は選考の過程に見えない形で存在する
- 「59歳以下(定年年齢を上限)」は40代を弾く記載ではない。若手に絞れる例外は経験不問とセットで、経験者募集とは併用できない
- 40代が通るのは、職場が抱える3つの穴(人手・役割・経験)のどれかに自分の形がはまるとき
- 扉の開閉を決めているのは年齢ではなく、その職場が何を埋めたいか。同じ病院でも急性期と慢性期では逆になる
- 法律上、中間層が薄い職場は40代を指名して募集できる。40代は「もう遅い」ではなく「採りたくても採れない層」でもある
- 年齢の記載を探すのではなく、募集背景・年齢構成・役割の言葉から穴を読む
40代の転職でいちばんもったいないのは、「年齢的にもう無理だろう」と自分で扉を閉めてしまうことです。閉じている扉は確かにあります。けれど同時に、40代でなければ埋められない穴も、確実に存在します。全部の扉を叩く必要はありません。自分の形に合う穴を、落ち着いて探していきましょう。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。法令の内容や採用の実態、公務員採用試験の年齢要件は変更されることがあります。最新の情報は厚生労働省や各自治体などの公的機関の発表をご確認ください。個別の労働問題については、労働局や専門家へのご相談をおすすめします。

