この記事を書いた人
くらげ|現役薬剤師。急性期病院・一般病院・調剤薬局で管理薬剤師を経験し、現在も調剤薬局に勤務しながら転職情報を発信しています。
オンライン診療の普及とともに、薬剤師の「オンライン服薬指導」も広がってきました。「在宅で働けるのでは?」「これからのスキルとして身につけたい」と、遠隔医療に関わる働き方に関心を持つ薬剤師は増えています。一方で、制度や働き方の実情を正しく理解しておくことも大切です。
この記事では、薬剤師とオンライン診療・遠隔医療の関わり、オンライン服薬指導の仕事内容と働き方、求められるスキル、年収や求人の実情、メリット・デメリットまでを整理しました。制度の経緯は、厚生労働省の省令改正と通知の内容にもとづいて確認しています。
この記事でわかること
- 薬剤師が関わる「オンライン服薬指導」とその制度の流れ
- 仕事内容と、完全在宅は可能なのかという働き方の実情
- オンライン対応の薬剤師に求められるスキル
- 年収・求人の実情と、転職のメリット・デメリット
薬剤師とオンライン診療・遠隔医療の関わり
遠隔医療のうち、薬剤師が中心的に関わるのがオンライン服薬指導です。これは、薬剤師が患者とビデオ通話などを使い、非対面で服薬指導を行う仕組みを指します。オンライン診療で処方を受けた患者が、そのまま自宅で薬の説明を受け、薬を配送してもらえる。その流れの一翼を担います。
制度は段階的に整ってきました。流れを押さえておくと、求人票の記載も読み解きやすくなります。
- 2019年/改正薬機法で法制化。全国での実施が可能に
- 2020年4月/コロナ特例(0410対応)として、電話などでの柔軟な対応が時限的に解禁
- 2020年9月/恒久制度がスタート。ただし当初は初回対面が原則などの制限あり
- 2022年3月31日/省令改正で要件が緩和。初回からのオンライン服薬指導が可能に。通信は映像+音声が必須(電話のみは不可)となり、服薬指導計画書の作成も不要に
- 2022年9月30日/改正により、薬局以外の場所からの実施も可能に
- 2023年7月31日/コロナ特例の0410対応が終了。現在は改正薬機法にもとづくルールに一本化
つまり今は、「初回からオンラインで可・映像と音声が必須・薬局以外からも一定の条件で実施可」という恒久ルールに整理された状態です。電子処方箋の普及も、この流れを後押ししています。
制度が固まってきた今は、オンライン服薬指導のスキルを身につける良いタイミングです。過渡期のややこしさが落ち着き、ルールが読みやすくなりました。求人を見るときは「0410対応の名残の記載ではないか」を軽く気にしておくと安心です。
オンライン服薬指導の仕事内容と働き方
仕事内容
事前に問診票や薬歴をもとにヒアリング内容を準備し、ビデオ通話で患者に服薬指導を行います。オンライン薬局では短時間で対応することも多く、限られた時間で的確に伝える力が求められます。指導後は薬歴の記録や、薬の配送手配に関わることもあります。対面と違って手元の様子が見えにくいため、飲み残しの確認や副作用の聞き取りを、言葉で丁寧に引き出す工夫が要ります。
完全在宅は可能?
ここは誤解しやすいポイントです。オンライン服薬指導は調剤業務の一環であり、調剤や監査(できあがった薬の最終チェック)は薬局で行う必要があるため、完全リモートは基本的に難しいのが実情です。指導だけを切り出して自宅から行える場面はあっても、薬の準備と確認は薬局に人が要ります。多くの場合は「週の一部を在宅、残りは薬局に出勤」というハイブリッドな働き方になります。フルリモートの求人もありますが、数は限られます。
「完全在宅でラクに稼げる」というイメージで転職すると、ギャップを感じがちです。まずは調剤業務と組み合わせたハイブリッド勤務が現実的、と理解しておきましょう。求人票の「在宅可」も、その中身が週何日なのかまで確認すると誤解を防げます。
オンライン対応の薬剤師に求められること
対面と違い、画面越しで安心感を与え、正確に情報を伝える力が問われます。次のようなスキルがあると活躍しやすくなります。
- 制度・ルールの理解:改正薬機法にもとづくオンライン服薬指導の要件や算定ルール
- デジタル機器・ツールへの慣れ:ビデオ通話システムや電子薬歴、電子処方箋への対応
- 簡潔な説明力:短時間で要点を的確に伝えるコミュニケーション
- 非対面での観察力:画面越しに患者の様子を読み取り、必要な確認を言葉で引き出す力
特別な資格は不要です。日頃から電子薬歴やオンラインの会議ツールに慣れておくと、転職後もスムーズに入っていけます。機械が得意である必要はなく、「戸惑わず触れる」程度で十分です。
年収・求人の実情
オンライン服薬指導そのものは、多くが通常の調剤薬局業務の一部として行われるため、給与水準は基本的に一般的な調剤薬局と同程度です。参考までに、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査による薬剤師全体の平均年収は約599万円で、調剤薬局はこれに近い水準が目安になります。薬剤師は専門性が高く、在宅要素のある働き方でも給与が下がりにくいのが強みですが、「オンライン対応だから特別に高収入」というわけではありません。
求人については、在宅・フルリモートの薬剤師求人は、調剤薬局や病院の一般求人と比べてまだ数が少ないのが実情です。「オンライン対応に積極的な薬局か」「在宅と出勤の比率はどのくらいか」は求人票だけでは読み取りにくいため、非公開求人も扱う薬剤師特化の転職エージェントに、内部事情まで確認してもらうと探しやすくなります。
「在宅可」と書いてあっても、実際は月数回だけ、というケースもあります。数字で確認するのが大切です。オンライン対応をどれだけ本気でやっている薬局かは、導入しているツールや実施件数を聞くと見えてきます。
オンライン対応の薬局へ転職するメリット・デメリット
転職を決める前に、良い面と注意点の両方を確認しておきましょう。オンライン対応という切り口だけでなく、他の転職先の損得と並べて見比べると、自分にとっての位置づけがはっきりします。
◎ メリット
- これからの医療で需要が高まる新しいスキルが身につく
- 在宅勤務を一部取り入れ、柔軟に働ける可能性がある
- 通院が難しい患者を支える社会的意義
- 薬局のデジタル化やヘルステック分野へのキャリアの足がかりになる
△ デメリット・注意点
- 完全リモートは難しく、多くはハイブリッド勤務
- 給与が特別高いわけではない(一般的な調剤薬局と同水準)
- 在宅・フルリモートの求人はまだ少ない
- 短時間で的確に伝える力や、デジタルツールへの慣れが必要
オンライン服薬指導の経験は、将来ヘルステック企業や薬局のデジタル化を進めるポジションを目指すときにも強みになります。「これからの医療に関わる第一歩」として捉えると、目先の給与以上の価値が見えてきます。
よくある質問
まとめ
オンライン服薬指導は、これからの医療で需要が高まる薬剤師のスキルです。要点を整理します。
- 薬剤師が関わる遠隔医療の中心はオンライン服薬指導
- 2020年9月に恒久制度が始まり、2022年の省令改正で初回からの実施が可能に。0410対応は2023年7月末で終了
- 通信は映像+音声が必須。調剤業務の一環のため完全リモートは難しく、多くはハイブリッド勤務
- 給与は一般的な調剤薬局と同水準。在宅・フルリモートの求人はまだ少なめ
- 制度理解とデジタルツールへの慣れが鍵。将来の薬局デジタル化・ヘルステックへの足がかりにも
「これからの医療に関わりたい」「柔軟な働き方も視野に入れたい」という薬剤師にとって、オンライン対応のスキルは大きな武器になります。まずは制度の全体像と求人の実情をつかみ、働き方の中身を数字で確認することから始めてみてください。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。オンライン服薬指導の要件や算定ルールは、薬機法・関係通知や調剤報酬改定により変更されることがあります。最新の内容は厚生労働省の発表および各職場の運用をご確認ください。

